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■オープニング本文 「漸く、少しずつ木々の色が変わり始めてきましたねぇ……」 「つーか、もう秋か……」 開拓者ギルド受付の青年利諒と、その同僚で依頼調役の庄堂巌は、調べ物の合間、休憩中に御茶とお饅頭を積み上げたお皿を置いていて、ぼけーっと窓の外を眺めていました。 まだ早いけれどそろそろおこたが恋しくなってきますよね、と御茶を入れながら言う利諒、もきゅもきゅとお饅頭を囓りつつ、秋っつーと何だろうな、と首を傾げていて。 「あぁ、そういえば……」 「あん? どーした?」 「緑月屋の方で、雪が降る前、一旦空く期間があるらしいんですよ、客足が。その期間に、良ければ開拓者の皆さん如何ですかって、そんな風なことを言ってた気がするんですが……」 「へー、そいつは正式な形か?」 「いえ、ちらっと言っていた形なんで、女将さんのご厚意ですし、甘えた方が良いのかどうか、迷ってたんですよ」 「態々そういう風に話振ってくれてんだ、甘えておいて良いんじゃねぇか? 元々開拓者へは好意的な店なんだろう?」 「まぁ、余所余所しくお断りするよりは、好意に甘えてのんびりさせて貰えて、でもって開拓者をもっと身近に感じて貰えるんだったら、良いお話ですよねぇ、やっぱり」 じゃあ確認してみます、そう言って上着を引っかけて立ち上がる利諒、庄堂は温泉に酒で紅葉狩りと洒落込むかなぁ、と呟くと、入れて貰ったお茶を啜っているのでした。 |
■参加者一覧 / 野乃宮・涼霞(ia0176) / 礼野 真夢紀(ia1144) / 紅 舞華(ia9612) / 不破 颯(ib0495) / セシャト ウル(ib6670) |
■リプレイ本文 ●紅葉狩りに行こう 「しらさぎ、紅葉狩りに行きましょう」 「カリ? ……マユキ、モミジたべられません」 家でお留守番をしていたからくりのしらさぎに、開拓者ギルドでとあるお誘いの張り紙を見てから帰ってきた礼野 真夢紀(ia1144)が笑みを浮かべてそう言えば、しらさぎはかくりと首を傾げて。 不思議そうな様子のしらさぎを見て真夢紀はくすりと笑うと口を開きます。 「紅葉を見に行く事を『紅葉狩り』っていうのよ」 「ミカンガリ、キノコガリ、リンゴガリ……キクミ、ハナミ……モミジだけ『ガリ』?」 「……」 少し後、二人の姿は図書館にありました。 「あった、これね?」 そう言って手にした書物を開いてしらさぎと共に覗き込む真夢紀、狩りのことについてと色々な風習や娯楽について調べてみたようで、暫し頭の中でしらさぎへと説明する方法を確認する真夢紀。 「始めは、狩りは動物を捕まえる事。それから果物を採取する意味にも使われるようになって、草花を手に取って眺めた事から草花を眺める意味にもなったんですって」 「マユキ、クサバナ、つかまえる?」 「それもそうだけれど……違う話もあるみたい」 抜き出してきていた他の本を手に取ると、それをぺらぺらと捲って笑む真夢紀。 「物語の『紅葉狩』って話から広まったって説もあるそうよ……能はまだ見た事なかったっけ……」 「ノウ?」 「えぇと、この話では『紅葉見物』と同時に『紅葉』という鬼女を退治することを意味するからそれで『紅葉狩』って題になったそうだし」 歌舞伎とかでもあるみたいだけれど、そう言って面の絵が描かれた絵をしらさぎへと見せる真夢紀。 「モミジガリ、いく。モミジ、いる?」 「流石に、居ないと思う……」 そう言いながらも笑みを浮かべて真夢紀は言うのでした。 「もうすっかり秋だな、良い季節だ」 良く晴れた空、六色の谷にて散策路を歩きながら目を細めるのは紅 舞華(ia9612)、傍らには利諒と、そして朋友である忍犬の潮。 「そうですねぇ、実に清々しい秋の日です。潮君もそう思いますよね?」 「わうっ!」 嬉しげに尻尾を一杯振りながら利諒の言葉に元気良く答える潮の首を、舞華は軽くぽむぽむとしてやると、改めて眼前に見える色付く谷の木々へと目を向けます。 「山が赤や黄色に染まっている。良い眺めだな」 「燃えるような赤になるわけではありませんが、その混じり合った色合いが何とも言えませんよね」 流石に肌寒くなってきているので、あまり湖や川に水遊びに来る人は居ませんけれど、そう言って笑う利諒に微笑を向けていた舞華は、ふと何かを思いついたかのように悪戯っぽい笑みを浮かべ。 「利諒、競争してみるか」 「競争というと、早駆ですか?」 「いや、山を歩きつつ、秋の恵みをどれだけ探せるかと言うのをな。潮も参加するか?」 「わんっ!」 勿論、とばかりにしゃきーんと背筋を伸ばし、ぐっと胸を反らすと舞華と利諒を交互に見て元気良く答える潮は、どうやらやる気満々のよう。 「潮の分は啼いて知らせれば私が潮の分として取扱う。持ち帰れる分だけ取り、後で見せ合うと」 「面白そうですねぇ、是非」 穏やかな秋空の下、いそいそと散策路を上れば、途中河原と合流している地点へとやって来ており、そこから普通に森を通る道があり、そちらへと外れて森へと入ってく二人と一匹。 「わふっ! わんっ!」 道行きがてらに各々で木の陰や茂みの中、木々へと目を巡らせれば、早速何かを見つけたのは潮のようで。 「お、早速見つけたのはあけびか」 「実が甘いのは兎も角、この苦い皮がお酒の肴に良いんですよねぇ」 誇らしげに尻尾をぱたぱた振る潮に笑みを浮かべて撫でる舞華、早速潮用に分けた袋へそれを収めると、こんなのはどうでしょう、と小さくてまん丸のどんぐりを見つけて拾い上げて。 「つやつやしていて、ちょっと可愛らしいですよね」 利諒も袋へと収めてのんびり楽しげに話したりあちこち覗いたりと繰り返していれば。 「宜なるかな、と……」 そう笑いながら何かを収穫していた舞華が差し出せば、それは鮮やかな赤い実、それが三つ。 「わ、僕全然気が付かなかったですよ、むべがあったんですねぇ」 驚いた様子で目を瞬かせる利諒にくすりと笑うと、丁度そちらからは死角だったのかな、と、むべの木の場所を指せば、少ししてまた来たら他の実も食べ頃になりそうですね、と頷いて。 「あ、この辺りの匂いは……」 「くぅん」 「はは、潮にはちょっと匂いがきついか、人間でも大分強く感じる匂いだからな」 「黄金色の葉をつけた木と、その下で集める銀杏と」 「戻ったら茶碗蒸しでも作りますか……これ見ていたら、無性に何だか食べたくなりました」 「おや? 潮があそこで呼んでいる」 「あ、あの、潮君の前の木の根元……」 ついつい調理後のことを話し合っていれば、再び潮が二人を呼び、歩み取ったところで、木の根元に見える大きくて踊るような形の茸を見つけます。 「舞茸、ですか!?」 「わふっ!」 流石わんこと言いますか忍犬と言いますか、潮の袋がとっても素敵に膨らんだりしていて。 栗を見つけたと言っては袋へと収め、良く色付いた葉を見つけては、紅葉のその葉の形や混じり合った色を見せ合ったりと楽しげな様子で。 「こういった休日も良いものだな」 「本当に。こうして舞華さんとご一緒できるのが、本当に嬉しくって。あ、勿論、潮君もですよ」 「わんっ!」 やがて散策路へと戻ってきた二人と一匹、収穫物の袋を見比べたりはするものの、勝敗を付けるでもなく、楽しげな様子で順路に戻っていくのでした。 ●秋空の下の紅葉 「いやあ、紅葉に温泉とは、良い羽根伸ばしができそうだねぇ」 木々に囲まれ柵で区切られた露天風呂の中で、上機嫌に熱燗の乗った盥を石で出来た湯船の傍らに、ちびりちびりと楽しんで居るのは不破 颯(ib0495)。 そこは露天風呂が付いた個室の一室、部屋は広く日差しも入り明るいところで、この頃合い、日の光が鮮やかに映す茜色の葉を眺めてゆったり。 日頃の疲れもあるからか、肩に手を当ててくきくきと首を動かすと、空に目を向ければ雲一つない鮮やかな青が広がっていて、少々眩しい程です。 「うーん、しかし、この時期から冬にかけては、やっぱり熱燗だねぇと……旨い」 燗にすると香りがふわっと広がるお酒だったようで、それがまた紅葉の風情と合うと上機嫌で暫しの一時。 「……ふぃぃ、しかし、ちょっとばかり風呂が過ぎたかねぇ、手がふやけてる」 お酒も丁度なくなったところ、空になったお銚子が三本程転がった盥にお猪口を戻すと、立ち上がって軽く延びをして、浴衣を引っかけ部屋に入ると、不破は用意されている座椅子に深く身を沈めて一息ついて。 「たまにはこういう休日もありってことだねぇ……てか、この大福旨いなぁ……」 お酒をもう少しつけて貰うか、御茶でも飲むか、等と考えながらぱくついた大福がことのほか美味しかったようで思わず呟きながら、不破は夕食まで取り敢えずこのままで良いや、そんな風に口の中だけで呟くと、日がな秋の日紅葉を眺めているのでした。 「温泉って初めてだけど……ああもう、ずっとここ住みたい……」 感に堪えない様子のセシャト ウル(ib6670)は、広い露天風呂を借りきったようで、湯船の縁に組んだ腕を乗せて、そこにもたれ掛かるようにしながら幸せそうにお湯に浸かっていました。 「開拓者に好意的な宿だなんて良いところね……しかも、本来はとっても高級なお宿だとか……素敵ね♪」 値段がと言うわけではなく、部屋の作りや温泉の様子、調えられた庭やお風呂から見渡せる、調えられていない谷の鮮やかな紅葉を総じて、すっかりと良い心持ちになって居るようで。 「最近風が冷たくなってめっきり寒くなってきたなって思っていたから、もう、格別ね。それで身体に良くって美容に良い場合もあるなんて!」 お湯が血行を良くしてくれている感覚が分かるからか、うっとりと目を細めると、セシャトはくるりと体勢を入れ替えて肩まで湯船にゆったりと浸かり直して。 「猫はあまり水に入るのは好きじゃないと聞くし、黒豹のアヌビスだけど、意外とお風呂は好きなのよね、私」 しみじみと何やら納得している様子で一人頷くと、名残惜しげにお湯からざばっと上がると、浴衣を身につけ部屋へとぶらぶら戻りがてら、視界に広がるのは宿から見える谷の木々、鮮やかないくつもの色彩が、風にざぁと揺れていて。 「折角だし、誰かに紅葉狩りを教えて貰おうかな? 紅葉って、あれよね?」 見渡す視線の先には、広がる紅葉の山々。 「紅葉も不思議だけど、綺麗な景色ね。……でも、何を狩るのかしら? 獣? 鳥?」 秋の味覚なのかしら、などと呟きながら歩けば。 「あ、丁度良く物知りそうなお爺さんが居るわね」 そこに通りかかったのは伊住宗右衛門翁、丁度良いとばかりに歩み寄るセシャトは早速声を掛けることに。 「ちょっと宜しいでしょうか? お伺いしたいことが……」 「ほう、儂で分かることでしたら聞いて下され」 「紅葉狩り、というものに来たのですが、何を狩るのでしょうか?」 そう尋ねるセシャトに宗右衛門翁は笑みを浮かべると、窓辺へと手招きをして周囲を見渡して。 「こうして紅葉を眺めることも、山道を散策して紅葉を愛で、景色を愛で、宴会や食事も良いでしょうな、そうして、季節を楽しむことをいうものなのでしてな」 「そうでしたか」 言われる言葉に素直に頷くと、ふっと笑みを浮かべるセシャトは。 「折角ですから、一緒に紅葉狩りでも如何?」 「おお、それは良いのぅ」 そのお誘いに笑いながら宗右衛門翁も受けて、連れだってあれこれと楽しげに話しながら、紅葉狩りへと出かけて行くのでした。 「マユキ、ヤマが、アカイ」 連れだって出掛けてきた真夢紀としらさぎは、丁度宿の傍、散策路に幾つか点在している休憩用の椅子に腰を掛けて柵の向こうに広がる谷の景色を眺めていました。 心地良い景色を眺めながら、真夢紀お手製のお菓子を食べ、御茶を飲みのんびりして居れば、そこに通りかかるセシャトと宗右衛門翁。 「今日は」 「おお、これはこれは……楽しまれてますかの」 「はい、のんびりして居ます」 あとで如何ですか、そんな風にお茶菓子をお裾分けしたりして、山を登っていくセシャトと宗右衛門翁を見送ると、ほうと息を付いて改めて景色を見ると、しらさぎへと口を開く真夢紀。 「あとで、緑月屋さんの方で、のんびりとしようね」 こくりと頷いてから、山の色が変わっていることに不思議そうな表情で眺めているしらさぎに、真夢紀は微笑を浮かべて見守っているのでした。 ●山燃ゆる秋 宿の庭に面した部屋で、野乃宮・涼霞(ia0176)は保上明征とそこから見える景色を眺めていました。 「今年も見事な紅葉の季節となりましたね」 「ああ、天気も良いし、こうしていると、本当に穏やかな心持ちになれる」 「……でも、不思議なものですね」 「何がだ?」 「こうして、明征様と過ごす事が自然なようになったことです」 不思議という言葉にそう聞き返した明征は、続いた言葉に確かにな、と小さく笑い頷きます。 縁側に座って寄り添いながら眺める景色、それを楽しみながら笑みを浮かべて続ける涼霞。 「そういえば、紅葉の紅は明征様が時折見せる情熱的な所を思い起こさせます。凄くどきっと驚かされるのですよ」 「そう、か?」 情熱的と言われ自分はそうだろうか、と少し不思議に思ったのか首を傾げる明征に、あの時のような、と切っ掛けとなった頃のことを指して囁かれれば、ちょっとだけ気不味そうに口元に拳を置いて小さく咳払いをして。 「あの時、不機嫌そうだったのそれが理由だったのですね。そうとは知らず、私は……開拓者として危険な事も多い身ですが、ご心配かけないよう気をつけます」 「役目とは、分かって居るのだがな、どうにもあの時は万が一があればと、そればかり考えてしまった」 当時を思い出すようにじっと紅葉を眺めて言う明征に、涼霞は何処か嬉しげな笑みを浮かべています。 「そういえば……私が明征様への気持ちを自覚致したのは芍薬を一緒に拝見した時でしょうか。殿方と歩く事などありませんでしたが、本当に穏やかで幸せな気持ちになりました」 前に聞かれたときにはぐらかしていたことを微笑んで告げれば、傍らの涼霞をぎゅっと抱き寄せながら聞く明征、ほんのりと頬を染めながらも笑みを浮かべて涼霞は口を開いて続けて。 「それまではお務めに懸命すぎて己の身を省みない所が心配でずっと気になっておりましたけどね。風邪で寝込まれた時は本当に心配もし、怒りましたよ」 「か、風邪の場合は不可抗力だ」 それに付いては触れてくれるな、そんな風に言う明征に、涼霞はくすくすと笑うと幸せそうに明征を見上げて笑いかけるのでした。 ●篝火に浮かぶ赤 「なんとも、えらく妖しい様子だなぁ、桜程、とは行かないけれど」 夕食を頂いてから、のんびりと宿の庭へと出てみた不破は、そんな風に呟きながらぶらりと歩くも、その不破自身が身につけている着物も鮮やかな橙を篝火で照らされていて。 そろそろこの時期になれば、日が落ちた後の急な冷え具合にほんの少しだけ吐く息も白っぽくなっています。 「ふふ、そんな夜の紅葉も良いもんだなぁ」 少し行けば篝火ではなく月明かりに照らされた静かさを湛えた木々が迎えてくれていて、じっくりとその木々を見上げながら不破は笑みを深くして。 「けどま、良い感じに身体も冷えてくるし、ここはやっぱり……」 楽しげにそう笑うとゆっくりとした足取りで不破は宿へと足を向けて歩き出し、部屋まで戻って来ました。 「ふい〜、やはりこの時期夜の露天風呂は最高だねぇ。もっと冷えてくるとなお良し!」 そうして、当然と言えば当然、宿の人に一声掛けて運んできて貰った熱燗を、湯船に入ったまま傍らに置かれるのに頷くと、一つお酌をして貰い、立ち去る仲居さんを見送ってから、笑ってそう紅葉へとお猪口を掲げてみせる不破。 穏やかで心地良い秋の夜、紅葉に囲まれているその姿、月はそんな不破を照らしているのでした。 「美味しそうですね」 「潮君が見つけたんですよ、天麩羅にして頂きまして……あ、茶碗蒸しは僕が作りました」 宿の一室、ちょっと広い部屋で集まってお酒を頂き、収穫した秋の味覚を頂いているのは、収穫してきた本人達である舞華と利諒に潮君、そして宿でのんびりとしていた涼霞と明征で。 それぞれ温泉にゆっくりと浸かってきてからの宴のようで、どこかほこほこしています。 「あ、宗右衛門様も如何ですか?」 「おう、一つ頂こう」 「おじいちゃん、それ何?」 散策をしていてすっかり打ち解けたのか、宗右衛門翁とお酒を頂いていたセシャトが、舞華が進めていた舞茸の天麩羅を不思議そうな様子で首を傾げてみていて。 「醤油でも、果実酢でも、そして塩でもいける、旨い茸の天麩羅だの」 「お勧めは?」 「儂は塩が好きだのぅ」 そんな様子に舞華が笑みを浮かべてお塩の盛ってある小皿と共に進めれば、おっかなびっくりで食べたセシャトが満面の笑みを浮かべてみたり。 「わうっ!」 「凄いわ、わんちゃん、こんなに美味しい茸を見つけてきたなんて!」 「わふっ!」 ちょっぴり感動の美味しさだったよう、褒められてちょっぴり潮君も得意げです。 「明征様も、どうぞ」 「ああ、有難う、涼霞。だが、私ばかりでなくちゃんと涼霞も食べないと」 そして、甲斐甲斐しく世話を焼いている為か明征のお皿の上に増えていく料理と、やんわりとちゃんと自分も食べなさいとばかりに世話を焼き返す明征。 「今日案内して貰ったお礼も兼ねて、おじいちゃん、私の国の踊り、魅せて上げるわ♪」 「おお、それは有難い、楽しませて貰いますぞ」 セシャトが宗右衛門翁に披露する、ぱっと華やかで奔放な様子のジプシーの舞がその場を華やかに盛り上げて。 「……しみじみ、なんだか幸せだなぁと思います」 楽しげな宴を眺めながらそう言って舞華へと微笑みかける利諒。 「利涼と一緒に過ごせる、一番の恵みのこの時に感謝を」 舞華もそう微笑みながら言うと利諒の手をとって。 そんな宴の様子を、秋の夜長、月は静かに輝きながら眺めているのでした。 |