【HD】一緒に行こう
マスター名:鷹羽柊架
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや易
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/11/05 20:09



■オープニング本文

 この世界は現代科学と魔法が融合した世界。
 全てにおいて、魔法と科学が混在している。

 魔法と科学はいつもお互いのエキスパートと組んで文明を発展させる。

 魔法が使えるのは一握りの特別な能力者だけ。
 能力があり、志願すれば点在する魔法学校にて魔法における学業を学ぶ事ができる。

 その学校の一つ。
 天儀魔法学園。

 幼稚舎から大学院まで完備された学校で、一大学園都市だ。
 学園を上げてハロウィンパーティーが行われる。
 各学年や専攻科等で様々な催しを行っている。
 その中の一角で、大学部にある心理魔法学部の教室でパーティーの準備を行われていた。
 心理魔法学部は雑貨屋さんで、即売会をするらしい。
 少しの間だけ動くお菓子や、送りたい相手に速攻で送ってくれる小動物の形のメモ紙、空っぽになると「腹減った。物入れろ」と急かす巾着‥‥等など。
 その中の一つに、ハロウィンの間だけ子供に戻れるお菓子があった。
 かぼちゃランタンのクッキーでほんのり甘いかぼちゃの味。
 勿論、味見をする。不都合があっては大変だから。
 ぱくりと食べたのは大学部心理魔法学科の麻貴と沙桐。
 ポンッと、軽い音を立てて二人は子供になってしまった。服も変わっていて、かわいらしい魔女と吸血鬼の姿。
「きゃーっ、可愛い!」
「本当に顔そっくりだなー」
 一緒にいた同じ部の仲間達が声を上げる。
「そろそろ、もどそ‥‥あれ」
 二人と同級の沙穂が異変に気付く。
「戻すための薬草、誰か持ってきた?」

「あ」

 しばしの絶句。
 誰も解除する為の薬草をとってこなかった。それも売らないと、非常時に戻らなくてはならない時に大変な人だっているからだ。
 時間もあまりない。
「ちょっと待って、手が空いてそうな人達にメール飛ばしてみる」
 携帯電話を取り出した沙穂は、ちびっこ二人をカメラに撮ってからメールを打っている。送信ボタンを押すと、携帯電話の中から小鳥のホログラムが空中に現れて八羽に分かれて飛んでいった。
「ちょっと、あの椅子に座っててね」
 沙穂が二人に言うと、麻貴は楽しそうな事が起こると確信してか、こくんと頷き、沙桐は少し不安そうに麻貴の後ろに隠れる。

件名:手伝って
本文:ウチの学部の催し物で使う材料を取り忘れたの。
この二人を戻す薬草だから、裏山の奥にあるブルードロップでいいと思う。猛獣が出るだろうし、戦闘準備は忘れないでね。
お礼は二人にツケといて。
(ちびっこな麻貴(きょとんとした顔)と沙桐(不安そうに麻貴にしがみついている)のツーショットの画像添付つき)


※このシナリオはハロウィンドリーム・シナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません


■参加者一覧
滋藤 御門(ia0167
17歳・男・陰
俳沢折々(ia0401
18歳・女・陰
鷹来 雪(ia0736
21歳・女・巫
珠々(ia5322
10歳・女・シ
楊・夏蝶(ia5341
18歳・女・シ
輝血(ia5431
18歳・女・シ
からす(ia6525
13歳・女・弓
劉 那蝣竪(ib0462
20歳・女・シ


■リプレイ本文

●これだけは言わせろ
「‥‥どうしてこうなった」
 全員の言葉を代弁したのは輝(ia5431)だった。
 その横で以前からの弱みを帳消ししようと目論んでいた珠々(ia5322)は小さくなった麻貴を見て落胆していた。
 ふわりと、南瓜ランタンを模した入れ物に腰掛けたような妖精がふんわりと沙穂の眼前に現れ、ゆるゆると虹色の便箋へと変化する。滲み出される黒い文字は『シバシマテ』。
 直後、鴉に乗った司書官、からす(ia6525)がその場に現れた。肩前に垂らされた長い髪を手で軽く払う。
「からすさん、来てくれて助かります」
「面白い事になった生徒がいると聞いだが」
 沙穂が駆け寄ると、からすは辺りを見る。からすが手をかざすと、鴉の乗り物は収縮し、精巧なバッジへと本来の姿へと戻る。
「あそこに」
 沙穂が言えば、可愛がられ、喜び怯えるちびっこ達の姿。
「こっちむいてー」
 夏蝶(ia5341)に写真を撮られ。
「やーん、可愛い可愛い‥‥(以下略)」
 沙桐は那蝣竪(ib0462)に膝抱っこされてマシュマロのようなほっぺをふにふに触られて驚いている。
 麻貴は触ろうか悩んでいる美香子(ia0167)に麻貴自身が抱きついて「えへへ」と笑っている。そんな様子を雪(ia0736)が心をときめかせて見つめている。
「中々にカオスだな」
 冷静に判断するからすに輝が同意とばかりに肩を竦める。
「でも、せっかくのお祭りなんだし、これくらいのハプニングがちょうどいいんじゃないかな」
 ハロウィンが待ちきれないといわんばかりに黒猫の格好をした折々(ia0401)がからす達に笑いかける。
「とりあえず、さっさといこうか」
 輝が言えば、ちび達の方にも声をかけられた。


●ぶらり途中乗車
 裏山へは地上を走る電車に乗って終点まで揺られる。その間、麻貴と沙桐は飴やクッキーを貰って退屈を凌いでいた。からすから渡されたチェスのキングとクィーンの駒を貸してもらって嬉しいらしい。
「いつもこんだけ素直だったらいいのに」
 電車の中で溜息交じりに輝が隣に座る麻貴のほっぺをぷにぷにしつつ、口の周りについていたクッキーの食べかすを親指の腹で拭う。
「おべんとつけてどこ行くの」
「うらやまーっ」
 元気よく答える麻貴に輝が「はいはい」とだけ答えた。
 一方、沙桐は麻貴の隣に座って、片時も離れない模様。普段は麻貴の方から沙桐に構いに行く事が多いので、いつもと違う様子の沙桐に雪はついつい口元を綻ばせてしまう。
「沙桐君にとって麻貴さんは心強い味方なのですね」
 雪が沙桐に笑いかけると、沙桐は恥ずかしそうに床と雪をちらちら見つつ、こくんと、頷く。電車が駅に着くと、一人の人物が乗り込んできた。
「あ、折梅先生!」
 大学部の教授である折梅が乗り込んできたのを那蝣竪が見つける。
「白野威さんからメール頂きましたの」
「折梅先生、見てください! 可愛いでしょ!」
 夏蝶の言葉が早いか、ちび達は折梅の方へ駆け寄る。
「ばーちゃまっ」
 嬉しそうに抱きつくちび達に折梅は驚きつつも、懐かしい感触に眼を細めている。
「あらあら、やっぱり可愛いですね。一から仕込み直そうかしら」
「折梅センセ、黒い何かが漏れてる」
 輝が言えば、折梅があらあらと、頬を押さえつつにっこり微笑む。
「戻してしまうのは少し名残惜しいかも知れませんわね」
 おばあちゃんに甘える双子を見て、美香子が微笑む。
「でも、戻さないと色々とよくないのですっ」
 流石に子供に無体な事はできないので、珠々がぐっと、拳に力を入れる。
「珠々ちゃんが躍起になってるのって、あの入学の‥‥」
「おおお折々さん、言っちゃ駄目なのです!!」
 情報通の折々に知らぬ事はないとばかりに呟く折々の口を珠々が止めた。
「そろそろ終点だぞ」
 からすが言えば、車内アナウンスが流れた。


 裏山入口とある停車場所を離れ、裏山へ。
 まだ日も高いのに薄暗いそこは薬草の宝庫ではあるが、必要な薬草を取りに行く以外は変わり者が休んでいるらしい噂。
 夏蝶がステッキを明かり代わりに光の魔法で周囲を照らす。
「猛獣が出るのはいやだなぁ」
 折々が嫌そうに呟くと、口笛を吹いた。近くの木に止まっていた鳥が折々が差し伸べた指先に止まる。
 なにやら普段の発音ではよく分からない声で折々が鳥と会話している。
「ありがとー」
 最後は人間の言葉で発音して会話終了。鳥が離れる間際に細かく砕いたクッキーを手の平に載せて、お礼とばかりに食べさせた。
「どうだった?」
 からすが尋ねると、折々は首を横に振る。
「あの鳥さんは入口近くにいる子だから、奥にいる猛獣は見ないんだって」
「では、奥に進もうか、ちび達の様子は頼んでいいか?」
 振り向くからすに那蝣竪と夏蝶が承知☆といったように親指を立てる。
「手を繋いでいきましょうね」
 雪が沙桐に言うと、照れたように頷いた。
「みかこちゃんはあさきと」
 もみじの手を広げた麻貴が美香子に言うと、美香子も嬉しそうにその手をとる。
 折々が道すがら、近くの小動物に猛獣がいないか聞きつつ前に進む。
 中盤地点になって、ちび達の様子を見ていた那蝣竪が先頭を歩いていたからす達にお茶をしないか尋ねる。
「そうだな」
 ちび達の様子を視界に入れつつ、からすが頷く。
「ミートパイを焼いて来たのよー」
「やったね! ボク、大好きだよ!」
 那蝣竪がちび達に言えば、一番早く反応したのは折々だ。
「では、紅茶をだそう」
「やった! からすさんのお茶、美味しいって評判なのよね」
 両手を合わせて夏蝶が喜ぶ。人数分のカップに紅茶が注がれ、麻貴、沙桐、珠々には星型の砂糖が浮かぶ。
「如何かな」
 全員が一口飲む。
「美味しいですね」
 嬉しそうに雪が頷く。
「この間、図書館の受付近くにあったロースヒップの紅茶レシピよかったね」
 思い出したように輝が素直にからすが考案したレシピを誉める。
「満足してくれて何より」
 あまり笑みを見せないからすが少しだけ嬉しそうに見えた。
「こっちとこのお菓子どっちが好き?」
 夏蝶が麻貴に尋ねると、左側のお菓子を麻貴は指差した。
「こっちね‥‥、珠々ちゃん、そっちのお菓子も食べてみて♪」
 熱心に夏蝶が皆に食べさせているのはハロウィン当日に売るお菓子の試作品。子供を中心に売る予定なので、どれがウケがいいか調査中のようだ。
「研究熱心ですね」
 よい事。とばかりに折梅が微笑んでいる。
「ええ。それにしても皆さんのお菓子が美味しいですね」
 微笑む雪に折梅が別のお菓子を勧めている。
 休憩中の際にも、おやつに惹かれてきた子兎に折々がクッキーを食べさせて森の様子を聞いてきた。そろそろ猛獣がでて来てもよさそうなくらいのようだ。


●ある日裏山の中
 お茶休憩を終えて、歩き出して少したった頃、美香子が探索用に放っていた風精霊が主である美香子に囁き、折々と話していた鳥も風精霊と同じ事を伝えていた。
「近いです!」
「近いよ!」
 折々が叫ぶと同時に右手奥の茂みから黒い影が飛び出して来た。
 とっさに動いたのは輝で、盾を具現させ、猛獣の攻撃を防ぐ。爪と金属がぶつかる音が響き、盾を弾いた猛獣の爪は間合いを置いた地点に着地した。熊と狼を融合させたような四本歩行の黒い猛獣を見た折々が即座に後ろに回る。
「こっちに非難よ! 沙桐君、麻貴ちゃんに捕まって!」
 夏蝶が素早く麻貴の魔法のステッキに風の魔法を付与し、麻貴に捕まった沙桐ごと上空に逃す。猛獣が風に乗ったちび達に気付き、跳躍しようとした瞬間、二つの魔法に阻まれる。
「キングとクィーンを守護せよ」
「土精霊が白狐! 咆哮にて敵を制圧せよ!」
 チェスの駒をばら撒き、詠唱するからすと鏡を媒体にして精霊を召喚する美香子。
 無機質なチェスの駒が兵士や騎士の姿となり、猛獣の爪を剣で押さえ、美香子の鏡に彫られている魔法陣が一瞬煌き、虚空より白狐が現れ、猛獣の跳躍を阻む。
 この猛獣、知能が高いのか、一度引きく事で召喚獣達から逃れる。
「ならこれはどお!」
 那蝣竪が得意の幻覚魔法で猛獣の視覚を掠めるように鳥の幻覚を羽ばたかせる。それに反応した猛獣が手を伸ばそうと跳躍する。
「かかったね!」
 近くの木に縄を括り付けていた輝血が猛獣の着地地点を定めてもう片方の縄の端を持って、猛獣と地面の間をスライディングで滑り込む。
 素早く立ち上がり、びんっっと、縄を引っ張ると、見事に猛獣は足をロープに引っかからせて地面に背をつけた。
 なおも起き上がろうとする猛獣に珠々が怪獣を呼び出す!
「‥‥ぬいぐるみなんだが」
 成功率五割という及第点組の珠々がここぞで失敗を意味する呼び出したものと同じ大きさのぬいぐるみを呼び出していた。
 そこでそれかといわんばかりの仲間の視線に珠々があわあわしている。
「だ、だって、この魔法、安定しづらいんですよ!」
「わかってるけど‥‥」
 折々も頷いているが、苦笑いを浮かべている。
「そこで失敗するのがタマだよね」
 きっぱり輝に言われた珠々を雪が慰めている。
 怪獣のぬいぐるみを投げ飛ばした猛獣が美香子達を襲おうとした瞬間、からすが指を鳴らせば、駒達は剣と槍を交差させて猛獣の動きを止めた。
「血生臭い事はやめといた方がいいよ」
「わかっている」
 輝が一言添えると、からすは頷く。子供の前で血は見せるものではないからだ。
 そこでの出番は折々だ。ルークに守ってもらいながら折々が猛獣に説教する。
 どうやらこの猛獣、どこかの研究グループが生み出したモノらしく、脱走してそれ以来裏山に住み着いているらしい。
 逃げ出したのはいいが、行く所がないらしい。自分の姿を見るなり怖がったり、攻撃したりするものだから、凶暴になったようだ。
「折梅先生、心当たりありませんか?」
「ちょっとその辺の学部に連絡してみましょうか」
 スライディングして足を擦りむいた輝に治療魔法をかけながら雪が言えば、折梅が携帯電話で該当する学部の知り合いへかけている。
「きみ達はそこで待っているといい、私達は先にブルードロップを探しに行く」
「いってらっしゃい」
 大人しく雪に治療されている輝がからすの提案に手を振って答える。

 更に奥にある原っぱに出ると、青い涙のような鈴蘭に似た花が広がっていた。
「ブルードロップですね」
 珠々が言えば、からすが頷く。
「ああ、基本的な解毒作用がある薬草だな」
「必要な分だけ摘んでいっちゃいましょ」
 夏蝶が言えば、全員が屈んでブルードロップを摘む。
 摘み終わり、雪達と合流する頃には輝の怪我も治っていた。
 猛獣も担当チームが分かり、すぐ引き取りに来てくれた。チームの方も探していたらしく、深々と感謝された。
 沙穂達にブルードロップを渡すと、本当に切羽詰っていたのか、崇められるように感謝された。
「元に戻る前に写真撮影しておきませんかでかワンコぬいぐるみとちびさん達のショットを」
 珠々がさっと、ふかふかの茶色いワンコのぬいぐるみを出せば、麻貴と沙桐が大喜びで抱きついている。
「きゃー! 可愛い! 珠々ちゃん、グッドよ!」
 率先として狂喜乱舞している那蝣竪がカメラにちび達を収め、その場にいた殆どのメンバーがシャッターを切っていた。
 ちび二人を元に戻すと、食べる前の姿、服装になっている。
「あーあ、寂しいですけど、いつもの御姉様も素敵ですね」
 名残惜しそうに美香子が言うが、やっぱり、普段がいい模様。
 ちびの状態を聞いて愕然としていたのは沙桐で、隅っこで両手両膝を床につけて項垂れている。
「輝! それで、どうなんだ!」
 ちび沙桐の様子を輝から聞きつつ、珍しく輝に媚び諂う麻貴に輝はまんざらでもないというか、ここまでブラコンなのかと呆れている。因みに、珠々が麻貴に見せたでかワンコショットは麻貴よりA2ポスターサイズでラミネート加工で現像宜しくとの事だった。貼るのか?
「ねぇ、折角だから、ちびっ子になってみない?」
 そんなやり取りを横目に夏蝶が提案する。
「あら、楽しそうですね」
「賛成よ♪」
 雪と那蝣竪が進んで頷き、美香子や折々も楽しそうだと頷く。
「珠々ちゃんは?」
 夏蝶が声をかけると、珠々は首を振った。
「‥‥あまりサイズがかわってませんので‥‥」
 その一言に誰もが涙した。

●弱みと強み
 麻貴と沙桐は一回子供になったから次は皆を纏めるという事でクッキーを食べなかった。
「ところで麻貴、アンタ魔女だっけ?」
「まぁな」
「適当なディスカウントストアで買ったワンピースと帽子じゃないよね?」
 じろりと、狼すら返り討ちにされそうな赤頭巾姿の輝が麻貴を見るとそれはないと笑う。そもそも背丈が高いので合わないらしい。
 見せてもらえば、セクシーなラインの黒いドレスに同色で合わせたボレロ、ハイサイブーツ。キャプリーヌのような帽子。
「ま、いいんじゃない」
 輝の合格点を貰い、麻貴は苦笑する。
「あっちの方が問題じゃないの?」
 麻貴が言うのは着ぐるみ姿の珠々だ。ペタン体型隠蔽用らしい。
「努力は買う」
 さらりと言う輝の言葉に沙桐がひっそり涙した。

 小悪魔姿のからすが内緒だという事で、学園巡視用の飛行船に皆を乗せて目的のアトラクションまで乗せてくれた。
「怖いですぅっ」
 麻貴に抱きつくのはうさ耳アリスのちび美香子。麻貴がしゃがんで大丈夫と撫でている。雪豹のちび雪も怖いが、飾り物のはずなのに二又尻尾が揺れてる那蝣竪と花冠をつけた妖精姿の夏蝶の歓声に興味があるようだ。
「俺が支えてあげるから見に行こう」
 様子に気付いた沙桐が雪に声をかけると、こくんと頷き、沙桐の袖に捕まって窓の方へと向かう。
「雪ちゃん、だいじょうぶよ」
「いっしょにみよ」
 那蝣竪と夏蝶に手を差し伸べられて雪はぱっと、二人の手をとり、眼下に広がる景色を目を丸くして見ている。
 飛行艇を降りた先は大学部の教授棟。狙うは折梅先生のお部屋。
「いらっしゃい」
 真っ白いゴシックドレス姿で、雪の結晶のようなビーズティアラをしている所から折梅は雪の女王らしい。
「おかしください!」
 一斉に言えば、差し出されるカボチャ型のクッキー。一口食べると、チョコチップや南瓜ホイップなどそれぞれに色々入っている。
 折梅は珠々より丸ごと南瓜プリンを貰ってご満悦。
「おいしー! 毎日ハロウィンだったらいいね‥‥珠々ちゃん?」」
 折々がイチゴジャム入りを食べて隣の珠々を見ると。ぱたりと倒れていた。
「わー!珠々ちゃんが倒れちゃったよ!」
 何事かと皆が食べかけのクッキーの中を見れば橙のホイップが垣間見れた。何が入っていたかは一目瞭然だった。
「ほら、タマ、しっかりしな」
 輝が声をかけても昏倒したまま。
「おおあたりー?」
「らっきー?」
 首を傾げ合う夏蝶と那蝣竪。
「見事なファンブルですのね」
 珠々の昏倒ぶりに折梅が苦笑する。
 そんな一室の騒ぎも一つのハプニングと捉えるからすはのんびりと地上から聞こえる喧騒をBGMに飛行巡察をしていた。