【妖精】さがしもの
マスター名:周利 芽乃香
シナリオ形態: イベント
危険
難易度: やや易
参加人数: 31人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/12/14 22:26



■オープニング本文

 木枯らしと共にやってくる白い妖精のお話‥‥知ってますか?

●仔もふらの胸騒ぎ
 開拓者ギルドの見習い職員として日々頑張る梨佳(iz0052)にも非番の日はある。
 そんな日は、大抵もふらの仔と1日共に過ごすのだが――
「なー? なー?? なー!?」
 目を覚ますと窓から空を見上げていた仔もふらの七々夜がしきりに鳴いていたもので、梨佳は七々夜を抱き上げて尋ねた。
「珍しいですね〜 七々夜がこんなに鳴くなんて。どしたですか?」
「なー、もふ!!」
 何やらドヤ顔で主張する仔もふらだが、梨佳には一向に解らない。

 この七々夜、人語を解するもふらさまには珍しく人語が話せない仔だ。しかし身振りや鳴き方の抑揚で、梨佳と大抵の意思疎通はできる。
 梨佳が七々夜の様子を図ろうと首を捻っている間に、七々夜はするりと梨佳の腕を抜け出した。
 そうしてまた窓際に寄ると、空を見上げて鳴き続けるのだ。
「うーん、何かあるんでしょーねぇ‥‥」
 階下は大衆食堂だ。
 世話しているもふらさまが騒ぐのが何となく気が引けて、梨佳はどうしたものかと思いつつ七々夜の様子を観察していた。
「なー? なー♪ もーふー???」
 おや、梨佳には見えない何かと交信しているような気がする。短い前脚を動かして、懸命に何かを伝えようとしているようにさえ見えてきた。
 空に何かがあるのだろうか。
「七々夜」
 呼ぶと仔もふらは「なー?」くるりと振り向き返事した。小首を傾げて「なぁに?」と言いたそうだ。
 梨佳は上着を取ると羽織りながら七々夜を促した。
「お外に出かけませんかー?」
「もふ!」

 そんな訳で、少女と仔もふらは、何かを探しに、寒風吹き荒ぶ街へ繰り出したのだ。


■参加者一覧
/ 星鈴(ia0087) / 鈴梅雛(ia0116) / 芦屋 璃凛(ia0303) / 桔梗(ia0439) / 柚乃(ia0638) / 鬼啼里 鎮璃(ia0871) / 秋霜夜(ia0979) / 礼野 真夢紀(ia1144) / 大蔵南洋(ia1246) / 瀬崎 静乃(ia4468) / 菊池 志郎(ia5584) / からす(ia6525) / 亘 夕凪(ia8154) / 和奏(ia8807) / リエット・ネーヴ(ia8814) / 村雨 紫狼(ia9073) / エルディン・バウアー(ib0066) / リン・ヴィタメール(ib0231) / 御陰 桜(ib0271) / 明王院 千覚(ib0351) / 不破 颯(ib0495) / 燕 一華(ib0718) / 无(ib1198) / 朱華(ib1944) / 白藤(ib2527) / 緋姫(ib4327) / シータル・ラートリー(ib4533) / 神支那 灰桜(ib5226) / 和亜伊(ib7459) / テオフィルス(ib7855) / 照れーぜ。(ib8326


■リプレイ本文

●年の瀬の街で
 外は師走の喧騒に包まれていた。
「七々夜〜 あんまり走っちゃダメですよー?」
 地面に下ろした途端に駆け出そうとする仔もふらを、梨佳は優しく窘めた。
 行き先は七々夜だけが知っている。下宿先の食堂を出て、梨佳は仔もふらの本能に導かれるまま商店街を散歩し始めた。

「せんせ、せんせ、お茶屋さんにも行かないと!」
 先行く神父の上着を引っ張り、秋霜夜(ia0979)が呼び止める。振り返ったエルディン・バウアー(ib0066)は両手一杯の荷物を抱えて弟子の示す先を見た。
「せんせ、大人にはワインでいいですが、子供さんや呑めない人向けに紅茶も買わないと」
「おお、そうでしたね。私とした事がうっかりしていましたよ」
 にっこり笑って霜夜が示す茶屋へ足を向けた。
 この輝くばかりの有難い微笑で、一体何人の店のおばちゃん――もとい御婦人方を虜にしただろう。
 販売員の性別を気にしつつ、霜夜は茶屋に入って行くエルディンの後を追った。
 そんな二人が店先で出会ったのはシータル・ラートリー(ib4533)。笊に広げられた茶葉を前に、どれを購入するか悩んでいた
「あら♪ こんにちわ。お二人もお買い物かしら?」
 二人が抱えた買出し荷物を見て、随分買ったのですねと微笑む。その半分近くが聖職者スマイル効果で得たものだと聞いて、感心したようにエルディンを見た。
「‥‥あら。こちらでも効果を発揮していらっしゃいますのね♪」
「ああ、そちらのお嬢さんは連れなのです‥‥宜しいですよね?」
 きらん。
 エルディン効果でシータルの買い物もお得に済んだようだ。このあと夕飯の材料を買い出すのだと聞いて、霜夜は一緒にどうですかとシータルを誘う。シータルに否やはない、三人は値切り倒しツアーに繰り出した――
「失礼な、懐事情の歳末助け合いキャンペーンと言ってください」
 ――という事らしいので、世の中持ちつ持たれつなのだろう。

 師走の店先は普段よりも賑やかで、ほんのちょっとだけ珍しい品も多く入っていた。
「ありがとうございます。24日には教会でお待ちしておりますよ」
 きらん☆
 聖職者スマイルを振り撒き、オマケの品とミサへの約束を取り付ける。
 そんな様子を一人の男が――否、一人の紳士と美少女土偶が見ていた。
「あー なんか神父さんが営業活動やってんなー!」
「マスター教会でミサなのですよ?」
 土偶ロイドのミーア、村雨 紫狼(ia9073)と買出しに商店街に来たのだが、当の紫狼が買い物よりも別のものに目移りしてしまっていて、なかなか買い物が捗らない。
「ミサ? 俺はミサには参加しないっ! つーか、俺の煩悩は神をも凌駕するうぅぅぅぅっ!!!」
 いきなりシャウトした男を中心に、半径五間の隙間が出現した!
 熱過ぎる不審人物を遠巻きに見つめる一般人の皆さんなどお構いなしの紫狼、まさに煩悩エネルギーが波紋を広げたかのように人の波が引いてゆく。
 ちなみに、いつもの事なのでミーアは慣れたものだ。
「カッコいいようで全然ダメ人間MAXなのですマスター☆」
 この主にこの土偶あり。さすが紫狼カスタムの特製土偶である――と、そこへ梨佳が七々夜とやって来るのが見えた。
「やや! あの萌えくるしい後姿は!! まいすうぃーとフェアリーな梨佳たんではないくわああっ!!」
「萌えくるしい♪ マスターの名言が出ましたのです☆」
 ミーアの解説はともかく、いつの間にかフェアリーに昇格していたギルド見習いの少女は仔もふらを追うのに懸命で、ロリコン紳士に気付いている様子もない。
「うむ、何やらただならぬ雰囲気的ダッシュとな!?」
 梨佳は霜夜に呼び止められて話をしている。
 気付いていないようなので、紫狼はストーキング――もとい尾行、ならぬ護衛に付いてゆく事にした。

 さて、霜夜達と出会った梨佳、かくかくしかじか七々夜が落ち着かないのだと説明した。
「あら? 空に何方かいらっしゃいますか?」
「七々夜ちゃん、何かお空が気になるです?」
「なー、もふ!」
 ドヤ顔の仔もふらと一緒に空を見上げて、少し冷えますねと霜夜。寒い時はお腹から温めましょうとエルディンにおねだり視線を向けた――ところ。
「ああ、この感触がたまらない!」
「なー、なー!」
「ありゃま。七々夜ちゃん、串焼き一口いかが? はい、あーん☆」
 エルディンに思いっきり抱き締められてもふもふされていた。抱っこされたままの七々夜に焼きたての串焼きを差し出して、霜夜はミニパーティーの買出し中なのですよと梨佳に話す。
 七々夜をもふりながらエルディンとシータルが戦利品を示した。
「オマケも沢山いただきまして‥‥肉まんは暖かい内に、梨佳殿も一緒にどうですか?」
「エルディンさん、とっても買い物上手なんですよ♪」
 紙袋から覗く、まだ湯気が立っている肉まんに梨佳は目を輝かせた。
 暫く四方山話とご相伴に与って、名残惜しそうなエルディン達に見送られつつ七々夜と梨佳は街中へ消えて行った。
「なー、なー♪」
 ご機嫌で前を行く七々夜の周りは煌びやかな反物や小間物を扱う店が立ち並ぶ通りだ。
「姫、お決まりですか」
「これと、これと‥‥あれも!」
 人妖の光華に付き合って、財布兼荷物持ちと化した和奏(ia8807)が彼の姫君に手一杯な頃、何かと何かを追う仔もふらと少女は店の前を通り過ぎてゆく。
「七々夜、待ってです!」
 そろそろ商店街の端にまで来た所で、梨佳は急に七々夜を止めた。

「なー? もーふっ♪」
 振り返って梨佳に駆け寄った七々夜、何故呼び止められたか解ったらしい。
 梨佳の両手に飛び込んだ仔もふらは、荷を抱えた桔梗(ia0439)に挨拶した。
「もふ♪」
「今日は、一日一緒? 良かったな、七々夜」
 もふもふ撫でられて更にご機嫌になる仔もふらと笑顔の少女に、年越し準備の買出し中なのだと彼は言った。
「晦日が近付くと何処も混む、から‥‥用意できるものは今のうちに、って。皆で、手分け」
 彼が世話になっている海辺近くの古民家で、住民が手分けして迎春準備をしている様子を思い浮かべ、梨佳は何故だか懐かしいような気持ちになって微笑した。きっと彼の居候先では、黒毛白鬣のもふらさまが彼の帰りを待っているに違いない。
 朝から七々夜が落ち着かなくてと梨佳が説明すると、桔梗は少し考えてから言った。
「‥‥七々夜が生まれた時も、もふらさま達、騒いでたな」
「そう言えば、牧場のもふらさま達に呼ばれて行きましたね‥‥」
「もふ?」
 七々夜を見つけた時の話ですよと撫でてやると、嬉しそうに「なー」と鳴いた。
 そんな様子を見つめながら、他のもふらさま達はどうなのだろうと考える。
「七々夜だけが見付けたのかどうか、沢山のもふら様に会えば、分かる‥‥のかも」
「ふむむ‥‥気になりますね」
「もーふ?」
 存外遠出になりそうな様相を呈してきた七々の旅、今日も冷えそうだと感じた桔梗は首元に巻いていた、もふら〜を外した。
(‥‥外したばかりのもふら〜、梨佳に渡すのは失礼、かな‥‥)
 ついそんな事を考えてしまって、代わりに梨佳の腕にいる七々夜の首元にふんわりと結ぶことにする。
「今日も寒そう、だから。気をつけて。探し物、。見つかると良いな」
「ありがとです♪」
「もーふ♪」
 笑顔の少女と仔もふらに、桔梗はほわ、と微笑んだ。
「旅の結果、後で、聞かせて。精霊様のご加護を」

●ギルドは平常運転
 巫女の言祝ぎと共に商店街を後にした梨佳と七々夜が次に到着したのは、開拓者ギルドだった。
「梨佳、お前ぇ休みだってぇのに来るたぁ熱心過ぎやしねぇか?」
 哲慈の冷やかしにてへへと笑って、まずは冷えた身体を温めに囲炉裏端へ向かう。
 囲炉裏で饅頭を焼いていた鈴梅雛(ia0116)と、徳利と杯で何やら飲んでいる瀬崎 静乃(ia4468)がいた。
 七々夜に袖を引かれた静乃が振り返った。
「‥‥おや。この子は?」
「今日も寒いですね。その子が、七々夜君ですか?」
 饅頭を裏返して雛が言う。温められた饅頭の焦げ目から甘い香りがした。目を輝かせている七々夜に勧めれば、大喜びでもふもふ食べている。
「‥‥やあ。白湯をどうぞ。少し熱いけど、身体が温まるよ」
 七々夜の様子をじっと見つめていた静乃、黙々と湯呑みに白湯を汲み出すと梨佳達に勧めた。どうやら彼女が飲んでいた杯の中身は少々熱めの白湯だったらしい。
「七々夜、銜えちゃダメですよぅ」
 饅頭を平らげた七々夜が静乃の袖で遊び始めたので、慌てて梨佳は止めに入った。しかし静乃は気にする様子もない。
「‥‥七々夜さん、袖が気に入ったみたいだね。昨日、洗っておいてよかった」
「余計ダメじゃないですかぁ、洗ったばかりの袖に餡子が付いちゃいますよぅ」
 梨佳は困っているが、静乃も七々夜もお構いなしだ。
 囲炉裏端でのんびりと、今は鋭気を養う時なのだと雛。まったりぬくぬく、近々あろう大きな動きに備えているのだと、遊ぶ七々夜の様子に目を細める。
「‥‥そう。もふら牧場に行くんだね。なら七々夜さんの定期健診もしてもらったら?」
「具合が悪くなくても健診は大事ですね。ひいな達も、そろそろお昼に行きましょう。七々夜君、また遊びましょうね」
「もふ!」

 囲炉裏端で身体を温めた一人と一匹は、いつもの習慣で掲示板周辺に足を向けてみた。
 今日も多くの依頼が掲示されている。男女の開拓者が並んで掲示を眺めていた。
「へえ、大店のお嬢さんの護衛か‥‥報酬も悪かねぇ。相当箱入りみたいだから、惚れられて『キャー灰桜様ー!』とか言われたりしてな!」
 呵々と笑った神支那 灰桜(ib5226)の妄想は、後頭部の激痛に中断された。
「いってぇな! いきなり殴んな!」
「一度痛い目みれば、その軽い頭もマシになるんじゃないかしら?」
 凍りつくような冷ややかな眼差しを向ける女開拓者は緋姫(ib4327)、幼馴染の鼻の下が伸びているのが如何にも腹立たしいらしい。
 緋姫に殴られた後頭部を押さえて、灰桜が吠えた。
「俺の頭は軽くねぇし、お前ももう少し力加減を覚えろ!」
「依頼をくだらない妄想に使うんじゃないわよ! この馬鹿!」
「くだらないとか言うんじゃねぇよ! 俺の何処が馬鹿だ!」
「馬鹿を馬鹿と言って何が変なのよ! この大馬鹿! ちょっとは真面目に探したらどうなの!?」
 遂に、馬鹿だ馬鹿だと子供の喧嘩のような言い争いを始めた。
 梨佳がぽかんと眺めているのに気付かないまま喧嘩は自然終息したようで、灰桜が未だむすっとしたままの緋姫の機嫌を取っている。
「‥‥はいはい、分かったっつーの。いい加減に機嫌直せよ」
 ぽふぽふ緋姫の頭を撫でて笑う。
 冗談交じりではあるが依頼を探しているのに変わりはないので、灰桜も熱心に掲示を確認し始めた。
「あー‥‥じゃあコレで良いか‥‥って、お前も入るのか?」
 手続きに受付へ向かうと、幼馴染も付いて来た。
 偶然だ。偶然同じ依頼の手続きをしている。
「‥‥たまたまよ。たまたまっ、私が入りたかった依頼にアンタがいただけよっ」
 強がる緋姫の頬がうっすらと赤かった。

 梨佳はと言うと、受付近くで桂夏に捕まっている。
「あ、梨佳ちゃん。今日は非番じゃなかった?」
 今日何度目かの事情説明をしていると、聡志がやって来た。ぶつぶつ文句を言っている。
「施設内での朋友の放置は‥‥」
「ごめんなさいです。その子うちの七々夜です〜」
「梨佳、お前でしたか。ギルドには多くの人が出入りします。朋友は港に繋留して‥‥何ですか桂夏」
 桂夏は聡志の説教を中断させて梨佳を庇った。背後に二人を押しやって、後ろ手で早く行きなさいとばかりに仕草している。
「すみません、私が見たいと言ったんです。あ、そうだ梨佳ちゃん、銀河の様子も見て来てくれないかしら? ね?」
「あ、はいです! 行って来ますー ではです、さよならー」
 慌てて梨佳は七々夜を抱えてギルドから立ち去ったのだった。

●憩いの甘味処
 開拓者ギルドを出て、港へ向かおうとしたところ。
「あっ、七々夜! 待つですよー!」
 七々夜が街中へ駆けてゆく。辿り着いた先は兎月庵。出迎えたのは小動物のような、リエット・ネーヴ(ia8814)。
「こんにちわんわー♪ 七々夜さんとお散歩かな?」
 リエットは昼食中だったらしい。右手に草団子、左手にみたらし団子の串を二本ずつ持っている。
「なー♪」
「七々夜さんもこんにちわんわー、だじぇ♪ 元気?」
 団子に釣られたかリエットを凝視する七々夜に、リエットはしゃがんで団子をお裾分け。
「もふ〜♪」
「うん! 此処は、お茶とお団子が美味しいんだよ。もふもふふぅ!!」
 もしや会話が成立しているのだろうか!?
 ――と思わせて、真相は謎なのだが。

 七々夜を見つけた白藤(ib2527)の第一声はというと。
「うわぁ‥‥可愛いですねぇ‥‥!」
「もふ〜♪」
 自身に好意を向けてくれる人の気配をしっかり感じ取り、七々は白藤に甘えかかる。微笑み七々夜の頭を撫でて、白藤はふと自身の横に並ぶ空の皿に目を向けた。
「は、朱華!食べすぎだから‥‥!!」
 負けじと栗羊羹を追加注文する白藤に、朱華(ib1944)は正当報酬だと更に団子を追加した。
「美味い‥‥おかわり。荷物持ちしてやったんだから、お前が奢るのは当然だろ」
 表情に変化はないが団子は口に合うらしい。無表情のまま女将のお葛が持って来た団子の皿を、横取りしようとした白藤からさりげなく回避してもしゃもしゃ食べている――あ、七々夜を見遣った朱華の目元が緩んだ。
「食うか?」
 七々夜には分けてやる。でも幼馴染には分けてやらない。
「う〜 朱華のお団子美味しそう‥‥」
 結局、白藤も団子を注文して――朱華と取り合いする事になるのだが。
 なんだかんだで仲良しな幼馴染達の向かいでは、星鈴(ia0087)が相棒と久々の時を過ごしている。
「ごめんね最近会う機会減っちゃってさ」
 申し訳なさそうに頭を掻いて、芦屋 璃凛(ia0303)は照れ隠しに団子を口に放り込んだ。
「言いたい事は一杯あるけど‥‥うんぐっ」
「ちょっ、大丈夫かいな璃凛!?」
 慌てて相棒を介抱していた星鈴の視界に、七々夜が入った。
 もふもふだ。もふもふがいる。
「星鈴?」
「‥‥もふもふ‥‥♪」
 相変わらず星鈴はもふらさまが好きらしい。
「もう、もふらの事になると目の色変わるんだからさ」
 寄ってって七々夜を抱き締めご満悦の星鈴に、璃凛は苦笑を浮かべて言った。

 年の瀬は何かと慌しいもの。
 そして女衆が目当ての品だけで買い物を済ませないのも世の常――大蔵南洋(ia1246)は達観していた。半ば諦めが入っていると言えるやもしれぬ。
 強面の男が前庭席で茶を啜っている様は何とも迫力があるものだが、その実情は何処か微笑ましい。
 店子に誘われて年越し準備の買出しに出れば、荷物持ちを押し付けられた上にあちこちにと引きずり回される大家である。漸く買い物を終えて兎月庵で一息入れている最中であった。
(荒事が続いてる大蔵さんの息抜き‥‥に連れ出した筈、だったのにねえ)
 すっかり荷物持ちと化した南洋に心中で手を合わせつつも、亘 夕凪(ia8154)は殿方の甲斐性とさらりと流す。
 何せ今日は、小さくて可愛い妹分が一緒なのだ。
「ほんに、皆はん変わらしまへんなぁ」
 にこにこと笑むは吟遊の旅から戻ったばかりのリン・ヴィタメール(ib0231)、夕凪の幼馴染であり大事な妹分だ。彼女の復帰祝いを兼ねての外出だったから、兎月庵での休憩も彼女の希望で甘味処なのだった。
「はい、大蔵はん、あ〜ん」
 南洋の口元に餡団子を持ってゆくリンのほっぺにも餡子が付いている。夕凪は黙って自分の指で頬をなぞると、餡子の付いた指をぱくりと食べた。
「もう、また子供扱いして」
「いつもの癖でね。おや梨佳さん、久しいねえ」
 リンとじゃれていた夕凪、梨佳を見つけて声を掛けた。視線は足元の白いもふもふ、七々夜に注がれている。
「あ、梨佳やないの。こっちで一緒にひとつあがらしまへん?」
「これは梨佳殿、ご一緒にお茶でも如何ですかな?」
 厚意に甘えてご相伴に与る事にする。
 七々夜と初めて出会った三人、殊に夕凪は、ちんまいもふらさまに目が釘付けだ。
「あんたも甘い香りに誘われたのかい?」
「もーふっ♪」
「ふむ、七々夜殿の好みに合いそうな物は、はて‥‥」
 お品書きに目を落とした南洋の横で、夕凪が手をわきわきさせている。ちょいとばかり――いやこの際だから思い切りもふりたい!
 夕凪が七々夜をもふり倒している間に南洋は七々夜の好きそうな甘味で餌付けを試みる。七々夜は大喜びで食べているが、また暫くすると思い出したように空を見上げてもふもふ鳴くのだった。
 リンは暫し旅に出ていたのだと梨佳に話し、神教会風の装飾が施されたバイオリンを取り出した。
「七々夜はんとは初めましてやね。うちの曲、聴いてもろてええやろか?」
 弦を鳴らせば優しい音が場に響く。甘味とお茶の憩いの席に、安らぐような落ち着いた音色を奏で始めた。

 大地を覆う白き雪は、娘想う母の嘆き。
 長く、それは長く。
 母の嘆きは、妖精王のお妃が冥い世界から戻らはるまで続くとか――

 ジルベリアの民謡だという、極寒の地の昔話。
 興味深く耳を傾けていた无(ib1198)の髪を、彼が尾無狐と呼ぶ管狐のナイが引っ張った。
「はて、いったいどうしました」
 ナイは七々夜が気になっているようだ。梨佳に話しかけると朝から七々夜が落ち着かないのだと言う。
「何かいるんですかねぇ」
 吟遊詩人の語る民謡のように、世界には様々な伝承が残っている。无は眼鏡の位置を直して、この季節に合う伝承はなかったかと記憶を辿った。
「ああ、そう言えば白い妖精の絵本がよく貸し出されていましたね」
「白い妖精?」
「ええ、他国の伝承なのですがね。木枯らしが吹く寒い季節を迎えると、人知れず『白い妖精』というものが現れるそうです」
 白い妖精は美しい風景や楽しげな雰囲気に惹かれて世界中を旅してまわる――という言い伝えがあるのだと、无。彼が勤める図書館では、その伝承を元にした絵本があるのだとか。
「七々夜、白い妖精見たですか?」
「なー?」
 仔もふらに尋ねてみるも、相変わらず応とも否とも取れる返事しか戻って来ないのだった。

「こんにちは、梨佳さん。今日は七々夜ちゃんも一緒なんですね」
 お八つを買ったついでに喫茶席で一服していた明王院 千覚(ib0351)は、此処の餅は家族も好きなのだとにっこり笑んだ。
「七々夜ちゃんのほっぺみたいな、もちもちのお餅さんですよ」
 そう言って、お届けするつもりでしたからとギルドへの差し入れ分を分けてくれた。
「まだ時間がありますし‥‥お散歩、ご一緒しても良いですか。ね、まゆちゃん?」
 今度はいつお手伝いに? 等々、お葛と談笑していた礼野 真夢紀(ia1144)に水を向ける。
「小雪、暫く歩くから懐に入っていなさい」
 今夜は明王院家で夕食をいただくそうで、千覚が同行するならと真夢紀は膝の上で丸くなっていた猫又に声を掛けた。
「可愛い仔猫の猫又さんですね〜」
 全身白一色の猫又は、ようやっと乳離れした位の年頃だろうか。「こゆき」と名乗った言葉遣いもたどたどしくて幼げだ。
「今日、小母様の所へ小雪の紹介と、姉様達から送られた蜜柑をお届けに行く所でしたので‥‥」
 そう言いつつ小雪を懐に入れ手荷物から蜜柑を数個取り出し梨佳に手渡す。綺麗に色づいた、とても甘そうな蜜柑だ。
「わぁ、ありがとです♪ 真夢紀さんちの鈴麗さんも果物が好きでしたね〜」
 銀河も好きでしょうか、お土産にさせてもらいますねと梨佳は袂に蜜柑を入れて、そろそろ港に行かなければと七々夜を促した。
「港に行くのですか。私も風天に会いに行きましょう」
 千覚に真夢紀、无も加わって、梨佳達は兎月庵を出た。ちなみに梨佳は気付いていないが、此処に至るまでに付いて来ている開拓者が数名いたりする。
 兎月庵を離れて港へ向かって少し歩いた辺りで、一同は青白い体毛の見知らぬもふらさまが付いて来ている事に気が付いた。
「あれ‥‥あなた、どこの子さんですか〜?」

 その頃、兎月庵では無銭飲食者発生――
「ち、違うんだ! 食い逃げじゃねぇんだ! 後で払う! 済まん!」
 飛び出してった連れを慌てて追って、和亜伊(ib7459)は兎月庵を飛び出した。青白もふらのウルフが七々夜を追って行ってしまったのだ。
 興味なさげな振りをして、実は亜伊も梨佳達の話を聞いていた。話によると梨佳は七々夜の後を付いてくだけのようだったし、七々夜は本能に任せて移動しているようだ。それを追っているウルフが何処へ行くかはわからない。
(ウルフの奴、どこまで付いてっちまうつもりなんだろう‥‥)
 できれば兎月庵が閉まる前に戻りたいものだと、亜伊は溜息を吐いた――

●朋友だけが知っている?
 港は大型朋友をはじめとした開拓者達の朋友を繋留・管理しているほか、訓練も行えるよう広い場所も確保してある場所である。
 この日、御陰 桜(ib0271)は忍犬の桃との訓練の為に港を訪れていた。
「わんこ用の苦無、使ってみる?」
「わん!」
 努力家わんこの桃は新しい道具にも果敢に挑戦する。真新しい苦無と桃を伴って、桜は港にやって来たという訳だった。
 ここまで来れば投げても大丈夫。桜は懐から苦無を取り出し、桃の前で構えてみせた。
「桃は手首のすなっぷを使えないから、首で投げるのかしら? こんな感じだけど、桃出来そう?」
 桜は自身の手を桃の口に見立てて苦無を投げてみせた。
 桃が真剣な眼差しで桜の手付きを見ている。苦無が投げられた瞬間、弾丸のように取りに駆けていった。
「桃やってみる?」
「わん!」
 桜を真似て、一心に投げては拾いを繰り返す桃。努力家の桃を温かく見守っていると――
「きゃん!」
「桃!」
 頑張り過ぎて力が入ったか、桃が投げた苦無があらぬ方向へ!
 ちょうどその時、梨佳がやって来た!!
「梨佳ちゃん!?」
「まいすうぃーとフェアリーィィィイ!!!!!」
 苦無の軌道上にいた梨佳の前を何かがかすめて行った。気付かれずにしっかり護衛という名の覗き行為を遂行していた紫狼だ!
「紫狼さん!?」
「マスター、待ってくださいなのです〜」
 状況が把握できず、ただ名を呼ぶのみの梨佳へ、紫狼はイイ笑顔でサムズアップして――苦無と、ミーアと共に海に消えた。
「しろうさーん!!」
 がっくり膝を付く梨佳だが、はしゃぎまわる七々夜や開拓者達は暢気なものだ。そもそも志体持ちが海に落ちた位で死にゃしないのである。
「わんっ!」
「今のでコツが掴めて来たのね?」
 いい子いい子とお腹もふもふする桜にデレる桃。心配ないわよと慰められ、気を取り直した梨佳も銀河に会いに龍厩舎へ移動した。

 龍厩舎の前では、からす(ia6525)が、いつものように茶席を開いていた。
「やあ、一服如何?」
 いつものように声を掛ける傍には三頭の龍がいる。
 駿龍の鬼鴉は一番の古株であったか、いつも寝ている大人しい龍だと梨佳は記憶している。炎龍の虎雀と甲龍の獅子鳩は最近契約した朋友だと聞いた。
 黒色赤眼の獅子鳩に紳士的に挨拶され、梨佳も思わずぺこりとお辞儀する。獅子鳩と共に育った炎龍の虎雀は七々夜に興味津々だ。二頭はやがて龍の言葉で七々夜と話し始めた。
「‥‥七々夜、龍さん達の言葉わかってるみたいですね〜」
「此処の龍達も何か珍しいものを見たのだろうね」
 からすは事も無げに「騒がしかったから」と言い添えた。
 もふらだけでなく龍や他の生物も、何らかの気配を感じたのだろう。からすはそれに逸早く気付いて港にやって来たのだろうか。
「不思議な事は数あれど、あり得ない事など無い」
 からすが言うと、素直に納得できるから不思議である。
 温かいお茶で身体を温めた梨佳達が去るのを見送って、からすは寝た振り駿龍に話しかけた。
「何か興味深い話でもあったかね?」
 鬼鴉は寝惚けた振りしてからすを見遣ると、また眠りに就く素振りを見せた。
 だけど主は気付いている。鬼鴉が良い話を聞いた風な事を。
「そう、良かったね」
 狸寝入りを決め込んだ駿龍を、主は優しく撫でてやった。

 波止場周辺で鬼啼里 鎮璃(ia0871)が何やら仕度をしている。
 大きな毛布に焚き火の準備。夜食の仕度にお茶の用意。まるで一泊するかのような念の入れようだ。
「鎮璃さん、何してるですか〜?」
 梨佳に呼び止められ、鎮璃は今夜は星が綺麗ですよと笑顔を見せた。曰く、寒い夜は空気が澄み渡って星の観測に適しているのだとか。
 龍厩舎で駿龍の隠逸の健康状態を見たり厩舎の掃除をしていた菊池 志郎(ia5584)、七々夜の尋常ならざる様子が気になってやって来た。事情を聞いて、梨佳と一緒に首を捻る。
「もふらさまにはやはり、不思議なものを感じ取る力があるのでしょうか? もしかしたら、誰もまだ見た事のないようなものが見つかるかもしれませんね」
 そう言って、この後郊外のもふら牧場を目指すのだという梨佳が少々寒そうな格好をしているのが気になった。
「そのままでは風邪を引いてしまうでしょう。七々夜にマフラーをあげてしまったのですか?」
 梨佳でなく七々夜がマフラーを巻いているので何となく言ってみたところ、七々夜のマフラーは午前中に桔梗が巻いてくれたものだと言う。その時の状況を聞いてみて、志郎は少し考えた。
「‥‥彼は遠慮したのかもしれませんね」
「遠慮?」
 身につけていたものを直接女の子に着用させるのは気が引けたのでは、と志郎は推測したのだ。それならばと志郎は携帯品からマフラーを取り出して七々夜のマフラーと交換した。
「このマフラーは貴女が身に付けておきなさい。きっとその方がいい。それから‥‥」
 暗い道を一人で歩かないようにとか、遅くならない内に帰宅するようにとか、心配ゆえの注意を与えて、志郎は港を去る梨佳を見送った。

 その後――夜になっての話。
「師走の海は寒かったでしょう?」
 天体観測をしていた鎮璃の許で毛布に包まれて焚き火にあたっている二人組。土偶のはずのミーアまで鼻垂れ状態なのは紫狼の飽くなき人への拘りか。
「まーな、助かったぜ」
 焚き火の周りでは、鎮璃の朋友達と家族が寛いでいる。
 大きな毛布を掛けて貰った炎龍の華燐、暖を取り合うように寄り添う猫又の結珠と白兎の林檎。
 空を見上げれば、氷の粒のようにきらきらと、星が瞬いていた。

●出会いを信じて
 梨佳達がもふら牧場に到着した頃には、陽は既に西へと沈みかけていた。
「仔もふらさま‥‥!もふもふしても、いい?」
 七々夜を見つけたテオフィルス(ib7855)は顔を輝かせて請うた。人懐こい七々夜に否やはない。無邪気に飛び込む腕の中、ぎゅっとしたりもふもふすりすりしたり、テオフィルスの顔が綻んでいる。
「‥‥いろんなもふらさまを、観に来てた。まだ天儀に来たばかりだから、あまり見たことないんだ」
「他所の儀の人なのです?」
 そう、とテオフィルス。アル=カマルはステラ・ノヴァの出だとか。
 他儀に渡った事がない梨佳にとって、アル=カマルは開拓者ギルド支給品の甘味マップが魅力的な儀だ。
「アル=カマルにはどんなお菓子があるですか? 開拓者さんがお勧めの甘味処を地図にしてたですけど‥‥」
 そうだね、と考えていくつか地方菓子を挙げてみる。自分から話すよりも聞き手になる方が好きだから、テオフィルスは梨佳にも話を促した。
 朝から七々夜が落ち着かなかった事、下宿先(えと、食堂なんですよ! と梨佳は補足した)を出て師走の商店街で肉まんをご馳走になった事、開拓者ギルドで焼き饅頭、兎月庵で団子を食べた事――等々、殆ど食べ物の話題で占められたが、楽しげに語る梨佳の仕草を眺めているだけでも楽しかった。
「そうか‥‥七々夜、何か探し物?」
「もふ」
 神妙な顔して返事した仔もふらに付き合って、何を探しているのか考えて。
「なんだろうね。でも、そのうち見つけられるかも。忘れた頃に見つかる探し物、結構あるから。あ、七々夜?」
 腕から飛び出した仔もふらは、あっという間に牧場のもふら達の群れに埋もれてしまった。

 もふら集団の中では――
「もーふもふ♪」
「‥‥な、七々夜ちゃん‥‥?」
 もふらさまの群れに紛れていた柚乃(ia0638)、七々夜に見つけられてしまってあたふた驚いている。いつにない柚乃の反応を怪訝に思う梨佳の前で、もふらの八曜丸が柚乃の周囲を心配そうにうろうろしていた。
「なー?」
「どしたですか!? 柚乃さん!」
 只事ならぬ柚乃の様子、しかも何だか涙目になっているような――
 梨佳が事情を促すと、辺りを確認した柚乃はもふら達に埋もれたままで話し始めた。何でも、十四になった途端、世話になっている呉服屋に縁談話が持ち込まれるようになったそうで。
「呉服屋のおかみさんたちも『まだ早いから』『お預かりしているお嬢さんなので』等々お断りしてくれているんですが‥‥」
 今日は、御使い途中で怪しげな視線を感じて、すっかり怯えてしまったのだと言う。
 天儀では十四を一応の飲酒可能年齢としており、縁談を持って来た人も解禁とばかりに話をしたのだろう。確かに柚乃は年齢よりも大人びて見える娘だが、心はまだ十四年生きただけの少女なのだ。
「柚乃はどうしたら‥‥」
 慄き困惑した柚乃がべそをかいている。同い年の梨佳がどうしたものかとおろおろしていると、一匹のもふらさまが柚乃に寄って行き――欠伸した。
「‥‥もふぁ」
 白毛に淡い緑の鬣の子だ。首輪に小さなてるてるぼうずが下げられている。
 のんびりマイペースなもふらさまに柚乃がきょとんとしていると、もふ毛を掻き分け燕 一華(ib0718)が現れた。
「木陽、探しましたよっ ‥‥あ、梨佳♪」
 一華はてるてるぼうずの付いた三度笠を持ち上げ、にぱっと笑った。

 一華は此処へ星を見に来たのだと言う。一緒にどうですかと誘われて、一同はもふらさまに埋もれて夜を待つ事にした。
「もふらさま‥‥あったかい、ね」
 手近な子をもふもふしながらテオフィルスはまったり。
 もふ毛を渡って牧場のもふらさま達と挨拶を交わしている七々夜の様子を微笑ましく見ながら、一華はにこにこ言った。
「この調子だと七々夜は眠くならなさそうですねっ」
 暫く梨佳とは顔を合わせていなかった。季節は過ぎ、何時の間にか冬になってしまったけれど、こうしてもふらさまに包まれる暖かみはいつも変わらない。
「噂の妖精さんも、こんな風にぽかぽか幸せにして頂けるんでしょうかっ?」
「白い妖精さんです?」
「妖精さん‥‥! 妖精さんが導く素敵な出会いをすれば、もしかして柚乃も‥‥!!」
 何故かお城級のもふらさまを想像してうっとりしている柚乃の着物を、八曜丸がちょいちょいと引いている。
「そう言えば、素敵な出会いがあるって聞いた事もありますけど‥‥」
 一華はそう言って、梨佳が巻いているもふら〜に目を向けた。
 今日は寒いからと桔梗がくれた防寒具、一華は勿論その事は知らなかったけれど、梨佳を寒さから守る優しさが其処に込められているのは感じ取れる。
「梨佳はもう素敵な出会いがありましたもんねっ」
 だから、一華は精一杯の笑顔を見せたのだった。

 七々夜は空を見上げている。
 その日、探しものはみつからなかったけれど、皆の心にはきっと何かが見つかったに違いない。