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■開拓者活動絵巻 |
■オープニング本文 「まさか、盗賊と遭遇とは……」 泰国の令杏という街より3日程、荊崖という峠にある宿の2階にいた長身の男は僅かに眉を寄せながら呟くと窓の下に見える男たちの姿を確認していました。 「あの人数を一人では無理ですが……押し入ってきた場合どうするか……」 宿は崖を背にぐるりと囲むように石壁が一階部分の高さで取り巻いており、賊徒たちは何やら門のところに押しかけつつあったよう。 「……ん? あの方は……?」 男性が見れば、ちょうど門のところを塞ぐ様に立ちはだかる年若い女性、白と青を基調とし縁に金をあしらったその装束は、近頃この付近で耳にする清璧派のものと気が付き表情に僅かに緊張感を漂わせて。 「何故、清璧派の方が……しかも、女性となればもしや……」 表情を曇らせたままに見れば、そこで漸く門のところで人質のように捕まえられていた少年に気づく男性、と、少年の腕を掴んでいた男の身体が浮いたかと思うと、ぐいと自身の身体の後ろへ少年を庇い、あっけにとられた賊徒たちの目の前でがっと門を閉じると。 「走って! 中へ!」 その言葉に宿の戸へと必死で駆けだし中へ飛び込む少年、女性は門に閂を下ろすと、一斉に閉じられる一階の廊下を覆うような鎧戸。 「この宿は一体……? いえ、今はそれどころではないですね……どこを塒にしている賊かはわかりませんが……」 巻き込まれてしまったからには仕方がないです、そう呟くように言うと、何やら小さな包みを、上着を脱ぎ腹部へと括りつけてから着直し、傍らの長剣に撒かれた布を取り払い鞘から刀身を少し引き出し確認すると、その剣を手に階下へと男性は降りて行くのでした。 「まさか賊徒に囲まれるとは……お子さんは無事で良かったですが、血路を開いて誰かが援軍を呼ぶか、ここで合流予定の方が来るのを二日程持ちこたえるか……」 そう厳しい表情で言うのは、清璧派後継者である女性、綾麗。 綾麗はここより近く、清璧陥落時に門派の人間がお世話になったところへと訪ねて行った帰りのことで、宿の一階では広い正面口で綾麗と護衛の開拓者の姿、状況を確認したり現状打破の相談をしている様子で。 「護衛をお願いしていたせいで、危険な状況に巻き込んでしまって……私や門派の若い方だけでは、どうにもならないと考えれば……」 「だがいくら賊が女性一人のほうが油断するとはいえ、危険すぎた」 「……すみません、見ていたところあの人たちは血を見るのがなんともないように見えたので……」 放っておけなくて、そう答える綾麗、そこへ階段を下りてくるのは長身で長剣を手にした男性、どうやら旅の宿泊客のようです。 「完全に包囲されているようですね」 そういう男性、ですが綾麗はその男性の長剣についている印に気が付き表情を変えて。 「八極轟拳……っ!」 「害意は無い、といっても信じて頂けないかとは思います。ですが、私も一人ではここはどうにもできない、そして貴女方も一人でも手は必要かと思います」 「……共闘しろってことか?」 信用できない、言われる言葉に頷くと、再び口を開く男性。 「今は信じてくださいとしか言えません、ですが、3日後に予定の場所まで私が辿り着かねば、無関係の人々の血が流されます。私としてもそれは本意ではありません。血路を開くにしろ立て篭もるにしろ、指示に従いましょう」 信じて良いのかどうか、迷うような空気が流れる中、外から門を叩く重い音が響き渡るのに綾麗は顔を上げると。 「貴方には何ができますか?」 「剣を少々と傷の手当て、それに力仕事でしたら」 男性はそういうと、黄遼燕だと名乗るのでした。 |
■参加者一覧
羅喉丸(ia0347)
22歳・男・泰
梓(ia0412)
29歳・男・巫
嵐山 虎彦(ib0213)
34歳・男・サ
宮坂義乃(ib9942)
23歳・女・志
角宿(ib9964)
15歳・男・シ
草薙 早矢(ic0072)
21歳・女・弓
クロス=H=ミスルトゥ(ic0182)
17歳・女・騎
島津 止吉(ic0239)
15歳・男・サ |
■リプレイ本文 ●黄遼燕 「周りは全部敵ってか? なぁに、大したこたぁねえな、頼りになる味方も今回は揃ってやがるしな」 にぃと笑うのは嵐山 虎彦(ib0213)、一階鎧戸の覗き窓から外を窺って厳しい表情を浮かべる綾麗への励ましのようで、考え込んでいた綾麗はその言葉に顔を上げます。 「八極轟拳、その名を聞くだけでも御不快でしょうが……」 「いやっはーっ、こういう展開ってよくある感じなの? ハッキョクゴーケン? てのはよくわかんないけど、敵だったらもうボクら終わってるってね、気にしない気にしない」 割り切れないものがあるのも当然だろうと言い掛ける長身男性・黄遼燕にけらけら笑って言うのはクロス=H=ミスルトゥ(ic0182)遼燕は予想していなかったクロスの反応に目を瞬かせますが、嵐山はそんな様子を見て槍を手に呵々と笑います。 「なんせ一蓮托生だからな。ま、手を貸す分、働いてくれよ!」 「外の様子はいけんなっとう?」 「背後は荊の崖に守られていて宿の方に見て頂いていますが、前面は塀に沿いに囲まれ、かなりの数です。塀を越えようと言うのはまだないようですが、門が堅固と分かれば……」 島津 止吉(ic0239)が太刀を手に聞けば、子供を助けたときに見た様子を応える綾麗、その会話に注意深く中を払っている様子の遼燕をどう判断するべきか考えて居る羅喉丸(ia0347)は、梁蒼仙という男のことが過ぎるようで。 「城の防衛戦と一緒じゃ。畳とか雨戸でええけ、入口の前に互い違いに噛み合うように城の虎口みたいにせえ」 「成る程、門を破られても足止めになれば……二階から見た限り、塀を乗り越えるというのは難しそうな造りと思います。木も塀に隣接して無い為、一人二人登ったところで……」 「当然、俺たちが好きにはさせない」 「城の防衛か、篠崎の家の最も得意とするところだ、矢が尽きるまで相手してやろうじゃないか」 遼燕が宿の図面と見取った範囲を伝えれば、宮坂 玄人(ib9942)は表情を引き締め弓を握り直し、篠崎早矢(ic0072)は薄く不敵に笑いを浮かべます。 「一つ聞いて良いか? 二日程待てばこちらには援軍が来るが、そちらの期日は三日と言っていた、間に合うのか?」 「余裕はありませんが、間に合うと思います」 「でも移動中に何かあったら間に合わなくなっちゃわない?」 「それは……」 羅喉丸が遼燕に聞けば答えるも、角宿(ib9964)がくいと首を傾げて尋ねれば言葉に詰まって。 「途中足止めが無ければ間に合う計算ですが……何かあれば時間的な余裕はないので……」 「ってぇこたぁ、援軍を呼ぶ時に一緒に脱出させるのが一番現実的だぁな」 「この場合、助けを呼びに行っていただくのは……」 「僕が適任なら、やるよ」 嵐山の言葉に頷いて綾麗が目を向ければ、任せて、と笑って頷く角宿。 「っ! で、でもそれでは手が……」 「殲滅しろちゅうなら難しかかもしらんが、迎え撃つだけなら大したこたあんと」 「幸いにして矢は豊富だ、問題はない」 事も無げに言う島津と早矢に絶句する遼燕ですが、角宿が口を開き。 「僕も一人前扱いだからね! 一人で突っ切るんじゃなくて、協力して抜けようって言っているんだし」 「遼燕一人では援護も厳しいだろう、俺が抜けてから戻るのが一番現実的だな」 「行って戻るなぁ骨だからな、羅喉丸に任せることになるな」 八極轟拳と関わったこともある羅喉丸は過去に裏切りを受けたこと事もあり戸惑いがあったようですが、それによって人を信じる心を忘れたくないよう、遼燕を良く見た上で信用することを決めて言えば、嵐山はにぃと笑って。 「……わかりました、大した力になれず申し訳ない」 目を落とし言う遼燕、その様子に嵐山から簡単に説明を受けただけの角宿は不思議そうに首を傾げます。 「でもさ、3日後の話、何が起きるの?」 「……すみません、それは言えません、ですが、間に合えば何も起こらない、そう思って頂ければ……」 迷う様子を見せるもそれ以上言えないのが心苦しげな遼燕に、そっか、と呟く角宿。 「虎の兄貴に頼まれて来たんだ、こうなっちゃ仕方ねぇ、サポートは任せな」 木刀を肩に担いで言う梓(ia0412)、各人状況の確認を行って配置に付くのでした。 ●脱出の血路 「お二人とも、お気を付けて」 「難しく考える事はないさ、己の心に従うだけさ」 「必ず援軍を連れてくるからね!」 綾麗が申し訳無さそうに言えば神布をぎっと締め直して力強く笑う羅喉丸、角宿も笑みを浮かべて頷きます。 「貴方もお気を付けて。お二人をお願いします」 「この恩は、何れ何らかの形で」 抜けた後での混乱を避けるため長剣の印に布を巻き直すと目を伏せ礼を言う遼燕、急ぎ造られた防衛璧の間を縫い門へと寄る3人に、嵐山と島津が頷き、綾麗とクロスが門へと着いて目配せをし合い頷くと。 「チェエエストオオオオオオ!!」 「死にてぇ奴から掛かってきやがれ! だが、念仏は無しだ。数が多くて面倒だからな!」 ばんと門が開かれ盗賊達の虚を突いたかと思うと、その中へと躍り込んでいく島津、斬り込んでいく背を守りながら槍の一閃で盗賊を薙ぎ倒す嵐山。 「行け行け斬りまくれ! 背中は守ってやるから好きに暴れな!」 「死にたい奴から前に出えええええ!」 嵐山言葉を聞いてか聞かずか、島津の裂帛の気合いと共に極限まで高めた捨て身の一撃が、門を破ろうと槌を振るっていた男を切り裂き、留守になった背を嵐山が守るようにして敵の人壁を押して。 「破あっ!!」 その二人の間を縫うようにして低く敵の直中へと滑り込んだ羅喉丸が蹴りの一撃で周りを薙ぎ払い手薄になる一カ所、そこに走り込む角宿と守るように剣を振るう遼燕。 「っ、まだ居る……っ」 飛び出す二つの影に躍りかかろうと斧を振り上げた男達ですが、その目前で矢が降り注ぎ男達へと突き立ち、剣と身体で突き倒して人の壁を切り開く遼燕、射線上に立ちはだかる男へと手裏剣を打ち込みながら角宿は駆け抜けて。 「ふん、高所からの弓に、群れて襲うだけの盗賊風情が阻めると思うな」 「やはり専門の人の弓は一味違うな……だが、俺も負けてられない!」 二階から弓の援護は早矢と玄人、上からの援護で狙う一点は更に手薄となる形で。 「門が開いたからって入れると思ったー? ざーんねんっ! みんな気合はいってるぅ?」 「気合いだけでしたら、ですが」 門へと殺到する男達には盾でいなすクロスの明るく賑やかな様子に、敵へと対峙していつつも気持ちに余裕が出来たか槍を避け柄を掴むと、その腹部へと重い一撃を打ち込み押し返す綾麗。 「アンタの相手はこっちだ!」 男達の中に弓を持った者がいるのに気付き、ぎり引き絞る弓、玄人は鋭く男を見据えると射かけて脱出組へと向けられる矢の軌道を逸らします。 「あと、少し……っ!!」 人の壁が切り開ける寸前、切り抜けようとするのを阻む男に受け止められる羅喉丸ですが、その背後を狙う男の槍を遼燕が長剣で受けて弾き返せば。 「抜けたっ!!」 角宿がくぐり抜けるように駆け抜ければ、追撃に備えながら羅喉丸と遼燕もその後に続き、追撃に掛かった男達の上へはばらばらと矢が降り注ぎ、三人はその勢いで抜けると視界の林の中へ身を滑り込ませます。 「三人は抜けた、一度中へっ!」 綾麗の声に幾つか傷を負いつつも嵐山の援護と弓の援護を受けながら島津と門の内側へと戻ると、一度綾麗とクロスで戸を閉じ閂を下ろして。 「彼奴等もたいしたこっんな」 言いながらバリケードの内側で薬草を取りだして使う島津、二階の早矢と玄人は林の中へ三人が無事に入るのを確認しつつ賊たちの動きを監視しています。 「……俺はここから追っ手を押さえながら、宿に戻る」 「金剛山の寺社でしたら場所は分かります、必ず彼を送り届けます」 「羅喉丸さんも、気を付けて戻ってね」 林の中、打ち合わせ通りに戻ろうとする羅喉丸が告げれば、遼燕も頷いて必ずと約束し角宿もそう言い。 羅喉丸が宿へと引き返していくのを見送ると立ち上がる角宿と遼燕。 「急ぎましょう。賊が焦れて強硬手段をとらないとも限りません」 「そうだね」 走り出す二人、少々分かり辛い細い道を抜け走りながら、遼燕が付近の地理に詳しいのを改めて理解して小さく首を傾げる角宿。 「結構入り組んだ道だけれど、詳しいんだね」 「……故郷がここから近かったもので」 幼少期は良くこの辺りで遊びました、懐かしむような何かを思い出すような微苦笑を浮かべ角宿を見る遼燕は、幾つか近道と人目に付かない抜け道だと言って足場のある切り立った道を手を貸し進むと、やがて竹林へ。 「……そろそろ日が落ちそうだけれど……」 「着きましたよ、暗くて見にくいですが……金剛山の門は、直ぐそこです」 既に日も落ちかけ薄暗くなった頃、宵闇の中に夕日の残滓とは違った灯りが角宿の目に飛び込んできて。 「八極轟拳の人間と一緒となれば面倒なことになるでしょう。私はここから目的地へと向かいます」 「そっか……分かった、有難う」 礼を言われるのに戸惑った様子を見せると黙礼をして背を向ける遼燕ですが、角宿はその背へと声を掛けます。 「綾麗さん、悪い人じゃないから」 「……」 その言葉に足を止めて目を向ける遼燕へと、言葉に迷うも真っ直ぐに見ると角宿は。 「その、次に会っても仲良くしてあげてね」 「……信じて貰えて良かった、そうお伝え下さい」 角宿の言葉に何処か悲しげに笑むとそれだけ告げて、遼燕はその場を後にします。 「……援軍、頼まないとね」 角宿は遼燕が去るのを見送ると、踵を返して立派な門構えの、金剛山の門へと歩み寄るのでした。 ●防衛戦 「古い侍の家は用心のために敷地内に竹やぶがある。矢の材料とするためだが……後暫く防衛戦をするなら必要になるかもしれんな。矢の材料はあるか?」 「手入れはしてありますが古い矢でしたら倉庫にあります」 宿の人が倉庫から必要な矢などを運び出してくるのを受け取り、状態に問題が無いのを確認して早矢は頷きます。 「これだけあれば、十分そうだな」 玄人が矢筒に追加の矢を収め、二階の覗き穴の所へと並べていけば、周囲の賊たちが戸を破るために色々としているのを見ていれば、塀へと梯子をかけようとしているのを見かけ昇ってこようとしていた男を射落とします。 「しかし宿にしては守りやすい堅固な建物だな。火を使ってこられれば又話は別なのだろうが」 「……どうやら外に出ていた羅喉丸殿が戻ってくるようだな」 本職だからか、感心したように言う早矢、玄人は林の方から戻ってくる様子の羅喉丸を見つけ弓を握り直します。 「立ち塞がる者は全て我が双拳で砕くのみ」 羅喉丸の大喝で意識がそちらに向くのと、合図で門を開けて嵐山と島津が道を確保しようとするのはほぼ同時、梯子を用意したり抜け道を探していたりと幾つか動きが分散されていたのも幸いして切り開かれた道を薙ぎ払い駆け抜けるような形で門内へと戻ってきて。 「二人は無事に脱出した、後は堪えきって、援軍とで挟撃できれば……」 「門が後どれぐらい保つか……今暫くは大丈夫でしょう、念の為、順番に休憩を取りましょう」 交代制の順を確認だけして、それぞれ休みを取ることにする一行。 夜間も門はどんどんと叩かれ多少揺らぎはするものの、賊徒達も酒を飲んでいたり見張りを立てたりしていて暫しの間ぶつかり合う時間はなく。 そして、夜が明ける頃。 「大分門もへたってきたようだぜ、兄貴」 「おう、皆起こした方が良さそうだな」 二階から覗き穴を使い様子を窺っていた梓が言えば、槍を手に手早く各人を起こしに回る嵐山。 「流石に一昼夜門を幾度も打ち込まれていれば破られもするか……綾麗さんの背は俺が守る、俺の背も守ってくれると助かるが、いいかな」 「はい」 障壁の後ろへと着くと篭手を確りと付け直してから、羅喉丸の言葉に頷く綾麗、直ぐに矢を負った玄人が階段を駆け上がっていき、援護のために早矢は宿の入口に一番近い障壁へと身を隠して。 「そろそろだな」 嵐山が言えばつらと太刀を抜き放ち待つ島津。 ひしゃげる嫌な物音と共に破られる門の戸、雪崩を打って入ってくる盗賊達に門の外へと押し返そうと斬って出る嵐山と島津、前衛で一気に押し戻した二人の後ろから門の中へ一人も入れないという気概で守る羅喉丸と綾麗。 「一人でも減らしておかねばな」 塀越しに立つ人間をと早矢が宿より空高く矢を射上げれば、そのぎりぎりの位置、二階より狙えないところにいた男の頭上へと矢が降り注いで。 「塀を越えられると思っているのか、懲りない奴らめ」 鋭く見下ろしながら二階より射かけると呟くように言って矢を番え直す玄人。 「で、あのイノシシみたいな少年は大丈夫なのかなぁ?」 見れば突出して斬り込んでいる島津、言っている矢先に斬り付けた相手の身体に刃が止まり、引き抜く間に槍の一撃が肩へと突き立ち振り払うも血が噴き出して。 「ちぃっ、大丈夫かっ!?」 「戦いが始まった時点ですでに死地、ならば恐るものは何もないど!」 「流石にこんなとこで死なれても僕の爽やかな朝が台無しになるから助太刀するけどね」 嵐山が声を上げるところへ翼竜鱗の盾で身を守りながら強引に突破して、島津を引っ張って宿へと引き戻すクロス。 綾麗へと殺到した男達へ羅喉丸と嵐山が援護すれば、そちらに気を取られたか、大剣を手にした少し様相の違う男の逆袈裟に振り抜かれた大剣を受け止め損ね、嵐山の身体に深々と突き刺さる大剣。 「ぐぅっ、まだまだっ、さぁて、閻魔に会いてぇ奴から前にでな! この鬼法師が引導を渡してやるぜ!」 「この……ぐあああっ!!」 血を噴き出しながらも不敵に笑う嵐山は槍を握り直し、剣を距離を取引抜きかけたがっしりとした男ですが、次の瞬間、男の右目へと深々と突き立つ矢、放った早矢は既に次の矢を番え直しており、男の動きが止まった瞬間。 「っ、あれは敵か味方か……ん、援軍だっ!」 二階より援護を行っていた玄人が声を上げる視線の先、角宿に案内され十人程の僧形の男性が、棍や槍を手に駆けつけてくるのが見えれば、目から槍を突き立てたままの男は傍に居る配下をも振り払って身を翻し駆け去るのでした。 ●休息 「間に合った……けど、痛そう、大丈夫?」 「手当はしたが、回復まではちょいと掛かりそうだなぁ……」 角宿が大きな怪我をした島津と嵐山に聞けば、手当はしたもののかなりの深手で休息が必要そうな二人。 「まさか盗賊相手に籠城をされて居るとは……助勢間に合い安堵致しております」 僧達が言うのに礼を伝える綾麗は、捕らえることの出来た残党の引き渡し処置などをお願いして、改めて今後のことについての協議の場を設けることを約束したよう。 「あちらも間に合うと良いのだが」 そう呟く羅喉丸は、後日期日の三日が過ぎても騒動が起きなかったと耳にし安堵の息を付くのでした。 |