奪われた荷・後
マスター名:想夢 公司
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 難しい
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/11/23 19:39



■オープニング本文

 上空から確認をしたりして、賊の根城が判別しました。
 それでも、保上明征の表情があまり浮かないのは、何か引っかかることでもあるのか、暫く渋い顔をしたままで居るも、お茶を勧めつつ心配そうに見ている利諒に緩く息を吐くと口を開きます。
「街道から外れた森の中の、廃墟を根城にしている者達の捕縛の手伝いを頼みたい」
 言葉少なに言う明征、状況をどう説明するか悩んでいるようで、暫く頭の中で整理すると、改めて口を開きます。
「現状は、気味の悪いぐらい動く気配はない、強いて言えば、町に来た男が酒や食べ物を買って戻るぐらいではあるが‥‥」
「気に掛かるんですね?」
「ああ、直ぐにも事が起きそうな、嫌な空気を感じる。どうも、町へと降りる男は、周囲の宿場の詳細を調べているのではないかと思ってな」
 そう言って眉を寄せる明征は、大凡、外から分かる範囲での詳細を説明するも、中に引き籠もっている者が居れば、人数が幾人かと言い切れないと深く息をつきます。
「ちなみに、周囲の幾つかの廃墟は、普通に獣が住んでいたりする程度で、今のところは他の廃墟を使っている様子はなかった。ものによっては抜け道などもあろうが、他の廃墟と繋がっている様子もない」
 ただ一月以上籠もっている賊達の廃墟に、抜け道などがあったかどうかは、そういったものは大概図面に記されていないため確認出来なかった、と言って。
「綾麗の荷物は恐らくまだどこにも流れていなかろうが、一度見失えばどうなる事やら‥‥肝心の綾麗の記憶が戻る様子もないため、物が確認出来ぬのが少々痛いところだそれに‥‥」
「それに?」
「恐らく、今これだけ動きがないのは、逆に、大きな動きを起こす前なのではないかと思えば‥‥」
「あ‥‥街道沿いの、集落や町が危険な可能性があるわけですね」
 利諒が言うのに頷くと、なんとしてもそれは止めねば、と苦く呟くように言う明征。
 明征の言葉に頷くと、利諒は依頼書へと筆を走らせるのでした。


■参加者一覧
野乃宮・涼霞(ia0176
23歳・女・巫
羅喉丸(ia0347
22歳・男・泰
焔 龍牙(ia0904
25歳・男・サ
紅 舞華(ia9612
24歳・女・シ
ニクス・ソル(ib0444
21歳・男・騎
リーゼロッテ・ヴェルト(ib5386
14歳・女・陰


■リプレイ本文

●見張りと偵察の男
「何か、身の回りのものを借りられないだろうか?」
「身の回りのもの、ですか?」
 紅 舞華(ia9612)の言葉に一瞬戸惑った様子の綾麗は、舞華の傍らで、わふぅと小さく鳴いて見上げる舞華の愛犬・忍犬の潮を見てあぁ、と理解をしたようで頷いて。
「すみません、その、これ位しかなくて‥‥」
 そういった綾麗が差し出すのは髪を束ねていた色紐の予備、早速潮君の尻尾がぶんぶか振られると、色紐をぱっくり咥えて庭を逃走、あわあわとするような場面もあります。
「記憶が戻ると良いな」
「ぁ‥‥そう、ですね‥‥」
 そうにっと笑って言う羅喉丸(ia0347)の言葉に僅かに表情が曇った綾麗は、本当に記憶が戻るのだろうかという不安が見て取れ、その様子に少し眉を寄せてから綾麗の顔を覗き込むのは人妖の蓮華。
「何を不安そうな顔をして居る、羅喉丸の師匠であるこの妾に任せておけば良い」
 えっへん、そんな感じに胸を張って言う蓮華と目があってちょっと吃驚した綾麗は、蓮華の姿が泰国風なことも合って、記憶が無く異国で一人ぽつっとしていたためちょっぴり親近感を感じたか、それとも勢いに押されたか、思わずハイと答えてみたりしています。
「記憶喪失、ねぇ‥‥まぁ気長にやればいいんじゃないかしら」
「しかし奪われた荷か‥‥それ自体は当然取り替えさねばならないが、果たして中身はなんだろうな‥‥?」
 リーゼロッテ・ヴェルト(ib5386)が愛犬であるアルベドの毛並みを調えながらの言葉に、記憶を失って初めて言われたそれに驚いた様子の綾麗は、ニクス(ib0444)が考える様子を見せながら言うのに我に返ります。
「中身が思い出せないのが歯痒いのですが‥‥これ程の私の国の刺繍で飾られた布に包んであったもので‥‥」
 最後に奪われた時の記憶を頼りに手で現してみると、なんとなく蓮華と顔を見合わせる羅喉丸。
「違ったらあれだが‥‥篭手、じゃないのか?」
「妾もそう思うが‥‥」
 同じ泰拳士として考えての発言、ずきりと小さく頭が痛むか額に手を当てる綾麗、その様子に焦らなくて良いだろうと笑ってから焔 龍牙(ia0904)が口を開き。
「何にしても綾麗の荷物を奪った礼はしないと」
「綾麗ちゃんは、まずきちんと身体を落ち着けて、怪我を完全に治さなければ‥‥ね?」
 穏やかな微笑みで野乃宮・涼霞(ia0176)も言うのに、綾麗は改めてお願いします、と頭を下げるのでした。
「そうか、屋敷に寄って様子を見て来てくれたか」
「はい‥‥」
 街道の保上明征が拠点として身を寄せている所へと集まりその報告を受ければ、一瞬一同、明征の屋敷がちょっと色々な意味合いで様変わりしていることについては触れない方が止さそうと判断したか、綾麗や屋敷の者たちの様子だけを報告していました。
「どんな様子なのかしら?」
「奴らも、追い剥ぎから押し込みに変わる初仕事には慎重らしいな、流石に」
 リーゼロッテの言葉に答えつつお陰で助かっているが、と微苦笑気味に漏らす明征、今のところ街に男が一人出て来ること、いくつかの御店に馴染みつつあること、森の方も何とか様子を見て遠目に確認してきたが変わりがないことを伝えて。
「幾つか周囲に気になる点が‥‥」
「‥‥この辺りを確認して‥‥」
「この頭の辺りはどうなっているのじゃ?」
「頭にのらんで頂きたい‥‥枯れた巨木の跡が‥‥」
 地図を前にあぁでもないこうでもないと状況を確認していれば、大凡表から見える人員の配置などの大きな変更もないようで。
「殆どが廃墟の入口付近を出たり入ったり入れ替わり立ち替わりと言った感じだったが‥‥」
「この見張り台に常にいる一人は、他の者たちと混ざる様子は無いと」
「潜入前に、内情をもう少し調べておきたいところだな」
 顔を付き合わせて
「今のところまでの判断ですけれど‥‥迷った振りをしてお酒を持って近付けば、内情が分かるのではないでしょうか? 私みたいに女でしたら油断するかも知れませんし‥‥」
「囮は反対だ。確かに酒などに釣られそうな奴らであるのは分かるが、危険すぎる」
 珍しく押し殺しつつも不機嫌そうな様子で言う明征は、少しばつが悪かったか配下と確認を取りに階下へ降りる明征、少し戸惑った様子でそれを見送るのは、提案をした涼霞。
「兎も角、まずは周囲の探索と。抜け道があっては困るし」
「それに、街に出てきている男の捕縛」
「情報って大事よね♪」
 羅喉丸が言えば探索地点をていていと指し示す蓮華、舞華が言えばリーゼロッテがちょっぴり怖い笑顔を見せて。
「どちらにしろ、踏み込むのに、見張りを押さえねばならんので、そちらの対処と」
「その後に突入、抜け道があっても探索時に分かってさえいれば、そちらを押さえてしまえば袋の鼠だからな」
 焔が言うのにニクスも、恐らく抜けられるような場所はこの辺りまでだろうと確認を取っていきます。
「‥‥あの、保上様‥‥?」
 方針が決まったところで、下に降りれば少し厳しい顔で考え込んでいる様子の明征に歩み寄る涼霞。
「‥‥私は、あまり荒事に向いては居ませんが‥‥お手伝いが、したいと思って‥‥」
 そう言って、明征の後ろからその背を見つつ言う涼霞。
 暫くの沈黙の後、振り返らぬままに。
「‥‥相手の戦力が分からん以上‥‥大事があっては一生悔やんでも悔やみきれん‥‥」
「‥‥突入の手筈が整ってから、あくまで陽動の範囲で、ですから‥‥」
 涼霞の言葉に少しして、深く息を吐くと振り返って口を開く明征。
「信頼していないわけではないが‥‥呉々も、気を付けるよう」
 明征の言葉に、涼霞は微かに笑んで頷くのでした。

●探索と捕縛
 夜の闇に紛れて、廃墟へと近付くのは舞華とその愛犬の潮君、周囲の探索と共に、街へと降りる男の行動範囲から、街へ行き来する以外の場所の罠などを敢えて確認している様子はなく、幾つか既に舞華は撤去していて。
「潮、決して見つからぬように注意だ」
 綾麗の前でやんちゃをしていた時とは打って変わって、黙って舞華の足に華を擦りつけてから、地をふんふんと鼻をひくつかせる潮は、じっと耳を澄ませて探索をする舞華と共に廃墟へと歩み寄っていって。
「‥‥」
 声を殺して聞いていれば、数人の男達がまだ酒を飲みつつ日の晩をしている者は居るようではありますが、殆どが鼾を掻いているようで。
「油断しきっていて、見つかっている可能性は露共も思っていないようだ‥‥」
 もっとも、追い剥ぎが出た、と言う情報は待ちに入っていても、今自分たちへと繋がっては来ないと踏んだよう、更に舞華は耳を澄ませます。
 と、それに混じって聞こえてくるのは、どうやら見張り台の声、所謂ぼやきのようなもので。
「‥‥なるほど」
 小さく呟くと舞華は、潮君と共に一度少し離れたところに待機している仲間の元へと戻ります。
「‥‥匂いからしても、砦より持ち出されている様子は無い、と言うことだな」
 どうやら潮君の調べた範囲では正面から持ち出したのでなければ、廃墟の中にあるのではないかと思われて。
「気を付けなけりゃいけないのは、見張り台と、街へ降りている男ぐらいか‥‥」
「それなんだが‥‥見張り台の男、ちょっと様子が違っているようだ」
「‥‥どういうことかしら?」
 話を聞いて考える様子を見せる羅喉丸ですが、それに対し舞華が言うのにリーゼロッテも目を向けます。
「あの時此奴等に関わらなければ、とぼやいていたのが聞こえた」
「それ以外の人数は? 大凡で良いのだが」
「恐らく、表の辺りと中に入って直ぐとをうろうろして居る連中は6人だと思う。それに、奥に一人‥‥」
「後は見張りとシノビらしき男がそれぞれ一人と‥‥」
 焔とニクスが確認するのに舞華が答えれば、突入前に幾つか確認をしないとと言う話になり、一同は改めて廃墟へと目を向けるのでした。
「さて‥‥」
 リーゼロッテが符を手に意識を集中始めれば、符はするりと鼠の姿を取り枯れ木の御樹にある、隠されたように草で覆われた空洞の大きな穴へと入り込んでいきます。
 同じ頃、舞華は改めて涸れ井戸を確認しており、下に降りていく梯子が見え辛い位置にあるのを確認してから、奥へと進むと、そこにあったのはがっちりと閉じられた大きな箱で、鍵がかかっているもののあまり頑丈ではなく開けて中身を見て。
「ここに隠したのは、あの賊たちか、それとも‥‥?」
 盗品だろうかと考える様子を見せると、舞華は見つけた物を伝える為に井戸の中を戻り外へと出るのでした。
「‥‥あれが、部屋に通じているみたいだけれど‥‥多分、距離から見ても、廃墟の中よね」
 小さく呟くリーゼロッテ、人魂を使い調べたそれは、奥の方に微かに光の漏れる隙間があり、つまり今、灯りを付けている部屋がその壁の向こう側にあると言うことで。
「取っ手もあるし、多分、こちらからもあちらからも行き来が出来るみたい‥‥」
 時折遮られる灯りに、向こう側に人が居るのだろうと判断して術を解くリーゼロッテ、その言葉を傍らで聞いていた涼霞がそれを絵図へと記し、涸れた井戸と巨木の幹から井戸までの距離を考えると小さく首を傾げます。
「なるほど、旨くやれば挟み撃ちにするなり、逃げ道を塞ぐなりできるな」
 にと薄く笑うと、焔は傍らの迅鷹の汪牙ににと笑うのでした。

●強襲
 昼、街に向かう男が、森を音も無くするすると進めば、その最中、ぴたりと足が止まって。
「‥‥何だ、てめぇらは‥‥」
 男がぎと睨み付ける先にいるのは、羅喉丸、そして男の背後を取るのはニクスと少し距離を置いたリーゼロッテ、心眼が見通す範囲には、男と接触するようなものの気配はなく。
「‥‥ナンだって聞いてんだよ」
「情報って、大事よね♪」
「‥‥くっ!」
 咄嗟に身を捻り何かを素早く繰り出す男ですが、羅喉丸がそれを拳で軽く払いのけると、次の瞬間には一歩踏み出していた羅喉丸に組み付かれれば、締め落とされ崩れ落ちる男。
 半刻程後、廃墟の側でからからと音が鳴り、男達が飛び出してきました。
 そこに立っていたのは涼霞、迷い込んだ様子の女性の姿で飛び出してきた男達に戸惑った様子を見せています。
「あ、あの‥‥ここは‥‥」
「何だ女、何故ここに来た」
「ここを知られたんじゃ放っておけねぇなぁ?」
 にたりと嫌な笑いを浮かべて歩み寄る男もいますが、見張り台の男は弓を番えてぴたりと狙いを定めながら周囲へと意識を向け、はっと弾かれたように周囲へと素早く目を走らせ。
「手が回ったか‥‥っ」
 呟くのと、涼霞を守るように甲龍の櫻嵐が舞い降りるのはほぼ同時、放たれた矢をその身体で簡単に弾き飛ばすと、櫻嵐に掴まる涼霞ごとその身体は空に舞い、見張り台へと。
「役人か開拓者か‥‥割りが悪すぎる」
 顔を顰めると櫻嵐を見つつ刀に手をかける男ですが。
「待って下さい」
 涼霞が口を開き告げる言葉に、男は目を見開くのでした。
「さぁアル、行くわよ。成功したらご褒美あげる♪」
「ぐるるぅ‥‥」
 リーゼロッテの言葉にその足元で彼女を守るようにして僅かに土を前足で掻くアルベド、にと笑みを浮かべるとその手の中には閃光が煌めいて。
「何なんだ、コイツ等‥‥」
 突如弾き飛ばされた男がぱったりと者も言わずに崩れ落ちるのに、刀を抜き放ち目の前の羅喉丸へと向かって行く2人の男、ですが。
 どん、と重い音と共に壁に吹き飛ばされひくひくと震える男、目の前にいた男が吹き飛んだことにより、続いていた男達は言葉を無くし、踏み留まって。
「ち、畜生おぉおぉぉっ!」
「距離があるな、汪牙!」
 羅喉丸から逃れようとするかのように掛けだした男は森の中へと飛び込みますが、次の瞬間、汪牙が光ると焔の背に重なると同時、男が廃墟を離れるより先に横を摺り抜けて回り込み、構えてみせるのは魔槍砲。
「逃げ道はすべて塞いでいる。逃げ場はないぞ!」
 向けられる魔槍砲のその姿に、男は言葉もなくぽろりと刀を落とすのでした。
 上空で警戒待機していたニクス、駿竜のシックザールの背から注意深く警戒していたニクスの目に、廃墟の陰を利用してその場を離れようとしている姿が見受けられると、僅かに手綱を引くと、ぐんと急降下して。
「ちぃっ、龍かっ!?」
 言いながらも逃げようとする男を弓で足止めすると。
「そこまでだ」
 近付いてシックザールから飛び降りたニクス、勢いのままに刀を抜いた状態で飛び込んでくる男を抜き打ち様軽くいなしそのままねじ伏せるように剣の平で叩き伏せるのでした。
「ぐるる‥‥」
 そして、廃墟の中へと駆け込もうとしていた男より早く駆け抜けると、その刀を持った腕を狙い鋭く噛みつくアルベド、的確に、そして深々と牙を突き立てており、思わず刀を手から落とす男を、引き摺り倒すようにずりずりと噛みついたまま後ろへと引いて。
「一応、止めはさしちゃ駄目よ」
「うぅーっ!」
 男に噛みついたまま飼い主へと返答するアルベドは、男全てを括り終えると、もふもふとご褒美としてリーゼロッテに撫でられぎゅっと抱き締められるのに嬉しそうに尻尾を一生懸命振っているのでした。

●奪われた荷は
 廃墟裏側、枯れ木の洞より入って道を塞ぐようにして待ち受けていたのは舞華。
 外が俄に賑やかになると同時、少しの間がたがたと音がしたかと思えば、井戸の奥からひたひたと何かを抱えて出て来る小狡そうな男が一人。
「く‥‥早くあれらを持って逃げねぇと‥‥」
 余程余裕が無いのか大切そうに抱えている包み以外、灯りを持つ余裕も無しに出てきたようで、あっちでぶつかりこっちで蹴躓きながら出てきた男は、そこに人が立っているのに気が付いて、ひっと小さな悲鳴を上げて。
「な‥‥お、女、か? な、なぁ‥‥」
 何か確信を持てないように声を小さく掛けた男ですが、次の瞬間潮君がその足に噛みつき、舞華も一瞬にして距離を詰めると包みを取られへたり込みながらも、弱々しく包みへと手を伸ばす男。
「そ、それは、俺ンだ、返せぇ‥‥」
「呆れた男だ。ここから抜け出して、井戸の底に隠してある箱と共に潜んで、人が居なくなったら奪った金品を手に逃げるつもりだったんだな」
 涸れ井戸の奥で見つけた箱の中には、いくつかの金になりそうな金品。
 そして、枯れ木の洞に逃げてきたのは男ただ一人。
「お前達の奪ったものは、皆持ち主に返させて貰おう」
「いやだ、そいつは、その包みは俺ンだ‥‥」
「‥‥?」
 男の言葉に違和感を感じつつ、舞華は男を縛り上げると、包みの中身を確かめる為、木の洞から出て確かめると。
「っ‥‥」
 一瞬、物凄いその中身に対しての執着を憶えるも、小さく目を瞑って首を振り、改めて見れば、それは美しい細工の施された、随分と古い篭手の一揃いでした。
「何だったんだ、今の感覚は‥‥」
 小さく呟くも、綺麗に包みを戻すと、舞華は男を引き立てて一同の元へと戻るのでした。

●これから
「奪われた金品のうち、直ぐに使える金などは男達の食べ代飲み代になっていたようだな」
 保上明征の屋敷、戻って来た一同は状況の報告と確認を行っていました。
 屋敷の方も色々とあったようで、何やらあれだこれだと屋敷を直して居る様子に戻って来た明征が眩暈を覚えて少し庭の隅っこでいじけては居たようですが、それはそれ。
「綾麗ちゃん」
 そこへ屋敷で防衛していた一同と居て、僅かに表情が落ち着いた様子の綾麗に気が付くと声を掛ける涼霞。
「取り戻してきたのじゃ」
「無事に戻って良かったな!」
 蓮華がにと笑って綾麗に言えば、舞華から荷をそうっと受け取った綾麗に笑って言う焔、焔の肩では汪牙が穏やかな様子で羽根を調えており、ちらりとリーゼロッテはアルベドをもふりながら見ています。
「ぁ‥‥ありがとう、ございます‥‥」
 微かに震える声でそう礼を言えば、ニクスは軽く首を傾げて。
「元がどうだったか分からないからな。念の為賊に荷を何かされて居ないか確認すると良い」
 荷自体は、ものがまちがえていないか、見つけた物を念の為確認した一同皆、荷に対して引きつけられる感覚はあったものの、どうしても欲しい、とまでは行かなかったようで。
「‥‥そうです、これでした‥‥」
 その荷を解いて見ると、傷などを見ているようで手でひっくり返したりして確認すると頷く綾麗。
「これは、朧気にだけ、思い出せるのは‥‥祖父から、受け継いだものだったと言うことだけですが‥‥」
 何も思い出せない訳ではないと、これを見て分かりました、そう小さく言う綾麗。
「それが分かるなら、そのうちきっと思い出せる」
 そう言って羅喉丸が笑うのを、少し涙目ではありますが微笑んで頷く綾麗。
「金品で、直接盗まれた金に関してはどうにもならんが、ある程度見舞金と、あと荷の持ち主を捜して返還という形で動くことになった。悪質な追い剥ぎ行為などは、それなりに処罰していく事になる」
「見張りのあの方はどうなりますか?」
 そこにやってくる明征、責任を持って預けられた物は変換していくと告げる明征に、涼霞は少し気になっていたことを尋ねます。
 投降するようにと事情を告げていった涼霞に、少しだけ考えてから、刀を置いた男はそのまま投降しており。
「あの男は、多少の仕置きはあるが、暫く私が身柄を預かることとなった」
「そうですか‥‥」
 少しほっとしたように言う涼霞。
「身体も大分治りましたし、私も‥‥記憶はまだ戻りませんが、開拓者としてやり直しながら、少しずつやっていきたいと思います」
 そう言うと、改めて綾麗は一同へと礼を告げるのでした。