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■オープニング本文 「見事なものですね」 「はい、私は嫁いでしまうので、そう頻繁には見られなくなりますけれど……」 そこは泰国の令杏という街より少し行ったとある山の中腹にある村の、大分村外れにある泉の畔。 そこは少し奥まっていて、桃の花が綻び始めたばかり、宵闇の中では幻想的な光景です。 語り合っていたのは、一人は清璧派の後継者である年若い女性綾麗、白と青を基調とし縁に金をあしらった装束がその闇の中に浮かんで見えます。 もう一人は、その村の村長の娘さんで綾麗と同じぐらいの年頃、ふわりとした美しい淡い桃色の着物を身につけた、穏やかな様子の美少女で。 綾麗は数人の若い門弟と共に現状について静観していたこの村の村長との会談に来ていて、先方は綾麗と話していて心を決めたよう。 「貴方のお父上に感謝します。勿論貴女にも。令杏のことについて、今後ご協力頂けると言う言葉、心強かったです」 「私自身は余り武術の筋は良くないので何も出来ずもどかしいですが……夫となる方も何れ顔合わせをと言っていたので、私達もう少し頻繁にお話しできるようになるかもしれませんね」 うちの村には近い年頃の子が丁度居なかったので嬉しいわ、そう言って微笑む少女に綾麗も笑みを浮かべると。 「これから、仲良くして下さいね」 「はい、宜しくお願いします」 池の畔、桃の花の下で、少女達は微笑み合うのでした。 数日後、長身に長剣を携えた一人の男性が、目深に質素で大きな布を纏い、今清璧にいる代表のものに会わせて欲しいと、酷く焦った様子で訪ねてきました。 名を黄遼燕と名乗り、知った名に会いましょうと答える綾麗は、四十代そこそこの師範代の男性、雷晃と共に迎え入れます。 「……え……? あ、貴女がここに居ると言うことは……え……?」 綾麗を一目見て、動揺した様子を見せるこの黄遼燕は、八極轟拳の印を刻んだ長剣を持つ男性。 荊崖の宿にて共に籠城する事となった、ある種の縁のある人物です。 「……あの、清璧の代表にと言うのは、私に御用だったのではないのですか?」 遼燕の反応に綾麗の方も戸惑ったようでそう訪ねれば、遼燕は顔を顰めて。 「そうか、そういうことですか……」 そう呟くと、焦ったような表情のままに顔を上げて綾麗と雷晃を見て、改めて口を開きます。 「実は……私は、貴女が八極轟拳に……朱梅山に引き渡されると聞いて参りました」 そう話し出す遼燕は、詳細は話せないが、自身が所属する所の主が梅山の所に、他門派へと説得に出ていた綾麗を襲撃し捕らえたという門派が、彼女を手土産に傘下に加わりたいと打診したという情報を手に入れたそうで。 「梅山が自ら引き取りに来るそうで、その事は裏も取れて、交渉のために外に出ていた先での拉致ならば、こちらでその事を知らぬままではと……」 「貴方のところがどういう立ち位置なのかは分かりませんが、私はこうしてここに……」 「裏が取れたと仰いましたな。とすれば、引き渡す人間が居ると言うこと。もしや、何方かが綾麗と間違えられて……」 「私と間違えられて……同じ年頃の、女性っ!?」 ふと思い出すのは桃花の下で語り合った少女のこと。 「心当たりがあるのですね?」 遼燕の言葉に頷くと、綾麗は直ぐに開拓者ギルドの少年、孔遼を呼ぶ為の使いを出すのでした。 |
■参加者一覧
柊沢 霞澄(ia0067)
17歳・女・巫
羅喉丸(ia0347)
22歳・男・泰
ゼタル・マグスレード(ia9253)
26歳・男・陰
紅 舞華(ia9612)
24歳・女・シ
ユリア・ソル(ia9996)
21歳・女・泰
嵐山 虎彦(ib0213)
34歳・男・サ
ニクス・ソル(ib0444)
21歳・男・騎
椿鬼 蜜鈴(ib6311)
21歳・女・魔 |
■リプレイ本文 ●黒毒の追跡 「朱梅山が出て来るか」 「朱梅山をもこの際片付けたい気持ちもあるが……」 羅喉丸(ia0347)が言えば、少し考える様子を見せるのは紅 舞華(ia9612)。 令杏の街のとある家、その場には一行と綾麗、それに黄遼燕の姿がありました。 「今回は助かったぜ遼燕。しかしお前さんの立場は悪くならねぇか?」 「……あの時行かせて頂いた、恩がありますから。それに、仕入れなどの別の用事もありましたので」 「あの時はそちらも間に合ったようで、何よりだ」 嵐山 虎彦(ib0213)が遼燕に言えば、今のところは疑われていないと思われますと答え、羅喉丸は前に遼燕を籠城状態の宿から脱出させたのが無意味でなかったと分かり微かに笑みを浮かべます。 「それで……落ち合う場所は分かるのよね?」 「はい」 「地図を描いて貰えると助かるが……」 ユリア・ヴァル(ia9996)が確認すれば、舞華も周囲について知りたいと述べ、遼燕は頷くと広げた大振りの紙にさらさらと周囲の地形を書き込んでいきます。 「へぇ……この辺りの地形を全部憶えてるみてぇだな?」 「……少なくとも、私の知る轟拳の人間の誰も、地形や周囲の詳細について興味をお持ちの方はおりませんでしたので、何の役にも立たない情報ですが」 嵐山の言葉に微苦笑気味に答えると、被害のあった娘さんの村の位置、引き取りの場所、そこへ至る可能性のある道筋を遼燕が書き込んでいき、綾麗も絵図面に間違いがないと確認すると、改めてその配置を覗き込む一同。 「遼燕さんはこれ以上は危険だ」 「……そう、ですね。気にはなりますが、私は顔が知られて居る可能性もあります」 羅喉丸が言えば申し訳ないと告げる遼燕に、後は任せておけと呵々と笑う嵐山。 「兎に角人質救出を優先する必要があるが……引き渡しまで余り時間が無いと考えれば、やはり……」 「二手に分かれ、梅山の足止めと人質救助を並行するより他あるまい」 ニクス(ib0444)が言えば、ゼタル・マグスレード(ia9253)も頷き、綾麗へと目を向けます。 「しかし攫われた者達は、綾麗君の知人なのか……ましてや人違い故となれば……尚の事捨て置けぬだろうな」 「……はい。まさか、私と誤解を受けて攫われるなど……どういうかたちで誤解されるに至ったかが、考えれば厳しいところではありますが……」 ゼタルの言葉に心配げに頷く綾麗は、それでいて情報の出所も気になっているようで、身の危険を押して連絡に来た遼燕の事が知られるのではと心配げな視線を向けます。 「今それを考えても詮無き事、少なくとも現状を知るは最低限の者のみじゃて」 煙管を軽く振りながら椿鬼 蜜鈴(ib6311)は口を開けば、やれやれとばかりに深く息を付いて。 「しっかし、やり様からして雑魚じゃのう……武では敵わぬ故に質を取るか……呆れて物も言えぬのう……」 「ですが、捕らわれている方の事を考えますと……」 柊沢 霞澄(ia0067)は小さく言って言葉を途切れさせるも、おずおずと続けます。 「自分と間違えられて浚われた人を自分の手で助けたい……綾麗さんの気持ちは私も判ります……」 そう言うと、心配げな目を綾麗へと向けます。 「でも、自ら敵の陣に乗り込む事になるのも事実です……先走りや無理をせず十分気をつけて行きましょう……」 「綾麗。自身を責めるのはおんしの勝手じゃが……急いて事を仕損じる事の無き様にの?」 「はい。捕らえられた方々を無事に助け出すためには、冷静でいなければ……」 霞澄の言葉に同意を示し言う蜜鈴、そんな二人に頷くと自分に言い聞かせるように綾麗は言って。 「清壁の代表として協力者の娘を自ら助けに行く。そうでなくては人はついて来ない」 舞華が綾麗に微笑を向けて頷けば、ぐと握った拳を見せて笑みを浮かべる羅喉丸。 「行こうか、綾麗さん、この地に義を示すために。戦う理由など義侠の二文字があれば十分だ」 「綾麗君、花嫁の門出を恐怖で汚す無粋の報いは、その身で購ってもらわねばなるまい?」 「……はいっ!」 ゼタルの言葉に一同を見渡すと、綾麗は確りと頷くのでした。 ●竹林の死闘 「さあさあ! 死にてぇ奴ぁこの鬼法師に掛かって来やがれ!」 にぃと笑って梅山とその配下を分断するかのように槍を振るう嵐山、そちらに気を取られた梅山ですが、一足に飛び退ると、空を切った拳に追撃を仕掛けてぎりぎりで踏み留まる羅喉丸。 踏み留まった羅喉丸の、僅かに躱しそれは羅喉丸の傍らを抜け、朽ち打ち棄てられていたお堂を完全に瓦解させます。 そこは落ち合う場所と指定されていた、竹林の中にぽつんとある古びて忘れ去られていたお堂のある小さな広場でした。 何やら由来のありそうなそのお堂の傍、梅山がやって来た時の足止めのためにこちらへとやって来ていたのは羅喉丸に嵐山、ゼタルとニクスの四人。 その地点を基点として探索と、梅山が既に来ている可能性を考えての足止めとの二手に分かれており、既に梅山達が来ていないかを警戒しつつやってきていて。 「身を隠すのに余り向かない場所だな……」 ぎりぎりやっと岩陰に身を伏せて周囲を確認して居れば周囲へと目を走らせて小さく呟くニクス、ゼタルが符を手に取るとまずはお堂の所の偵察に人魂を差し向けますが、どうやらまだやってきていないようで、注意深く伏せながら待機する一同。 「……話し声……来たな」 がさがさと葉を踏みしめながら聞こえてくる物音と、下卑た笑い声と、それを耳にして囁くように羅喉丸が言えば、各人目配せし合います。 やがて見えてきた人影は梅山と五人の丸い体型をした男達、そろそろお堂に辿りつく、その時。 「ぶひ? ぶふふぅ……」 腐っても豚もとい八極轟拳幹部、梅山は立ち止まり見回すと、一行の居る岩陰の方へ、ぶひぃと嫌な笑みを浮かべて。 「結構結構……鼠が居るってこたぁ、引き渡されんのが本物と言うことじゃねーか」 下卑た声で笑う梅山、一緒に笑っている配下の槍を分捕ると無造作に投げてくるのを、愛槍で払いのけてのそりと立ち上がる嵐山。 「ま、わかってんならこそこそする必要はねぇわな」 「別に俺は逃げも隠れもするつもりはない」 にやにや笑う梅山と、真っ直ぐに見据える羅喉丸。 「配下は任せて欲しい」 「がつんとぶちかましてくれや」 ゼタルが刀を握りそれを配下の一人へと向ければ、そこから現れる影が人型を取り、唸りを挙げては以下の男へと襲い掛かり、そんなゼタルへ向けて駆け寄ろうとした男たちの前に立ちはだかるのは嵐山。 二人の言葉に正面より梅山へ一気に駆け寄る羅喉丸と、梅山の後ろへと回り込もうと走りこむニクス、梅山はそれを見てさも愉快気に笑い声をあげると、背負っていた刺叉を握り構えます。 「豚は、豚小屋に帰れ」 「ふひひぃ、面白れぇ、血祭りにあげられてもその減らず口が聞けるか試してみるか」 繰り出される刺叉を受け流しながらの羅喉丸の言葉に引き攣った笑いを漏らすも豚呼ばわりされたことで顔が怒りで赤く染まりつつあって。 「邪魔はさせない」 梅山と対峙している羅喉丸の背後より殴りかかろうとした男、それに気が付いたゼタルが呪声を放てば。 「術者風情がっ!」 「っ!?」 「どっせいっ!」 たった今、ゼタルの呪声によって梅山の足元にころころ転がった男の頭をむんずと掴むと、まるで炎を纏ったかのような一撃、頭を掴まれためり込む指に悲鳴を上げた男を梅山がゼタルに投げつけるのに、嵐山が咄嗟に割って入りはたき落とします。 「へっ、この程度がきくかよっ!」 身体ごと受け止めて転がす嵐山はぐるりと槍を回すと、返す槍で踏み込む機会を狙っていた男を斬り伏せます。 「余所見をしている場合か?」 そこへ、梅山の後ろへと回り込んだニクスが居合の一閃。 「破あぁッ!」 そして、ニクスの一閃に足下を掬われるかたちで斬り付けられた梅山の、その一瞬の隙に裂帛の気合いと共に撃ち込まれる連撃、多数の囮の打撃の中に紛れさせた、その中の一撃が梅山の目から光を奪います。 「ぶひぃぃいいっ! き、貴様等ああっ!!」 目を押さえのたうつ梅山は、足と目から血を噴き出させながらも、寧ろ目を奪われ片足を切りつけられたからか、豚と言うよりも狂牛のようにその巨体のままに暴れて刺叉を振りまわし、辛うじて躱し距離を取るニクスと羅喉丸。 「何ともしぶとい……だが……」 片足に深手を負い目も潰された梅山、もう一方の足に冷静に狙いを定めて斬り付けるニクス、苦痛を帯びた梅山の咆哮を聞きながら、羅喉丸はその動き一つ一つを見据えると。 「これで終わりだ」 その言葉と共に、羅喉丸の渾身の一撃が梅山へと撃ち込まれれば、その巨体は崩れ落ち、やがて全く動かなくなるのでした。 ●染血の泉畔 「黒仙派については余り知られてないそうですが……少数の門派だそうですが、毒と爪を用い数名で一人ずつ仕留めていくとか。門派の傾向は卑劣と聞いています」 足止めの四人と別れてやって来た救助組の一行、耳にした黒仙派の情報を交え綾麗が言えば、そこに先行して周囲を探っていた舞華が戻って来ます。 「恐らく潜伏先ではないかという所は見つけたが……」 舞華が見て取ったのは、引き渡し地点と通り道の範囲で行き来できる範囲で潜伏できる条件が揃う、桃花広がる泉の畔、そこから見上げる切り立った崖に生木が入口を隠すように生えている洞窟が幾つかあったようで。 「察知される可能性があってそれ以上探れなかったが、人の気配がした。洞窟の裏手はなくそのまま山だから、他所に繋がっている様子は無かったな」 「どちらにせよ、そろそろ動きがあっても可笑しくない頃じゃの。人質の人数ははっきりせぬが……」 「引き渡すのが私と言うことになっているのでしたら、場合によっては他の人質はそこに留め置く可能性も高いですよね」 舞華が状況を説明すれば蜜鈴が急がねばのうと考える様子を見せて。 既に害されている可能性も過ぎったようではあるも、敢えてそういう綾麗に、ユリア舞華がしめした崖の洞窟の様子を聞いて口を開いて。 「兎に角、人がいても可笑しく無さそうなところは三カ所程あるのね。手分けするしかないでしょ」 幾つか短い打ち合わせの後洞窟傍へと向かう一行、舞華が耳を澄ませば、どうやら舞華が聞き取ったとおり三カ所の場所の、そのうちの二カ所は手前に人が集まり動き出しそうな気配、そして一番奥まっている一カ所はだらだらと待機しているかのような様子。 「兎に角時間がないわ」 その一言で一行は洞窟へと足を向けるのでした。 一番大きな正面の洞窟、そこに突撃したのはユリア。 「……」 慎重に中へと入っていき人質を盾にされないために救出に来たと告げずに、捕らえられていたと思しき縛られた男性を助けようと近付いたところ、その行動が仇となりました。 「くっ、何だお前はっ、お前も一味かっ!? それとも賊か!?」 ただでさえ警戒心が強く神経質になって居た人質自らに騒がれてしまい、結局の所群がる黒い影と対峙する羽目になります。 「ぐっ……」 「人質を尊重って言う意識は無い訳ね……」 呆れ気味に呟くユリア、他者が居るためか人質自身共に毒や攻撃を喰らいながら何とか持ちこたえているところで。 「邪魔しないで!」 人質達を後ろにして、ブリザードストームで黒仙派の男達を巻き込めば、何とか一人の人質の縛めを解き、他の者たちを解放させることが出来たのでした。 「清璧の綾麗です、助けに来ました!」 綾麗が飛び込んだそこは、丁度出立の支度をしている男達の所でした。 「……清璧の綾麗? 偽者め……」 綾麗を捕らえて引き渡す予定の所へやって来た綾麗、と言う現状に、黒仙派の男達は都合の良い、自分たちが捕らえているのが本物、と思うことにしたよう。 そして名乗り中へと入り込んだ綾麗に、そこに紛れるようにして中へと忍び込んだ舞華は、そこに捕らえられて縛られた娘さんの姿を目にします。 「聞こえたか? 助けに来た」 舞華の言葉に頷く娘さん、綾麗は篭手をわざと見せて気を引くと、洞窟外まで誘き寄せます。 「さ、今のうちに抜けるぞ」 「はい」 舞華が囁けば、手を借りながら確りと頷く娘さんと共に洞窟を抜け出すのでした。 「おんし等、しつこいのう……残念ながら、手は出させぬぞ?」 人質達が捕らえられている二カ所の様子が可笑しいからか、数人が待機していた洞窟から人がそろりと様子伺いに出て来れば、するりと絡め取る植物たち、蜜鈴のアイヴィーバインドが先頭の男を足止めし、その洞窟へとアークブラストによる雷の一撃が撃ち抜いて。 「おお、おんしが花嫁殿か。按ずるな。我等が護ってやろうて。花嫁殿には傷1つ付けさせはせぬよ」 舞華が救い出した娘さんを蜜鈴と霞澄の元へと連れてくれば、からからと笑って告げる蜜鈴、綾麗から蜜鈴達へと躍りかかった黒仙派の一人の男の毒爪をアゾットで受け止めて。 舞華にユリアが洞窟の外まで出てきた黒仙派を一人また一人と倒していき、綾麗も黒仙派の首魁と思しき人物の爪と毒を受けながらも、返す拳でその胸を撃ち抜き絶命させるのでした。 「貴様がいい加減な対応をしなければ、妹の婚礼を血で汚すことはなかったんだ!」 綾麗の胸倉を掴んで叫ぶように怒鳴りつける男は、救出か賊か判断が付かない状況下で重傷を負った男性、彼も霞澄の治療ですっかりと傷は癒えていたものの、血に染まった自身の装束と、妹の婚礼を台無しにされた怒りを綾麗へとぶつけたようで。 黙って受け容れている綾麗と、それを必死で止める娘さん。 足止め組と合流した後も、その微妙な空気は戻る事はなかったのでした。 ●揺濁の細い絆 「私のせいで、折角の晴れの日を……」 助け出した娘さんを目的の集落へ送り届けるも、娘さんの兄たちは救出時のごたごたで不信感が拭えないようで綾麗を睨み付け、その空気が相手側の集落にも伝わっていて娘さんへ詫びる綾麗。 「清璧へ、会いに行きます。助けに来てくれると信じていて、貴女は来てくれたのですもの」 兄たちが感情的になってしまっているけれど、話せば分かってくれます、きっと分かって貰います、そう微笑を浮かべる少女。 「お嬢さん達は災難だったが……越える幸福を得てどうか末永く幸せに」 「……はい」 幸せに、ゼタルの言葉にほんのりと頬を染めて晴れやかな笑みを浮かべる少女に。 「綺麗な花嫁に心からの祝福を」 舞華に背を押されるように告げられる言葉、はにかむような笑みを浮かべた娘さんが、婚礼の相手の元へ向かいます。 「他の方も、きっと分かってくれます……」 向けられる他の厳しい視線を受けて僅かに目を落とす綾麗に、そっと霞澄が言って。 朱梅山の撃破によって、八極轟拳の賞金首の一人を倒すことが出来たも、向けられる不信の目、その中で、娘さんと綾麗二人の間に、細い信頼の絆は繋がることが出来たようなのでした。 |