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■オープニング本文 前回のリプレイを見る 三年前、理穴観察方から誰にも告げずに行方をくらました上原柊真が理穴監察方第四組主幹として復帰した。 三円前を知る者達にとっては喜ばしい事だ。 羽柴麻貴と檜崎の手腕は分かってはいるが、柊真の存在がなければいつ二人が‥‥麻貴が倒れるか分からなかったから。 実際に倒れてしまったものだから、誰もが柊真が戻ってくれる事を願っていた。 柊真の発見もまた、怪我をしたという事もあり、柊真より上の古株には心配されたが、見事復帰したので、それはそれでとなった。 誰もが柊真の復帰を喜ぶと思ったら、ちょっと甘かった。 「檜崎さん、私は春九殿の知人の手伝いに行くんで後よろしくお願いします!」 第四組主幹が柊真になった今、麻貴はその席を外れ、ただの組員に戻っていた。だが、副主幹である檜崎と共に復帰したばかりの柊真の引継ぎや補佐を行っている。 「何だと、羽柴! 俺一人でやれってか!」 「いざとなったら皆を呼ぶといいです! じゃ!!」 しゅたっと、手を上げて麻貴は光の速さで四組の大部屋を出た。 「この薄情者ーーーー!!」 檜崎の絶叫も麻貴にはもう聞こえない。聞こえても誰が戻ってくるか。 因みに、麻貴はあの後、雪原一家の赤垂と出会ったとか。 麻貴が戻ってきても現状は変わらず、寧ろ悪化したようにも思えるのは檜崎の憔悴ぶりからにして分かる。 「あの人何とかしてくれ‥‥」 「無理ッス」 さめざめと泣き真似をする檜崎は心底そんな気持ちなのだろう。だが、麻貴も柊真には敵わなかったりするのでどうにも出来ない。 「若い子イジったらムキになるのは目に見えてるんですが、あの人はどうしてもからかいたいみたいで‥‥」 二人が頭を悩ませているのは柊真と新人達の攻防戦。 ここ最近、年少組の一人がやたらと反抗的で麻貴は困っていたが、柊真が戻ってきたら悪化してしまった。 柊真がからかったりするのが悪いが、反抗的な少年は随分と柊真に反発している。 麻貴や檜崎にはあまり反発する事はなかったが、柊真が戻ってきてから少し酷くなった。 檜崎は理由を分かっているが、麻貴は全く分からない模様。 「開拓者呼んだら?」 ひょっこり話に加わったのは沙穂だった。 「そろそろ、年忘れの宴会時期だし、彼らなら一計案じてくれるんじゃない?」 「ああそうか!」 麻貴と檜崎がぽんと、手を叩いて納得した。 「つことで、羽柴、ギルド行って来る!」 「ああ! 檜崎さんの薄情者ーーーー!!!」 涙声の麻貴の声が大部屋に響いた。 |
■参加者一覧
滋藤 御門(ia0167)
17歳・男・陰
御樹青嵐(ia1669)
23歳・男・陰
紫雲雅人(ia5150)
32歳・男・シ
珠々(ia5322)
10歳・女・シ
楊・夏蝶(ia5341)
18歳・女・シ
輝血(ia5431)
18歳・女・シ
フレイア(ib0257)
28歳・女・魔
溟霆(ib0504)
24歳・男・シ |
■リプレイ本文 監察方四組主幹執務室ではカタナシと麻貴が開拓者達によって説教を受けていた。 「大体、羽柴さんが橋渡ししてなくてどうするんですか」 じろりと紫雲雅人(ia5150)が麻貴を見ると麻貴は怒られた子供のような顔をしていた。 「僕は少し分かります。椎那君の気持ち」 怒られている二人より少し離れた所で滋藤御門(ia0167)が呟いた。それに反応したのは冥霆(ib0504)だ。 「若い情熱とは不器用だが実に真っ直ぐで、とても眩しいものだよ。勿論、君もね」 にこっといつもの笑顔で笑う冥霆に御門はくすぐったそうに笑う。 「私はあまり上原さんの事知らないけど、いい人だとは思うけど。何より、格好いいし」 ミーハー気分の楊夏蝶(ia5341)にフレイア(ib0257)が微笑ましそうに緩む口元を指先で慎ましく隠す。 「そうですね、カタナシさんのあの性格は生真面目な方には少々辛いかもしれませんね」 「どうやら、随分と将来有望なようで、一肌脱がさせてもらいますよ」 にこりと微笑む御樹青嵐(ia1669)に冥霆が振り向いた。 「女装の方向で?」 「違います」 「ま、どうにしろカタナシにはしっかりして貰わないとね」 即座にツッコミを入れる青嵐をよそに輝血(ia5431)が肩を竦めると、遅くなって珠々(ia5322)が主幹室の方へ入ってきた。 「何やってるんですかー!」 欲望‥‥もとい、正義が走るままに珠々が柊真めがけて手刀を振り下ろすが、その手刀は柊真には届かず、手刀を抑えられ、珠々は膝の上に置かれた。 「女の子の欅君はそれほどではないみたいだし、他の二人は男ということで思いっきり模擬線なんかどうだい?」 冥霆が提案すると監察方の二人は頷いた。 今回の被害者、檜崎はわなわなと肩を震わせている。檜崎が手にしているのは育毛用の油。 袋から甘味や薬と一緒に転がっているのは人参に黒くバツと書かれている。 急いで走り出した檜崎を見た組員達は「また開拓者か」「あの人、頭皮ヤバいんですか?」「やっぱり」などと憶測を出していた。 物凄い顔をした檜崎とすれ違った冥霆、御門、フレイア、雅人は四組の大部屋へ入った。 顔馴染みとなりつつある開拓者達に組員達は気兼ねなく声をかける。 初老の組員に声をかけると、お目当ての人物達を見つける。 「欅ちゃんですか?」 笑顔で御門が話しかけると、呼び止められた少女は紅葉のような瞳を見開いてこくこくと頷く。 「お話をしたいと思いまして、甘味でもご一緒していただけませんか?」 「美味しいお店があったら教えて下さい」 穏やかに微笑むフレイアと御門のお誘いに顔を赤くしながらはにかんだ笑顔で欅は頷いた。 新人三人を連れ出した四人が向かったのは欅お気に入りの甘味屋。 麻貴と仲のいい開拓者達と一緒にいて緊張している欅に冥霆が彼女の眼前に手を出す。欅が顔を上げると笑顔の冥霆と目が合い、顔を赤くする。次の瞬間、何も持ってなかった冥霆の手には花の髪飾りがあった。 ぱっと顔を明るくする欅に冥霆が髪飾りをつける。 「似合うね」 「ありがとうございます」 顔を真っ赤にして礼を言う欅に四人は可愛らしいなと思う。 「今回、三人をお連れしたのはちょっとした取材です」 雅人が言えば、そっと樫伊が目を細めた。 「羽柴さんからお話を聞いていると思いますが、理穴監察方は公にはされてない部署です。瓦版にここの事が書かれては職務に障ります」 丁寧に断る樫伊に雅人はほうと楽しそうに目を細める。 「流石、四組に仕込まれてますね。まぁ、私事でお聞きしたいのですよ」 「どのような件ですか?」 椎那が言えば、雅人はあっさりと本題を口にした。上原主幹をどう思っているのか。 「有能って聞きましたよ、実際きちんと仕事してますし。実感は湧きませんが」 目線を逸らして言ったのは椎那だ。 「何か、気になる所とかありますか?」 御門が言えば、椎那の表情は更に機嫌が良いとはいえなくなっている。 「ふざけた性格を何とかしてほしいです。こっちの身になってほしい」 「椎那がつっけんどんにして来たからだろ」 どうやら、手始めは椎那かららしい。樫伊の言葉に椎那はむすっと押し黙る。欅は二人の様子におろおろしている。 「欅ちゃんは上原主幹の事をどう思っていますか?」 「凄く、カッコいい人と思います‥‥」 御門の問いかけに欅が照れながら言う。 どうやら、欅は麻貴お兄様や沙穂お姉様と同等に渡り合える開拓者達に憧れている模様。憧れの人達から誘われたので気分が浮かれているようだ。 「嫌ではないですか?」 「はい、とても優しいです」 フレイアの言葉に欅がはにかむ。どうやら本心らしい。 樫伊は認めていないというよりは実力が気になるようであり、やはり問題なのは椎那だった。 「それならば、上原様に一度思い切ってぶつかってみてはいかがでしょう」 「え?」 御門の提案に三人はぎょっとする。 「模擬線なんかはどうだろう。樫伊君は上原君と手合わせてみたいと聞いたが」 冥霆が更に具体的な案を出せば、一番うずうずしだしたのが樫伊だ。椎那は別に構わないという事だった。 美味しい甘味を食べた七人は監察方の方へと戻る。御門と冥霆が一番後ろを歩いていた欅に気付いた。とても表情が沈んでいた。 「どうかしました?」 御門が声をかけると、欅は困った顔をしていた。フレイアと雅人も気付いたが、冥霆が先に行ってと言った。 「‥‥あの、本当は椎那が反発しだしたのは、上原主幹が戻る前からなの‥‥」 「そうなのかい?」 驚く冥霆に欅が頷く。 「上原主幹が怪我をしたのが四組に分かってから‥‥ごめんなさい、これ以上は‥‥私も同じように言われたら嫌だし‥‥」 しゅんとする欅を見て冥霆がこっそりと欅に耳打ちをすると、欅は頷いて内緒だと言った。 「大丈夫だよ。そればかりはどうする事はできないしね」 肩を竦める冥霆に御門は首を傾げるばかりであった。 ●模擬戦 監察方に戻り、奥の道場で模擬戦が行われるとの事で、四組の組員達が野次馬に現れていた。 実況は冥霆、解説はフレイア。聞き役は欅だ。 共通介添人として御門と雅人になる。 戦うのは樫伊と椎那がコンビとなり、輝血、珠々、柊真と二対一の戦いを三回やるという形。 欅が入っていないのは、彼女自体、柊真に対して悪い気はないから除外。 一番手は珠々だ。 「どうかしたのか?」 心配そうに椎那が言うが、珠々は涙目で何でもないと言った。 「珠々君が泣きそうな顔をしてるね」 「檜崎さんに育毛用油が珠々さんからの贈り物と分かって怒られたんでしょうね。人参でも食べさせられたんでしょうか」 珠々の異変に気付きフレイアが淡々と推測をする。 「ここで情報が入ったよ。珠々君は檜崎君に猛烈に怒られてこめかみをぐりぐりされたようだ」 「確かに、檜崎さんの若さでは辛いですよね」 紙の切れ端を持って冥霆が情報を伝えて、フレイアが苦笑する。 「始め!」 麻貴が審判となり、さっさと試合を開始させた。 噂に名高い開拓者の腕前を肌で知る事ができる喜びに走り勇んだのは樫伊だ。樫伊が木刀を振り上げた瞬間、珠々が奔刃術を使って間合いを狭め、左手に持った脇差の木刀を樫伊の木刀に当て、弾かせた。 その後ろを走る椎那の懐へ移動し、開いていた右手の木刀を椎那の喉元に当てようとした瞬間、風を感じ木刀を移動させ、その風の一因である樫伊の木刀と交えた。 椎那もその隙を見逃す事はなく、珠々の首を目掛けて木刀を振る。樫伊の力と珠々の力が拮抗していた事もあり、樫伊の力を上手い事使い、床を蹴り上げてくるりと宙返りをして椎那の攻撃を避けた。 珠々を仕留められなかった椎那の木刀は空を切った。 「わ!」 一気に珠々の力と体重を受けた樫伊が平衡感覚を無くし、よろめいた。着地しようとする珠々にすかさず椎那がもう一度珠々に木刀を振ったが、それは珠々に届かず、喉元を珠々に許してしまった。 椎那が木刀を落とした瞬間、珠々の勝利が確定した。 「お疲れさまでした」 普段、表情筋がお陀仏になっている珠々が夜春を使って笑顔で二人に声をかけた。 「あ‥‥はい‥‥」 驚いたように椎那が言葉を返した。 二人の呼吸がまだ整っていない内に次の試合が始まる。 ゆらりと立ち上がったのは輝血だ。その様子に組員達がやんやと声を上げる。 「次は輝血君だね。幼く愛らしい顔立ちではあるが、その実力は監察方四組組員全員が知る! 元主幹羽柴麻貴も顎で使う最強シノビの入場だ!」 「まさかの輝血さんの登場で少々怯えているようですね」 だらりと木刀を持つ輝血は迫力がある。木刀で床を叩いて威嚇した方がまだいい、無表情の輝血はどす黒いオーラを撒き散らし、「情け無用」という文字が見える。 「輝血様は硬派で素敵なのです」 うっとりする欅に口が達者な実況と解説はどうツッコミを入れるか悩んだ。 「来な」 輝血が言うと、二人は大きな声を張り上げて輝血に向かった。 大きな声を上げるというのは自身を鼓舞する為でもあり、時には実力以上の力を発揮する事もある。開始早々二振りの木刀が輝血に襲い掛かるが輝血は一歩も動かなかった。 木刀を受けたわけではない。二振りの木刀を輝血が持つ一振りの木刀で受けた。平然とした顔なのは輝血が戦い慣れているからだ。 受けた木刀をそのまま返された二人は再び攻撃しようと体勢を立て直すが、輝血はそれを許さない。 早駆と影を同時に使い、まずは樫伊に一撃と思ったが、樫伊が咄嗟に木刀を盾にして輝血の攻撃を読んだが一歩遅く、木刀が折れて樫伊に当身が入り、そのまま床に崩れ落ちた。 軌道を変え、椎那の方へと向かい、突きの型に入った輝血はその木刀を椎那の肩を目掛る。 誰もが息を呑んだ瞬間、輝血と椎那の間に入り、輝血の木刀を受けたのは柊真だ。 「本気すぎは危ないぜ」 にやりと笑う柊真に全員がほっとしたように息をついた。 「紫雲さん、樫伊に治療を。そんなんじゃ折角の手合いがつまらんだろ」 柊真の言葉に雅人が樫伊に治療を施す。 「甘いよカタナシ」 睨み付ける輝血に柊真は気にしていない。へらへらしている柊真に殴りつけようかと思ったが、柊真が椎那を見る目が真面目だった事に輝血は目を見張る。 「樫伊の治療が終わり次第始めるぞ」 「上原様、治療を」 「かまわん」 心配する御門の言葉に柊真が笑顔で答える。 騒然としつつ、柊真との試合が始まる。 「須佐椎那と長田樫伊だな。ほぼ三年前に入局、陰陽師と志士の志体持ち」 柊真が呟きだしたのは椎那達の詳細。二人の激しい攻めを受けて返しながら。 「椎那は潜入が得意だな。樫伊はよく他の部署に戦力として借りている。他の部署からの評価は上々。こっちでもお前達は十分な戦力だ。全力で来い」 柊真が言い切ると、椎那が懐から札を取り出し、暗影符を発動させる。柊真に黒い瘴気がたち込め、視界を奪う。 樫伊が武器を水平に倒し、柊真に突きを繰り出そうとする。 「平突か!」 誰かが叫び、樫伊が全身を活かして柊真に突きを繰り出すも、瘴気で見えない柊真は見えているかのように樫伊の木刀をかわして一撃を入れ、吹き飛ばした。 霊青打を込めた椎那の一撃も木刀の破壊し、柊真の木刀は椎那の喉元寸前で止まる。 「お前を認めているさ。俺の不在の間、あいつを助けていたからな。だから牽制もする。分からないなんて言わせないぞ」 睨み付けるように言う柊真に椎那は言葉を失った。 「いい大人の癖にとか思うなよ。冷めてるだけが大人じゃない」 踵を返した柊真は自分が吹き飛ばした樫伊を立ち上がらせに向かう。 残された椎那はぼんやりとその後姿を見つめた。 ホカホカと湯気が上がっているのは臼に入った餅米が二組。 「えきしびじょんよ」 にっこりと微笑むのは夏蝶だ。今の今まで青嵐と一緒にこの準備に追われていた。 「餅突きをして頂きます。先に綺麗に餅をつけたかの勝負ですよ」 はいと、青嵐が杵を椎那に渡す。 「私は青嵐さんと組むから、椎那君は上原さんとね」 ぎょっとする椎那ではあったが、渋々頷いた。 「上原さん、結構得意そうだからこれね」 渡されたのはおんぶ紐だ。観戦していた珠々を檜崎が持ち上げ、柊真に渡す。 出来上がったのはおんぶ紐で固定されて柊真におんぶされる珠々の図。 四組の方から可愛いとやんや言われて珠々は思いっきり講義している。 「珠々ちゃん、似合いますよ」 微笑ましそうに誉める御門の言葉も珠々には悲しい一言である。 「さーって、本気で行くわよ、お餅つきのティエと呼ばれた実力見せるわ」 茶目っ気たっぷりに夏蝶が言えば、餅つきが開始された。 「料理上手の夏蝶君はいい間隔で突いてるね。青嵐君は女装していないのに随分と色っぽいね」 「お素敵なのです」 髪を高く結い上げ妙に艶やかな青嵐の項に欅はうっとりと見つめている。 一方、柊真・椎那組も中々上手く突けている。 「やるわね」 「そっちこそ」 夏蝶と柊真が笑い合う。 突き上がった餅は甲乙つけ難く、引き分けとなった。 女性陣で餅を丸め、小豆を煮詰めた餡やら大根おろしに絡めたり鍋にして道場の中で宴会が始まった。 宴会の始まる間に輝血が青嵐に何かしようとしていたが、柊真に止められたりしていたらしい。 「珠々ちゃん、蜜柑餅よ」 差し出される餅の端から橙色の何かが見えて珠々は引き気味。 「その橙は何ですか‥‥」 警戒する珠々だが、麻貴の手によって口の中に入れられて悶絶。沙穂の膝の上でぐったりしていた。折角給仕用の服に着替えたのに意味がなされていなかった。 「元気になられて何よりです」 フレイアが柊真に酒を注ぐと、柊真も礼を言ってフレイアの杯に酒を注ぐ。 「あまり円満ではない年越しだが、一応沈静化してよかったと思う」 「そうですわね。来年こそは終わらせましょう」 一方、御門は珠々の介抱をしていた。沙穂は膝枕ばかりで何もしない。 「年も越すのに摩り下ろした人参は食べてほしいのですが‥‥」 「檜崎さんが中に生の欠片を入れたぞ」 麻貴が言えば、御門は頭を抱える。 「疲れが取れるからと頭皮を普通に揉めばいいのに、深読みしすぎよね」 「気が利くのは珠々ちゃんのいい所だ」 幼馴染二人がくすくす笑う。 「加護結界は取得されましたか?」 そう尋ねるのは雅人だ。言われた欅は首を振る。 「この術はとても重要です。後、閃癒ですね」 真剣に雅人が必要な術を欅に教えている。 夏蝶が椎那に声をかけ、酒をお酌しに行った。 「麻貴さんと上原さんはお互いが互いの重しみたいな関係なんだって」 「知ってます」 夏蝶が注いだ酒を儀礼的に口をつけ椎那は呟く。 「上原主幹が怪我をした時、凄く思いつめた顔をしてましたから」 寂しそうに言う椎那に夏蝶は驚いたような表情を見せた。 「檜崎君はわかっていたんだね」 愉しそうに微笑む冥霆に檜崎は溜息をつく。 「彼はまだ若い。次があるよ」 笑う冥霆に檜崎が頷いた。 |