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■オープニング本文 武天のとある街に家族ぐるみで診療所を営んでいる医者一家がいる。 街の人ならば知らない者はいないほど街にとって大事な診療所。 その中でも奥さん先生がとても人気だ。 老若男女問わず優しく時に厳しい人。大抵の皆が大好きだ。そうじゃないのは奥さん先生に一杯喰わされた悪い人。 気風がよいと思いきや、所作がどことなく上品だ。 どこの育ちかと聞けば悲しそうに困った顔をする。街の灯火が消えたようにも思えてその話は禁忌となった。 医者としての腕もよいのだ。 名は倉橋葛。 勿論、旦那先生、若先生もいい医者だ。 そんな折に怪我をした一人の旅人が診療所に担ぎ込まれた。 興奮した馬が暴れて落馬した所を診療所を知る町民に発見されたようだ。 幸い、大した怪我は無く、経過も順調。馬も荷も無事だ。 「けど、大丈夫‥‥?」 心配そうに旅人を見つめるのは葛だ。 「大丈夫ですよ先生! 早く帰らないと母ちゃんが心配するんで!」 お調子に乗った旅人がぱしっと、二の腕を叩くと顔が強張る。怪我をしたところだから仕方ない。 「ほら、言わんこっちゃない」 葛が眉を吊り上げると堪忍と旅人は両手を振る。 「本当に早く帰りたいんですよ」 「早く家に帰りたいのは解るけど、あの辺りはアヤカシもいるし‥‥」 うーんと腕を組む葛に旅人はあっと、声を上げる。 「それなら葛先生も一緒に送ってくださいませんか? その言葉に葛は目を見張ると気が強い茶の瞳が不安に揺れる。 「護衛ならほら、開拓者を誘って」 「開拓者‥‥」 狼狽する葛に旅人は更に畳み込む。たしかに開拓者は護衛の依頼もしてくれるし、アヤカシ退治もやってくれるだろう。 久々に会える開拓者に葛の気持ちも少し浮く。 きっと、彼等と一緒ならば旅人を送れるだろう。 「もう、仕方ないわね」 葛は困ったように微笑んだ。 |
■参加者一覧
北條 黯羽(ia0072)
25歳・女・陰
御樹青嵐(ia1669)
23歳・男・陰
珠々(ia5322)
10歳・女・シ
燕 一華(ib0718)
16歳・男・志
ヴィオレット・ハーネス(ic0349)
17歳・女・砲
白雪 沙羅(ic0498)
12歳・女・陰
ハティーア(ic0590)
14歳・男・ジ
サラーム(ic0744)
17歳・女・巫 |
■リプレイ本文 ■リプレイ本文 「茅兄ぃと葛姉ぇは宜しくお願いしますっ」 ぺこりと頭を下げたのは燕一華(ib0718)。葛はお姉さん呼ばわりが嬉しかったらしく、笑顔が耐えない。 「しかし、護衛なんて開拓者に任せておけばいいのに」 いいひとだねと葛を声をかけるのはハティーア(ic0590)だ。葛は彼の視線を受けてふふりと笑う。 「性分なのよ」 「しかたねぇな」 くつりと北條黯羽(ia0072)は艶麗な笑みを浮かべた。 「お怪我は大丈夫ですか?」 そっと気をかける沙羅に茅は笑う。 「もう大丈夫だって、葛先生は心配性だから気にしてるだけだって」 にっかり笑う茅に沙羅はほっとする。 「茅さんは大変だったね。どの辺を歩いていたのかな?」 ハティーアが声をかけると茅は自分達が向かっている方向と別の方を指さした。 「ここから北東の村だよ。そこには酒蔵があってね。そこには繚咲の酒米で酒を造っているんだ。今回は樽酒に貼る絵を届けに行ったんだ」 「天儀の酒は米から作るんだっけ」 聞きかじった記憶を辿りつつハティーアが呟く。 「そうさ、季春屋の酒は旨いものさ。此隅で店を構えているからさ、此隅に行った時は飲んでいっておくれよ」 酒と聞いて耳を澄ませていた御樹青嵐(ia1669)が聞いた店の名前に反応した。 「繚咲は季春屋さんに出しているのですか」 「そうだよ。繚咲の酒米は繚咲で作っているけど、一部季春屋に出荷してるんだ」 依頼で知った店の名を青嵐は思い出す。 「ほぉ」 ぴくりと黯羽も酒は好きなので話に参加する。 酒を飲まない組は葛とのんびり話していた。 「倉橋さん、動く物をみるとそわそわしてしまうのです」 相談を持ちかけた白雪沙羅(ic0498)に葛は首を傾げる。 「こういうこと?」 サラーム(ic0744)が沙羅の鼻先で自身の耳をぴこぴこ動かすと沙羅の緑の瞳が煌めく。 「にゃ!」 反射的に沙羅が猫パンチを繰り出すがサラームはあっさり回避した。 「にゃーっ」 更に追うとする雪猫に待ったをかけるのは黒猫‥‥もとい珠々(ia5322)。 全員が「むりだなー」と異口同音で呟いた。 「温泉じゃ治りませんか!?」 「温泉は長く浸かるとそういう傾向を押さえられそうだけど」 沙羅に葛が対処方法を伝えると沙羅は目を輝かせる。 「それは湯あたりと言うもんじゃないかね」 黯羽が的確なツッコミを入れる。 「さて、そろそろ問題の林だな」 ヴィオレット・ハーネス(ic0349)が声をかけると、全員に緊張が走る。 「まずは偵察しましょうか」 ギルドからの情報では獣型アヤカシの確認がされたようだった。 黯羽と沙羅が人魂を作り、直接的な様子を知る為に珠々が周囲を見回りに走った。 足音がまだ遠い。 「黯羽姉ぇ達の様子を見てから進みましょうかねっ」 茅と葛を気遣うように一華が笑いかける。 ぴたりと珠々が反応した。 一華が珠々に声をかけると珠々は一点を見据える。 「南東から一直線です」 ぽつりと呟いたのは足音の事だろう。自分達は南下をしている。 どんどんと音が近づく。地鳴りのような音。鼓膜の奥、足の裏まで振動が響いて不安を煽る。 ごくりとサラームが生唾を飲み込む。今回が初めての依頼で緊張も少なからずあるが、気負いはしてない。自分が葛と茅を護ろうと己を鼓舞する。 「サラーム、左の音に集中だ。二人は俺の後ろに入っていろ」 黯羽が指示をすると葛と茅は即座に動いた。 音が聞こえる向こうの草叢から更に音が増えるのを珠々は気付いた。 「一華さん、両脇から来ます」 激しい葉擦れの音と共に出て来たのは化猪二体。 珠々と一華が両脇に飛んだと共に黯羽が結界呪符「黒」を少し遅れてサラームが力の歪みを発動させた。 右の化猪が結界呪符「黒」にぶつかり跳ね飛ばされた。化猪の突撃は破壊力があったのか、すぐに消えてしまったが間合いを取るには十分で護衛用にもう一度発動させる。 力の歪みに捕まった左の化猪は動きを鈍らされていた。 「あたしの前にいたらぶっ飛ばすわよーー!」 大きな声を張上げ、前に出たのはヴィオレット。手に構えているのは魔槍砲「瞬輝」。装填は完了しており、後は放つだけだ。 「はぁ!」 気合と共に打ち出されたのは魔砲「メガブラスター」。狙うはサラームが繋ぎ止めている化猪であったが、後ろから追撃を考えていただろう剣狼が一匹巻き込まれた。 両脇に飛んだ珠々と一華が見据えているのは三匹の剣狼だ。内二匹が珠々側にいる。 三度笠で口元しか様子が窺がえない一華であるが、彼は笑みの形を崩さない。 愛用している小薙刀を後ろ手に構えて剣狼を見据える。 「さあさあっ」 掛け声を上げると同時に一華へ走って来た剣狼が自身の刃で一華を切り裂こうとするも彼は身軽に飛び退る。 「どうやら気が短いようでっ」 軽やかに着地すると、少年らしい勝気な笑みを浮かべ、一華はいつもの調子を上げる。 「開拓衆『飛燕』が一の華の演舞をご覧に入れましょうっ!」 一方、珠々は剣狼二匹と対峙していた。 二匹の様子を見て左の指にかけている戦輪をゆっくり回している。 剣狼もまた、珠々の様子を見ているようであった。口からだらしなく舌が出ており、珠々の喉笛を腹を狙っている。 「逃がしません」 ぽつりと珠々が呟くと左腕を鋭く振った。 黯羽の結界呪符にぶつかって跳ね飛ばされた猪は闘争心を失っていない。アヤカシなのだから、目の前の食事にかぶりつく事しか考えが無い。 舞師が如くに流麗な動きで符で式を呼び出したのは青嵐だ。 化猪は青嵐の式に反応して動き出した。獲物だと思い突進する。 「狩りの時間にゃーー!」 ぎらりと目を輝かしたのは小柄な沙羅。緑の瞳を爛々に輝かせて前に躍り出る。 「葛! 茅! 前に出てきたらだめにゃよ!」 先ほどまでの慎ましやかな様子はどこへやら。逆毛だった猫のように沙羅が威勢よく叫ぶ。彼女の視線の先には再び駆け出している猪。 「青嵐! 黯羽! 突撃される前に狩るにゃよ!」 先輩開拓者を呼び捨てで叫ぶ沙羅に青嵐はポカンとしている。 「ああ、やられる前に狩ってやるさねっ」 普段はどこか気だるい様子も見せる黯羽であるが、戦闘では心が昂ぶり沙羅の勢いに負けずこちらも攻撃的になっている。 「こっちもですかっ」 二人の同職者の急変を見た青嵐の叫びは悲痛だが、そんな声に構わずに沙羅が斬撃符で猪の足を切り裂き、黯羽は白狐を呼び出す。 美しい白銀の狐は呼び出した主たる黯羽の攻撃性に似て刃に似た輝きを見せている。 獲物を見据えた白狐は前足を伸ばして足を失っても尚動こうとする猪の頭を押さえつけてそのまま噛み砕いた。断末魔も叫ぶ合間も無く、化猪は動きを止めた。 「ふふん。沙羅様に勝とうなんて‥‥」 百年早いと言おうとした沙羅だが、彼女の頬を風が通り過ぎる。見やれば鎌鼬が鎌状の手を斬りおとされていた。 「余所見は禁物です」 凛と青嵐が言えば、沙羅ははっと我に返る。 「ね、猫語とか喋ってないですよ!」 「弁解はそこかい」 慌てる沙羅にヴィオレットが苦笑する。 「ふふ、可愛いね。負けてられないな」 沙羅の様子を見て笑みを浮かべるのはハティーアだ。手にしているのは赤く分厚いケモノの皮の鞭。メガブラスターの爆発音に他のアヤカシが現われた。 一度鞭を振るえば空気を切り裂き、高い音が鼓膜を突く。 鎌鼬も開拓者達に狙いを定め、真空刃を遠距離から放っている。思いっきり回避したいが、護衛する葛達を考えればやりにくい。 「気にすんな、さっさと仕留めろ!」 そう叫んだのは黯羽だ。 「そうだね」 長くなる戦闘は余計な疲弊を起こす。サラームが鎌鼬に力の歪みをかけて動きを止める。ハティーアは狙いを定めて動きが鈍った鎌鼬を狙った。 鞭の先端が鎌鼬を絡め取り、鞭を通して鎌鼬が空を舞う。青嵐が鎌を斬りおとした鎌鼬が近くにおり、ハティーアはそれ目がけて自分の鞭が掴んだ鎌鼬をぶつけた。 衝突の時にハティーアが投げた鎌鼬の鎌がもう一体の鎌鼬に刺さっている状態で絡まっており、そのまま離れないように青嵐と沙羅が斬撃符で止めを刺す。 早い動きに負けないのは一華だ。自身の感覚を頼りに華麗な動きで剣狼と戦っている。 ゆらゆら刃先を遊ばせて剣狼の動きを見ている。剣狼の攻撃にくるりと薙刀を返して剣狼の刃を受ける。 力の拮抗の間を見て力を緩めた一華は拮抗が崩れた剣狼の体勢を見抜き、早い動きで剣狼の足の根元を刺す。剣狼はそれでも動きを止めず、一華に突き進んだ。 飛び掛った剣狼が目掛けたのは一華の右目。彼は前に出していた左足を軸にして回避する。 三度笠右に吊るされているてるてるぼうずの動きも一華は考えており、気流で舞い上がるてるてるぼうずは自身で回避するようにも見える。 「名残惜しいですが終演ですねっ」 右足を思いっきり踏み込み、加速した一華は剣狼に飛び込んで薙刀の穂先をアヤカシの首寝に刺し込み、そのまま梃子の原理で首を刎ねた。 薙刀を返して血を振るう一華が見据えるのは珠々だ。 珠々は剣狼の一体を倒していた。 戦輪の動きを把握し、奔刃術を使ってもう一体を倒そうとしている。淡々と珠々は剣狼の動きを見ている。 本能の赴くまま剣狼が珠々を追い回している。珠々が戦輪を受け止めると再び戦輪を放つ。 薄暗い中で放たれる二枚の戦輪は水面に移る朧のようである。珠々は早駆で戦輪の後を追うように剣狼へと走る。 戦輪の一枚を避けた剣狼は二枚目を胴で受けたが動きに支障はない。 猫のようなしなやかさで珠々が剣狼の刃を受け流し、右足で一気に急停止して踵を返す。腰に差している刀を抜き、突きの構えで再び駆け出した。 疾風の中に紅い稲妻が走る。 落雷の如く、紅い刃が剣狼の目玉を刺し、そのまま身体を貫く。 「はぁああ!」 気合と共に刀を降ろすとめりめりとアヤカシの肉が体内でちぎられ、最後は紅い刃が姿を現して剣狼は無残に倒れた。 肩で滴り落ちる汗を拭い、皆の方を向けば、黯羽の白狐が最後の鎌鼬を食い破っていた。 アヤカシとの戦闘を終えて少し歩いてから昼ごはんにする。 「はー、ご飯の後じゃなくてよかった」 ごはんを食べつつほっとしているのはヴィオレットだ。 「おいしいですっ」 戦闘の後のごはんに喜んで食べているのは一華。 「人参は入ってないわよ」 葛の言葉にぎょっとしたのは珠々だ。本日のお昼は葛お手製のお弁当。お握りと摘める煮しめと沢庵。 「人の作った料理も美味しいものですね」 満足そうに青嵐が言えば、「お気に召されて何より」と葛が笑う。 「そういえば、温泉ってどんな感じなのかな。ハンマームみたいなものかな」 気になっているのはハティーアだ。文化の違いもあり、気になっているようだ。 「ハンマームってなんですか?」 珠々が尋ねると、サラームが簡単に説明する。 「向こうの公衆浴場です。蒸し風呂で蒸気で汗や汚れを浮かせてあかすりで落とすんだよ」 「こっちは温かい湯だ。水が貴重なそっちでは驚くな。楽しみにしておくといいさね」 ごきゅりと茶を流し込む黯羽が言えば、そうだねとハティーアとサラームが頷く。 アヤカシを倒してからの道中は気楽なものでまるで行楽。 林道を通っているので日差しも弱まり、木漏れ日が目に優しい。 「この調子だと夕方には宿に着きますね」 のんびりと茅が言う。もう少ししたら温泉だが、珠々の様子はちょっとだんまりだ。 宿に着いて一服するとあれっと、ヴィオレットが気付く。 「珠々がいない?」 黯羽は黙って人魂を生成して飛ばした。 勤勉な珠々はいつだって学ぶ事をやめない。大規模合戦同様のように宿屋確認は大事だ。 そもそもお風呂はちょっと苦手なので皆が上がった後に頂きたいと珠々は考えているが‥‥ 「甘いな」 「にゃ!」 黯羽が珠々を小脇にかかえてスタスタと歩く。 はついくがにくいと思いつつ、珠々の口から出てくる叫び声は一つ。 「あ、無事に捕縛されたみたいですねっ」 先に入っていた男性陣が珠々の絶叫を聞く。一華がよかったよかったと頷いている。 「こんなに水が豊かなんだね」 温泉の入り方を教えてもらったハティーアが初めて体感する水の圧力を不思議そうに見つめている。 「そちらの方では水は貴重ですからね」 桶に銚子を入れて浮かせて青嵐が応える。その隣で茅も飲もうとするが、青嵐に止められた。 一方女性陣。 大人組はかなり体型がよく、意外なのは中年の葛。筋肉があるというわけではないが、体型は衰えてない。黯羽とかわらない息子がいるというのに。 「何をどうすればそんな風に慣れるのですか」 沙羅が真面目に尋ねると、葛はうーんと困る。こればかりは確約が無いからだ。 「沙羅ちゃんの場合、戦闘になると興奮する癖を何とかしないとね」 葛の言葉にそうなのですと沙羅がしょんぼりとなる。興奮する癖は気付いているらしく、自分でも何とかしないとと考えてはいるがどうにも出来ないようだ。 「その辺は落ち着くように自制して訓練を積まないとね‥‥戦闘の時の沙羅ちゃんは頼もしかったわよ」 くすくす微笑む葛に沙羅は恥ずかしそうに俯いてしまう。 「その辺は個性だ。気にする事でもないさね」 サラームの背中を流している黯羽が声をかける。大人しく背中を流されているサラームはちらりと黯羽のよい体型を見る。気にしても仕方ないとは思うが、やっぱり、いいなとは思う。 「珠々は人参を食べたらきっと発育がよくなると思うんだがな」 「好き嫌いは余りよくないな」 よい体格である黯羽とヴィオレットに言われて珠々はぐぬぬと唸る。 「た、大器晩成ってことばがあります!」 どこで覚えたと誰もが心の中でツッコミを入れる。 賑やかな女性陣の声は隣の男性陣にも聞こえる。 「賑やかですねっ」 一華が言えば「そうだね」とハティーアが微笑む。青嵐は今度こそ人参料理を食わせようと算段を練っていた。 食事は全員で揃って。 皆で食べるごはんはいつもより美味い。 青嵐は葛のお酌役をしている。 「ねぇ、どうなったの?」 主導権をとられ、青嵐はとりあえず自分の心の内は話していると答える。 「‥‥相手を重んじるのはわかるのですが‥‥」 「青嵐君はあの子の事を気遣いすぎてるわよ」 どきっぱり言い切る葛に青嵐は戸惑ってしまう。 「ちゃんと自分の気持ちを伝えた上で相手を思うのは解るけど、気にしすぎて自分の主張もせずに一線画しているんじゃない?」 もはや説教と化している青嵐と葛の様子に女性陣は意識を向けざるをえない。 「なんだか葛姉ぇは生き生きしてますねっ」 葛の様子に一華が感想を述べると、ハティーアと茅は青嵐にお気の毒様と心の中で呟いた。 無事に茅は送り届けられて、葛は開拓者に礼を言おうとするも一華に止められた。 「葛姉ぇを診療所までお送りするまでが依頼ですからねっ」 開拓者達が再びもと来た道を戻る。 木に止まっていた黒鶫が一羽、どこかへ飛び立った。 |