おいはぎ なう
マスター名:鷹羽柊架
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや易
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/04/08 22:03



■オープニング本文

 理穴の首都奏生より南下し一日ほど歩いたとある小さな町がありました。
 そこの町を越えた大きい街に理穴のお偉い様が向かう事になり、その護衛に理穴監察方の人員を借りる事になりました。
 基本的には遊軍という形を取っている四組が遣わされる事になるのですが、四組主幹はとても悩んでました。
 今、出せるのは羽柴麻貴という組員だけでした。
 腕もいいし、勘もいい。
 遣わさせてもいいのですが、ちょっと相手が悪いのです。
 どうしようかと悩んでいましたら、副主幹が助言をしました。
「開拓者を呼んではどうだ」
 それはいい考えだと思った主幹は直に開拓者を呼びました。
 よくお世話になっている開拓者達は優しくも強く、無鉄砲ばかりの麻貴にもちゃんと叱ってくれます。
 きっと、いいお目付け役となると思ったのです。

 無事に護衛のお仕事も終わった帰り道。
 あと一日で奏生に着くという所で、一泊しようという話になりました。
 ここの町は特に何も変わった所はありませんが、色々な薬草が採れる地域で、栽培も盛んです。
 その薬草を乾かして作った入浴用の薬草は知る人ぞ知る名品だとか。
 泊まった宿は一軒しかなく、丁度団体も入れるので貸切にしてもらった。
 女将さんが教えてくれたのは肌にいい入浴用の薬草です。
 お偉い様も適度にゆっくりしてくれと仰ってましたので、皆は喜びました。

 そろそろご飯かなと思った時、麻貴に異変が起きました。
「寒い‥‥」
 春先ともあり、まだ肌寒いのですが、麻貴はそれどころではないようです。
「大丈夫ですか?」
 開拓者の一人が声をかけたその時です。 
 乱暴に戸を開ける音がしました。
「きゃぁああああああ!」
 絹を裂くような女将さんの悲鳴が響き、開拓者と麻貴はその方向へ走りました!
 そこにいたのは山賊のような姿をした男二人とそれを見て腰を抜かした女将さんでした。
「あたたかそう‥‥」
 ポツリと麻貴が呟き、前に出ました。
「大人しくしやが‥‥」
 山賊らしき男が全部言い切る前に麻貴は女将さんを飛び越えて男の一人のこめかみに回し蹴りを食らわせ、自分が着地する反動を使ってもう一人の男の顎を殴りつけました。
 どぉんと、音を立てて男二人は倒れました。
 いつもの麻貴なら、すぐに女将さんを気遣うのですが、麻貴は男二人から何かしているようです。
 誰もが呆然と見ていると、麻貴は男が着ていた兎の毛皮の袖なし上着を剥いで自分で着ています。勿論、もう一人の分も。
「‥‥さむい」
 外から山賊の仲間が町中を襲って行っているようです。
 のそのそと麻貴が外に出て行きました。

「麻貴は?」
 お偉い様が顔を出すと、開拓者の一人が外に出た事を告げました。
「中に入れるように入ってくれ。多分、熱を出している」
 全員が絶句していますと、野太い悲鳴が聞こえています。

 助けてください!!


■参加者一覧
音有・兵真(ia0221
21歳・男・泰
御樹青嵐(ia1669
23歳・男・陰
楊・夏蝶(ia5341
18歳・女・シ
輝血(ia5431
18歳・女・シ
劉 那蝣竪(ib0462
20歳・女・シ
オドゥノール(ib0479
15歳・女・騎
十 水魚(ib5406
16歳・女・砲
緋那岐(ib5664
17歳・男・陰


■リプレイ本文

●おいはぎとおはぎはにてる
「もーっ、何でわかんなかったのかしらっ」
 私達がわかってやらねばならないのにと自分を責めるのは楊夏蝶(ia5341)でした。
「熱があるのなら、大人しくしていて欲しいですわ」
「寒いから温かくしたいんじゃないか」
 溜息交じりの十水魚(ib5406)に兵真が言うと、水魚はそうですねと納得しました。
「鬼の霍乱とでもいいましょうかね」
「いや、文字通りだと思う」
 呟く御樹青嵐(ia1669)に輝血(ia5431)が呆れます。
「もう、麻貴ちゃんって、頑張り屋さんなのね! 絶対によくなるまで逃がさないわよ☆ 兵真君、何かいいの貸して〜♪」
 緋神那蝣竪(ib0462)が猫のようなしなやかさで音有兵真(ia0221)の方へと向かいます。
「おはぎじゃなかったのかー」
 残念そうに言うのは緋那岐(ib5664)です。
「品自体は同じですが、今の時期は牡丹餅ですからね」
「じゃぁ、秋に期待だな!」
 青嵐が説明を加えると、緋那岐は期待を胸に用意を始めました。
 外ではやはり、山賊の叫び声が聞こえてます。

●もふっり誘惑
「まるごとくまさん、毛皮の外套…さらには獣耳カチューシャ。手袋だって毛皮‥‥完璧だ。さぁこい!」
 やる気十分なオドゥノール(ib0479)ですが、目的の麻貴はオドゥノールに気づかず、ふらふらしながら歩いてます。
「このもふもふに気づかない‥‥だと!?」
 熱がある人間に無茶言っちゃいけません。
「山賊のおかげか、あまり一般人が歩いていないようですね」
 ほっとしたように水魚が言いますと、輝血が一歩前に出ました。
「そうだね。まぁ、山賊は捕まえないとだね。ったく、あの馬鹿」
 毒づく輝血が身に着けているのはまるごとにゃんこです。どこか冷めた風な輝血がまるごとにゃんこ姿。天儀初公開です!
「山賊の捕縛は必須ですね。そちらの方はお任せください」
「騒ぎある所に麻貴ありよね。見つけたらついでに誘惑しておくわ」
 山賊の方を受け持つのは水魚と夏蝶です。夏蝶は毛布を抱えていくみたいです。
 夏蝶と水魚が山賊確保に走ると、輝血は跳躍して屋根伝いに走り、麻貴を探します。
「行ったようですね。私達も用意しましょうか」
 まるごとにゃんこ姿の輝血に心をときめかせながら青嵐が残りの人達に声をかけます。
「負けるものか!」
 潔く走り出したのはオドゥノールです。
 輝血の色んな意味でのにゃんもふ姿に闘志がわいたようです。
「大丈夫なのか、あれ」
 心的外傷の原因であるもふらの布団を背負い、緋那岐がオドゥノールの様子を心配します。
「何とか収拾するだろう」
 すたすたと兵真が歩き出します。
「大丈夫よ☆」
 器用に片目を瞑って那蝣竪が微笑むと、彼女も兵真と一緒に歩いていきました。

 走り出した輝血は逃げ惑う山賊を通り抜けて向かう先は麻貴の方です。
 道の向こうには麻貴が気絶している山賊より毛皮をはい取ってます。多分、これで四人目でしょう。
 輝血は麻貴の前にかろやかに着地し、両手を後ろ手に回して前かがみになって麻貴を上目遣いで見上げます。
「‥‥くろにゃんこ」
 ぽつりと麻貴が言うと、輝血は不敵に笑います。
「ボクをつかまえてごらん?」
 麻貴が輝血の肩を掴もうとすると、輝血は軽やかに飛んで麻貴から逃げます。麻貴はくろにゃんこをめがけて動き出しました。

 山賊退治に回った水魚と夏蝶は山賊と対峙していました。
「被害者は被害者だろうけど、やってる事は許されないわよ」
 不敵な笑みを浮かべ、夏蝶が山賊達の前に立ちはだかる。
「その通りです。大人しくお縄につくのです」
 マスケット銃を突きつける水魚が後ろに立っています。
 武器を持っているとはいえ、見た目は女性。山賊達は気にせず二人に危害を加えようとしますが、二人は難なく山賊を倒していきます。
 倒れた山賊の手を後ろ手に回し、荒縄で手を縛っていた水魚ですが、その背後に何かが現れます。
 隠れていた山賊です。
「あ!」
 はっと、夏蝶が気づきましたが、水魚はまだ気づいていません。
「水魚ちゃ‥‥」
 声をかけようとする夏蝶と同時に山賊の側面に膝蹴りが決まりました。
「あ、麻貴?!」
 膝蹴りを繰り出したのは輝血を追っていた麻貴です。どうやら、裏道を使って移動を短縮していたらはちあった模様です。
「きつねさん‥‥もふもふだいじょぶ?」
 瞳は熱でうつろになり、口調はろれつが回っていない麻貴が水魚に問いかける。
「だ、だいじょうぶで‥‥」
「もふもふはだいじ‥‥くろにゃん、どこ?」
「ええええ! ちょ、ちょっと麻貴さん?!」
 ふらふらしながらも麻貴は水魚を抱きかかえ、くろにゃん‥‥輝血を追います。
「え、ちょ、麻貴!? なゆ姉!東の方に行っちゃった!」
 逃げ出す山賊を見つけ、その始末に追われる夏蝶がどこにいるか分からない那蝣竪に叫びました。

●あさのーる
「どうやら、水魚ちゃんが捕まったみたいね」
 肩を竦めるのは那蝣竪です。
「仕方ない。あの手入れのよさは只者ではない」
 黙々と麻貴が倒した山賊をオドゥノールが縛り付けていきます。
「場所も丁度いいな」
 ふむと確認した兵真が言いますと、緋那岐は複雑な心持でもふら布団を敷いていました。
「那蝣竪さん、オドゥノールさん、お願いしますよ」
 青嵐が言えば、もふもふ組が頷きました。後の山賊の始末は緋那岐が受け持ってくれるようです。
 苦手なものに好き好んで近づきたくはないようです。
「ほら、ボクをつかまえてごらん?」
 同じく超越聴覚を使って状況を把握していました輝血が軌道修正の為、麻貴の前に現れたのですが、麻貴の腕の中にいる水魚が具合悪そうです。
「あー、臭いのかな」
 自分はシノビなので悪臭でも耐える事は出来ますが、一般人より五感が高い開拓者には辛いものがあるかもしれません。
 上着を着込んでいるというか、最早腕を通しているだけ、首にかけているだけのような姿の麻貴は別段気にせずにいるようです。
 高熱の為か、鈍感になっているようです。
「くろにゃん‥‥」
 ぽつりと麻貴が呟いて輝血を追います。
 軽やかに地を蹴り、跳ぶ輝血はまるで踊りを踊っているよう。丁度よく輝血を視界の端に入れた青嵐がこっそり見蕩れていたりしました。
「青嵐さん、見蕩れるのは後よ!」
 那蝣竪に言われ、青嵐が正気を取り戻します。
 輝血が一際高く跳躍すると、麻貴の目の前にいるのはひつじさんとくまさんです!
「麻貴ちゃん、一緒に温まりましょ♪」
 くるりとターンをした羊さんが布団を指差しました。
「あたたかそう‥‥」
 眼はうつろのままですが、暖かそうな羊と熊の姿につられ、麻貴がふらふらと歩いていきます。
 ある程度麻貴が近づいていった瞬間、オドゥノールが麻貴に抱きつきます。
「くまさん‥‥?」
 首を傾げる麻貴に襲い掛かるのは夏蝶の影縛りと緋那岐の呪縛符です。しかも、オドゥノールまでも犠牲になってしまいました。
 耐久性のある麻貴もこれにはたまらず、肩を竦めてしまい水魚を落としましたが、那蝣竪が水魚をキャッチしました。
「それっ」
 輝血がもふら布団を麻貴とオドゥノールに被せると、兵真がオドゥノールごと麻貴を簀巻きにしてしまいますが、麻貴はなおも動く模様。
「そりゃ!」
 兵真が簀巻きごと海老反りに投げようとした時、最後の山賊の一人が自棄になって乱入しようとしました。
 全員がはっとなった時、山賊は倒れており、肩に飛苦無が刺さっていました。
 飛んできた方向に視線を向けると、宿の二階の窓辺に腰かけていた今回護衛していたお偉様がいました。
「貴方がやったのか?」
 緋那岐が驚くと、お偉様は質問には答える前に麻貴がお偉様の姿に気づき、笑顔になります。
「ちちうえー」
 熱でへろへろになった麻貴を見てお偉様は溜息混じりに言いました。
「それは私の娘なのだが」

 誰もが正気に戻りました。



「はぁ〜〜〜」
 思いっきり溜息をついたのは夏蝶でした。
 どうして自分達が気づいてあげられなかったのかと責めたのですが、相手が相手なのです。
 分かって当然。
「というか、なんで親子だって言わなかったんだ?」
 不思議に思うのは緋那岐です。
「親の七光とか思われたくないのだろう。旅先で病気をしたなんて事が分かれば、何を言われるかわからないと危惧をしたのだろう」
 やれやれと肩を竦めるお偉様‥‥こと、羽柴杉明がぼやきます。
「城勤めも大変だな」
 少し視線を逸らして兵真が言えば、杉明が静かに笑います。
「でもさ、依頼人が相性が悪いって言ってたのってどういうことだ? 普通なら仲良くないって事だろ」
 緋那岐の問いに杉明は確かにと頷きます。
「私の護衛をすると張り切るばかりで怪我をよくやってしまうのだ。以前も加護結界が無かったら大怪我をする事だってあった」
「‥‥まー、家族を大事にするのはイイトコだけどさ‥‥」
「まぁ、あのまま気絶させて休ませてもいいとは思ったんだが、他所の娘さんを巻き込ませるわけには行かないだろう」
「嫁入り前の娘はいいのか?」
 呆れてしまう兵真に杉明はけろりとしている。
「何、生傷が絶えないんだ。別に増えたって問題はない。向こうもあまり拘らんだろう」
 杉明の言葉に緋那岐が呆れました。
 一方、麻貴の部屋ではどたばた大騒ぎが起きてました。
「ああもう、山賊ったらたまには洗濯してほしいわね! 夏蝶ちゃん、手伝って!」
 那蝣竪が麻貴から山賊の毛皮を剥ぎ取りつつあまりの異臭に顔を顰めてました。水魚とオドゥノールは嗅覚の換気の為、窓際にもたれてます。
「とりあえず身体拭かなきゃ。もう汗びっしょり!」
 那蝣竪と夏蝶がせっせと汗を拭いていきました。

 輝血は着ぐるみを脱いで町を歩いていました。
 山賊の襲撃で多少の混乱はあったが、大丈夫そうでもあったのですが、輝血の表情は晴れません。
「輝血、どうしたんだ?」
 薬草の町と言う事で、緋那岐も外出をしているようです。
「まぁ、薬でも買ってやろうかなと」
 ふらっと入ったのは薬屋だ。
「あの調子なら、解熱の薬飲ませていいかもな、おばちゃん、なんかいい薬ない?」
 緋那岐が言えば、店のおばちゃんが薬を出します。
「煎じて飲むんだよ」
「わかった、いくら?」
 輝血が代金を払っていると、緋那岐は品物を真剣に眺めている。
「買い物?」
「土産。妹が薬草に詳しくてさ、勉学の足しになれるもんがあったらなって」
「確かに、知識は必要だよね」
 なるほどと輝血が納得していますと、緋那岐は「早く行ってやれ」と言い、輝血は頷いて店を出ました。

 宿の台所では青嵐が宿の料理人と一緒に麻貴の食事を作ってました。
「青嵐さん、麻貴の着替え完了したわよ」
 夏蝶がひょっこり顔を出します。
「分かりました。今、持って行きます」
 青嵐特製雑炊も炊き上がり、後は持っていくだけ。夏蝶が生姜湯を作ろうとしていると、青嵐が一言声を差します。
「千切りにした生姜を蜂蜜に少し漬けてからお湯で割ったのが麻貴さんが好きだと杉明さんが仰っていましたよ」
「父親なのね」
 苦笑する夏蝶に青嵐がくすりと微笑みます。
「杉明さんの妹さんがよく作ったとの事ですよ」
 そういい残し、青嵐は一人分の土鍋を持って行きました。
 麻貴の部屋では身体を拭いて布団にもぐった麻貴に水魚が声をかけます。
「まだもふっとしたのがほしいのですか?」
 私のでよければ‥‥と、水魚が尻尾を向けますと、麻貴はふるふると首を振りました。
「みんなといるからあったかいよ」
 首を振って手拭いが麻貴の額から落ちてしまい、那蝣竪が置き直します。
「護衛中は大人の方と思っていましたが、病気になると幼くなるのですね。まるで妹みたいです」
 ぽつりと、水魚が言えば、麻貴は視線を水魚へと向けます。
「いもうと?」
「確かに、双子の妹はいますが、麻貴さんは私の妹というわけではなく‥‥」
「みなちゃんは妹といっしょなの?」
 説明しようとしている水魚に麻貴が問いかけますと、水魚は頷きます。
「ふたごはいっしょがいいよ」
 呟く麻貴はとても寂しそうです。寂しそうな麻貴の声に窓辺に凭れていたオドゥノールも振り向きます。
「沙桐君と一緒にいたいのね」
 優しく言う那蝣竪に麻貴は熱で潤んだのか、寂しさで涙が滲むのかわかりません。
「会いたいならば、早く直す事です」
 割烹着姿の青嵐が雑炊を持って現れます。
「あらあら、お母さんの登場よ」
 悪戯っぽく笑う那蝣竪に青嵐が呆れたように笑う。上体を起こされた麻貴は美味しそうな匂いに笑顔を浮かべます。
「麻貴ちゃん、食べさせてあげるわ♪」
「あ、なゆ姉。私がしてあげようと思ったのに」
 あつあつの生姜湯を持ってきた夏蝶も入ってきた。ほかほか湯気が立ち上る生姜湯も雑炊を食べ終わる頃にはきっと飲み頃となるでしょう。
「はい、あーん」
 那蝣竪が食べさせると、麻貴は笑顔で食べてます。
「気づいてあげられなくてごめんね」
 ぽつりと夏蝶が言うと、麻貴は「気にしないでいい」とだけ言って、また食べました。
「なんだか、麻貴が子供のようだね」
 煎じ薬を持ってきた輝血が呟きました。

 珍しい薬草を手に入れる事が出来た緋那岐はいい土産が出来たと上機嫌で戻ってきました。
「帰って来たのか」
 兵真が声をかけると、緋那岐が頷きます。
「大丈夫なのか?」
「先ほど食べ終わって、輝血さんが買って来た解熱剤を飲んでますよ」
 空になった一人用の土鍋を持って青嵐が緋那岐に声をかけました。
「今は杉明さんが見てくれてます。私達も薬草湯に入りましょう」
 嬉しいお誘いに緋那岐も頷きます。青嵐は銚子をつけるように言って来ますといって台所へと向かいました。
 一方、女子風呂では女性陣が一緒に風呂に入っています。
「ねぇ、肌のお手入れってどうしてるの?」
 ずばり聞いてきたのは那蝣竪です。
「私こそ知りたいわよ」
 那蝣竪に背中を流してもらっている夏蝶が逆に聞きます。
「やっぱり、十代の肌っていいわよね。ノールちゃんの肌なんで水を弾いているわ」
 は?と、顔を上げたオドゥノールが全員の視線を受けて何事だと硬直しまう。
 女の子らしい話には無縁だからと気にならない振りをしていたらいつの間にかに話の中心に。
「水魚さんの手入れは凄いと思う」
「あたしも気になる」
 しどろもどろにオドゥノールが言いますと、輝血も気になっているようです。
「私はですね‥‥」
 そんなガールズトークを壁一枚向こうで男性陣が聞いている。
 ざばりと立ち上がった兵真に緋那岐が声をかけます。
「ん。気になるから覗く」
 なんでもないように兵真が言うと、二人が慌ててしまいます。
「流石にまずいだろ!」
「気になるものは仕方ない」
 止める緋那岐だが、兵真は聞きません。
「気にならないのか?」
 青嵐が兵真に言われれば、ごにょごにょと何か言い訳をしています。そんな青嵐を置いて兵真が壁を伝うと‥‥


 その後、「虫干し中」と書かいてある布団に簀巻きにされた兵真がいたとか。