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■オープニング本文 緑萼は極秘に天蓋に訪れていた。 以前の依頼で折梅は不眠が治ったが、杷花は少しずつ休めるようになっていっていると天蓋領主の蓮司より報告を受けた。 本来の目的は折梅の影武者をしていたものだ。 元は天蓋のシノビであるので、居住は天蓋にある。折梅の好意で少し休みを貰ったので、緑萼は彼女の見舞いに来ていた。 彼女は折梅と同じ年の頃であり、昔から世話になっているのでもう一人の母のように慕っている。 「よい薫りだな、あの頂物か」 「ええ、黒猫様より頂いた薫りです」 本来はシノビに薫り物は法度だが、食べ物よりはという気遣いが可愛らしい。 「緑萼様、本題は私のところではないのでは」 「もう伝えた」 「‥‥緑萼様、大丈夫ですか」 心配そうに声をかける母の影武者に緑萼は大丈夫だといつもの口調で答える。 「憎まれ口を叩く余裕があれば十分だ」 「沙桐様にお伝えすることでもありませんからね‥‥」 寂しそうに言う影武者に緑萼は「また、本屋敷で会おう」と告げて去っていった。 その一方、沙桐は腹の虫が立っておさまらないようすで、杷花も一華も遠巻きにしている。 先ほど、緑萼が現れて嫌味と折梅を狙った毒殺の件を告げた。 元々、叔父とは気が合わないのもあったが、このままいけば百響討伐など無理と言われてしまい、沙桐はイラつきが止まらない模様。 沙桐とて暢気にしているわけではない。 もう、時間がないのだ。 叔父は更に折梅を毒殺を企てた者の身辺調査をしてい。 企てたきっかけは紙問屋の主の息子がある日、うわ言のように「梅なぞ燃やしてしまえ、殺してしまえ」と言っていたのが始まりだったそうだ。 今の繚咲にとって梅は折梅を示すのだ。 民衆における折梅の信頼は絶大。 そんなうわ言が世間に知れれば、白い目で見られて顧客に逃げられるのがオチ。 何とかしてほしいと医者の所に頼み込んで預かっていたらしい。 医者は息子が何者かに魅了の術をかけられているのを見破ったが、この医者は紙問屋とは別の有力者の手下であり、紙問屋をつぶす為に組んでいて、頃合になったら紙問屋を突き出す予定だったそうだ。 別の有力者に関しては叔父の手が伸びていて、片付いている。 現状、残っているのは魅了の術をかけられたまま、診療所の地下に放り投げられていた息子だ。 魅了状態から脱したのだが、診療所ではまともな扱いを受けておらず、心神喪失状態で衰弱していた事もあり、「ゆり‥‥ゆり‥‥」と何か求めているようだとか。 叔父より押し付けられたのはその息子は誰の手によって魅了されたのか調べることだった。 紙問屋の話によると、様子がおかしくなってきたのは折梅が百響配下の天香に殺されかけた後のことらしい。 百響と言えば、百合柄の白無垢と百合の形の焔を思い出す。 沙桐はため息をついて高砂へと向かった。 |
■参加者一覧
鷹来 雪(ia0736)
21歳・女・巫
御樹青嵐(ia1669)
23歳・男・陰
珠々(ia5322)
10歳・女・シ
輝血(ia5431)
18歳・女・シ
溟霆(ib0504)
24歳・男・シ
ビシュタ・ベリー(ic0289)
19歳・女・ジ
白雪 沙羅(ic0498)
12歳・女・陰 |
■リプレイ本文 じとりと、沙桐が見やったのは溟霆(ib0504)だ。 「雪君達が心配してるよ」 にこりといつもの調子で溟霆が微笑むと沙桐は拗ねたようにぷいっとそっぽを向いた。 沙桐の苛々がどこから来たのか、増長の理由に気づく溟霆は面白そうに沙桐を観察している。そんな二人を見てため息をつくのは御樹青嵐(ia1669)だ。 「溟霆とて、決めた事なのですから」 「‥‥わかってる」 「心配してくれる事に関してはうれしいかもね」 静かに溟霆が目を細めた。 「百合という言葉に不安がびしばしきます‥‥」 俯く珠々(ia5322)は歴戦の開拓者とはいえ、未知の存在への不安感は拭えないようだ。 「珠々様‥‥不確定な事は心をかき立てられますね」 そっと白野威雪(ia0736)が珠々の手を自身の手で包み込むと珠々は無意識に気づいた。白雪沙羅(ic0498)も心配して珠々の隣に。 「梅の次は百合‥‥ってのも気に食わないね」 輝血(ia5431)がつぶやくと、ビシュタ・ベリー(ic0289)が輝血の方をみやる。 「連携がありそうな話だね」 「繚咲の人間の敬意を集める春を告げる梅、片や、繚咲を恐怖に陥れる花の王たる百合‥‥非なるけど、似通う何かを彷彿させるね。しかし、珠々君達には不愉快な話だね」 これは失礼、と溟霆が付け足した。 「希望と恐怖ってのも対極するものだね。それが線となるかどうかは調べないとならない」 ビシュタが告げれば全員が頷いた。 紙問屋の息子がいる所へと向かうのは雪、珠々、沙羅、溟霆、沙桐だ。 「平気なのです‥‥」 恥ずかしそうに俯くのは珠々だ。雪と沙羅に挟まれて手をつないで道を歩いている。 「おやまぁ、可愛らしいね」 「姉妹のようだ」 などと、微笑ましい光景を見た人達が感想を小さな声で言っているが、珠々には丸聞こえ。恥ずかしくて仕方ない。 息子が入る場所に入れば、案内してくれた。開拓者の事は知っているらしく、どこか緊張した面持ちだった。 部屋に入れば、息子は虚ろな表情のままこちらを見やっていた。 まだ魅了が解けていないと判断した雪は息子の正面にひざをついて印を結び、術を唱えた。 たちまち息子に藍色の光がまとわれていき、虚ろだった目に少し正気が戻ったように思える。 「大丈夫ですか‥‥」 恐る恐る沙羅が尋ねると息子は三人を視界に入れた。 正気に戻ったとはいえ、体力が減っているので、話は手短にを心がけていたが、息子はあまり女性や子供には話したくないようだった。 溟霆と沙桐が代わりに息子の話を聞いた。 どうやら、息子は一時の相手と引き合わせてくれる出会い茶屋に出入りしていたようで、その娘とも茶屋で出会ったようだ。 一回で娘が気に入り、息子はまた会いたいとせがんだが、娘は自分の素性を話したがらずに神社で手紙のやりとりをしていたらしい。 娘の特徴を告げるときに女性陣が部屋に入ってきた。 黒髪に鳶色の瞳、目は可愛らしく、紅を付けていないのに赤い唇が印象的だった。 ただ、店の外に出た途端に笠をかぶり、着物はいつも花柄だという。 話を終えた開拓者達は仲間へと伝えに行った。 ビシュタは単身、紙問屋を潰そうとしていた問屋へ向かった。その問屋は木材問屋だったらしい。 「紙も木も燃やせば終わりなのに」 ため息混じりでビシュタが呟けば、開拓者が教えてくれた依頼人である沙桐が追っているアヤカシを思い出す。 そのアヤカシは火を操るという。 嫌な予感しかないが、まずは情報を聞き出す所から‥‥ではあるが、材木問屋の業務が終わるのを待っていた。 雪達の話によれば、紙問屋の息子は木材問屋の事は知らなさそうだった。 とはいえ、木材問屋は怪しいので不安の種は除かねばならない。何もなくても災いの火の粉がどこから出てくるのか絞れるのだから。 「ふきちゃん?」 声をかけられたビシュタは一瞬身構えたが、声をかけてきた娘が人違いをやってしまった事に気づいた慌てている。 「す、すみません! ふきちゃんだと思って!」 「‥‥友達に似てたのかい?」 おろおろする娘にビシュタは穏やかに声をかけると、娘は頷いた。 「一緒に住み込みで働いている友達です。最近、戻ってこなくて皆心配してるので‥‥あなたが着ている芍薬の着物を見て、勘違いして‥‥」 着ている着物も違うが、芍薬柄というだけで声をかけたとの事。着物は沙桐のお付の者がビシュタが調査しやすいように持ってきてくれたものだ。 ビシュタはついでに娘にふきという娘について話を聞き出した。 青嵐と輝血は紙問屋の方に聞き込みに回っていた。 店の主が折梅殺害を企てていたという事に店の者達には衝撃的であり、意気消沈となっていた。 折梅がどれだけ慕われていたのか分かるほどに。 青嵐が聞き出そうとしたのは息子の世話をしていた者だ。まずは交友関係から聞き出した。 「坊ちゃんは主に高砂、深見へ木材を搬出する仕事を負かされておりましたので、よく泊りがけで行く事がありました。そこで知り合った友人もいたようで、よく飲みに行っていると」 「どこの者か分かるかい?」 輝血が尋ねれば、丁寧に高砂の菓子屋の従業員と教えてくれた。 「それじゃ、行って来る」 そう言って輝血が一足早く高砂へと向かった。 「息子さんは繚咲領主や管財人の事をどう思っていたのでしょうか」 「沙桐様ですか‥‥? 沙桐様は此隅にいるので、あまり会う事もないようですよ。でも、緑萼様が苦手そうです」 それは確かにと青嵐が心の中で頷く。 「高篠様とは此隅に出向される前までは気さくにお話してましたよ。相談にも乗っていたようです」 意外な名前に青嵐が反応する。 「高篠様は緑萼様のご令息で、沙桐様をとても慕っているのですが、沙桐様はあまり身内に心を開かない方ですので、高篠様は寂しい思いをしていたようで」 「そうですか」 鷹来家の内情は追々、片付けるかと青嵐は思案した。 高砂の地に降りた溟霆はそっと花街の方へと視線を向ける。 この街の夜の上に立つ綺麗な人とより近い場所にいるのは心のどこかで胸を躍らせてしまうが、目の前の依頼に溟霆は集中する事にした。 輝血が先に聞き込みをしたところ、笠を被って紙問屋の息子と会っていた証言はあった。 ただ、息子が魅了の術にかかってからは一度も近くには現れていないと言われた。他にも似たような茶屋に行ったが、姿を見せた覚えはなかった。 高砂の菓子屋の友人に会いに行けば、紙問屋の息子の異変には気づいていなかったらしく、最近高砂に来ていない事に心配をしていた。笠の女の話は聞いていたようだが、どうやって会う約束を取り付けているかは知らなかった。 女の目的は紙問屋の息子だけに絞られていた ならば、溟霆が変装して女と接触しなければならない。 折梅の容態が悪いという噂は瞬く間に広まっていき、不安が高砂を揺らす。 そして、思いがけない人物に見つかった。 高砂領主の大理だ。 「何しにきたの」 こっちは隠密仕事なのにと輝血は厭そうだった。 「香雪殿が死んだだの、病気だのと噂が俺の所まで来た。鷹来の方では極秘事項となっているし、そうなればお前らだろう」 「‥‥デスヨネ」 棒読みで珠々が返すと、大理は開拓者達を見つめる。 「笠を被った娘を探しているそうだな」 「知ってるのかい?」 興味を向けた溟霆が言えば、大理は「まぁな」と答える。 「木材問屋のシノビだ、あいつは従業員の中に数名紛れ込ませている。前から紙問屋を潰そうとしていたらしく、息子を罠にはめようとしていたようだな」 「逆に駒を奪われたって事ですか?」 「百響は魅了の術を使って人間を弄ぶのが随分と好きなようだ。耳となる兎もいるだろうな」 気をつけろよ。と言って大理は帰っていった。 その翌日、返事が来た。 雪と沙羅は息子の世話をしていた。 「やっぱりお日様に当たった方がいいと思うのです」 沙羅が少しでも散歩しようと息子を誘うと、彼は「そうだね」と頷いてくれた。魅了の術が解けて正気に戻ると、少しずつ動いてくれるようになった。 体力的な問題があるため、手を借りる事になるが。志体持ちの沙羅でも息子の介助は楽に出来ていた。 「‥‥沙桐様、緑萼様に何を言われたのですか」 少し離れたところで雪が沙桐に問う。 「このまま行くと祝言挙げれないって言われた」 無表情のまま、沙桐が言うと、雪は沙桐の手を握り締める。 「今は辛抱するしかありません‥‥」 情報がなければ動くに動けない。 「分かってる‥‥けどさ、なんでこんなにも情報が引っかからないんだろうなって思う」 「匿っているかもってこと?」 ひょっこりビシュタが戻る。 「何か分かった?」 沙桐が声をかけると、彼女はまぁねと頷き、木材問屋の娘に話を聞いた話を伝えた。 木材問屋の主に気に入られているふきという娘が勤めており、ここ数ヶ月姿が見えないという。よく店主のお使いで遠出する事はあれど、こんなに戻る事がないのは初めてらしく、店主も不安がっているそうだった。 しかも、顔立ちや特徴は息子が言っていた事と一致していた。 「で、ちょっと実験していい?」 彼女が風呂敷を持っており、それを開けば、着物が出てきた。 「心当たり、ないかねぇ?」 息子に尋ねると「初めて会った時にみたものです」と答えた。ビシュタは木材問屋の娘に上手い事を言って着物を借りてきたのだ。 「ふきという娘がアヤカシ‥‥だったのでしょうか‥‥」 「百響には人の心を操る能力があるから‥‥」 「‥‥入れ替わられたかもね」 ビシュタが呟けば、沙桐が苦い顔をした。 約束当日、溟霆は息子として動き出した。 日が落ちて提灯や灯篭の中に火が灯される。それでも暗い道なれば、顔の判別は難しい。 夜目が効く者もいるだろうから注意して動く事を要求される。片目も物もらいでも貰ったかのように包帯を巻く。 後を追う仲間達を気遣いつつ、目的の茶屋へ。 郊外ゆえに、周囲の明かりも少なく、一日中人の通りもない。 頼りなさげに入り口に提灯が一つだけある。 溟霆が入ると、女将さんは着ているもので紙問屋の息子と思い込んで中へ案内してくれた。 古い建物のようで、少々傷みがあるが、きちんと掃除がされている。 外で待機しているのは青嵐だ。人魂を飛ばす。夜であるのが少々目に優しくない。輝血、珠々は建物内に忍び込んで監視と溟霆の様子を見ている。 程なくして入ってきたのは息子が言っていた通りの娘の可愛らしい娘だった。 「その目は‥‥」 入るなり、娘は溟霆の目に気づき、心配をした。溟霆は「大丈夫」と返せば、娘は溟霆の胸へしな垂れる。 即座に溟霆は本能で警鐘を鳴らした。 娘は香を焚き染めていた。あの百響の餌場の庵で嗅いだ甘く頭の芯を揺さぶられる香り‥‥ 溟霆の警戒は相当な手練でもない限り気づかないものだ。それに気づいたかのように娘は赤い赤い唇を笑みの形にする。 「よう、来たな」 娘の声が変わった。 「喰ったのかい?」 「繚咲の生まれではなかったようなのでな」 くつりと娘らしきものが嗤った。 「折梅殿を狙った理由は」 「あれは繚咲に外の血を流そうとしておる。繚咲の始祖に連なる血を持ち、繚咲から逃げ出した愚かなる血筋の者。懐かしき血だが、愚か者は愚か者」」 憎らしいのか、娘らしきものが表情を変えると、それは繚咲を統治する鷹来家の人間に似た美しき顔へと変貌する‥‥ 繚咲北部を侵す魔の森の主、人型アヤカシの百響だ。 冷たく言い捨てる百響の喉を血で作られた錐が貫いた。 「そのまま突いていいよ」 溟霆の声に応じるように屋根裏から黒い影が降りた。横髪が舞い上がり、黒猫の影を作る。 落下の重みを使い、剣をアヤカシの背に突き立てそのままなぎ払う。 血のような瘴気のようなものが部屋を汚す。 「おばあさまの悪口は許しません」 「黒猫が」 にやりとアヤカシが嗤うなり、夜の中に小さな夜が訪れた。 狭い狭い部屋の中だが、ほんの隙間さえあれば刀は突き通せるのだ。 瞬きの合間だが、彼女には十分な夜。 夜が明けると共にアヤカシの身体は大きく裂かれた。 「鬼灯よ。また美味そうになったな」 「ノコノコ来るだなんてナメられたものだけど」 「仕方ない。今宵はこれにてお開きだ」 観念したかのようにアヤカシが言えば、溟霆の方を見やる。 「退くがいい」 ぎろりと溟霆へ告げるなり、彼の手が発火する。それでも彼は離れようとせず、アヤカシを繋ぎ止める。 仲間が更にアヤカシを繋ぎ止めようとした瞬間、廊下から何かが飛び込んできた。 「逃がさないわ」 凛とした女の声が響き、溟霆と百響を突き放すと珠々が手近な布で溟霆の火を消す。 女は匕首で百響の左目から鎖骨にかけて刃を入れる。 「仕返しか。鬼灯よ、聞こえぬのか」 乱入してきた女を鼻で笑い、百響は輝血に声をかける。輝血の耳にも聞こえていたのだ。青嵐が苦戦をしているところを。 しかし、逃がしてはいけない。それが自分なりの応え方と認識してるから。 「また戯れようぞ」 にやりと百響は焔の壁を繰り出し、間合いを取る。調度品に火が燃え移り、開拓者達と乱入者が消火へと向かう。 「待て!」 輝血が叫ぶと百響は窓より飛び去った。 「行って下さい!」 珠々や溟霆にも聞こえている。青嵐だけではなく、仲間の開拓者達も駆けつけている音を。 少し時間を巻き戻して‥‥人魂を飛ばしていた青嵐は奇妙な影に気づく。 アヤカシかと判断した途端、駆けつけてきた兎がいた。 青嵐がいると言う事に気づいているだろう兎アヤカシは真っ先に青嵐を狙う。間合いを詰めて斬撃符を繰り出し、兎の首半分以上を斬りおとす。 兎の向こうから大型のアヤカシの影が現れてきた。 どこまでやれるか‥‥ 美しい顔を顰めた青嵐だが、視界に飛び込んできたのは軽やかなステップで敵をナイフで斬るジプシー‥‥ビシュタだ。続いて沙桐が熊アヤカシの胴を横に薙ぎ斬る。 「青嵐様、御無事で!」 雪が青嵐に加護結界を施した。 「いっくにゃよーーー!!」 戦闘態勢の気合と共に沙羅が斬撃符を飛ばして動物アヤカシの頭を刎ねた。 現時点でいるアヤカシは約二十体の大小さまざまな動物型だが、開拓者達は倒す気だ。 ビシュタが夜空に浮かぶ人型を見た。 「アヤカシ‥‥?」 彼女の呟きに他の開拓者も気づく。 「‥‥俺達が倒そうとするアヤカシだよ‥‥」 沙桐が呟いた瞬間、襲ってくるアヤカシを斬り、ビシュタが止めを入れる。 少し後から輝血も加わり、アヤカシを一掃した。アヤカシが増える気配はなく、一安心だ。 「溟霆様の方へ向かいます」 雪が向かおうとすると、沙羅が珠々達に気づいた。 「あれ」 一人多いのだが、その姿は見た事がある。 珠々達と一緒に現れたのは年の初め、姿を消した理穴のシノビである満散だった。 |