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■オープニング本文 前回のリプレイを見る まだ東雲の色を見せていない深き夜の時間。 数名の人間が三茶の街を出る。 冬の道は酷く肌を凍てつかせ、その者達が寒さに肩をふるわせる。 「一度戻るなんてなぁ‥‥」 ツイていないと一人がぼやく。 「厄介事に巻き込まれるよりマシさ。あそこは名が売れすぎる」 「あれはやりすぎだよな。ったく」 「そろそろ潮時だろう」 しんがりを歩く男が言えば、その者達は黙って歩いている。 歩き続けていると東の空が変わり始める。しんがりを歩く男は自分の首にかけている首飾りが冷気に当てられているのを視界の端に捕らえる。首飾りを手に取って握り締めて男は自分の手越しに口付けをする。 ぼんやりと窓枠に凭れて体を預けて東の空を見つめる麻貴はまだ半分は夢の中だ。寒い冬なのだから布団を巻いている。 「主幹」 背後から声が聞こえ、麻貴は布団を体に巻きつけたまま振り返る。部屋の入り口には部下の一人が控えていた。 「おはよう。夜遅くまでやってくれて助かる」 「今の所は睦助に危害はないようだな」 「‥‥いつ狙われてもおかしくはないか‥‥そういう人影はないんだよな」 「ああ、今の所はな」 麻貴は窓の戸を閉めて火鉢の傍に寄る。部下の男が近くの棚にあった餅を持って来て火鉢の上に掛けられた網に載せる。 「襲撃の際は命からがら逃げてきたそうだ。多分、睦助が雪原一家の者というのは知っているのだろう。襲撃者が誰なのかは前回の依頼で聞いていなかったしな‥‥」 どうしようか思案している麻貴に部下の男は溜息をつく。 「ウチに礫を投げたってのがよく分からないな」 「ウチが一番近いからってだけじゃ理由では甘いか」 火鉢に視線を落としていた麻貴が顔を上げる。 「‥‥ああ」 「わざとウチに投げたって事?」 男は頷いた。 「面倒だ」 布団を包みなおして麻貴はもぞもぞ身じろぎをする。 「お前、余計な事を考えているな?」 「檜崎さん、わかりますぅ?」 にやりと笑う麻貴に檜崎と呼ばれた男はがっくり項垂れる。 「お前がそんなにだらけているのは他に考えている事があるからだろう」 檜崎が麻貴を睨みつけても麻貴は怖がったりしなくて、悪戯っ子のように笑う。 「とりあえず、開拓者には礫の提案者と襲撃者がどんな奴か調べるのと睦助の護衛を頼もうかな」 「お前は?」 「雪原一家の先代に会おうかなと」 「仕事しろよ」 「町民が安心して暮らせるようにするのも仕事の一環ですよ」 そう言って麻貴は布団で口元を隠して笑った。 |
■参加者一覧
滋藤 御門(ia0167)
17歳・男・陰
劉 天藍(ia0293)
20歳・男・陰
俳沢折々(ia0401)
18歳・女・陰
黎乃壬弥(ia3249)
38歳・男・志
紫雲雅人(ia5150)
32歳・男・シ
珠々(ia5322)
10歳・女・シ
輝血(ia5431)
18歳・女・シ
沢村楓(ia5437)
17歳・女・志 |
■リプレイ本文 「タマ、先行くよ」 「挨拶しないんですか?」 輝血(ia5431)が珠々(ia5322)に声をかけると、珠々は首を傾げる。 「別に必要ないんじゃない。何か知ってそうだしさ」 素っ気無く言う輝血に珠々は滋藤御門(ia0167)達に先に潜入する旨を伝えた。 依頼に応じて、麻貴が滞在している宿に現れた開拓者はてっきり前回と同一だと思ったら黎乃壬弥(ia3249)の姿があり、麻貴は少し目を見張った。 「久しぶり。元気そうで何よりだ」 「ああ」 麻貴が挨拶すれば、壬弥が頷く。よく見れば、輝血と珠々の姿がない。 「二人はもう行きました」 御門が麻貴に言えば、当人は困ったように笑う。 「うーん、からかいすぎて嫌われたかな?」 仕事とは関係ないんだけどなぁと、麻貴はくすっと笑うが、その笑みが何なのか誰もわからない。一人ごちている麻貴はさっと切り替えていつもの怜悧な表情で全員を見回す。 「集まってくれた事に感謝する。さて、今回は睦助の護衛と礫の提案者と賭場の襲撃者の調査だ」 簡潔に言えば、劉天藍(ia0293)が少し考え込んでいる。 「睦助が文を投げさせた奴じゃないんだな‥‥」 「私もそう思ってましたよ」 どうやら、天藍と紫雲雅人(ia5150)は同じ考えを持っていたようだ。 「元締めと睦助だけではやれないんじゃない? 関係者が見つかって、護衛って形だけど協力してくれるのは何もない状態よりはいいよ」 折々の言葉は確かにその通りだと思える。 「とにかくわかったのは、何がなんだかよくわからない だね!」 はっきり纏める俳沢折々(ia0401)に全員が脱力した。確かに結果はわからないが妥当だろう。 「纏めるのも大事だが、わかった事を小分けするというのも悪くはないぞ」 麻貴が言えば、雅人が手元の帳面を捲る。 「賭場を開いたのは、勢力拡大の為。睦助は派遣されただけで礫を投げる指示はしていない。雪原一家の本来は善良な市民を外的から護る自警団のようなもの。数年前の抗争で当代が転落事故。それ以来、屋敷に引きこもり、面子が変わり、先代からいた者は当代のみ」 こんなものかなと、雅人が言えば、折々が「おーっ」と、感嘆の声を上げる。 「筍が美味しいのかぁ。煮つけとかにしたいかもね」 「新鮮なら刺身も美味しいですよ」 御門が言えば、折々が頷く。 「んまぁ、俺はとりあえず無頼な駄目人間を装って潜入とするさ」 長居は無用とばかりに壬弥が向かおうとするが、微妙な沈黙が壬弥を見送る。 「‥‥何?」 沈黙と視線に気づいた壬弥が振り返る。 「いや、地で行けて楽そうだなと」 そう言ったのは天藍。彼だけではなく、全員の意見と気づけば、壬弥はがっかり肩を落として部屋を出た。 「ま、信用はしてる」 「仕事はするからな」 「当人いる前で言ってあげればいいものを‥‥」 気配がなくなってから麻貴と沢村楓(ia5437)が言うと、雅人が呆れて言った。 それぞれがその場を後にしようとした時、麻貴が自身の緋色の襟巻きを掴み、御門を呼び止める。 「なんでしょう」 御門が声をかけると、麻貴は手にしていた襟巻きを御門の肩に巻く。 「御身、大事にな」 「僕は大丈夫ですよ」 隠密任務に差し障ると言い、御門は襟巻きを手早く畳み、麻貴に手渡した。 ● 雪原一家に潜入している輝血は睦助の護衛も同時に行っていた。ありがたい事に天藍と御門が睦助に接触したおかげで睦助の警戒は少し薄れ、部屋に閉じこもるのが少し減りつつあった。 あまり会っていなかったという事で輝血は睦助と同じ空間にいる事が増えた。 何とはなしに一家を嗅ぎ回る奴がいないか聞いてみた。 「ほら、中庭に面する塀の向こうに物置小屋っぽいのがあっただろ。そこは三茶から西にある町の任侠屋の密偵がいて、北側にはここから三つ向こう町の‥‥」 流通がいい三茶の街は悪さをするにはうってつけの場所。そこを土台に悪用すれば金儲けが随分楽なのだ。そこを根城にしている雪原一家は何処をどう見ても目の上のたんこぶ。常に色んな密偵に見張られている模様だ。 「けど、そんなマトモな集団じゃないだろうね」 当代が入れ替わっている可能性があれば付け入る事はいくらでもできるのだ。輝血は一人溜息をついた。 一方、壬弥は新たに入った無頼の一人として輪の中に加わっていた。 「おう、ここの頭や幹部連中はどんな強さなんだ?」 男が二人は素手ゴロで残りは刀だと教えてくれた。酒が切れたと壬弥が立ち上がり、台所へ行く振りをして誰もいない部屋にて得た情報を紙に書き付ける。台所に行けば、書付けた紙を入れた徳利を転がし、酒が入っている徳利を手に部屋へ戻る。 誰もいなくなると、珠々がひょっこり現れて壬弥が書付けた紙を回収し、また消えた。 酔った振りをした壬弥が戻ればそこにいたのは睦助と輝血の姿。男所帯に女一人は危険だろうとは思うが、どうやら今の所は女扱いされていない模様。だが、念には念をするもの。分らせるには唯一つ。 徐に壬弥が輝血の尻を触る。思った以上の弾力と丸みと判断したのも束の間、輝血は即座に拳で壬弥の顎を叩き、腕を切りつける。これには誰もがぎょっとしてしまう。 「あたしに気安く触るんじゃない。酔い、醒めたろ」 そっぽ向く輝血に全員が血の気を引く。これで輝血に危害を加える男はこの場にはいないだろう。 「おい、先生の所に連れてってやれ」 男の一人が言うと、若い奴が壬弥を案内する。奥の方に医者は部屋を与えられているらしい。 「先生。お願いしやす」 若い男が言えば、振り向いたのは中年の男。医者は傷口を洗い、包帯を巻いて、顎の腫れは水で冷やせと言った。 「あんた、ずっといたのか?」 自分の腕が包帯に巻かれているのを眺めつつ、壬弥が尋ねた。 「当代が怪我をした時にここに住み込むようになった」 「そうか」 手当てを終えて壬弥はその場を後にした。 一部始終を覗いていた珠々は相変わらず雪原一家の動きを見守っている。当代は部屋に閉じこもっているようで、情報通り体中に包帯を巻いていた。 医者がいない時に珠々は忍び込んで書類を探す。当代が怪我をしていたのならば、それに関する書付けがあるはずと珠々は判断した。壬弥が怪我をした際、確かに医者は書付をしていたが、そこには当代のものはなかった。 ●雲中で霧を探す 麻貴が当代の転落事故に関する資料を持ってきた。 その時の戦いはどうやら、大人数でやっていたらしく、幹部複数の行方が不明とされている。現場付近に来ていた雅人、折々、天藍、楓、麻貴は気配を気にしつつ、小声で話しながら捜索していた。 「行方不明?」 怪訝そうな表情をしているのは折々だけではない。 「一応そうなっているらしいが、当代が捜索をさせてなかったらしい」 「え?」 ぽつり呟く麻貴に雅人が弾かれるように顔を上げると、話を続けた。 「こういう連中は赤の他人でも家族のように扱う。なのに、当代はしなかった。不自然すぎないか?」 「探しても無駄と断定できているか、見つかると厄介だから‥‥とかか?」 首を傾げる天藍に楓が書類を眺めていて、気になった点を口にした。 「今、雪原一家にいる医者は先代からの医者ではないようだな」 「じゃぁ、当代は入れ替わっている可能性が濃厚って事かな」 折々が言えば、麻貴は頷く。 「羽柴さんは気づいていたんですか?」 雅人が言えば、麻貴は首を振り、困ったような歪んだ表情を雅人に向ける。 「情報の裏づけもない単なる願望だ」 「願望ですか‥‥」 楓はそのまま崖下に足を伸ばしている。 「沢村さん!」 天藍が叫んだが、一歩遅く、楓は崖下へ。全員が崖下を覗けば、楓は怪我もなく立っていた。崖と名付けてはいるが、そこは急な坂道という感じではあるが、一歩間違えば大きな事故になりかねないだろう。 先に降りている雅人が麻貴を呼ぶ。少し外れた所にも社があり、雅人が中を開けると、数名は入れるかもしれない広さがあった。更に身を乗り出せば、床にシミがあった。よく見ればそのシミは赤黒く、随分前に付着した物のようだ。 「なんだろう、人の血かな‥‥」 折々も身を乗り出し、シミを窺う。 「多分‥‥でも、どっちの血でしょうか‥‥」 「それを調べるのも仕事の内だな」 静かに楓が言った。 街にいる御門は外の護衛として雪原一家周辺を探っていた。意外だったのが密偵を見つけただけで三名ほど。志体持ちかは分らんが、所謂一般人とは違うものを肌で感じ取っていた。 どこで息継ぎをしたらいいのか分らず、御門は少し苦しそうに顔を歪める。ふと、視界に何かが落ちてきて、御門は驚いたが、それは布に包まれた小さなこぶし大の物。見上げると木の上に珠々がいたが、すぐさま消えてしまう。夏とは違い、葉が茂らない冬の木は隠れ蓑には不向きだ懐にそれをしまい、その場を去る。 尾行されていない事を確認すると、御門は包みを開ける。中には酒瓶に入っていただろう書付と薬品の匂いがする書付と蜜柑が出てきた。 「とりあえずは、合流ですね‥‥」 雪原一家の方を見て御門は一人呟いた。 ●影の奥 崖を調べた後、楓と麻貴は先代に会いに行く事にした。 「‥‥凄く目立ってるんだけど」 麻貴が言えば、隣にいる楓は頭巾を被って隠密行動中。堂々と道を歩いているのだから目立って仕方ない。 「麻貴殿の分もある」 「いや、いらないから。更に目立つから!」 素晴らしき気遣いの楓に麻貴がツッコミを入れる。 「先代が何処に住んでいるか見当はついているのか?」 「それが、最近行方が分からんらしい」 「‥‥何だと?」 きゅっと、眉根を寄せる楓だが、麻貴は困った様子でもなかった。 「早々に死ぬような方ではないらしいからな」 「では?」 「当代が怪我をした際、医者はいつもの医者に見て貰う事はなかったそうだ」 「そうは簡単には縁は切っていないと‥‥?」 着いた先はその医者の診療所。夕方ではあったが、失礼な時間ではない。医者は麻貴が名を名乗ると驚いたように懐かしみ、麻貴が先代に会いたいと申し出ると、困った顔をした。 「我々は、この状況に憂いを感じている」 静かな口調ではあったが、楓の声はとても力強いものだった。溜息をついた医者は案内を決意した。 案内された先は街外れの藪の中。二人が気づいたのは当代が怪我をした場所と近い。更に奥に行けば、一軒の家があった。中には一人の老人が火鉢にあたっていた。 「客だ。羽柴の姪だってよ」 医者が言えば、その老人は麻貴を見て鼻で笑う。 「義父より話は聞いておりました。会えて光栄です」 「懐かしいな」 「雪原先代、我々は礫を投げたのは現一家を探る者を欲したからではないのか?」 楓が口を開けば、麻貴は了承するように頷き、理穴監察方の事を話した。だが、先代は自分ではないと言った。 「確かに手はほしいさ、だが、外敵は待っちゃくれねぇ」 「雪原一家は手を組み始めているが?」 眉を顰める楓に先代は厭そうに顔を顰める。 「本当の外敵は別もんだ。しかも、中で巣食い、雪原の名を汚しやがっている。これ以上もねぇ屈辱だ」 「では‥‥」 先代は奥の襖を開けると、そこには匕首や白鞘を手にした男達がいた。気配を殺していたのだろう。先代に危害を加えれば、飛び出していたと思われる。 「もう、我慢できねえよ。親父から譲り受けた名を守れねえなんてな」 角刈りに精悍な顔立ちの男が言い捨てる。この男が雪原一家の当代なのだろう。首筋から見える切り傷が深い物だというのを物語り、現在の雪原一家の当代が偽者だと確信させられる。 納得した楓は麻貴と目を見合わせ、頷く。 「さて、口裏を合わせてもらおうか」 日が暮れると、雪原一家では壬弥が飲み屋に繰り出そうと声をかけた。家で飲む酒もいいが、外で飲む酒や料理もまたいいものだ。さり気なく、壬弥は睦助も誘い、了解を得る。 当代以外の殆どの人間が出払い、数人の見張りが残る。その者達を見張る為に珠々だけが残った。 じっと待っていると、外から一人の男が現れた。無頼者にしては身なりはそれなりによかった。 珍しい事に当代が現れて、男を招き入れた。珠々が忍び込み、当代の部屋の床下に忍ぶ。珠々の頭上では男達が酒を酌み交わしながら話しているのだろう。 「あの賭場に執着する事はないさ」 「儲けるならいくらでも手はあるな。睦助はもう、使い物にならん」 「あいつは先代の頃からいる唯一の奴だからな。扱いやすい奴だったから傍においてたが、逃げ出されるとは思ってもみなかった。決定なら従う、好きにしろ」 来客者と当代が部屋を出ると、珠々も倣って門の方に向かう。来客者が進む先は三茶の宿の中でも粗末な建物。侵入を試みようとするが、来客者は姿を隠している珠々の方を見た。 ぞくりと本能から突き刺さるその視線。無意識に珠々がこめかみに手をやると、指先には危険を知らせる雫があった。 飲みに行った雪原一家の下っ端達は今夜も大騒ぎ。 それに乗じて壬弥と輝血が睦助と天藍、御門と引き合わせる。連中の死角になるような所で天藍は急く気持ちを隠せなく、質問をしていた。 「確かにお前は守る。だから教えてくれ」 天藍が知りたがっているのは賭場が襲撃される心当たり、何故、奏生だったのか、元締めや運営陣の人となり。 「襲撃の心当たりはわからねぇんだよ。本当だ。元締めは現地のごろつきまがいさ。後の連中もそうだ」 本当に睦助はよくわかっていないらしく、首を振るばかりであった。苦い表情をする天藍に御門が肩を叩く。 「何か、してはいけない事はしてたのでしょうか?」 「‥‥あ、そういや、一人が売上金をガメていたようだったな」 「そいつは?」 「真っ先に殺された。後はもうほうほうの体で逃げ帰ったんだ‥‥」 「そうか」 天藍と睦助が話している間、御門は人魂を飛ばして不審者を見ていたが、ひっかるような人間がいたが、じっと店の中を見ているだけだったので、御門が困ったように壬弥と輝血の方を見る。 そっと抜け出したのは輝血だ。周囲を見たが、輝血が動いたのに気づいたのかいなくなっていた。壬弥が睦助に不安を与えたのかと向こうを見れば、睦助は気づく事無く天藍と話していた。 「‥‥地が安定しねぇな‥‥」 溜息をつくように壬弥が呟いた。 飲み屋前にいた男を雅人と折々が尾行している。捕まえたい気はするが、ただ捕まえても白を切られては意味がない。確認を取り、更に再確認する。その基本を雅人は一人前の瓦版屋になっても忘れてはいなかった。 男が歩いて行った先は粗末な宿。 「紫雲さん、俳沢さん」 小声で珠々が二人の名を呼ぶ。 「‥‥では‥‥」 雅人が言えば、珠々が頷く。 「睦助を殺すようです」 静かに珠々が言えば二人は厳しい表情をした。 宿に戻った三人は麻貴と楓の他に見知らぬ老人がいた。 「雪原先代、蛍石殿だ」 楓が淡々と言うと、全員が絶句した。 |