【PM】マーダーゲーム
マスター名:想夢 公司
シナリオ形態: イベント
相棒
難易度: 普通
参加人数: 7人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/11/15 19:49



■オープニング本文

※このシナリオはパンプキンマジック・シナリオです。
オープニングは架空のものであり、DTSの世界観に一切影響を与えません。

 そこに住む人々、招待された人々、働く人々‥‥そして波が打ち寄せる崖の上に聳え立つ、荘厳なる洋館。
 轟き渡る雷と荒れ狂う風の音、響きわたる悲鳴、床に倒れた金髪の男性、書き込まれた血文字『なぜなんだぜ』‥‥‥‥。
「おい、こら、真面目にやれ」
 めきょっと踏み込まれて、倒れ込んでいた金髪の男性が、『酷いんだぜ』と書かれた紙を持ち上げて。
「お前は死体役、私は案内役。良く解らんがそういうことらしいからな」
「で、明征、スタート時に僕死んでるみたいだけれど、犯人とかは?」
「私も招待されて、来てみれば執事見習いの格好をしてご案内をしろという指示だ。他の招待客がどんな招待状を貰っているかは見当も付かない」
「ついで言うと、どんだけ招待状出されたのかも解らないよねー」
 床の上で結構立派な服を着てごろごろと転がっている男性は、中務佐平次と言って、黙っていれば金髪の美形であるものの、喋り方や態度で台無し。
 今一人は保上明征、ちょっときつい表情ではあるものの、今はきっかりとしたシャツにズボン、ベストにタイ、それに白手袋の填めた手でしきりに顎を擦っていて。
「これってつまりあれかな、ごっこ遊び?」
「‥‥真剣にこういうのやっている人に怒られるぞ」
 そう言って溜息を吐いた明征は、どんな招待客が来るのやら、記帳用の分厚い皮装丁の本を手に呟くのでした。


■参加者一覧
/ 野乃宮・涼霞(ia0176) / 礼野 真夢紀(ia1144) / からす(ia6525) / 和奏(ia8807) / ルンルン・パムポップン(ib0234) / アムルタート(ib6632) / にとろ(ib7839


■リプレイ本文

●役者は揃って
「でも、実際にどんな感じになるのかねぇ、お客さんって」
「んー、まぁ、何にしても集まり次第だねー」
 呑気な会話をしているし執事見習いな保上明征と、屋敷の主人の様子をしているのは中務佐平次です。
 そこは洋館なお屋敷、あれだこれだ二人が話していると、そこに現れたのは野乃宮・涼霞(ia0176)です。
「おお、良く来て下さった‥‥もとい、下されました」
「ふふ、なかなかお似合いですわね、素敵ですわ、保上様」
「え? あ、いや、まぁ‥‥」
 涼霞は豪奢でいて、そして清楚な白のドレスに身を包んだ令嬢の様子で、羽扇子で口元を押さえて笑いながらそんなことを言うのに、ちょっぴり挙動不審な明征、佐平次はにこやかに口を開きます。
「いらっしゃい、ようこそ、僕の屋敷っぽいところへ!」
「中務様も、宜しくお願い致しますね」
 笑みを浮かべると、来館名簿にさらさらと書き記す涼霞、明征が鞄を持って付いて行くと、部屋の入口、立派な客室までやって来て、部屋の鍵を渡し、マスターキーは保管してあると説明、カバンを部屋に運び入れてから広間へと戻ります。
「ああ、明征丁度良かった」
「料理人の応募だな、こちらへ‥‥」
 礼野 真夢紀(ia1144)の姿を見れば、そう言って着いてくるように明征は言うと、真夢紀はちょこちょこと着いていきそのまま食堂へ。
「結構広くて立派ですねぇ」
「一応こちらが正規の食堂で、直ぐそこの扉から真っ直ぐに、厨房がある、が、まぁ、人数を考えれば、厨房の直ぐ側にある小食堂でも十分に事足りるかもしれんな」
「お客さんは何人ぐらいですか?」
「客は、4人と、主人役の佐平次で、5人。賄いが必要なのが君と、後メイドと、私、ぐらいかな。ただ、まぁ‥‥」
「迷い込んでくる人がいるのが、ミステリーのお約束ですよねぇ」
「まぁ、死体役も居る事だし、定数でも足りるだろうから、その数で良いんじゃないか?」
 ちょっとぶっちゃけ話が過ぎるようですが、真夢紀と明征の食事の打ち合わせは取り敢えず済んだよう、配膳などの打ち合わせは、と明征が何やら受話器を取って内線へ連絡すると、それを取ったのは、使用人室でのんびりとしていたアムルタート(ib6632)へ。
「済まないが、これから料理人を厨房へと案内するので、そちらで合流して配膳などの打ち合わせを頼む」
 伝えてから真夢紀を厨房へと案内する明征、確かに厨房の直ぐ側に小食堂があり、そちらの方でもお客が食事を取るには十分の広さ、そして客室から近いという利点もありそうで。
「配膳とかお願いしますね、あたし来たばかりですので‥‥」
「設定的には数ヶ月前から居るメイドのアムさんなのだ♪ 任せて任せて〜」
 取り敢えずは女性同士任せておけばいいか、と、何かあったら呼ぶように伝えて出て行く明征を尻目に、小食堂へと行ってあれこれと打ち合わせている2人、ふと窓の外を見ると、空は生憎というかお約束の雨模様。
「嵐がきそうですねぇ‥‥新鮮なものがお出し出来ないのは残念ですがおもてなしの心で頑張りましょう」
「まぁ、気楽に、何事もノリと勢いで何とかなるよ〜♪」
 そう言いつつも、アムルタートの目は一瞬きらりと嵐の空を見て光るのでした。
「あぁ、執事さん」
「何で御座いましょうか?」
「紅茶を頂けないかな? 広間の脇の、あの応接室で、のんびりとしようかと思ってね。あぁ、貴女もいかがか?」
「あら、素敵ですね、では私も頂きましょう」
 広間で明征を掴まえたのはからす(ia6525)、豪奢な黒のドレスで微笑みながら、丁度荷を開いて階段を下りてきた涼霞へもそう誘い、2人揃って応接室のソファーへと向き合って腰を下ろします。
 直ぐに明征が紅茶を運んでやってくるのに、涼霞は微笑を浮かべて。
「折角ですから、御給仕して頂こうかしら?」
「無論です」
 慣れた手つきで紅茶を給仕する明征、元々人の下に仕えたりしている為自然と憶えたとの談で。
 からすと涼霞が薄焼きのクッキーをお皿から手に取ったところで玄関のベルが鳴り、直ぐに明征が向かえば、招待状をカバンからごそごそと取り出してきたルンルン・パムポップン(ib0234)の姿があります。
「何だか知らないけれど招待されたから来たよ! 謎は全てもごもご‥‥」
「‥‥いえ、まだ何も起こってませんというか、取り敢えず、それ以上は不味い」
「あ、まぁ、取り敢えず、はい、招待状」
「承ります」
 言って来客名簿に記帳をお願いすれば、取り敢えず既に来客している人間の名前を確認するルンルン。
「えぇと、からすさんと、にとろ(ib7839)さん、それに野乃宮さんと‥‥招待状を受け取ってきたって設定の人が、私も含めて4人で、こっちの使用人で来ているのが、礼野さんとアムルタートさんですねー」
 そこまで言ったところで、かっと雷が轟き、うひゃぁ、と扉を開けて飛び込んでくる人影。
「わぁ、突然の雷で吃驚した〜」
 演技なのか、本人がおっとりしているのか、和奏(ia8807)は飛び込んできているにも拘わらず、開けた扉の所に立ってふぅと一息吐いているのを見て、慌てて中に入るように言う明征。
「こちらのタオルをお使い下さい。‥‥というか、そこにいたら吹き込んで濡れて、結局外と代わらないですから!」
 あわあわと言われた通りに中へ入ってきて、タオルでわしわし拭かれると、助かりました―とのんびり笑う和奏。
「君、そんなところでは寒いだろう、こちらでお茶でも飲んで暖まると良い」
「そうですね、こちらへどうぞ」
「あ、私も御茶お呼ばれします〜」
 一気に賑やかになる広めの応接間、人が集まり始めた頃にはまだお昼過ぎであったのに、既に嵐のせいでか日もとっぷりと暮れて。
 その後、食事もにとろが部屋で取るといって運ばせた以外普通に済み、楽しげな談笑があり、1日目は終わるのでした。

●悲劇というか喜劇というか
 事件が発覚したのは、次の日の朝。
「あいつ、もとい旦那様は寝坊が過ぎる故‥‥」
 その一言で、にとろだけでなく佐平次も不在の朝食の席も、普通に済んで。
「折角、朝食も季節の食材に拘ったんですけれど‥‥」
 食べて頂けないのは残念です、と言う真夢紀。
「でも、お腹が空いてないでしょうか?」
「まぁ、食事抜きは流石に憐れ、もう一度呼びに行ってみるか‥‥」
「洋館に嵐、起きてこない館の主人‥‥」
 涼霞が心配そうに言い明征も頷けば、くすっと笑みを浮かべて言うからすに、何とも言えない表情を浮かべる一行。
「‥‥あぁ、よっぽどお寝坊さんなんですねぇ‥‥」
「いや、そっちじゃないと」
 一応、朝食も終わったし全員で見に行ってみるか、とぞろぞろと動く辺りはお約束、ちょっと立派な感じの扉を明征がノックするも、出て来る気配は当然なく。
「マスターキーがありましたよね?」
「執事室に保管してある、基本あそこは鍵がかかってないからなぁ‥‥直ぐに取ってこよう」
 そして、マスターキーを取りに1人走るのも基本。
「‥‥開けるぞ‥‥」
 急ぎ戻った明征が鍵を開ければ、そこにはあるイミ衝撃的というか、何とも言えない光景が。
 残された赤い文字『なんでなんだぜ』が床に書かれているも、なんでか転がり回った様子の佐平次と、辺りに幾つか散らばっているメモ帳、そして、一枚のカード。
 メモには『いたいんだぜ』『やめてくれだぜ』『マジ勘弁して下さい』等書かれていて、転がり回った佐平次を覗き込んでみると、何やら鞭でシバかれたらしい痕跡があります。
 発見時には悲鳴を上げよう、と心密かに思っていた涼霞ではありますが、ちょっと、言葉に困る光景にちょっと困っていて。
「えー‥‥想定外の事態が起こってしまい、予想以上のどうして良いのか分からない大惨事になっているので、取り敢えず、状況確認の為、死体に起きて貰いましょう」
 言って佐平次を突き起こす明征、確認すれば、メモは死んだ後に自分で書いてばらまいたと言うことが判明、メモ帳だけを改修して、元の状態に戻って貰って、推理再開です。
「で、だ‥‥何だこの巫山戯た、『なぜなんだぜ』は」
「いや、本当にそうとしか書きようが無かったのよ」
 テープで倒れたところを形を取ってから、漸くに起き上がった佐平次は何だかちょっとずたぼろで、真夢紀が用意してくれた、栗と山菜のおこわお握りをもぐもぐと食べつつ答えて。
「はっ、ここは私の出番です! ルンルン忍法に解けない謎は、無いんだからっ! ニンジャと家政婦には、すべてお見通しなのです」
「うーん‥‥納得できるような納得できないような複雑な気分です‥‥」
 この場合メイドさんが家政婦になるのでしょうか、と頬に手を当てて言う涼霞、呼んだー? と後ろからアムルタートが入ってくると、和奏ははっとした顔になって。
「うわぁあ、死んでるー?」
「‥‥と、取り敢えず、もう一人の出て来ない人間の確認だ」
 そこで明征と使用人の枠なのでと真夢紀でにとろの部屋にやってきていくドアをノック、すると、当人は内側から鍵を開けて、大欠伸で。
「寝てた‥‥」
「ずぅっと、一人で?」
「御飯は食べた‥‥」
 言って、寝る、とばたんと扉を閉めてしまうにとろに困惑気味の二人は、向こうは一人で寝ていたらしいと話して。
「殺人事件とダイビングメッセージの謎に、ニンジャ探偵ルンルンが挑み、すべての謎を解き明かしちゃいます!」
「いや、ダイイング‥‥」
「‥‥ええっ、解き明かせちゃうの?」
 残っていた一同の方は、どうにも大混乱だったようで。
「『しらべる→ボスのかお→たたく』閃いちゃいました、争った跡もなく一撃、犯人は顔見知り、メッセージからもその驚きが読み取れて花丸です‥‥つまり犯人は、ヤスです!」
「いや、ヤス居ないから」
「でも、ここに招待された人達に特に共通点なんて有りませんよね」
「強いて言うなら、ミステリーナイト、と謳っていたのを置いて考えると、家に遊びに来ない? と無差別に呼んだことになる形だからな」
 因みに顔見知り、って言われてしまうと私とメイドのアムルタートとなってしまうが、と明征が言えば。
「最後にどの時点で生きているのが確認されたんだろう‥‥」
「‥‥そういえば、部屋に起きろコールを掛けたときに、あと5分と言って切った、あれは、殺される前か、後か?」
「あー‥‥あれは殺される前だねー。メモとかのせいで、紛らわしくしちゃってごめーん」
 何処までを証拠や証言にして良いのかを確認してから、時系列を確認していく一同。
「‥‥起きろコールは? 一緒に誰かいましたか?」
「そもそも、やってこないからと小食堂の電話から内線で確認しているだろう」
「スピーカーでしたねぇ」
「‥‥え、は、犯人捜し? 自分じゃないよ?」
 ルンルンの確認に明征が答え、真夢紀と涼霞がそれを肯定して。
 そして何故か、タイミングがずれてあわあわとする和奏、其の辺りがちょっとルンルンが混乱する元でもあって。
「で、もう一人の人は‥‥」
「‥‥寝ていた、ねぇ‥‥ところで、食事のときって、誰が居なかったかな?」
 すうと薄く笑って言うからす、一同の視線はアムルタートに。
「朝食は運ばれては来たものの、それ以降の御給仕は、全て保上様がやっていましたね」
 そう言いながらも、でも、メイドさんに殺されたなら、それっぽいこと書かないだろうか、と話になって。
「さて、どうかなー?」
 にと笑って言うアムルタートですが、からすは薄く笑ったまま、口を開いてぼそりと。
「取り敢えず、死因は刺殺‥‥だと、その鞭の痕は何だろうねぇ‥‥」
「‥‥ええ、そういう趣味が?」
「無いよっ!」
 1テンポずれた驚きの和奏の言葉に、流石に自身の名誉の為か慌てて口を挟む佐平次。
「でも、さっきから何だか知っているかのような話し方をしますね」
「私が犯人とでも‥‥?」
「いえ、そういうわけでは‥‥」
 小さく首を傾げてからすに言う涼霞は、からすがにやりと笑って言われる言葉に慌てて首を振ります。
「あぁあ!」
 ふっと、何かが閃いたかのように声を上げるルンルン。
「分かっちゃいました! 私、わかっちゃいました!」
 その言葉に、一同の視線はルンルンへと集中するのでした。

●推理の場所で
「刺殺の後で、鞭を打たれた、これは、二人の人間の手が入っていることを示しています」
 言ってから、一度頭の中でルンルンは自分の発言を確認しているようで、頷いて。
「で、アムルタートさんは、死んだ後に細工したんですね」
「お見事だね〜♪ 私、今回は殺してないよ。別の人が殺した場面を見て、現場に細工したただけ〜」
 ここでちょっと回想シーン。
 アムルタートは給仕の為に食事が運び終わると、急ぎ自身の部屋に戻り鞭とカード、そして適当に持ち込んでいた小さなナイフを佐平次の部屋の側に隠して、執事室へ。
 そこで保管されているマスターキーを手にやって来て、獲物を回収して部屋へ。
 そこに佐平次が『なぜなんだぜ』と書いて倒れているのを見て、自身の犯行に見せる為に、ていていと鞭を打ち、痛い痛いとあわあわ転がる佐平次。
「あとは、カードを残して、依頼主に『ターゲット死んだよ。依頼料ヨロ♪』と電話したアムルタートさんなのだ♪」
 えっへんと胸を張るアムルタート、暗殺者の設定だったのねーと、ミステリーナイトなので、ざざっと引かれることはなく話が進むと、ルンルンに視線はまた戻って。
「で、メイドさんだったら他に何か別のことを考える、と言うことでアムさんを除いたら、ずーっと部屋に籠もっていたにとろさんしかいません!」
「え‥‥でも、状況は確かにそうですけれど‥‥他にいないのも確かですけれど、何故?」
 涼霞が小さく首を傾げれば、そこなんですが、と言って口を開くルンルン。
「『特に理由はない』んですよ。だから、佐平次さんも理由が分からないから、『なぜなんだぜ』ってなったんです」
「完全にありえない事柄を除けば、それがどんなにありえないことのように思えても、人知の及ばない宇宙的恐怖存在はいるって、かの有名なHP・愛工作先生も言ってるんだからっ!」
 人知が及ばないところは、それは推理のしようがないのでは、そう思ってもそっと心に秘めておく涼霞なのでした。

●終わり良ければ? 
「動機がないと、何で、って思ってしまいますよねぇ」
 言いながらも微笑む涼霞、推理の終わったその場所で、一同は明征とアムルタートの給仕で、真夢紀のお持てなし料理に舌鼓を打っていました。
「うーん、迷い込んだ旅行者、で怪しさを出すのって、結構難しいんですねぇ」
「いや、ダイニングメッセージが有れだったから分かったんですよー、そうじゃなければ色々と‥‥」
「ダイイングメッセージね」
 和奏が考えるようにして言えば、えへへ、と笑って言うルンルン、間違いをさりげなく訂正するのはからすで。
「連続殺人とかが起きていたなら、もっと怪しく見せられたかも知れないな」
 推理が終わる頃にはいきなり姿が消えていたからす、どうやら終わった後の食事と言うことでまたちょっと出てきて貰ったよう。
「厨房とかで事件が起きなくて良かったです、どんどん食べて下さいね〜」
 新鮮な食材も入ったし、と言いながらも、やはり栗や山菜などが多い、洋館に不思議な和風の料理の数々。
「結局、犯人役の方は‥‥」
「先程お食事用のカートに乗せて、お渡ししてきましたー」
 そんな涼霞と真夢紀の会話を耳にしながら。
「次は、明征が死体役をやれば良いんだ」
「それは私に屍に鞭を打たれろと言うのか?」
 佐平次と明征の微妙にぼやきとも取れる会話。
 反省会という名のお食事会は、今暫くの間続くのでした。