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■オープニング本文 何事にも、始まりがあります。 だからこそ、開拓者としての歩みにも第一歩があります。 しかし、その一歩を望もうとも、まだ踏み出すべきではない者も当然のことながら居ります。 その日、神楽の町の開拓者ギルドを尋ねたのは、まだわずかに幼さの残る少年達。 一人は名を暁丸(アカツキマル)、今一人を黄昏丸(タソガレマル)と言い、兄は歳の頃は14歳、弟はまだ8歳だとか。 二人は武天のとあるところにある傭兵砦からやって来て、兄の暁丸は晴れて開拓者になったそう。 そして、受付の青年は、物凄く困っていました。 「えーと、君は、お留守番、だよね‥‥?」 「嫌だ、僕だって戦えるっ! だから付いてきたんだいっ!」 既に半べそ気味の黄昏丸相手に困ったようにギルド内を見回してみる者の、手隙の人間には目を逸らされ、忙しい人間には頼めるべくも無く、そして兄の暁丸はお仕事選びでそれどころではない様子で。 「でも、長はまだ早い、経験のためにお仕事を受けに行くお兄さんについて町に来るのは良いけれど、って言ったんだよね? 長の言葉って、掟も同じだよね?」 「でーもー! 僕もー!」 ぶんぶん手を振りまわして駄々を捏ねる黄昏丸、どうやら何事も、兄の暁丸と一緒が良いようで。 「う、うう‥‥と、取り敢えず、長が駄目って言っているんだから、実践はさせられないよ?」 「う―――っ!」 「わー、だ、だけどね? とりあえず、えぇと、開拓者! そう、開拓者のお仕事とか、どれぐらいの力があるかとか、どんなことが出来るかとか、ほら、お兄ちゃんと同じ事をするなら、お兄ちゃんが出かけている間に、ほらあれだ、訓練として!」 何か言いたげにむーとむくれかけた黄昏丸相手に、あわあわと言葉を探した受付の青年の口から付いて出たその言葉、言ってみてからしまったという表情をするものの、後の祭りと言いますか。 「兄者と、同じ?」 かっくん、と首を傾げる黄昏丸、言ってしまった手前ちょっぴり引き攣った笑顔でにこやかに笑うと頷く受付の青年。 「兄者と同じよーなのになれる? ほんと??」 「あ、う、うん、ほら、なれるかどうかは、黄昏丸君の努力次第だし、お兄ちゃんは開拓者としてあれだけれど、君の場合はまだ、砦に帰らなきゃいけないんだから、開拓者になるための励みというか参考というかで‥‥」 何とか落ち着いた様子の黄昏丸ですが、しどろもどろになりながら言う受付の青年は、軽く眩暈を覚えながらどうしよう、と頭を抱えているのでした。 |
■参加者一覧
音有・兵真(ia0221)
21歳・男・泰
劉 天藍(ia0293)
20歳・男・陰
水鏡 雪彼(ia1207)
17歳・女・陰
紬 柳斎(ia1231)
27歳・女・サ
朱音(ia2875)
14歳・女・巫
木綿花(ia3195)
17歳・女・巫
斎 朧(ia3446)
18歳・女・巫
赤マント(ia3521)
14歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●兄者を見送って 「じゃあな、良い子にしているんだぞ、黄昏丸」 「うう‥‥行ってらっしゃい、兄者‥‥」 しょんぼりとした様子で暁丸を見送る黄昏丸、そんな黄昏丸にすかさず近付いたのは朱音(ia2875)、そっと忍び寄ったつもりではいたのですが‥‥。 「とう! ‥‥って、あれ?」 後ろから頭を叩きに行こうとしたところですが、手が空を切って目を瞬かせる朱音。 一方黄昏丸は咄嗟に屈んで避けており、振り返って挨拶も無しに頭を叩こうとした朱音に対して警戒心を剥き出しにして距離を取って睨み付けています。 「なっ、なかなかやるわねっ」 「いや、それは流石に不味いと思うんだが」 少し困ったような表情で朱音に言う音有・兵真(ia0221)、黄昏丸がいきなり叩きに来た朱音に対して警戒をすると言うことは、他の開拓者に対しても同じ思いを抱いていると言うこと。 その行為によって完全に警戒心を持った様子の黄昏丸に気が付いた劉 天藍(ia0293)は小さく溜息をつくと黄昏丸の前まで行って屈んで目線を合わせて。 「黄昏丸、だったな? 俺は劉天藍、で、こっちが雪彼だ」 「黄昏丸ちゃん、はじめまして」 見れば天藍の後ろからひょっこりと顔を出して、にっこり笑う水鏡 雪彼(ia1207)。 「あのね、黄昏丸ちゃん、開拓者になる訓練って言うから、雪彼たち話し合って野営をしようってなったの♪」 ほわっとするような笑顔で言う、兄と近しい年頃の雪彼に警戒心を表していた黄昏丸も毒気を抜かれたか、野営? とかっくり首を傾げて聞き返し。 「僕も一緒に、か。頼もしいわね」 「八歳だ。まだ家族と一緒にいたいのは仕方なかろう‥‥しかし、見ていると昔を思い出すなぁ」 そんな様子を微笑ましげに見ているのは木綿花(ia3195)と紬 柳斎(ia1231)、特に柳斎などは『可愛い子供は愛でるもの』という信条からか雪彼と黄昏丸の話している様子を見るとついつい笑みが浮かぶようで。 概ね好意的に黄昏丸を見る一行ですが、そうとも言い切れない人物も。 「純粋に開拓者を目指している、というわけでもないようですね」 斎 朧(ia3446)が微笑のままに小さく呟いて。 「兄とともに、ですか‥‥ふむ。理由はどうあれ、開拓者を目指すという言葉そのものに偽りが無いのであれば、お手伝いは吝かではありませんが」 「んー? 切っ掛けは人それぞれだし、『兄と離れたくないから』だけじゃなく『こんな開拓者になりたい!』って思うような経験が今回出来れば良いんじゃないかなって」 兄と別れたくないだって立派な理由だと思うけど、と頭を掻いて言う赤マント(ia3521)ですが、朧は相変わらず感情の窺い知れない微笑を浮かべたまま黄昏丸を見ているのでした。 ●開拓者になるために 「どれほどの覚悟を持って臨むか、早速見せてもらおうか」 小さく首を傾げる黄昏丸ですが、柳斎は続けます。 「開拓者となればたとえ何もないところでも自分の力で生き延びて見せなければならぬ。というわけで、まずは野営で自ら食料を調達することだ」 とにもかくにも柳斎にそう振られた黄昏丸、夜営の支度のために拠点のテントを用意すると早速森の中へと雪彼と共に向かって。 「あった‥‥これの木の実は美味しいんだ」 「すごーい、何で解るの?」 「‥‥砦でやったから‥‥」 いざばらばらになって食料を捜しに出れば、雪彼と黄昏丸と赤マントであちこちを見たり調べたりしながら見て回り、それに天藍が保護者のように付き添っていて。 ちょっぴり離れたところで柳斎が心配で堪らずこっそりと眺めていたりするのは秘密です。 「ねぇねぇ、ここの川、お魚がいるよー。とって食べたいなー♪」 「ああ、下拵えして焼いて塩、でが一番美味いだろうな」 「この水はちょっと飲み水には向かないかな?」 「‥‥こっちに音がするから、多分湧き水が‥‥」 川へと辿り着くとひょこっと覗き込んで魚影ににこにこと笑う雪彼に頷く天藍、赤マントが薪を拾いつつ川を覗き込んでみれば、目を瞑って少ししてから言葉を漏らす黄昏丸。 「本当だね、湧き水の場所が分かるの?」 「砦でやるんだ、兄者と一緒にやったよ。僕こういうのの方が得意だったんだ」 黄昏丸が言うとおりに直ぐ近くに綺麗な湧き水の場所を見つければ、ぱっと顔を輝かせて聞く雪彼、赤マントは砦でと言うのに興味を持ったようで。 「黄昏丸は普段どんな訓練をしてたりするのかな?」 「うーん‥‥どんなと言われても、普通に体力付けるための運動と、剣とか弓とかの練習と、あとあと、アヤカシのことや戦い方とかについてとか‥‥普通なこと?」 砦の外を知らないためか、普通にすることと思って居るようでそう言って首を傾げる黄昏丸、普通という訳じゃないんじゃないかなぁと首を傾げる赤マントに、にこにこしながら見ている雪彼。 「ちなみに僕は『長い布を腰に巻いてそれを地面に触れさせないように走る』という訓練をしてたよ」 「それは僕まだやってない‥‥どんなことに効果があるの?」 「勿論、速くなるためさっ!」 ぐっと力を込めて言う赤マントに黄昏丸は目を瞬かせるのでした。 野営の準備を大概済ませて捕ってきた魚や木の実、山菜などで簡易的な昼食を取り休憩をすれば、小腹が落ち着いてくるまで確認などで時間を潰しながら模擬戦の組み分けなどを行って。 「先に大将の紙風船を割るか取るかした方が勝ちだからね!」 「普通大将って一番強い人がやると思ってたんだけど・・・・」 砦の訓練やら何やらを思い浮かべれば、大概が自分より強いお兄さん方を相手にすることが圧倒的に多く、大将のような役割になったことが無いようでそう言うと、あたしは十分に強いわよっ! と返す朱音とはちぐはぐな遣り取りをしていたり。 「では、前衛後衛の事なども考慮を入れて、そちらには前衛が多いので、こちらは人数を多めに・・・・」 「じゃあ雪彼に赤マント、木綿花と俺が、黄昏丸の組だな」 木綿花が言うのに天藍も頷いて続けば、朱音がえっへんと胸を張り。 「あたしの方は、勿論あたしが大将! それで、兵真と柳斎と朧が手下ね!」 それぞれの組へとばらけると、朱音組の方を暫く見ていた黄昏丸は、自分の組の開拓者達に向かってこっそりと提案をするのでした。 「へぇ、赤マントが黄昏丸を守る形で来たんだ」 紙風船などを用意しながら朱音が言えば、その様子を見ながら少し考える素振りを見せる音有。 「それは前衛の赤マントと、侍で前衛寄りなのではないかって言う黄昏丸とで突破して、他がそれに対しての補助をするって事か?」 ある種単純とも思える策のように感じて音有は首を傾げますが、まだ早いと言われたらしきことを『力不足』と取った者は多いよう。 「本来であれば、弱いところから狙うが定石‥‥とはいえ、早々に黄昏丸君が失格になっては何のための模擬戦か分かりませんものね」 薄く笑みを浮かべたまま言う朧の標的は、黄昏丸を守る形で開始を待つ赤マントに絞られたようで。 「えぇと、じゃあ、雪彼お姉ちゃん、天藍兄、お願いね」 かくんと首を傾げた黄昏丸、自身の腕の長さから来る間合いの差を埋めるために手頃な長さの木の枝を確認するように握りながら聞いて。 「うん、黄昏丸ちゃんは大将だから頑張って雪彼達に指示してね」 雪彼に頷いてみせれば、いよいよ模擬戦の開始。 朧は黄昏丸に近付き守る立場の赤マントを墜として力の差を、と思ったようではありますが、速さを目指す人間と幼いとは言え傭兵達に育てられた少年を極度に過小評価していたよう。 朧が投げた粉入りの小さな紙風船を赤マントがかわすとほぼ同時に、駆け寄り摺り抜けざま朧の腰の紙風船を手の枝ですっぱりと切り落とす黄昏丸。 そのまま雪彼が人魂にて調べた朱音の潜んでいる場所へと歩を進めれば、姿の見えない音有から背を守るように着く赤マント。 「‥‥」 「どうした、かかってこないのか?」 そこに待ち構えていた柳斎、黄昏丸は足を止めると柳斎の刀が届かない距離を保つために一歩下がり、赤マントも柳斎へと目を向けます。 「ただ見ているだけで開拓者とは片腹痛い」 挑発と取れる言葉を発して見るも、警戒を向けながらじりじりと距離を保っている黄昏丸に少し面白そうな様子で目を細める柳斎は、音有の動きを考慮して注意を引きつけようとゆっくりと一歩踏み出して。 時折頭上に降ってくる小枝の破片はあまり気にする様子もなく、柳斎を見やりながら数瞬後に黄昏丸は口を開いて。 「後ろ、お願い」 「仲間なら当然! 僕が持つ最高の速度、見せてあげるよ!」 「囮と気付いて挑発に乗らない、か」 確かに傭兵の基本ではあるな、小さく笑う柳斎、黄昏丸の後ろでは回り込もうとしていた音有と赤マントがぶつかっており、赤マントが泰練気胞壱で回避を上げ望むのに音有も手こずるらしく。 「わっ‥‥割られちゃったか、でも、僕は時間稼ぎだもんね」 「っと‥‥あっちの方は‥‥」 赤マントの紙風船を拳が破り取れば、にんまり笑う赤マントに音有は柳斎と黄昏丸の方に目を向けて。 柳斎と黄昏丸は対峙しており、枝を構え力を溜める様子を見せる黄昏丸にすと僅かに腰を落とし次の動きに注意すれば。 「はぁあああっ!!」 「地断撃!?」 振り抜かれた枝の先、地を這う咄嗟に身を翻してかわす柳斎は、それが自分に向けて打たれたものではなく、その直ぐ側にある木へと向けられており。 「きゃあっ!?」 朱音がよじ登って潜んでいた木へと衝撃が走り落下に近く地面に降りると、その前に立つのは天藍。 「木の枝が振ってくるのは流石に危ないだろ、模擬戦とは言え今回は遊びの延長なのに‥‥」 先程から黄昏丸に降りかかっていた木の枝の破片は、黄昏丸の頭上などにある木の枝を力の歪みで朱音が折って落としていたもの、ついでに言えば落ちそうな枝に気が付いて斬撃符で切り裂いて黄昏丸に落下しないように木を配っていたのは天藍でしたり。 「わっぷ!? こ、粉‥‥っくしゅっ!!」 「大将を落としたら勝ちなのー♪」 「勝ちよね」 見れば、天藍と黄昏丸に気を取られていた朱音に、後ろからポフポフと小さな粉入りの紙風船を幾つも軽く当てるように投げている、にこにこした雪彼と微笑を浮かべた木綿花の姿があります。 「ごほっ、こ、粉って結構凶悪って言うか、くしゅんっ、ふぁぁ‥‥くしゅんっ!」 辺りに粉が舞えばそれを思い切り被った朱音はなかなかくしゃみが止まらないよう、その様子を見ていて微苦笑気味の柳斎は、黄昏丸へと歩み寄り。 「まさか地断撃とはな」 「まだ僕、これしか撃てないけど‥‥」 其の辺りはまだ技を一つしか使えず兄との差を感じている黄昏丸としては気後れする部分であるようで、微笑ましげに笑みを浮かべる柳斎ですが、コツンと黄昏丸の頭を本当に軽くですが小突いて。 「策として有用であったとしても、大将が囮で身を晒すのは良くない。実戦だったら敵が残っていれば相手の大将を落とした瞬間にも戦いは続いている」 捨て身をやって言い場合は限られているんだぞ、と柳斎が言えば、しゅんとしたように小突かれたところを手で押さえて俯く黄昏丸。 その様子を見て、小さく息を付くと柳斎はぐしぐしと頭を撫でてやるのでした。 ●開拓者なんて大嫌い! 「開拓者は、なんて言うんだろうな‥‥いわば生き方、か?」 「生き方?」 天藍が持ち込んだ水羊羹を頂きながら黄昏丸との一時、音有の言葉に小さく首を傾げる黄昏丸。 「ああ。聖人になれとは言わないし、悪人になる事もない。己のやった事が降りかかるのだから其れを覚悟の上で、行くしかないからな」 「自分のやったこと‥‥」 「そう言えば、長ちゃんは何でまだ早いって言ったの?」 音有の言葉に考える様子を見せる黄昏丸に、今度は雪彼が首をくいと傾げて訪ねます。 「血を見慣れる歳じゃないって。傭兵やら開拓者やら、何になるしろそのうち見ることになるんだから、子供のうちは、って言ってた」 兄者も今の年齢になって漸くだったし砦の子供は大抵兄者ぐらい、と思い出すようにして言う黄昏丸に、天藍は笑みを浮かべて口を開き。 「どんなお兄ちゃんなんだ?」 「良く細かいことは苦手、ってこぼすけど、何でも出来て、いっつも一緒なんだ」 今まで離れたことは一度もなかったとのことで、物心ついたときにはいつも兄と一緒だった、だから自分もサムライになるために修行していたと言う黄昏丸。 それを聞いて、柳斎は小さく頷くと言います。 「家族と離れるのは確かに寂しかろう。しかしそれは暁丸とて同じこと。そしてそれを分かっていて尚彼は開拓者となった。しかしどれほど寂しい想いをしてもな」 何で、と問いかけるような目を向ける黄昏丸に口を開くのは朱音。 「暁丸がなんで開拓者になったと思う? きっとね、黄昏丸、あんたを守るためだよ」 「家に誰かいてくれると思うと、安心して頑張ることが出来る。そういうものだ。家で兄を待ってやれぬか?」 「でも‥‥」 兄と離れると思えば目を落とす黄昏丸、理解が出来ていないわけではないからこそ言葉を途切れさせる黄昏丸に、朧は笑みを浮かべたまま口を開いて。 「兄と離れることが寂しい、と‥‥ふ、む? しかし、あまり我侭を言うとその大好きな兄様にも、嫌われてしまうかもしれませんね?」 「っ! お前なんかに何が分かるッ! 外の人間なんかっ! 開拓者なんて大ッ嫌いだっ!!」 朧の言葉に弾かれたように立ち上がり朧を睨み付け言い放つと背を向けて走り出す黄昏丸、今の朧の言葉は黄昏丸には一番言ってはいけないこと。 歩み寄り何とか理解をしようとしていたところに浴びせられた言葉に飛び出してしまった黄昏丸、一行は一瞬何が起きたかも分からないままに言葉を失うのでした。 ●星空の下で 「黄昏丸ちゃん、見―つけた」 夜更けで星もちらつき始めた頃、雪彼は木の陰で膝を抱えていた黄昏丸を見つけにこっと笑うと、隣に腰を下ろすて笑いかけて口を開きます。 「雪彼も小さい頃は寂しかったなぁ。雪彼と一緒に暮らしてる人が開拓者だったんだけど、帰ってくるまで心細く思ったの」 泣いてぐちゃぐちゃになった顔を雪彼へと向ける黄昏丸にいい子いい子と頭を撫でて続ける雪彼。 「でも、いつも通りにひょっこり帰ってくると凄く嬉しいから、いつも待っていられたよ」 「お兄ちゃんにも翼をあげてね? お兄ちゃんも黄昏丸君を想ってる、だから、お仕事をがんばれるように安心させてあげて」 追いついた木綿花が言えば、朱音も腰に手を当ててふんっとばかりに口を開き。 「あたしだって他のみんなだって、始めは黄昏丸と一緒だったんだよ。だから一人前になって、暁丸に守ってもらわなくたって大丈夫なんだって分からせてやればいい。そしたら堂々と一緒にどこにだって行けるわ」 星空の下、今は一緒に頑張ろう、その言葉に黄昏丸はぼろぼろと涙を零しながら微かに頷くのでした。 |