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■オープニング本文 今の季節は夏‥‥うだる様な暑さが続く中、それでも何時もと変わらず浮かぶ星月の下は日中に比べれば大分涼しい。 そんな時期ともなれば夜に動き出す人が多く、晴れ間も多い事から夜空に想いを馳せる者も決して、少なくはない。 神楽の都から少し離れた所にある村の傍らには、夏の夜空を眺めるに良いスポットと噂されている小高い丘があった。 「綺麗な星空ね」 「あぁ、綺麗だな‥‥けれど君には叶わないよ」 なんてベタなやり取りを交わす恋人達が例年を通していたりするのはお約束として、そんな人達を相手に商売をしようとする者も訪れれば、この村の数少ない収入源として成り立っている『月下丘(げっかきゅう)』と村人達の間で呼称されている丘は、そこに住まう人々にとって掛買いのない生命線の一つと言えるだろう。 だがしかし、その丘にも今年に入ってから何時からか近隣にてアヤカシが村人達の間で散見される様になると、今の今まで人の立ち入りが禁じられていた。 「とは言えこのままでも、何時被害があるか知れたものではないな‥‥」 丘に少数、人が訪れた際に現れる事が確認されているアヤカシの存在に立ち入りだけ禁じていればいずれは‥‥と考えていた村人達ではあったが定期的な見回りの度、律儀に姿だけ現すアヤカシの存在は今に至るまでも変わらなければ、頭を寄せ合っていた村人達は今になって漸く一つの決断を下した。 ● 場面は代わり、開拓者ギルド。 このままでは数少ない収入源の損失もあるが、それ以上にアヤカシが現れてから今まで穏やかに過ごせた筈もなければ、いずれは人命にも関わる一大事に至ると判断した村の者達は依頼として開拓者に対応して貰おうと決めて、代表者をギルドへ派遣させていた。 「‥‥と言う事でして」 「成程成程、それは村にとって一大事ですねー‥‥ふんふん。困りますよねー?」 (「‥‥大丈夫なのかなぁ」) その代表者なのだろう青年はギルド員の、まだ少女と呼んでも過言ではない見た目幼い彼女のやはり見た目に相応しい仕草と言葉遣いに微かながら不安を覚えていた。 「まぁでも、それならやる事は一つですよねー。単純明快で良いです、はい」 しかしそんな彼の胸中は知る筈もなく彼女、やがて一つ頷くと単純な案件と判断して目前に置かれていたまだ純白の紙片にいよいよ筆を走らせながら、青年へと問う。 「アヤカシについて、形状や数の詳細と周囲の地形について教えて貰えますかー? あ、後は報酬ね?」 「報酬は‥‥これだけですが、足りますか?」 その早い判断に面食らいつつも先ずは村から集められるだけ集めた、開拓者への報酬が詰まった袋を懐から出しては尋ねる青年。 お世辞にも栄えているとは言えないその村でアヤカシへの対応を今まで憂慮していたのは、金銭的な負担もあっての事だった。 「ふーん‥‥」 しかしギルドとしてはその事情まで知る筈もなく、相場として通常の報酬よりは少ないだろう金銭が詰まった袋を青年が彼女の目前に置けば、響いたやや軽めの音から大よその額を察してギルド員の少女は厳しい表情を浮かべるも 「問題ありませんよ。それぞれに都合がある訳ですし、金銭の多少に関わらず困っているならば依頼として請け負うのが私達、開拓者ギルドですからー」 すぐに表情を変え、笑顔を湛えては青年の不安を洗い流すと彼女は引き続き詳細な話を聞くべく再び口を開くのだった。 「それではー、続きの話を宜しくお願いしますね?」 |
■参加者一覧
幸乃(ia0035)
22歳・女・巫
野乃宮・涼霞(ia0176)
23歳・女・巫
佐久間 一(ia0503)
22歳・男・志
志藤 久遠(ia0597)
26歳・女・志
越智 玄正(ia0788)
28歳・男・巫
江崎・美鈴(ia0838)
17歳・女・泰
霧里まや(ia0933)
16歳・女・陰
水津(ia2177)
17歳・女・ジ |
■リプレイ本文 ●村に至りて 開拓者ギルドに張り出された依頼を請け負い、果たして件の丘がある村へ向かったのは八人の開拓者達。 「月下丘、中々に風情のある名の場所ですね」 やがて村へ至れば、遠目にも伺える『月下丘』の方を見つめ呟いたのは志藤 久遠(ia0597)。 「しかし、今や収入源たる名所に出るアヤカシ‥‥村としては大問題ですね」 「えぇ、全くその通りで‥‥」 言葉遣いこそ丁寧に、しかし抑揚なく硬く冷たく響くがそれは至って気にせず野乃宮・涼霞(ia0176)も後を追い、真面目な面持ちに声音で彼女に応じると二人の目前にいる村長もまた、畏まりつつ首を縦に振る。 「人々の憩いの場がアヤカシの脅威に晒され続けるのを黙ってみている道理なし。士の務め、果たしてご覧に入れましょう」 「なのでご安心を、もう少しだけお待ち下さい」 そんな様子の村長に二人はそれぞれ、調子こそ違うも確かにアヤカシの打倒を誓うのだった。 やがて村長との話も終え一行、村内の様子を見回って見るも‥‥一見、穏やかなその雰囲気の中に潜んでいる僅かな村人達の緊張感は見逃さず、越智 玄正(ia0788)が眉根を潜めつつも囁けば決意を新たにする。 「‥‥地元の者達が安心して過ごせる様、アヤカシを一掃せねばな」 「困ってる人を助けるぞっ! ついでにアヤカシを格好良く倒せたらいいなぁー」 その玄正の微かな囁きを敏感に耳にし、江崎・美鈴(ia0838)もまた続く‥‥明朗に響いた声音の割に人見知りする彼女は一行の輪の中から少し外れた、遠い位置で。 「‥‥で、でも‥‥油断も、余り‥‥良くないです、から‥‥気を付け、ましょう」 ともあれ、そんな決意を前にしかし水津(ia2177)は開拓者ギルドで面を合わせてから今まで、気弱な性格から顔を上げないままに美鈴の方へ頭だけ向けて嗜めると何度も頷き応じる彼女、相変わらず遠い位置から。 「此度の依頼、単純明快で良いですね。つまりアヤカシを倒せば良いのです。うむうむ、事は単純‥‥ただ、明快と言うには足りず、疑念が一つ」 そんな彼女らのやり取りに微笑む一行の中、霧里まや(ia0933)は改めて依頼の内容を反芻するがその最後に首を傾げると、未だ解する事が出来ない疑念を呟く。 「アヤカシなのに人を襲わないとはルール違反ですね、何のルールかは知りませんが。ともあれ話だけ聞く限りではアヤカシの動きは果たして‥‥何か警戒してる様にも見えますし」 「村まで襲ってこないのは知能があるからか、何なのか」 そのまやの呟きに幸乃(ia0035)もまた、表情こそ変えずに頷くが‥‥呟いた所で解が出る筈もない。 「とにかく、村人の安心を得るのが先決である以上は手をこまねくより行動するとしよう」 そう、今は結論付けて佐久間 一(ia0503)が口を開き言うと、同意と言う代わりに頷き応じる一行は改めて『月下丘』を見つめた。 ●月の丘 さて、一の言葉が紡がれてから後にいよいよ行動を始める一行は何もさて置き、件の丘の調査から開始する。 「良い、見晴らしですね」 「こう言う所にまでアヤカシが出るとは、何とも」 規模の程度はまだ知れないが、少人数で丘に現れると言う件のアヤカシの存在から一行の全員が全員、揃い丘に足を踏み入れれば幸乃は淡々とながらもその丘から見える風景に感嘆するが、だからこそ涼霞はやるせなく溜息を漏らす。 「それにしても本当に、何もありませんね」 「えぇ、ですが‥‥もしかしたらこちらの様子は伺われているかもしれません」 しかし感慨に耽る余裕はない、とでも言う代わりにやはり抑揚少なく久遠が呟くと一も頷き辺りを見回しては、村とは反対にある森の方を指しては周囲の警戒は緩めない。 「ともあれ、やる事をやってしまいましょう」 だからこそ、まやはそれだけ告げると一行はそれぞれが離れ過ぎない形で丘の調査を始めるのだった。 それから後‥‥丘周辺の地理に状況を確認すれば一行は村へ戻り、来る戦いに備えて村人達から情報を集め、それらを精査していく。 「所で『月下丘』って大層な名前がついているけど、何か曰くはあるの?」 「若しくは近くの森も然り、何か知っている事があれば教えて欲しい」 アヤカシに関する詳細な情報を得ながらその最中、『月下丘』や村の近隣に纏わる伝承等の調査も行われるが 「いや、確か村長から聞いた話だと‥‥何となく、語呂が良い感じで決めたとか」 「うーん、別にこれと言って聞かないわねぇ?」 美鈴や玄正の聞き込みも虚しく、特にこれと言った話を聞く事はなかった。 「隠し事をしている風にも見えなければ、する道理もないか‥‥」 そして結論に至る玄正は早く割り切り、その場から踵を返すも‥‥美鈴はたまたま見かけた野良猫と遊びに興じようとし、しかしすぐに気付いた陰陽師によって引き摺られる事となれば二人、まだ得なければならない情報もある事から再び村内の闊歩を始めた。 初日は現場の確認と情報の精査に作戦を纏めるだけで終われば翌日、一行は再び『月下丘』へと足を伸ばす。 「何とかなる、でしょうか‥‥?」 「そればかりは何とも、やってみない事には。がそれで他に手段がない訳ではないからきっと大丈夫だ」 作戦の内容を理解しているからこそ、しかし水津が不安げに言葉を紡げばそれは否定せずに一は応じるも、その不安こそ払拭する様に最後に言葉付け足せば笑んで後にこれから戦いの場となる『月下丘』を見つめるのだった。 ●乱戦乱舞 丘の頂点‥‥森を見下ろす様に一と美鈴、久遠が立ち尽くしてはアヤカシ達の出現を待つ中、彼らを村側の斜面に伏して見守る水津が声を揺るがせ言う。 「‥‥来ませんね」 玄正が村人から得た情報の通りなら、撒き餌を使わずとも三人程の囮を用いればアヤカシは現れる筈と言う結論から待っていたのだが、意外にあっさりとは現れてくれない。 「こちらの気配に気付いているか、それとも‥‥」 故に一は思案を巡らせるが、その中で久遠は自らの左腕を自身の得物で薄皮一枚だけ裂いて血を滴らせながら言う。 「しょうがありません、これで果たして誘われれば良いのですが」 すればその効果が出てか、それとも漸く丘の上にいる彼らの存在に気が付いてかは分からないが森の方から少しずつ、狼型のアヤカシがゆらりと姿を現す。 「漸く出てきましたか。さて‥‥見せて貰いましょう。狼さんのお力とやらを」 なればと身を伏せ隠れていた他の一行は三人が丘の頂点まで連れてくるまで大人しく待つ間、それを眺めながらまやは至ってマイペースに言葉を吐けば‥‥やがて『月下丘』にて戦端は開かれる。 「中々に多い‥‥」 果たして森の中から現れたアヤカシの数は十を超え、それを目前に玄正は呻くが‥‥それでも全体の動きから力量の差はあると判断したからこそ、アヤカシと切り結ぶ者らを確かに支援する為に距離を置くべく、後方へと飛び退る。 「うにゃーう」 そんな彼然り、一行の半数以上は後衛に座する職の者が多いからこそ前衛を勤める一人が美鈴の気は吐く‥‥吐いていると思う。 尤も泰拳士である彼女の型は我流で技の一部に猫の動きも取り入れているからこそ、間の抜けた声もつい発してしまうだけ。 「っと、これで‥‥どうだっ!」 その、蛇だか猫だかを模した不可解な軌道を描く拳が直撃したアヤカシへ立て続け、美鈴は掌を当て体を入れ替えては地面へ叩き付けるも直後、背後から飛び掛ってきたアヤカシには微か反応が遅れて爪が肩を抉る。 「余り無理はするな。自分らは壁、主力の方へアヤカシを通さない事が主になる」 「分かっているっ」 やや力任せな感がある、そんな彼女を窘める様に一は声を響かせながらも先程美鈴が伏したアヤカシへ業物の刀を振るい斬撃見舞わせてはその存在を現世から抹消する中、噛み付きながらも美鈴は軽微とは言え先の出血から多くアヤカシを請け負っている久遠の元へ駆け寄り、拳を振るうも 「まだ、大丈夫ですから余り陣を乱さない様に」 当の久遠は新たな傷を体の各所に負いながらもしかし、平静を保って応じれば長大な槍を眼前に牙を剥いては飛び掛ってくるアヤカシのその鼻面へ、全力を持って叩き付けた。 「面倒ですね」 そんな最中、幸乃はと言えば‥‥木陰に身を伏せては吐いた言葉の割には場の全状況を抑えながら冷静に支援、援護に徹すれば他の皆もまた精霊を行使して前に立つ者の傷を癒し、アヤカシ周辺の空間を歪めては邪まな存在を捻じ切らんと力を振るう。 「捻じれ、伏しなさい」 だが玄正が静かな裂帛と共に放った歪みにまた一匹のアヤカシが霧散しても未だ動けるアヤカシは多く、やがてその内の一匹が久遠らの築く壁を抜けて突進を仕掛ける。 「迷惑を掛ける様な真似は‥‥っ!」 「その心意気や良し、ですね」 しかし、それを目前にしても涼霞は開拓者の意地として‥‥何よりも仲間の為に甘んじて攻撃を受ける訳にはいかないと気を吐くと、頼りなくも扇子を翳しては後方へ押しやられながらもその一撃だけ辛うじて凌げばまや、ゆるりと符を取り出しては放り風の刃と化した式を操ると涼霞へ突進したアヤカシを一刃にて切り伏せる。 「でも、気は緩めない様に」 果たして着実に数が減ってきているアヤカシを目前、表立って安堵の息は吐いていない筈なのに今は木陰で矢を射ってはアヤカシの牽制を行う幸乃に内心を見抜かれた水津はビクリ、体を震わせるも 「‥‥は、はいっ」 次には素直に応じれば、習得する技を振るい文字通りに久遠を囲む一匹のアヤカシを力の歪みにて捻じ伏せる‥‥戦闘が未だ続くからこそ、猫を被るとか被らないとかは気にしないし、気にしてもいられない。 それでも迫る、安堵の時。 数は多く、連携においても一行に劣らない戦い振りではあったが一行の方が上手であればいよいよアヤカシの数は一匹に減じると、場の緊張感は維持したままに残る一匹と睨み合う久遠。 「‥‥ふっ!」 傷こそ癒えているが、乾いた血が未だこびりついたままに一瞬だけ息を吐いては地を蹴ると今更に踵を返すアヤカシのその行動から、遅かったとは言え戦況を判断するだけの知恵はあると窺い知れたが 「それも考慮していました、そうそう甘く見ないで貰いたいものです」 無論、逃がす筈もなくまやが呪縛符を放ち式でアヤカシを絡め取れば‥‥直後、肉薄した久遠は勢いのままに槍を突き出してその胴を抉り穿つのだった。 ● 戦いが終わって後、負った怪我を巫女達の癒しの力で癒して後に一行はアヤカシの全数が知れない事から打ち漏らしがなき様、森の捜索にまで足を伸ばすも 「どうやらもう、いないか‥‥?」 「その様で」 森の中は至って静かなものでアヤカシが発生した原因はおろか何の気配すらも感じられず、玄正の呟きに心眼を用いて一が後者の解だけ確かに返す。 その場に命かアヤカシかが存在しているならば見通す事が出来る心眼を振るった上で言うのだから、間違いはないだろう。 「しかし、心眼を持っても何も捉えられないと言う事は」 だが、その結論からまた別の解が導き出された玄正は静かに瞳を閉じて呟く。 その解‥‥即ち、この森に住んでいただろう動物が既にアヤカシに食われ存在しないと言う事に。 「‥‥せめて清め、哀悼を‥‥」 だが‥‥いや、だからこそか。 静かに水津は茂みが少ないこの森の入口を前に屈み、塩を盛れば祈り織ると彼女に続いて皆もまた頭を垂れるのだった。 ●月下星乱 それより後、村へ戻った一行はアヤカシを無事に討伐した旨を村長へ伝えればその夜の内、『月下丘』にて催される宴会。 「さ、宴会です。怖いアヤカシはもういませんしね。足りない報酬は宴にて賄って貰いましょうか?」 「‥‥ま、まやさん」 村中の皆が皆、強いられていた緊張感を解放する様にこぞって丘に集えばその盛況な賑わいの中、最も見晴らしの良い場所に陣取るまやの不躾な申し出を窘める水津だったが‥‥邪気のない悪戯めいた笑みを見止めると思わず釣られ、微かに口元だけ緩ませる。 「月下丘の名に相応しい光景を見て帰れれば、それで十分でしたのに」 「それに報酬は頂いていますし、アヤカシ退治は開拓者の使命ですので」 「そんな事、気にしなさんでくだせぇ」 かたや、思いの外に大規模な催しとなった宴会を前に涼霞と久遠が揃い気を遣うも村長の更なる押しを受ければ開拓者とて、折れる他にないのが人情。 「それなら‥‥折角の御好意ですし、お言葉に甘えてしまう形になりますが‥‥」 「共に、楽しませて貰うとしよう」 「えぇ、是非とも遠慮なさらずに」 やがて水津と玄正が頷けば、笑顔で応じた村人の一人が合図を皮切りに宴会はいよいよ始まった。 「よっし皆、『月下丘』に乾杯だっ!」 一人、村の宿が縁側に佇んでは『月下丘』を見つめる幸乃が手酌で酒を啜る。 「‥‥綺麗ですね、それに静かで」 思ったままの事を口にしてまた少し、杯に口を重ね呟くのだった。 「今回、この風景を守る事が出来たのですね‥‥」 「ささ、ぐいっと」 再び『月下丘』へと視点を戻せば、場にいる村人達に開拓者はてんやわんやの大騒ぎ。 「あ、申し訳ありません。お酒は‥‥」 「皆さん、余り嗜まれないので?」 「は、はぁ‥‥」 酒を断るばかりの者が多い故に中年の村人は不満げに、だが村の窮地を救ってくれた開拓者達をぞんざいには扱えず、止む無く一や水津へその代わりに茶を勧めるが 「アヤカシは退治して、いない事も確認したのですからそんな気にせずとも」 「そうだにゃ〜」 また一方では村人達に勧められるまま、遠慮なく酒を飲み干すまやに美鈴もいたりする訳で。 「ふむ、しかしよくも華麗に舞うものだな」 「‥‥え、えぇ‥‥そう、ですね」 その賑々しい中、玄正に水津や他の村人達が視線は月下の元で華麗に舞う涼霞の姿を見ては感嘆の声を上げれば 「良かったな、もう怖くないぞー」 美鈴は美鈴で酒を飲みながらも子供達をあやしては笑顔を振りまいたりと、それぞれに村人達と気持ちを同調させては心の底から楽しむのだった。 「やはり、開拓者と言うものは良いものだな‥‥」 その光景を目前に、玄正は口元だけ微かに綻ばせて輝く月を中心に漂う星を見上げ呟いた。 |