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■オープニング本文 ※このシナリオはIF世界を舞台としたマジカルハロウィンナイトシナリオです。 WTRPGの世界観には一切関係ありませんのでご注意ください。 開拓者ギルド受付の青年・利諒は、いつの間にかぼんやりと黄金色の雲の中を歩いているのに気が付きました。 とはいっても、その体験は心当たりがあるもので、もしや、と言う表情できょとと辺りを見渡しながら先を急げば、ふと、向こう側にある大きな異国風のお屋敷に気が付きました。 「ここは、南瓜君の、南瓜屋敷……」 ぱっと表情を輝かせる利諒、どうやら前にもこのお屋敷にやってきたことがある様子で、ちょっとばかり子供が一生懸命作った様子の蝙蝠と南瓜提灯の切り絵に、おきゃくさまかんげい、とくれよんで書かれた素朴な飾りの垂れ幕に笑みを零します。 「先客はいるんでしょうか? 賑やかになって居ると、南瓜君は喜びそうなんですけれどねぇ」 そんなことを呟きながら開け放たれた門を潜って中へ、あちらこちらに子供のぶきっちょな手によるハロウィン飾りで楽しそうに飾られており、扉を開ければ広間にも沢山の飾りが揺れており、そのうちの一つがきらきら光る矢印で、食堂を指しています。 「わぁ、南瓜尽くし……の、中に、ふわふわのクリームやキャンディ、チョコレートまで……凄いです、れぱーとりーを広げました、って感じで……」 ちょっぴり感心したように頷く利諒は、可愛らしいカードに『ボクを食べて』と書いてあるのを見て目を細めます。 「……うん、やっぱり美味しいです。しかし……肝心の南瓜君はどこにいるんでしょうねぇ?」 軽く首を傾げて利諒がもきゅもきゅと南瓜のマフィンを頂きながら歩いて行けば、どたどたと賑やかな足音。 「お菓子くれなきゃって、お菓子は十分だな……何でも良いや、いたずらすんぞーっ!」 「きゃ〜っ♪」 「わわわ、ま、前が、見えないです〜っ」 「……形式上、お菓子くれなきゃ悪戯する、と言うのが正しいというかそもそもハロウィンは……」 腕白、と言った様子の十ちょっとの少年が笑って追いかけていれば、礼儀正しそうな十程の少年におんぶしてもらってきゃっきゃと嬉しそうにはしゃぐ、六つぐらいの南瓜提灯を被った少年。 そんな三人の様子を、彼らより少し年上の光の加減でかともすれば紫にも見える銀髪の少年が、なにやらしたり顔でハロウィンについて蘊蓄を述べているようです……誰も聴いておりませんでしたが。 「なるほど、あちらはあちらで、ハロウィンのお祭りの最中ですかねぇ」 楽しそうな南瓜提灯の少年の姿が確認出来れば、利諒は自分なりにのんびりと過ごすことにするのでした。 |
■参加者一覧 / 羅喉丸(ia0347) / 柚乃(ia0638) / 礼野 真夢紀(ia1144) / 和奏(ia8807) / 紅 舞華(ia9612) / 玄間 北斗(ib0342) / フレス(ib6696) / エルレーン(ib7455) / ラグナ・グラウシード(ib8459) / 兎隹(ic0617) |
■リプレイ本文 ●南瓜屋敷 気が付いたら見知らぬ黄金色の雲の中にいて、目を瞬かせているのは柚乃(ia0638)、吃驚していましたが、暗いわけではなく明るい黄金色の景色、そして、道の先に見える屋敷に微笑します。 「綺麗な景色です……」 怖いと言うより何だか楽しそうな予感さえして、少し歩く足取りも軽くなり、やって来た屋敷の前で一度立ち止まると深呼吸をする柚乃。 そんな柚乃をまるで迎え入れるかのように開かれる屋敷の扉に、柚乃は意を決して足を踏み入れます。 「あ、おきゃくさん?」 そこにいたのは南瓜の頭を被った、柚乃よりも年下の様子の少年でした。 「初めまして、お招きありがとう」 黒くてふんわりとしたフリルに飾られたドレスに、紫のリボンが付いた黒い大きなとんがり帽の魔女の姿になった柚乃が挨拶をすれば、ぱぁっと表情を輝かせた様子の南瓜君。 「いらっしゃい、たのしんでいってね♪」 南瓜君の楽しげな様子につられるように、魔女の帽子から白い狐耳がぴょこんと立ち上がって。 「あちこち、見て回っても?」 「うんっ」 嬉しげにこくりと頷く南瓜君に微笑んで礼を言うと、柚乃はいつの間にか現れた白いふわふわの狐の尻尾を揺らしながら、屋敷の中へと入っていくのでした。 「むむ、南瓜君発見! なのである♪」 兎隹(ic0617)がびしっと言って南瓜君に駆け寄れば、弾むような足取りでフレス(ib6696)も直ぐにやってきます。 「南瓜君に楽しい宴の準備お疲れさまと、ありがとうを伝えたかったのだ」 「お菓子のお屋敷ってとっても素敵なんだよ! 兎隹姉さまと一緒に楽しんでいくんだよ」 「あ……ありがとう♪」 ちょっと吃驚したようではありますが、兎隹とフレスに嬉しそうに応え、南瓜君は楽しんでいってねと笑います。 兎隹は片眼鏡に懐中時計、ネクタイにベストというアリスのウサギさん、手にはエプロンドレスなアリスの姿をしたウサギのぬいぐるみも持って居て。 フレイは短パンに半袖、ボーイッシュな姿が天真爛漫な様子に良く似合っています。 「あ、あのね、あのね……」 「……ふむふむ、あちこちにこっそり隠してあるお菓子もあるのか……よし、探して見るのである♪」 「わ、楽しみなんだよ!」 内緒話をするように南瓜君が言えば、にと笑って頷く兎隹と、わくわくと顔を輝かせるフレス。 「早速行ってくるんだよ!」 「またあとでなのである」 楽しげに階段を駆け上がっていく兎隹とフレスを見送ると、南瓜君も嬉しげに奥の部屋へと足を向けて。 「ふぅ……しかし、今年も綺麗に飾り付けられていますねぇ」 笑みを浮かべやって来たのは利諒、そこに屋敷の玄関扉が開き顔をのぞかせるのは羅喉丸(ia0347)です。 「ああ、利諒さん」 「羅喉丸さんもいらしたんですね」 利諒が微笑を浮かべるのに中へと入ってくると、玄関ホールを見渡して感心したように羅喉丸は頷きます。 「凄いな、賑やかで楽しげな様子が感じられる」 「前に来たことがあるのですけれど、ここはこの時期だけ、お客さんを迎えることができるようで……ここに住んでいる南瓜頭を被った少年が一人でぜんぶ、おもてなしの準備をしているんですよ」 「ここを……一人で?」 驚いたように目を瞬かせ、羅喉丸は周囲を見渡せば。 「子供が一人、たいへんだったろうに……頑張って、飾りつけをして、料理を用意して、遊んでくれる人を待っていたのか……」 まだ出会っていなくても、その一生懸命さや寂しさ、そしてこの日の客人を楽しみにしているのは良くわかり、羅喉丸は少し考えると。 「それならば、客人として主人のもてなしに応えなければな」 「ええ、きっと喜びますよ」 早速探してみよう、そう笑うとゆっくりと羅喉丸は中へと入って行きます。 「おや……ぇ?」 そうっと扉が開いて入ってくる人の気配に利諒が振り返れば、そこにちょこんと立っていたのは十歳ぐらいの女の子、ですがとても見覚えのある気がして目を白黒させる利諒。 「林檎如何ですか?」 そうにっこり笑いながら林檎を差し出す女の子は、白雪姫のような愛らしいドレス姿の紅 舞華(ia9612)。 舞華は黄金色の雲に南瓜君のお屋敷だと気が付いて駆け出せば、夢ならばどうせなら自分も南瓜君達と同じぐらいの子供に戻って遊びたいな、とちらりと考えたよう。 「あれ?」 その矢先に、ぽむ、と十歳ほどのドレスを着た女の子になっており、嬉しさと楽しさでくすくすと笑うと、林檎の入った籠を抱えてわくわくと屋敷へとやって来て。 そうっと玄関ホールを覗き込めば、恋人の利諒がのほほんと立っており、嬉しくなって林檎を差し出したようです。 「一緒に遊びましょ」 「え? ちょ、ま、う、舞華さん?」 予想外のことにあわあわとしていた利諒ですが、思わず林檎を受け取れば、ぽむ、といつの間にやらそこには穏やかな様子の、やはり十歳位の少年になった利諒がきょときょとと自身の様子を見ていて。 「ね?」 「ぁ……う、うんっ」 にっこりと笑って差し出される舞華の手を利諒はおずおずと握ると、二人は顔を見合わせてからにっこり笑いあって、ぱたぱたと奥へ駆け出すのでした。 「わーい! 見てくれうさみたん! お菓子のおうちだおー」 (*´ω`)な顔をして、実に嬉しそうにはしゃぐのはラグナ・グラウシード(ib8459)、どうやらめるへん大好きらしいラグナさん、実に大喜びのよう。 「どうやらパーティーがあるようだ……これは是非参加させて頂かねば!」 飾り付けられているお屋敷の中を見渡して、(`・ω・´)と決意の様子のラグナは、一緒にいるぬいぐるみのうさみたんと一緒に耳を澄ますと、どこかからか子供の笑い声が聞こえたような気がします。 「あっちか? うさみたん行ってみよう!」 ちょこっとテーブルの上のごちそうに心揺らぎはするものの、そのあたりはやはり、ちゃんとパーティーに参加してからと思ったよう。 逸る足取りで奥に行けば、何やら不思議な表情を浮かべて顔を見合わせている、四人の少年がいました。 「ぁ……」 目をぱちくりさせるのは大人しそうな少年、きょろきょろと彼らの後ろの通路とラグナを見比べているのは、南瓜頭のひときわ幼い様子の子供で。 「初めてお目にかかる、私は騎士、ラグナ・ラクス・エル・グラウシード……」 自己紹介を始めるラグナは、すぐに南瓜君がちょこんと首を傾げて見上げているのに気が付いて、屋敷の飾りも鑑みて言葉を続けます。 「よろしければ、今宵のパーティに私も参加してよろしいか」 「うんっ!」 「あっ! 後、私の友達、うさみたんも」 少年の表情までは見えませんが、嬉しそうな様子でこっくりと頷いていたのを見て笑みを浮かべかけたラグナは、すぐに、はっとした様子でうさみたんを前に押し出すと(*´∀`)という笑みを浮かべて。 「うん、いいよ。かわいいこだね♪」 握手、と南瓜君がうさみたんの腕に触れれば、ぽんとパンプキンドレス姿に変わるのに、ヽ(´∀`)ノとばかりにラグナは喜んで。 「は、あぁぁ……」 早速おもてなしの御馳走を勧められて、幸せそうな表情で席に着くと、フォークを手に取り堪能を始める、そんなラグナに迫る影。 「えーいっ♪」 かぽ、という音とともに、大きな南瓜提灯がすっぽりとラグナの頭に被ります。 時間は少し遡ります。 「こんばんは、なのっ……えへ、よかったら、私もお邪魔していーい?」 南瓜君が戻って来たとき、少し前から来ていた少年達の所へ丁度エルレーン(ib7455)がやって来たところでした。 「わあ、すてき!」 飾り付けられた洋館にはしゃいだ声を上げってから誰が飾り付けたかを聞いていたところにやってきた南瓜君、エルレーンにほめられて照れた様子を見せていたのですが、そこへ近づく人影に気が付けば、内緒と指を口元に当てて隠れるエルレーンに首を傾げ。 「あーあ、おばかまるだしの顔しちゃってえ……」 エルレーンはそこにのこのことやってきたラグナに気が付くと、( ̄ー ̄)という表情を浮かべます。 子供達は何が起きているのか分からずに怪訝な様子はあるものの、南瓜君がお菓子を勧めるのに、幸せそうな顔をして卓に付くと、早速甘くてほろほろ溶ける南瓜のモンブランを一口、(´〜`)と味を堪能しては、(´∀`*)とうさみたんにも勧めて。 暫し少年達と幸せそうなラグナを眺めて何やら考えて居たところ、エルレーンは傍らにあった南瓜提灯を人が被ることも可能なことに気が付き、じりじりとラグナの背後から詰め寄っていきます。 「とりっく・おあ……とりーとぅっ!!」 お菓子をあげるという選択肢を選びようがない状況ではありますが、思い切り掲げた南瓜頭を、勢いよく振り下ろすエルレーン。 「えーいっ♪」 「ぬおおぉぉおっ!?」 かぽっ、と言う音とともにラグナの頭をがっつりと包み込む南瓜頭に、予想外の視界の変化に思わず声を上げるラグナですが。 「ぼくとおそろいだ♪」 「ぬ……ぐ、ぬぬ……」 嬉しそうに声を上げる南瓜君を前に、エルレーンに言い返すこともできないラグナ。 「とってもお似合いね〜」 ( ̄ー ̄)と笑いながらエルレーンはうさみたんの腕をぴこぴこ動かしつつ言うのでした。 ●みんなで遊ぼう 「狸さん!」 「まゆちゃんなのだぁ〜」 門を潜って中へと入ってきた玄間 北斗(ib0342)に気が付くと、礼野 真夢紀(ia1144)はぱっと顔を輝かせて駆け寄りました。 「狸さん、南瓜君のお屋敷ですの」 真夢紀と玄間は前にも一度この屋敷に迷い込んだことがあり、また訪ねる、と約束をしていたようです。 「南瓜君は……あ、いたのだぁ〜」 きょときょとと辺りを見渡していた玄間は、三人の少年達と目的の南瓜君、とそして一人の男性が側にいることに気が付いてそちらへと歩み寄っていたところでした。 「悪戯されるのは、こまるからな。どうしたら許してくれるかな」 そう言うのは羅喉丸、きゃっきゃと遊んでいた子供達に気が付いて、童心に返って一緒に遊ぶのも悪くはないと思ったよう、声をかければ、トリックオアトリート、とはしゃぎながら声を上げる南瓜君に笑みを零し遊びの輪に加わるというおねだりに頷いて。 「こんばんは、今年は約束守れてよかったですの」 「南瓜君〜お久しぶりなのだぁ〜約束通り、また遊びに来たのだぁ〜」 「わ、まゆきちゃんにたぬきさんだ♪」 「あっれー?」 真夢紀に目を瞬かせた少年は、芳野のお祭りなどで顔を合わす嶺騎少年、一緒にいた幸秀は羅喉丸や真夢紀に、傍らにいる少年を自分たちと一緒の開拓者の卵で、ヴィットという魔術師だと紹介して。 「うちの南瓜提灯を探しているうちに迷い込んだという現状ではあるが……」 「面白そうだし一緒に遊んでいる、と」 羅喉丸に頷くヴィット、周囲に迷惑をかけてないと良いが、と話す彼の相棒の南瓜提灯が、羅喉丸の相棒と顔を合わせて、同じ屋敷で演奏していたのはまた別のお話。 南瓜頭を摺上げるラグナと、うさみたん抱えてお菓子を見ていたエルレーンも加わって、みんなで何かしようとなって。 「かくれんぼする人、この指とーまれ♪ それとも、人数もいますし、色鬼とかの方が良いですか?」 「まずはかくれんぼをしてみるのだぁ〜」 「ぼくもぼくも〜」 ぴょんと真夢紀の指に真っ先にとまるのは南瓜君、みんなそれぞれ手を出してちょんと捕まると、にっこり笑って早速かくれんぼ、の前に。 「仲間に入れてください♪」 「おねがいしま〜す」 「あ、え」 ぴょこんと階段の陰から笑いながら顔を出す十歳ぐらいの子達、それが舞華と利諒だと気が付いて、羅喉丸は目を瞬かせます。 「みんなであそぶのだぁ〜」 「……衝撃的なモノを見た気がするが、まぁ良いか……」 何か言いたげなヴィットですが、玄間が二人を迎え入れるのを見つつ、誰から始めるかと聞いたりしています。 「俺鬼やるぜー」 いちばーん、と手を上げるのは嶺騎、十だと早すぎるよとか何とかわいわい言いながらも、兎に角嶺騎がゆっくり数を数え始めるのに、きゃーと一斉に逃げ出して。 「よーん、ごーおっ」 嶺騎が数を数えている間に、それぞれあちこちに散らばって隠れるのでした。 「ん〜♪」 柚乃は折角遊びに来たお屋敷のあちこちを見て回っていました。 「わっと、失礼」 ぱたぱたと走り抜ける舞華と利諒が横を摺り抜けていけば、同じ方向に走ってきていたヴィットが柚乃にぶつかりそうになって慌ててお詫びを入れて。 「今晩は? 皆さんお急ぎのようですけれど……」 「あぁと……実は、居合わせた者たちで、かくれんぼをする事となって、とと」 そこで、そろそろ数を数え終えるのを思い出して、咄嗟に直ぐ側の花壇の裏へと身を隠すヴィット、直ぐにそこに駆け込んできた嶺騎が柚乃へと挨拶すると、ひょこっと花壇の裏を確認するのですが……。 「うーん、ここには居ないか」 次を探しに駆けていく嶺騎をばいばい、とにこやかに手を振って見送る柚乃は。 「……助かったが驚いた……」 杖をひょい、とあげる柚乃、そして柚乃の魔法で井戸の入口にぽんと移されたヴィットはそう言いつつも有難う、と笑って礼を言って。 「全ては、ハロウィンの魔法だから」 柚乃が微笑んで摘んだ杖を軽く振れば、庭のあちこちからぽんぽんと現れた蕾が花開いていき、ふわふわと輝く小さな妖精達が飛び交います。 「わぁ、すごいー」 隠れる場所を探してうろうろしてしいた南瓜君が庭の真ん中へと出て来ると、微笑みながら口ずさむのに、妖精達は庭を明るく照らしながら踊っており、まさしく夢のような光景。 「ぼく、こんなきれいなの、はじめてみた!」 歌い終えてそっと差し出した手に乗った妖精を見ながら、はしゃぐ南瓜君を見て柚乃は。 「とりっく・おあ・とりーと☆」 そう悪戯っぽく笑うのでした。 「利諒君、早く」 「わ、わわ……」 ひょいひょいと屋根裏部屋にあるタンスの上から声をかける舞華に、利諒はあわあわとして、先に女の子が上がっているからか、それともタンスによじ登るのに躊躇しているのか。 「結構探すところが多いなぁ」 そこへ屋根裏への階段を上がってくる足音と、梁幾の声、慌てておもちゃの中へと飛び込む利諒に、タンスの上から梁に移ってじっと静かにしている舞華。 「んー……埃に足跡……屋根裏も結構掃除されてるんだなぁ」 首を傾げつつきょろきょろしてから、戻ろうとした嶺騎ですが、おもちゃの山が小さく上下しているように見えてにまっと笑うと。 「わっ!!」 「わわっ!?」 じっと小さくなっておもちゃに埋もれていた利諒ですが、嶺騎の声にびっくりしてしまってわたわたとおもちゃの中から出てきます。 「くすくす……」 「ん? あ、舞華さんもみっけー!」 「見つかっちゃった」 そんなやりとりを見ていておかしかったのか思わず笑いを零してしまう舞華、笑いながら二人の所へとすたっと降りると、見つかった人はホールで待っていてと伝える嶺騎。 「もたもたしちゃってごめんなさい」 「大丈夫」 見つかっちゃって、と謝る利諒に舞華はなでなでと頭をなでると手を出しだし、二人は手をつないでホールへと向かうようなのでした。 「何でお前がここに……」 「しっ、見つかっちゃったらどうするのよ」 ひそひそと言い合うのはうさみたんと南瓜……ではなく、南瓜提灯を被ったままのラグナと、うさみたんを顔の前に置いてじっと身を潜めているエルレーン。 二人は散り散りになった時に同じ方向へ偶然なのか思考が同じなのか、同じ方向へと駆け込み、そこは厨房の棚の下。 「そ、そもそもなんでうさみたんを……ていうか折角可愛くしてもらったうさみたんを……うさみたんをかえせーっ」 。゜(゜´Д`゜)゜。こんな顔でだだっ子になったラグナと、厨房にきょろきょろしながら嶺騎が入ってくるのがほぼ一緒で。 「ぁ……その、お取り込み中に、ごめん……」 「え、いやいやいや、待って、なんかアタシがいじめて泣かしたみたいじゃない!?」 パタン、と閉じられる厨房の扉に、エルレーンは帰らなくて良いから、と止めるのでした。 「む、そこにいるのは、真夢紀さん?」 衣装部屋を開ければ、きょろきょろと探していて、真夢紀は衣装部屋の可愛らしいドレスの間に隠れていたようで、見つかって笑みを浮かべると出てきて。 「あと見つかっていないのはどなたですか?」 「えぇと、羅喉丸さんと、狸さんと、南瓜君と……幸秀に、ヴィット、かな?」 指折り確認してみれば、早速ほかの子達を探しに行く嶺騎を見送りホールに行けば、気が付くと、ちょこんとホールの面々に混じって南瓜君が柚乃と途中であった羅喉丸と合流して戻って来ており。 「あれ? 嶺騎さん、まだ南瓜君は見つかっていないって……」 「えへへ……おなかすいちゃったの」 「てこてこ歩いていたので、見つかったのかなと思ったんだが……」 隠れていたところ、お腹がすいてしまった南瓜君が柚乃とホールに向かって居たのを見かけた羅喉丸は、どうやらおぶってきてあげたようで、嬉しそうな様子の南瓜君。 「それは、見つからないわけね」 思わず真夢紀はくすりと笑いながら言うのでした。 「あ、ヴィットみっけーって、どうしたんだ?」 嶺騎が何やら裏庭の辺りをうろうろとしているヴィットに気が付いて声をかければ、難しそうな表情を浮かべていたヴィットはほっとした表情を浮かべます。 「あぁ、良かった、実は幸秀が見当たらなくて……話していた最中に、急に声が途切れて」 「どうしたのだ〜?」 「あ、狸さん……幸秀見ませんでした?」 先程から南瓜君の行き先に先回りして楽しませたりしていた玄間は、何やら困った様子のヴィットが嶺騎と話しているのに気が付いて声をかけると、 「うーん、さっきそっちの角からこちらに曲がってきたところは見たのだ〜」 いつの間にか幾度か先回りして、幸秀達は朧いたり楽しんだりしていたのですが、見失ってしまったよう、消えたのはこの辺りか? と顔を見合わせると、その周辺を三人は注意深く探し始めるのでした。 「くすん……まだ見つけてもらえない……」 膝を抱えてしょんぼりしている幸秀は、暗い部屋の中で半べそをかいているところでした。 どうやら普通に歩いていたところ、草陰に足を踏み入れた瞬間にそこに転落したようで、ころころ転げて、バタンと言う音とともに、気が付いたら真っ暗で何も見えない部屋の中、流石にしょげていたところ。 くすんとしていれば、微かに声が聞こえてきたかと思うと。 「兎隹ねー様、ここの鍵みたいなんだよっ」 「おお、しかし、この鍵は他のと違って、あまり飾り気がないと言おうか……開いたであるな」 聞こえてきた声とともに、がちゃりという音と開く扉、そこには逆光を浴びた兎さんとボーイッシュなアヌビスさん。 明かりが必要であるな、とカンテラを取り出して部屋を照らせば、半べそ状態の幸秀がぽかーんと入って来た二人、フレスと兎隹を見ていて。 「宝探しに、思いがけぬものを見つけたようなのである」 ふむ、と考える仕草をする兎隹、フレスは目を瞬かせてから、笑みを浮かべて手を差し出すのでした。 ●楽しいパーティー 「……南瓜食べ放題……」 ふむ、と、大広間のテーブルに沢山飾り付けられたハロウィン飾りの中に、美味しそうなお菓子がほこほことしているのを見ながら、和奏(ia8807)は呟きました。 じっくりとどんなお菓子があるのかを見て回りながら、考えるのは、折角沢山の種類があるのに、全部食べきらないでお腹いっぱいになってしまうのは、ちょっと残念ですよねぇ、ということで。 「この時期だと、やはりプリンとタルトをよく見かけますね」 とりわけ用のお皿にちょんちょんと切り分けたピースを載っけて卓に付けば、ふわふわと漂ってどこからともなく現れる南瓜提灯が押して来るカートにはティーポットが。 「あぁ、美味しいお菓子は美味しい御茶に良く合いますねぇ……」 ほわっと僅かに幸せそうな様子で息を付く和奏は、一口紅茶を頂けば、ほんのりと花を思わせる香りを楽しんでからゆっくりと御茶を味わいます。 「先日は、和菓子屋さんでも、ハロウィン意匠のお菓子を見かけました」 「?」 和菓子と言う言葉に、どんなの? とばかりに首を傾げてみる南瓜提灯、和奏がこんな風な、と説明しようとすると、ぽむっと目の前に出て来る和菓子、その可愛らしいものを興味津々に見ています。 「ひとつ如何ですか?」 ぱぁっと明るく光る南瓜提灯に和奏がお菓子をはい、と渡してあげれば、御茶を給仕しつつも、嬉しそうにぴこぴこと回っている南瓜提灯。 今後のハロウィンパーティーでは、きっと天儀風のお菓子が幾つも用意されることでしょう。 「おや、パーティーが始まるようですねぇ」 行ってみましょうか、と南瓜提灯にのほほんと誘うと、和奏はダンスホールに向かうのでした。 「開かずの間だったんだよ」 「うん、そのかぎ、なくしちゃってたの」 かくれんぼで幸秀が転がり落ちたのは地下室への外階段で、その部屋は南瓜君がさがしていた鍵で入る部屋だったため、真っ暗で飾り付けもなかった様子。 フレイが南瓜君に確認すれば、こくりと頷く南瓜君は、ちょこんと羅喉丸のお膝を選挙しつつ、腕を組んで。 「こんどまでにおにわとちかもなおさないと」 「やることが沢山あって大変だな」 羅喉丸がぽむぽむと撫でると嬉しそうに笑う南瓜君、先程から羅喉丸は懐いて甘えている南瓜君が勧めるお菓子を食べて美味しいと伝えてあげたりしています。 「この尻尾は本物、ではないですよね……」 「それより私は、たまにこの御仁がとても大きく見えたりぽんとぬいぐるみに見えたり、何だろう、この、知っているのに分からない微妙な……」 「着ぐるみなのだぁ〜」 不思議そうに狸尻尾を見る幸秀に、ヴィットは何やら自身の身長と確認しつつどれ位の身長だろうと首を傾げていて。 「たまに自分たちと同じ大きさに見えるんだよなぁ?」 「んー……狸さんですし?」 目が疲れているんだろうか、とごしごし擦る嶺騎に、ぱくりとプリンを頂いてから、ちょこっと首を傾げる真夢紀。 「はい、どうぞ」 「ありがとう」 紅茶を配っていた南瓜提灯を手伝ってせっせと紅茶や珈琲、御茶などを楽しげに配っている利諒から、御茶とクリームがたっぷり載ったパイを受け取って舞華はにっこりと笑います。 「南瓜君にお礼なんだよ」 にこりと笑ったフレスが立ち上がって軽やかにホールの中心で舞い始めれば、柚乃が杖を一振り、楽しい音楽とフレスの踊りに合わせてキャンディーやチョコレートが舞って。 「うむ、華やかで良い夜なのであるよ」 にと笑って南瓜君へと、クッキーを囓りながら言う兎隹に、南瓜君も嬉しそうに笑って頷くと、羅喉丸の膝の上からぱちぱちと惜しみない拍手を送るのでした。 ●またね! 楽しい時間は過ぎていって、そろそろ夢から覚める時間。 「また遊びに来るからね! ねーうさみたん♪」 うさみたんで手を振ってから、お腹いっぱいになったかぐーすかと寝ているラグナを引き摺って出て行くエルレーン。 「1年に一度だけってのは、やっぱり残念ですよね……南瓜君、これ……」 真夢紀がりゅうとへび、それにもふらのぬいぐるみを南瓜君に渡して、せめて少しでも寂しくなりませんように、と祈りを込めれば、嬉しそうに受け取って大事そうにギュ、と抱き締めて。 「我が輩からも、ささやかなお礼だ。受け取って貰えるだろうか?」 兎隹がそう言って渡すのは、ちょこんと愛らしい南瓜君とフレス、それに兎隹をぬいぐるみにした一組で。 「また来年遭う約束と、友達の印なのであるよ!」 「ともだちのしるし……ありがとう」 ちょっぴりじんわりした様子の南瓜君、その二人の前に子供になって居た舞華と利諒が来れば、ぽん、と元の年齢に戻った二人。 「今日は楽しかった、ありがとう、また遊ぼう」 お礼を言って別れがたいところを、最初にゆっくりと屋敷を後にすると。 「小さな利諒君可愛かったな」 口の中でだけ小さく呟くと、きょとんとしている利諒を見て舞華は笑みを浮かべます。 「じゃあ、またな!」 「また、きっときますから」 三人の子供達が手を振って、玄間と真夢紀に引率されて出て行くと、ご馳走様でした、と和奏が告げてゆっくりと帰っていき。 「お菓子も美味しかったし、とても楽しかったです」 柚乃が微笑んではい、と杖を渡してあげて帰っていけば、羅喉丸は屈んで南瓜君と顔を合わせて。 「楽しかったよ、ハロウィンの魔法のような夜にまた会おう」 「うん……きっと、また、ね」 南瓜君を撫でてあげてから、ゆっくり外へと向かう羅喉丸は、振り返ると手を振って。 「再見」 「またね!」 一生懸命に手を振り返して見送ると、南瓜君は、貰ったぬいぐるみ達を大切そうに抱き締めると笑みを浮かべて、ゆっくり部屋へと戻っていくのでした。 |