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■オープニング本文 武天にて護衛武官を勤める鷹来沙桐はどうしようもなく困り果てていた。 先日、刀強盗の実行犯が門下に入っていた道場の師範代だったという事が判明し、門下生達やその親が酷い衝撃を受けた。 公開試合を行う事になり、開拓者達に公開試合を盛り上げて貰った。 見事成功となり、門下生達もまたやる気が出て、誠意修行中。後は刀匠の行方を待つばかりなのだが、困った事が起きた。 試合が終わった数日後、門下生に稽古をつけに行った帰りの事だ。 門の前に一人の青年がいた。 酷く思いつめたようだが、やたらそわそわしている。 「もし?」 沙桐が声をかけると、男は沙桐を見つめたまま、呆然としていたが、慌てて男は沙桐に手紙を渡した。 「私はこれにて! また来ます!」 慌てて行ってしまった男に沙桐はぽかんとしたまま。手紙を見てみる。 剛正館の公開試合にて門下生の試合を見守る貴女に一目惚れをいたしました。 焦がれる想いを伝えようにも貴女を目にするだけで私は臆病となります。 手紙で想いを打ち明けるしか方法はありませんでした。 私と友人となり、私を知ってください。 津辻 暢次 可愛い女の子からの手紙なら喜ぶのに男から貰っても嬉しくもない。 それから毎日のように沙桐の前に顔を出している。 自分は男だと言っても聞きやしない。証拠を見せようとして脱ごうとしたら止められた。 沙桐自身、自分が女と間違われるような容姿であるのは認めているし、間違えられる事も多々あった。 あの試合には開拓者の女の子は皆可愛い子ばかりいたのに、女装して美人だった人もいたのに、なんで自分が! 今回はまずい。色々と! 一縷の望みは「今忙しい」とのつれない返事が来ただけ。 溺れる者が向うのは開拓者ギルド。 「う、承りました‥‥」 笑いを必死に堪える受付嬢に沙桐は思いっきり笑っていいよと言えば、遠慮なく笑う受付嬢。 「本当に頼んだよ」 「はい、お気をつけてお帰りくださいね」 煤けた背中の沙桐を見送った受付嬢はもう一枚の依頼状を取り出した。 その依頼状は折梅からのものであり、同じように沙桐を想う殿方を諦めてあげてほしいという事。 振られるんだから、一時の夢を見させてもいいんじゃない? という意味が込められている。 保護者公認で女装をさせられる沙桐の運命やいかに!(まだ決まったわけではない) |
■参加者一覧
水波(ia1360)
18歳・女・巫
御樹青嵐(ia1669)
23歳・男・陰
楊・夏蝶(ia5341)
18歳・女・シ
輝血(ia5431)
18歳・女・シ
オドゥノール(ib0479)
15歳・女・騎
溟霆(ib0504)
24歳・男・シ
ジェームズ・ゼロ(ib2332)
32歳・男・陰 |
■リプレイ本文 依頼を受けた楊夏蝶(ia5341)は複雑な表情をしていた。 「どうしたんだい?」 首を傾げる冥霆(ib0504)に夏蝶が溜息をつく。 「だって、私もあの場にいたのよ。女としてちょっと、自身が揺らぐわ」 「好みは人それぞれ。津辻様にとって美しいと思ったのが沙桐様という事でしょう」 水波(ia1360)が言えば、夏蝶は肩を竦める。 「女性というものは皆の女神でありたいと思うもの。男は誰かを守る守人でありたいと思うものだ。その匙加減が絶妙に難しいものだね」 「‥‥そういうわけじゃないわよ‥‥」 拗ねるように夏蝶の唇が尖れば、さくらんぼのようにも思える。 「だって、あの場にはノールっちや輝血っちもいたのよ」 「その当人達はとても浮かれているようですが‥‥」 じっとその方向を見つめるのは御樹青嵐(ia1669)だ。オドゥノール(ib0479)と輝血(ia5431)が仲良く並んで鷹来家と向かっている。 「同情を差し上げるのが、津辻さんでいいのか分からなくなってきました」 青嵐が言えば、三人が苦笑した。 鷹来家の屋敷に着くと、沙桐が廊下を走ってまで慌てて出迎えてくれた。 「いらっしゃ‥‥」 出迎えの言葉を最後まで言えなかった沙桐はそのまま硬直。 「‥‥か、輝血ちゃん、ノールちゃん‥‥??」 二人の輝かんばかりの笑顔に沙桐は後退さる。 「いやー、恋は大変だなー」 労る気があるのか分からなくなるほどのノールの笑顔は興味の色に塗りつぶされている。 「沙桐、大変だったね」 「輝血ちゃん、全然そんな事思ってないでしょ!! 何その凄絶な笑顔!」 珍しい輝血の労りの言葉も沙桐がざっくりと切り落とす。 「嫌だなぁ。気のせいに決まってるでしょ」 逃げようとする沙桐が踵を返した時、そこにいた人物を見て全てを察した。 「ばー様の手先か!」 「あらあら、沙桐さん、人聞きの悪い事」 女中を連れて艶笑を浮かべた折梅がそこにいた。淑女宜しく袖口で笑う口元を隠している。 前門の折梅、後門の開拓者、逃げる術を無くした沙桐の肩をぽんっと、叩いたのはやっぱりいい笑顔のオドゥノールだった。 「さー、支度をしようか」 右にオドゥノール、左に輝血がよりそって、生気をなくした沙桐をよく磨かれた板の床を引きずりつつ、女中の案内で二人は沙桐を連れて行った。 「何とも輝くというのは素敵ですね」 楽しそうに微笑む折梅が残りの四人に上がるように促す。 「そうですわね」 水波が楽しそうに言うと、冥霆が肩を竦める。 どうやら今回は己が持つ美徳に酔いしれる時間はなさそうだから、 ●綺麗の秘密 女中に案内された部屋に着いたオドゥノールと輝血はぽいと、沙桐を部屋の中に押し込む。押し込まれた沙桐はその場にしりもちをついてしまう。 「沙桐、君は綺麗になる必要がある」 「何でだよ!」 「助けたいと思うからだよ。効率よく追い払うにはこれしかないんだ」 女中から受け取ったのは蒸しタオルと剃刀。沙桐がよぎったのは以前、青嵐がやられた光景だ。 「女装やるとしても、脛毛を剃る必要がどこにあるんだ!」 和装なら相当な事がない限り脛や腕を見せる事はない。 「だって、沙桐さんが着るのはこれだもの」 夏蝶が取り出したのは可愛らしい洋装のワンピース。沙桐は目を見開いて絶句している。 「沙桐さん、相手に諦めさせるには、きちんと失恋したという事を分からせてあげなきゃ。折梅さんが依頼したのだって、傷つかずに事を収めてほしいっていう気持ちからあるし」 夏蝶が両膝を畳に突いて沙桐と目線を合わせて真摯に言うと、正論からくるものであり、沙桐は理解したのか、少し黙る。 「夏蝶さんの言う通りです。出来る限り、穏便に終わらせるという事が必要と思います」 青嵐が言えば、沙桐は溜息をつく。 「わかったよ」 降参というように沙桐が手を上げた。 「今回、女装する沙桐様は沙桐様の双子の姉という設定です。女性らしい仕草や言葉遣いを教えさせて頂きますね」 水波が言ってくれたのはいいが、沙桐はもう輝血に着物を剥かれており、色白ではあるが、筋肉が程よくついて細身の身体が顕になった。 「きゃー、沙桐さん、色白ーい!」 やっぱり女装させるのが楽しいのか、夏蝶が沙桐の上半身を眺めている。 「ほう、豪族の令息と聞いたが、中々のものだな。腹筋も割れているし」 冥霆もじろじろみやる。 「さっさと腕毛と脛毛剃って下さいね」 コルセットを持ったオドゥノールが待ち構えている。今回もコルセットで括れを出すらしい。夏蝶と水波に抑えられた沙桐は剃刀を持った輝血に腕毛を剃られている。 腕が終わったら次は脛。沙桐は体毛は薄めのようだったが、綺麗に剃れて輝血は満足そうに頷いた。もういらないとばかりに輝血が沙桐をぽいと、オドゥノールに渡すと、青嵐の方に向かう。中々に無法だ。 沙桐の身体にコルセットを巻いたオドゥノールはギリギリと沙桐の背に脛を当てて、紐を引っ張っていた。 床を叩いて参ったを伝えるジェスチャーをしている沙桐に、オドゥノールは聞いちゃいない。 「はいはい、まだまだ」 オドゥノールはちょっとやりにくそうに顔を少し顰めている。 「意外に腹筋固いな」 「痛いよ! 縊れは自前でいいだろ!」 悲鳴を上げて沙桐が必死に叫ぶが、オドゥノールはやめない。 結局二人揃って肩で息をしながら沙桐の腰の成形が済んだようだ。いい笑顔でオドゥノールが額の汗を拭った。 輝血が沙桐の腕毛を剃っている間、青嵐が大人しくオドゥノールに括れを作ってもらい、化粧をしてもらった。青嵐に渡されたのは紺色のワンピース。色が白い青嵐の肌をぐっと引き立たせる服だ。 「ノール、忘れないでね」 ぽいと、沙桐の無駄毛処理をしていた輝血がオドゥノールに渡したのは布胸当・改。流石の青嵐もこの布胸当てには驚いていたが、ノールが手早く青嵐に着せてしまった。 完璧な女姿となった青嵐は、ケープを肩に羽織って一足先に出た。 「あれ、青嵐さんは?」 オドゥノールに腰を締められた跡、汗をかいてしまったので、軽く身体を拭いてから化粧を施す事になった。 「先に行きましたわ。津辻様を呼び出す為に」 輝血によって脱ぎ散らかされた着物を畳んでいた水波が答えた。 「そっか」 ぐいっと、両手を使って夏蝶が沙桐の顔を自分に向ける。 「でも、沙桐さん。肌キメ細かい‥‥」 溜息をつく夏蝶に沙桐は少しぶーたれた顔をする。 「女装で騙された事が私でさえあったのよ。沙桐さんなら必要なんじゃないかな」 めっと、沙桐を窘めるように夏蝶が言うと、沙桐は溜息をつく。 「本来、俺は必要ないんだよ。そもそも改方の人間ではないしね」 「おや、そうなのか?」 意外に思ったのは冥霆もそうらしい。 「俺の本来の仕事は武天の要職にある人物を守るのが仕事。皆に依頼してきたのは、今、長期に渡って護衛役に俺が指名されているお偉いさんからのお願いなんだ。まぁ、向こうにお願いされたらやってる。お偉い方が全部責任もってくれるならやってもいいんだよ」 「それで室内の動きも機敏だったわけだ」 ふむ、と頷く冥霆が思い出したのは、筑紫屋で冥霆が実行犯を殺そうとした時に沙桐に留められた所だ。 「そういう事」 冥霆の方を見て沙桐がにこっと、笑うと、また夏蝶に顔の向きを訂正された。 「後は紅を差して‥‥と」 夏蝶が紅を差すと、次は服装。 「そんなぺったんな胸で男は誘惑できないよ‥‥沙桐」 待ってましたとばかりに輝血が布胸当・改を持って立ち上がる。 「誘惑する必要ないだろ!」 抗議しても通用する輝血ではない。あっさりと沙桐に胸が出来て、ワンピースを着せられた。いつも纏められている髪をおろして、櫛で梳かす。 青嵐は暢次の家に行っていた。丁度家にいた暢次は青嵐の事も覚えていた。 「ああ、あの時の杜若の君」 あまり声を出すのはボロが出ると思い、頷くにとどまり、手紙を差し渡す。 「鷹来‥‥沙芽?」 「‥‥津辻様から手紙を貰ったと‥‥」 裏声で小声で言う青嵐に暢次は顔を高潮してその手紙を読む。 「会って話したい事‥‥」 真剣に悩む暢次だが、顔を上げて青嵐に向き直る。 「必ず本日昼に参りますと沙芽殿に申し上げてください!」 しっかりとした言葉に青嵐は頷いてその場を去った。 「‥‥しかし、私まで女装する必要がわからないのだが‥‥」 ポツリと呟く青嵐だったが、本当の答えを言ってくれる人物はいなかった。 ●双子の影 戻ってきた青嵐は沙桐の姿を見て驚いた。 「すっごい出来栄えでしょう!」 自慢する夏蝶とオドゥノールに適当に相槌を打ち、輝血の方を見ても彼女は気にしてないようで、青嵐が思い出したのはあの艶姿を見たのはここにいる人物だけで自分だけという認識。 「仕草は多少雑ではありますが、問題はないでしょう」 満足そうな水波も出来栄えはいいと思ったようだ。 「私も恋人役をする上では満足な出来と思うよ」 冥霆が暢気にお茶を啜っていると、沙桐はげんなりして諦めたようであった。 「それでは、移動しましょう。津辻さんは行く気満々だそうですよ」 青嵐が言えば、全員が立ち上がった。 待ち合わせの場所には津辻がもう着ており、どこかそわそわしたようだった。 夏蝶が逢引の為の道順を書き記した紙を沙桐に渡す。 「甘味の店とか、藤が綺麗な所とか書いてあるから」 「ティエちゃんはまじめだなぁ」 覚えたよとばかりに沙桐が夏蝶に紙を渡し、行って来ますの一言を言って沙桐が津辻の方へと向かった。 一方、沙芽と化した沙桐が暢次と会っていた。女性陣の教育あってか、沙桐自体に経験があるのか、沙桐は上手い事交わしていた。 甘味屋に入った二人は隣り合って座り、往来の人々を眺めつつ、団子を食べていた。 「あの布の首飾りはどなたが‥‥」 沙桐の首には布をたるませ、涙型の宝石が輝く装飾品がついていた。家で見た際、沙桐の首にそれはなかった。 「折梅様が見立てて下さったのです」 成程と青嵐が頷いた。男は喉仏が目立つ為、細身の女が出ているのは不自然だ。それを隠す為の装飾品だ。 「何かあるかもしれないと思ってましたが、大丈夫なようですね」 最初の尾行役である青嵐が相方の水波に言えば、彼女は一生懸命紙に書き記していた。助けのサインを出さずともやり過ごす沙桐に安心し、覚書に夢中になっている。ちょっと悪寒がした青嵐であるが、いざという時の証拠になるだろうと思い、そのままにした。 夏蝶と輝血は折梅を伴い、尾行していた。折梅はまた、依頼に参加する事が出来て嬉しそうだった。 「どうしたの?」 夏蝶の様子に気づいた輝血が声をかける。 「うん、津辻さん、沙桐さんじゃない人を一目惚れしたんじゃないかなって」 夏蝶が思い浮かべているのは沙桐ではない人物。 「私は、そっくりな奴を怯えさせて楽しかったけど」 呆れる夏蝶に輝血は聞く耳持たずだ。 「アイツ等揃って半分空っぽみたいなんだよね」 輝血の呟きを拾ったのは折梅だった。 「その半分同士を足せばよろしいでしょう」 くすりと微笑む折梅に輝血がその方を向いた。 「それも癪」 「では、遊ぶのは沙桐さんで我慢してください」 ころころ笑う折梅に輝血がどうしようかと悩む振りをした。構って楽しいのは沙桐でもあるのは確かだ。 三番目の尾行者は冥霆とオドゥノール。 中々打ち解けた様子の暢次と沙桐、いや、沙芽。 「なんというか、男前だな」 視線に気づかれないようにオドゥノールが暢次を見つめる。確かに暢次は男前だった。 何かに気づいた冥霆は津辻に背を向けるようにオドゥノールを庇う。 「どうしたんだ?」 見上げるオドゥノールに冥霆がそ知らぬふりをしてどこかへ視線を動かしている。 「あまりよからぬ輩がノール君を見ていてね」 「何っ」 「いや、君の想像している輩じゃない。君の美しさに魅了された者がいたんだよ」 「へ?」 実は、オドゥノールは輝血の手によって化粧を施していた。普段は化粧っ気がないので、自分が魅了されるというのにイマイチ理解しがたかった。 「輝血君も言っていただろう。女の子はいつも可愛くと。今回は可愛い過ぎると、余計な厄介事が来るから用心だけどね」 「はあ‥‥」 イマイチ自分が関わる色恋沙汰には疎いのか、オドゥノールは肩を落とすように呟いた。 「そろそろ戻ろうか」 冥霆とオドゥノールにはもう一つ使命がある。青嵐、水波組の姿を確認し、二人は鷹来家へと戻った。 ●はじめましてさようなら 家まで送ってもらった沙芽は家の前で立っている男を見つけ、笑顔になり、駆け出した。 「沙芽殿?」 驚く暢次を置いて、沙芽はその男‥‥志士の貴族の格好をした冥霆に抱きついた。 「お帰り、さぁ、支度をしておいで」 沙芽の髪を優しく撫で、今にも蕩けそうな笑顔で冥霆は言った。沙芽は頷いて中に入った。 中に入った沙芽を待ち構えていたのはオドゥノールと女中。三人がかりで湯と水を使って沙桐についた粉の色と匂いを落としている。 門の外では冥霆が暢次と話していた。 「なんと‥‥結婚を‥‥!」 「沙芽殿は私とは許婚であり、婚姻の為に旅立つ。貴殿の想いを知り、彼女は苦悩した」 静かに話す冥霆の言葉を暢次は静かに聴いていた。 項垂れる暢次の前に出てきたのは男姿の沙桐。暢次は沙芽そっくりの顔が出てきて大層驚いた顔をした。 「津辻殿、私は鷹来沙桐。沙芽は双子の姉にあたる。姉はこの事を打ち明けられるのが辛くて、義兄上に頼んだようだ。真っ向から言えなくて申し訳ない。だが、貴方の事を思っての行動と理解してほしい」 「彼女は優しい人だからな」 冥霆も後押しするように言えば、暢次は項垂れたが、顔を上げて冥霆に向き直る。 「沙芽殿を必ずや幸せにしてくれ」 暢次の言葉に冥霆が勿論というように頷いた。その様子に安心したのか、暢次は一礼をして帰ってしまった。 ●恋愛って何 仕事が終わった開拓者達は酒場にて飲んでいた。 「はー、何で人ってあんなに他人を想う事が出来るんだろう」 女装姿のままの青嵐を侍らせて輝血が呟く。 「理由なんてないと思うなー」 首を傾げる夏蝶が茄子の味噌炒めを口に運ぶ。 「恋や愛は人それぞれだよ」 楽しそうに冥霆が杯の酒を嚥下させる。 「いいネタが出来ましたわ。折梅様は普通の恋愛物語が好きなのには少々残念ですが」 覚書のメモを手にした水波がうっとりと自分が思い描く話を思い馳せている。 「次、彼が好きになる人が出来た時は女性だといいなぁ」 出し巻き卵を口にするオドゥノールが言えば、青嵐がまた男だったら目も当てられないと肩を落とす。 「だが、誰かを綺麗にするのは楽しかった!」 オドゥノールの言葉に女性陣が力強く頷いた。 沙桐が一人、夜の街を歩いていた。見えてくるのは花街の灯り。約束の地図が届いたとの連絡があったのだ。 今日の事を思い出しながら歩いていた。 「絶対嫁になんかやらねぇ」 沙桐の表情は夜の影で見えなかった。 |