食材を助けて!
マスター名:鷹羽柊架
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: やや易
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/01/05 19:51



■オープニング本文

 年の暮れとなればどこも忙しくなる。
 理穴は三茶の街も同じだ。
 年を忘れての宴なんかで大きな街はまるで祭りのようだ。
 宴や祭りといえば酒。
 気分が高揚し、威勢も良くなる。
 威勢が良い者同士がぶつかってしまえば起きるのはただひとつ。

「おら、そこまでだ」
 三茶の裏界隈を仕切る雪原一家が当代、緋束が喧嘩になりかけたその場を一睨みをして沈静化させた。
 酒場の親父も賑わってくれるのはいいが、店の中での喧嘩は結構だ。
「いやぁ、雪原の旦那、じゃれあいですよぅ」
 男が笑いながら緋束のご機嫌を伺う。
「賑やかもいいが、大概にしねぇとかかぁに怒られるんじゃねぇか? お前ん家のかかぁはウチの赤垂と仲がいいからな、酒場で暴れかけただなんて話がうっかり耳に入れちまうかもだ」
「いえぇ! そ、そりゃ勘弁だ!」
 慌てふためくもう一人の男を見て緋束が声を上げて笑う。
「かかぁが元気なのはいい事だ。大事にしろよ」
「へい!」
 場を収めた緋束に親父が頭を下げると、気にすんなと笑い、店を出た。
 こういった怖い人がいるからこそ、三茶は良い街となる。
「こんな年越し、本当に久々だなぁ」
 しみじみと客の一人が言えば、酒場にいた全員が頷く。
「偽者の当代を倒してくれて本当に良かった」
 偽者の当代が牛耳っていた数年間は本当に辛かったのだ。
 今、こうして本物の当代と開拓者がいたからこそ、この年越しがあるのだ。

 後日、雪原一家では悩む事がいくつかあった。
 三茶の街の者達から世話になったと贈り物が来たのだ。
 酒や乾き物はありがたいが、肉や魚、野菜なんかはちょっと困る。
 今の雪原一家には料理が出来るものがあまりいないのだ。
 因みに、一番上手いのは新しい家族である一番小さい赤垂だったりする。
 だが、赤垂もまだ子供。料理の手数は少ない。
 このままでは食材がもったいない。
「開拓者には料理上手がいたな」
「お、また頼むんですかい?」
 睦助が言えば、緋束が頷く。
「料理上手がいれば、御節なんかも作れるだろ。魚なんかの保存できて簡単に調理できるものにしてくれたらありがてぇ」
「楽しみっすねー!」
「ちょっくら行って来る」
 いそいそと緋束がギルドへ向かった。


■参加者一覧
北條 黯羽(ia0072
25歳・女・陰
劉 天藍(ia0293
20歳・男・陰
御樹青嵐(ia1669
23歳・男・陰
忠義(ia5430
29歳・男・サ
和紗・彼方(ia9767
16歳・女・シ
マテーリャ・オスキュラ(ib0070
16歳・男・魔
オドゥノール(ib0479
15歳・女・騎
常磐(ib3792
12歳・男・陰


■リプレイ本文

「わぁー! すっごい!」
 心の底から驚いて感嘆の声を上げたのは和紗彼方(ia9767)だ。
「凄いな…旬の物は何でも揃ってる。これは作りがいがあるな…」
 予想以上の品揃えだったのか、常盤(ib3792)も驚いている。
「全ていい材料ですね。気のいいものはすぐに調理するのに限ります」
 ローブの中からもぞもぞと材料を確認しているのはマテーリャ・オスキュラ(ib0070)だ。
「‥‥人望の厚さが形になるとこうなるのだな」
 一部屋を埋め尽くす品々にオドゥノール(ib0479)が言えば、御樹青嵐(ia1669)もその素晴らしさに頷く。
「あ、いらっしゃい!」
 開拓者の中で唯一会った事のあるオドゥノールを見つけた赤垂は笑顔を見せた。
「元気だったか」
「はい!」
 静かにオドゥノールが赤垂の頭を撫でると、赤垂は嬉しそうに返事をする。無意識に穏やかな表情を見せるオドゥノールは赤垂にクリスマスクッキーと一家の皆用にクリスマスプティングを渡した。
 そんな二人を見て穏やかに微笑むのは北條黯羽(ia0072)だ。
「新年を祝う為の料理を存分に作れるのは腕が鳴るし、食ってくれる奴がいるとなれば幸せな事だな」
「そうだな‥‥こんな年越しが出来て本当に良かったよ」
 しみじみと呟くのは劉天藍(ia0293)だった。
 正月を越えた時に来た事がある天藍は初めて来たこの街の寂しさを覚えていた。それがある故、この賑やかな年越しが本当に喜ばしいと思う。
「しかし、本当に材料がてんこ盛り‥‥水蛇の刃と呼ばれた実力を見せてあげやがります」
 何か違う志を持って食材を見上げるのは忠義(ia5430)だ。
「その前に、掃除をしよう。台所を綺麗にしてから新年の料理を作るとしよう」
 黯羽が言えば、全員が頷いた。

 意外と台所は広く、調理場というのが正しいような気もする。赤垂を入れて九人が入って丁度良かった。
「当代が言うには、初代雪原一家の中には板前の人がいて、初代がこの屋敷を作る際に大きく台所を作ったんだって」
「そうなんだ、その板前さんは幸せだったね。こんな広い所でのびのび作れるなんて」
 赤垂の説明に常盤が開拓者達に埋められた調理場を見回す。
「今は赤垂君がここの料理番なんだよね」
「まだ余り力がないから味付けとかしてる。野菜切ったりするのはお兄さん達にも手伝って貰ってる。街の料理屋さんとか、一家と仲がいい人から教えて貰ってるんだ」
 彼方が問いかけると、赤垂は楽しそうに言っている。年が近い子達と話が出来て楽しいらしい。
「青ねぇや天にぃはすっごく料理が上手だから、色々と覚えるといいと思う」
 天真爛漫を絵に描いたような彼方の台詞に常盤が顔を顰めて青嵐を見た。
 てきぱきと掃除を終え、少し休憩を入れてから調理となった。
 その間にマテーリャは他の開拓者達より御節についての薀蓄を聞いていた。興味のある事らしく、隅から隅までじっくり聞いていた。
「では、膾を作ってみましょう」
 マテーリャが初めてとは思えないとど鮮やかな手つきで材料を切り、塩もみをし、味付けをする。
「出来ました」


 全員絶句。


 皿の上に乗せられたマテーリャ曰く膾は海底石造都市に封印されているものの如くの姿をしていた。
「み、見ちゃダメだよ!」
 慌てて彼方が赤垂の目を隠す。
「た、食べられるのか‥‥」
 誰もが言いたかった事を常盤が言うと、マテーリャは何事もないように食べた。
「はい、食べれます。中々いい味です」
 その場の全員が誰か食えよと目で合図すると、ひょっこりと台てきた哀れな羊が。
「皆さん、お揃いで。天藍さんじゃないですか! 元気でしたか?」
 見知った顔を見つけたのは緋束付きの睦助だった。
「久しぶりだな、睦助。美味いみたいだから食ってみろ」
 いい笑顔で天藍が睦助に膾を渡す。
「やややや、旦那、俺みたいなのより皆さんの方が‥‥」
「いいから食いやがれです」
 忠義に有無もなく勧められ、睦助が恐る恐る食べるととても美味しい膾。店で出してもいいくらいの。だが、見た目だけが致命的で出すわけには行かない。
「問題ありませんね」
「下拵えをお願いします」
 きっぱりと青嵐が言えば、マテーリャはこくりと頷いた。

 料理を始める前に天藍と青嵐から緋束に提案をした。
 それは、今年は三茶の街が恐怖より逃れ、また元に戻った。より街と一家の絆を深める為の餅つき大会や当代より何か料理の振る舞いをしてはどうかというもの。
「雑煮とかでもいいんじゃない?」
 常盤が言えば、緋束がふむと頷く。
「昔は屋敷を開放して餅つきとか温かい汁物の振る舞いをしていたらしいな。年越しの抗争があった時からやらなくなったが」
「ならば、アラ汁はどうだ。魚も貰っているなら丁度いいだろう」
「新巻鮭があるから丁度いいな。お前ら、声かけて来い」
 オドゥノールの助言に緋束は頷き、近くに控えていた部下達に声をかけた。

 台所では忠義が膝を突いて呆然としていた。
「じ、ジルベリアのソースがない‥‥だと!」
「でも、さっき言ってたでしょ、食べられるものなら生きて年越せるって‥‥」
 赤垂が慰めるように忠義に言うと、当人は俯いて肩を震わせる。
「神様仏様忠義様、参りました美味しい料理を有難う!ぐぼはぁ、美味しさの余りに吐血っ。」って言わしてやるから覚悟しとくと良いでしょう!はぁーっははは!」
 いきなり高笑いする忠義に戸惑う赤垂だが、常盤がぽんと、赤垂の肩を叩く。
「やる気になったんだからいいんじゃないか? 御樹より御節教えてもらうんだろ」
「う、うん」
 前掛けをした赤垂が青嵐の方へ向かった。
「やっぱ、青ねぇは割烹着が似合うね」
 彼方が言えば、青嵐ががっくりと項垂れる。
「‥‥君はやっぱり‥‥」
「信じないでくださいノールさん!」
 オドゥノールの言葉に青嵐が即座にツッコミを入れる。
 早速黯羽が魚を卸している。
「いい鯛だな。実も厚い。干した方が味がよさそうだ」
「鯖は味噌漬けもいいね」
 彼方も一生懸命に魚を捌いている。
「量はあるが、慣れてない奴はゆっくりやりゃあいいでしょうや」
 黙々と魚を卸している忠義は見事な手捌きだ。
「人は多い方が助かるよな」
「‥‥何で俺なんですか?」
 黙々と野菜を漬けているのは睦助だ。先ほどの膾の一件から天藍に声をかけられてそのまま台所で天藍の手伝いをしている。
「何でって、俺が声かけやすいのは睦助だから」
「そんな理由ですかい!」
 叫ぶ睦助に天藍が「さっさと働く」と大根を押し付ける。
「今作っているのは田作りです。豊作を願う為の祝い肴と言われてます」
「豊作って、作物ですよね。どうして魚なんですか?」
 首を傾げる赤垂に青嵐が満足そうに頷く。
「鰯は高級肥料の一つなのですよ」
「そうなんだ」
 驚く赤垂が次に見たのは煮詰めた甘辛い蜜に乾煎りしたカタクチイワシを絡める。とろりとした小魚にごまを振れば、食べる時に更に香ばしさが増す。
「甘辛く味付けをする事によって日持ちが良くなります」
「青嵐さんって、かあちゃんみたい!」
 きらきら目を光らせる赤垂の言葉は青嵐にとって痛恨の一撃だった。
「わ、綺麗な里芋」
 赤垂が見たのはマテーリャが剥いた里芋。先ほど、封印された神を再現させたとは思えない美しいもの。
「これは‥‥?」
「隠し包丁といって、更に味をしみ易くしたり煮崩れを防ぐための物です。こちらは面取りといいます」
 丁寧にマテーリャが赤垂に説明をする。
「こういったひと手間がより一層美味しくなるのです」
「はいっ」
 師匠に教わった事をきちんと赤垂に伝える。
「見た目にも拘れと言われましたが」
 それは確かにと全員が思った。
「御樹、黒豆の味見てよ」
 常盤が青嵐に声をかけると、青嵐が味見をする。
「いい味です。豆の炊き具合もよく、しっかりと味が出て濃すぎない。よい腕前です」
 穏やかな笑顔で頷く青嵐を見てそっと常盤が安堵した。
「ボク、黒豆、大好きなんだよね。楽しみ!」
 昆布巻きを巻いている彼方が嬉しそうに言った。
「お前さんなら、こっちの栗きんとんも好きそうとは思うんだが?」
 甘味系の栗きんとんや伊達巻を作っている黯羽が彼方に声をかける。美味しそうに出来上がった栗きんとんはとても美味しそうだ。現在は伊達巻用のはんぺんをすり鉢で潰している。
「えへへ、バレた?」
 ぺろっと舌を出す彼方に皆が笑う。
 煮しめの作り方を教える為、青嵐は赤垂にさせる。マテーリャが綺麗に下拵えをしてくれた材料で煮ていく。
 その間に彼方と一緒に柿入りの紅白膾を赤垂が作る。作り方は彼方の家の分量で。少し不安になったのか、調味料を合わせた酢を青嵐に確認してもらったが、「良い味」と誉めてもらって彼方は嬉しそうにはにかんだ。
 勝手口近くでは忠義が魚の焼き物と肉の燻製を作っていた。
 一家の者達が香ばしい肉と魚の匂いにつられて、大掃除もそこそこに眺めたりしていたらしい。

 外の庭では氷頭膾を作り終えたオドゥノールが緋束と一緒にアラ汁を作っている。
 緋束は着流しに半纏を羽織っており、オドゥノールはメイド服姿。
「その服はジルベリアの服なんだろ?」
 緋束が言うと、オドゥノールは溜息をついて頷く。
「前掛けがついているものがこれしかなくてな‥‥動きやすさなら狩猟服の方がいいのだが」
「まぁ、たまにはいいんじゃねぇか?
「そろそろ餅米が蒸かしあがる頃だな」
 ふわりと風に乗って餅米の温かい香りが二人に届く。
「お魚のにおいがする!」
「雪原一家の餅つきは久方ぶりじゃのう」
 外の方から雪原一家に入ってくる声がする。
「よぉ! そろそろ餅がつける頃だ。俺のアラ汁でも食って待ってな!」
 景気よく言う緋束に皆がわっと声を上げた。

 粗方の仕込を終え、ふと、マテーリャが外から聞こえた声に気付く。
「餅つきが始まっているんだ。終わったからいこうか」
 常盤が善哉用の餡が入った鍋を手にし、声をかける。
「そうだな。後は重に詰めるだけだし、休憩がてらいこうか」
 慣れない家事仕事にぐったりした睦助に天藍が笑いかける。
 外に出れば、大きな臼と杵で緋束がつき手で青嵐が返し手で餅をついている。
 一度緋束が杵を振り降ろせば、街の者や一家のものが掛け声を上げる。
「これは凄いですね。なんとも勇壮といいますか‥‥」
 ある程度突いたら、忠義も入り、つき手二人に返し手一人という状態になった。
「俺様の数多ものアヤカシを屠った武器が真髄を見せる時がやっと来たスね」
 静かに忠義がブロークンバロウを取り出す。
「何を粉砕する気ですか!」
 ツッコミを入れる青嵐に忠義が「餅を」と真顔で言い切った!
「とりあえずこの杵で突いて下さい」
 青嵐に言われ、渋々と忠義が杵で突いた。
 二人突きは早い速度で行われ、志体持ちの青嵐であるからこそ軽々と出来る。
「そういえば、餅というものは天儀の新年に食される品だが、猛毒を持っており、毎年その処理が甘く中毒で命を落とす者が出る‥‥そう、師匠に聞きました。
 天儀では祝い事も命がけなのだですね…」
「毒なんかないよ!どんな風に変な話がついちゃったんだろう」
 ありえない話を真面目にするマテーリャに彼方がツッコミを入れる。
「違うのですか?」
 マテーリャが言えば、彼方と常盤が正しい餅の話をする。詳しい人は餅を返している。

 その隣では、小さい臼で子供達が突いている。
「よし、そのまま振り下ろせ」
 小さな子供に杵を持つ手伝いをしているのは黯羽だ。
 小さな臼の返し手は天藍だ。
「さぁ、もう一丁」
 子供による杵がまた振り下ろされる。
 大人達が突いた四升の餅が突き終わると、近所の世話焼きおばさん達がまだ熱気が上がる餅を熱いと笑いながら分けてくれた。
「あんた達の可愛い手がやけどしたら可哀想だろ」
 小さくちぎってくれた餅はあんこやらきなこやらにまぶせられて皆に振舞われる。
「ふえー。あんなに卸した大根がすぐになくなった!」
 辛味餅は大人達に人気であり、一気になくなったようであり、大根を卸した睦助が驚く。
「それほど沢山の人達が来たという事だろう。慕われるならば、その想いに応え街を守らねばな」
 ほらと、オドゥノールが小皿に盛った餅を睦助に渡す。
「へい!」
 睦助は笑って皿を受け取った。
 餅も必要な分だけを残し、アラ汁も見事空になった。

 夜になれば、青嵐、天藍、黯羽が腕によりをかけてそばを打っていた。
 雪原一家の分となれば中々に量は多くなる。
 汁作りの常盤や天ぷら作りの忠義もかなり大変そうであった。
「沢山の人間と食事をするのはいい事さね」
 蕎麦を打ち終わった黯羽は流石に疲れたのか、キセルを噴かす。目の前では雪原一家の面子が美味そうに蕎麦をすすっている。
「お疲れさん」
 緋束が黯羽に杯を渡し、お銚子を持っている。
「気が利くな」
「疲れた時はこれだ」
「いただこう」
 ふと、笑う黯羽は緋束の酌を受ける。
 疲れた顔をした赤垂は美味しいお蕎麦も食べられてぼうっとしていた。
「赤垂君? 林檎寒食べられるか?」
 オドゥノールがいつの間にかに林檎の寒天を作っていたらしい。
「食べます」
 オドゥノールのおやつのお誘いに赤垂はすぐに立ち上がり、彼女の後ろについていく。
 年少組が集まって先に林檎寒を食べていた。
「とても美味しいよ!」
 彼方が声をかけると、赤垂もご相伴に預かる。
「甘くって美味しいっ」
 笑顔の赤垂にオドゥノールはほっとした表情となる。
「しかし、今日はまた勉強になりました。御節料理とは中々興味深く、彩りもいいものですね」
「御節料理はその場で食べるだけじゃないよ」
 マテーリャが今日の感想を言うと、常盤は首を振る。
「そうなのですか?」
「御樹から教えて貰っただろうけど、正月の三が日は台所を騒がしくしない為の保存食なんだ。味を濃くするというのは腐らせないようにする為だし、煮しめや昆布巻きなんかは長時間置いておく事でそれぞれの素材の旨みが出て更に美味しくなるんだ」
「なるほど、それは興味深いです」
 常盤の説明にマテーリャは更に興味を増したようだ。
「明日の御節が楽しみでさぁ」
「飲みすぎて明日寝こけるなよ」
 酒を飲んで上機嫌な睦助に天藍が苦笑して注意をする。
「自分が手伝った物って楽しみじゃねぇですか」
「嫌がっていたくせに」
 調子よく言う睦助に天藍が笑う。
「無事に年越せるようですし、良かったんじゃないスか」
 忠義が言えば、青嵐が微笑んで頷く。
「皆さんにも良い年を迎えられますように」
 寒い夜に呟かれた青嵐の祈りは賑やかな声にかき消された。

 次の日には美味しい御節料理と開拓者達それぞれの家の雑煮が出されるのであった。