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■オープニング本文 野趣祭 武天首都にて行われる収穫祭の名だ。 基本的には秋に肥えた野生肉が多く扱われる市で、猪、鹿、野鳥‥‥様々な肉が軒を連ねている。 他にも米や野菜も売られており、暴力的な肉の匂いから少しでも開放されようと買いにくる者もいる。 そんな野菜や穀物を売りに陸の孤島のような山奥から野菜や米を売りに来た家族がいる。 男女含め、六人の子供をつれて歩く夫婦。計八人の大家族である。 基本的に自分の家の食べ物になるが、豊作となれば、都まで出て売りに行く事もある。 お母さんの兄夫婦の師匠に当たる人物が此隅にて大診療所をやっており、祭りの間は診療所を手伝いに来ている兄夫婦と共に厄介になる事になっている。 一昨年は末っ子の誕生でいけなかったが、去年、今年とまた売りに来ていた。 開催している広場で店を作っていると、強面の男達がやってきた。 「おいおい、お父さんよ、誰の許可で店を出してるんだ?」 男が言うと、お父さんは首をかしげる。 「許可が要りましたっけ?」 特に許可は必要はないはずだ。何年もそう来ているんだから。 「要るんだよ! この浜菅一家の許可がな!」 「そんなの知りませんよ!」 男の喧騒にお父さんも声を立てて返す。 「ショバ代にゃ、二千文、きっちり揃えて払わんかい!!」 男達がげしっと、お父さんと子供達で作った店を壊していき、転がった人参を踏みつけた。 ぐしゃぐしゃにした店に「さっさと片付けろよ!」と行って去ってしまった。 ぽかーんとしているお父さんにこそこそと色んな人たちがやってきた。 「大丈夫かい?」 「こわかったろ」 「最近、新しい悪い連中が妙に来ているんだよ」 「たまに強行に出るやつもいるんだが、運が悪かったねぇ」 色々と教えてくれる人達にお父さんは納得する。 「でも、何で二千文も要求するのよ! 馬鹿じゃない!」 怒り狂うのは長女の藍花。 「確かにぼったくりもいいところだよな」 長女を宥めるように次男の空が頷く。 「折角のお野菜が‥‥」 しゅんとしながら次女の牡丹と三男の琥珀が転がった野菜を拾う。 「あなたのですか?」 転がった芋を追いかけた琥珀が声をかけられたのは上質な着物に身を包んだ綺麗なおばあちゃん。 「おばーちゃんのてんにょさん‥‥」 ぽけーっと、琥珀が老婦人より芋を受け取る。 「天女だなんて嬉しいですわね」 微笑む老婦人に声がかけられた。 「折梅様!」 「かずらせんせー、てんにょさんとおともだち?」 別の方向からお母さんと一緒にやってきたお母さんの兄さんのお嫁さんこと、倉橋葛が駆け寄る。 「お知り合いですか?」 「ええ、主人の妹家族です。皆、葛先生の恩人の鷹来折梅様よ。挨拶して頂戴」 医者のわりに教師のように子供達を捌く葛に子供達は「折梅様、こんにちわー」とそろって挨拶をする。 元気な挨拶に折梅は嬉しそうに微笑み、挨拶をする。 「しかし、無粋な連中です事。どうにも他にもこのような被害があるようですよ」 「そうなんですか! うちの野菜を駄目にしたのは許せない!」 折梅の言葉に藍花が怒り狂う。 「では、開拓者を呼びましょうか」 にっこり微笑む折梅の言葉に子供達はわっと喜んだ。 鬼に金棒、弱者に開拓者。 |
■参加者一覧
滋藤 御門(ia0167)
17歳・男・陰
劉 天藍(ia0293)
20歳・男・陰
鷹来 雪(ia0736)
21歳・女・巫
弖志峰 直羽(ia1884)
23歳・男・巫
珠々(ia5322)
10歳・女・シ
輝血(ia5431)
18歳・女・シ
レティシア(ib4475)
13歳・女・吟
セフィール・アズブラウ(ib6196)
16歳・女・砲 |
■リプレイ本文 「小芝居をいたしましょう」 開口一番、そう言い出したのはセフィール・アズブラウ(ib6196)だ。 ● 「私は猫。そう、猫さんです」 レティシア(ib4475)が隠密行動宜しく、浜菅一家の様子を眺めていた。 まるごと猫装備で猫のように丸くなって。 浜菅一家はレティシアに気付いているが、あえて気にしない方向のようだ。 なんとなく、ツッコミを入れたら負けのような気がしている模様。 「あら、兄さん達、景気よさそうねぇ」 ふふっと、艶笑を浮かべるのは輝血(ia5431)だ。 「お、おお?」 「へへ、ねぇちゃん、どうしたんだ?」 男達は輝血の顔を見てから視線を下ろせば幼い顔とは裏腹な妖艶な肢体。 相対していない輝血の容貌はそれ故に男達を惑わせる。 「いい店があるのよ、そこで飲まない? お風呂もあっていい所よ」 片目を瞑る輝血に浜菅一家の二人は鼻の下を伸ばして先を歩く輝血の身体を見ながら付いて行った。 街娘の格好をした珠々(ia5322)は仮初の顔を使い屋台の人達に話を聞いていた。 浜菅一家とは最近出てきた此隅にとっては新興の者達であるとの事だ。 此隅に古くからいる任侠一家と繋がりがある屋台には一切手を出さず、田舎から出てきた者の屋台から巻き上げたりしているようだ。 「そうなんだ、つらかったね」 「‥‥奴ら、有り金全部持って行った事だってあるんだ‥‥」 もう疲れきった老人の話に耳を傾けながら珠々は聞いている。 他にも聞いていたが、やはり、田舎から出てきた者達が狙われているようで、しかも他の任侠一家の死角をつくような所ばかり狙っている。 「悪いやつ等はきっと、バチがあたるからね」 元気付ける珠々の姿に被害者達は泣きながらも頷いていた。 「本当に許せませんね」 レティシアと珠々の報告を聞き、いつもの穏やかさはなく、厳しく言うのは白野威雪(ia0736)。 「その通りだね。人の頑張りの実りを踏みにじるのはいけない事だ」 大家族の末っ子の千歳をあやしつつ、雪の言葉に同意するのは弖志峰直羽(ia1884)だ。 「有り金がないから、一緒にいた娘さんにひどい事をしたりしているようです」 「なんて奴ら‥‥っ」 レティシアの報告に怒りを覚える藍花を劉天藍(ia0293)が宥めつつ、折梅の方を向く。 「折梅さん、こうなれば‥‥」 「そうですね。懲らしめるには十分です」 天藍の言葉に頷く折梅が言うと、滋藤御門(ia0167)がふふりと微笑を零してしまう。 きょとんとする折梅に御門はやんわり謝る。 「いえ、折梅様を天女に例えたのは当たっているなと改めて思ったのですよ」 神々しく美しく、優しいが怒らせてはいけない‥‥今まで見てきた御門にとっては納得だった。 「食べ物の恵みを大事にしない大人は許すまじです!」 「格の違いを見せなきゃね。折梅様、輝血様ガンバ☆」 レティシアが意気込むと、直羽が二人を持ち上げた。 先に風呂に入ると言った輝血は湯船に入って、身体を温めていた。 艶やかな肌にすらりとしつつ、適度に柔らかそうな肌は男心をくすぐる。 今は湯船に隠れ、よく見えない胸は微かに見る限り、男達の妄想どおりの大きさに違いない。 こっそりと、男達が脱衣所と風呂場の戸を開けて覗いている。 (「いや、気配というか、もぞもぞうるさい」) 内心呆れつつ、輝血は艶笑を浮かべ、覗いてる男達に目配せする。 これは一緒に入っていいのか! と思った男達は覗いたまま、着物を脱ぎだす。 思いっきり輝血が男達にお湯をかけた瞬間、輝血は夜を発動した! 立ち上がり、湯船から上がる。 男達を踏み越えて脱衣所に入る。 浴衣をさっと着付け、腰帯で止める。 三秒が経過し、男達は動き出し、湯船の方を見ると、輝血はいなくなっていた。 「女がいない!」 「あ、あの女、どこにいったんだ!」 慌てる男達は、まさか輝血が後ろにいるとは気付かず、慌てている。 「ここにいるじゃないか」 くつりと、笑う輝血の目は笑っていなく、男の一人に鳩尾を拳で入れ、左足を上げてもう一人の男のこめかみにがっつりと入れる。 昏倒した男二人を確認し、輝血は湿った浴衣を脱ぎ、身体を拭いて着替えだす。 「架蓮?」 襦袢を着た輝血が声をかけると、廊下へと繋がる戸が開き、そこには女中姿の架蓮が控えていた。 「連れ出しをお手伝いいたします」 「助かる」 そういった頃には輝血は着付けを終えていた。 雪が書状を手に役所へと向かう。 永和もしくは敦祁の名を出した雪に役人達はこくこくと頷く。 美人の訪問に若い者達は騒然となる。 出てきたのは永和であり、顔なじみの雪の顔を見ると、厳しい顔が一転し、穏やかに微笑む。頭を下げる永和に雪も頭を下げる。 「蜜莉様はお元気ですか?」 「ええ、皆さんに会いたいと言ってましたよ」 世間話もそこそこに雪が手紙を差し出すと、手紙を読んだ永和は納得したように頷く。 「また、鷹来様は楽しそうですな」 「いつでも折梅様は楽しいを見つける名人と思います」 にっこり微笑む雪に永和は「確かに」と苦笑する。 ● さてさて、屋台を壊された大家族の場所で開拓者達が再び屋台を設置中。 誰もが大丈夫なのかと心配の眼差しを投げる中、開拓者達はてきぱきと屋台を設置している。 やっぱり来る浜菅一家。 「おうおう、お前さんら、ここがどこのショバかわかってんのか?」 「浜菅一家のショバだ、ショバ代払ってもらおうか!」 がなりたてる男達にセフィールが応対する。 「寧ろ、払って頂けませんか?」 怯えず、冷静な対応のセフィールに周囲の人達が驚く。 「その通りだね。場所は誰のものでもないよ。払う必要はない。寧ろ、ケチをつけた代金を払ってほしいね」 毅然とした態度で言い放つ直羽に言われた当人達はカチンと来たのか何かわめいている。 「屋台壊されたいのか!」 男達の言葉に奥にいた天藍がこそこそと前に出てくる。 「とりあえずこれで‥‥」 じゃらっと、見せ付けた天藍の金袋に目を光らせた男だが、気弱そうな天藍を値踏み、更に奥で怯えている女性三人に気付く。 黒髪と銀髪と金髪。どれも美女だ。 「金も頂くが、全くたりねぇなぁ、この女二人をたーっぷり可愛がらせようか」 雪に手を伸ばそうとした瞬間、黒髪の女が動き、そのまま男の手を掴んで捻りあげる。 「か弱きものを蹂躙するものを許すわけにはいません」 「兄貴!」 凛と言い放つ黒髪の女‥‥御門に腕を捻られた兄貴と呼ばれた男は痛みを訴えている。 「その通りです。強き者は弱き者を助ける者。決して弱き者を蹂躙するものではありません」 葛を引き連れた折梅が言えば、一家は出てきた老婆に怒りの目を向ける。 「ババアがしゃしゃり出てきて何をほざく!」 「お前ら、やっちまえ!」 号令に男達は持っていた木刀や匕首を構える。 「周りの皆様、立ち回りが始まります。商品の保護をお願いします」 セフィールが周囲の人達に言えば、バタバタと荷車なんかで退散し、ある程度の広さが確保できた。 一家達が開拓者達にかかると、即座に現れたのは珠々だ。 ぴょこんと、飛び跳ねるように攻撃を回避し、フェイントを使って自滅を誘っている。 「皆、絶対大丈夫だよ、追い出すからね!」 仮初を使い、珠々が周囲に元気付けている。その珠々の素早さをあげる為、雪が神楽舞「瞬」を使っている。 情け容赦なく、荒野の決闘を使い、素早く銃を抜き、撃ち放ったのはセフィールだ。 「弾丸なら払う事は出来ます、少々痛いですが大丈夫ですよね」 淡々と言うセフィールに男は真っ青になってしまう。 「ったく、無粋だね」 月歩を使って華麗に攻撃を避けている直羽は周囲に被害がないように気を使っている。 天藍が珠々の動きを追って、呪縛符を使い、一人を拘束し、珠々は呪縛符で拘束した男の前に立つと、自分を追った男が珠々を捕まえる寸前まで間合いをつめ、夜を使って珠々は自分を追った男をドンと、背中を押した。 動き出すと、男は珠々がいないのと、押された不安定な体制で仲間諸共倒れこむ。 間抜けな姿に周囲から歓声と笑い声が聞こえる。 レティシアと御門は二人で効果音と偶像の歌で周囲を盛り上げる。 「で、出て行け!」 老人の一人が一人に体当たりをした。情報収集の時、珠々に涙ながらに話してくれた老人だ。 「この街から出て行け!」 更に気弱そうな青年が一家に石を投げる。 「そうだそうだ!」 周囲も開拓者達の姿に心打たれたのか、押さえつけに入ったりする者も出てきた。 一家の一人が折梅の隙に気付き、殴りかかろうとする。 御門が構えるが、折梅が御門を制し、殴ろうと伸ばされた手を折梅の繊手が取り、そのまま男をひっくり返してしまう。 もう一人いる事に気付いた御門は幻影符を発動し、動きを鈍った所を折梅と葛の危機に出てきた輝血が蹴りで気絶させる。 「輝血ちゃん!」 「葛先生、折梅、無茶するんじゃないよ」 顔を明るくする葛に輝血が肩越しに振り向いて呆れる。 「皆さんもう、宜しいでしょう」 折梅の言葉に全員が折梅の方へと向かう。 昔物語のご隠居様を見立てて、口上を述べようとした直羽が言おうとした瞬間‥‥ 「この方をどなたと心得る」 「恐れ多くも風流韻事なおばーちゃんのてんにょさん、鷹来折梅様です」 きりっと、折梅の傍らを固めた御門とセフィールに言われてしまった。 「口上、練習したのに‥‥」 がっかりする直羽に天藍が肩を叩いて慰める。 「浜菅一家の悪事はここにいる皆さんが見ての通り、悪徳な詐欺行為は明白。迷惑をかけた皆さんにお金を返す事です」 厳しく言う御門に一家は証拠はあるのかとやいのやいの言い出す。 「往生際が悪い。架蓮!」 吐き捨てた輝血が架蓮を呼ぶと、荒縄で括られた一家の男二人を物陰から連れてくる。 「こいつらから全部聞き出したよ。祭りの浮き立ちを利用し、弱いモンから随分と甘い汁を啜っていたようだね。本当の任侠者が見たら、どうなる事だろうねぇ」 輝血が更に言えば、男達は唸る。 「本物の任侠者とは影にあるべきもの。表に出て弱き者を踏みにじる為にあるものではありません。恥を知りなさい!」 更に一喝する折梅に最早何も言う事はない。 開拓者達はそれを知っている者達が多くいる。任侠者は弱きを踏みにじるものではない。外から弱きを踏みにじろうとする者へ睨みを利かせる者。人なくて街は成り立たない。だから影ながら守るのだ。その力は表で振るってはならない。 「馬鹿騒ぎはそこまでだ!」 永和と敦祁をはじめとする役人達が現れる。 一家を引っ立てる際にレティシアが一家に一言助言を伝える。やり直す気があるなら、きっと、レティシアの言葉は伝わるだろう。 役人の中に仕事で忙しいと言われていた者の姿があった。 「沙桐様‥‥!」 雪が呟くと、沙桐は困ったように微笑んだ。 ● 一家は役人達に連れて行かれ、平穏が戻った広場には更なる笑顔が戻った。 他の任侠者達が祭りを荒らす浜菅一家を追っていたが、尻尾が捕まらない事を口にしていた。 感謝の言葉を開拓者達に述べていた。 「それと、ちぃと、気になる事があってな」 とある任侠の親分が口にしたのはこの時期、適度に屋台が荒らされないように開拓者崩れの用心棒なんかがいたりするが、今年はあまり見ないらしい。 戦狂いの者もいたりするから、何か、あるのかもしれないが何かないかと逆に聞かれた。 御門がはっと、見やったのは鷹来家当主、沙桐の姿。 「さぁさ、美味しい美味しい焼き芋だよー!」 「人参や芋のお饅頭も美味しいですよー!」 明るく声をかけているのは直羽とレティシアだ。 セフィールが数個の七輪を使って濡らした紙に包んだ芋を焼きつつ、網の上で饅頭を蒸かしている。 先ほどの立ち回りのおかげでとても繁盛している。 「凄かったよ」 「ありがとう」 「お芋美味しいよ」 「毎年あんたの所の野菜楽しみなんだよ」 客から次々と嬉しい言葉が返ってくる。 待っていてくれた事が大家族にとって嬉しい。 店番組ではない者は祭りを回っていた。 「沙桐様、お仕事が忙しいと聞きましたが‥‥」 「永和が教えてくれてね、ばーさまもああいう人だし、あんな立ち回りをするんじゃないかって何か心配になってきちゃった」 「折梅様と輝血様は素敵でした」 雪と沙桐が肩を並べて歩いている。 「私も心配です。お傍にいる事が出来ませんから」 「俺も心配だよ」 沙桐が風で遊ばれた雪の髪を優しく梳く。 「ケモノ耳姿も可愛いけど、雪ちゃんはそのままが一番だよ」 そっと、沙桐が雪に耳打ちをした。 「しかし、肉の匂いが凄いね」 「巨勢王様の街らしいと思います」 肉肉しい匂いに輝血が溜息をついている。くすくす笑っているのは緒水だ。 「輝血様や折梅様、皆様の格好良さに皆さん、とても感動しておりましたよ」 「そお?」 「ええ、とっても格好良かったです」 子供のように目を輝かせる緒水に輝血はまんざらでもない。 最近はややこしい事件もあったので、緒水の笑顔を見てると何だか自分の中が柔らかくなるような気がする。 それを癒されているという事を輝血は少しずつ理解してきている。 店番の交代となり、御門が藍花と山吹に祭りを見てくるように言う。 「でも、大丈夫だよ」 「僕がしたいんですよ」 藍花の言葉に御門が微笑む。 「おねーちゃん、てんにょさんのいうことはきかなきゃ」 琥珀が藍花の手を引っ張る。 「いってらっしゃーい」 「御門君も行っていいのよ」 葛が言えば、御門は大丈夫と笑う。 「しかし、子供達より直羽君の方がよっぽど楽しそうね」 向こうでは子守をしている直羽がはしゃいで天藍に叱られている。 そんな姿を見て子供達が笑っている。 末っ子はまだ危ないので、レティシアが見ている。 「千歳ちゃんも笑顔になって何よりです」 抱っこをして笑うレティシアに千歳もまた嬉しそうに抱きつき返している。 大家族の屋台は緒水が入った事によって、更に客が増し、一日で全部売り切った。 「完売御礼です」 ぺこりとセフィールが頭を下げると、周囲から拍手が沸いた。 他の屋台の修繕に出ていた珠々が他の屋台からもお礼のお小遣いや食べ物、お菓子を貰って帰ってきた。 人参は全力拒否し、逃げてきた。 家族達が開拓者達に感謝を伝えていると、輝血が葛と緒水に向き直る。 「葛先生、緒水も。また何かあったら言ってよ。絶対飛んで来るからね」 輝血が言い切ると、二人は笑顔で頷いた。 そんな輝血の姿を見て、沙桐と折梅が微笑む。 「沢山貰ってきたな」 「皆さんがくれました。皆で食べませんか」 珠々の戦利品を見て、天藍が頷く。 「わーい! 天ちゃんの御飯、美味しいから好きー!」 直羽が喜ぶと、レティシアも楽しみと笑う。 祝杯を挙げたのは大家族が世話になっている診療所。 そこでも珠々は人参を夜で回避したが、夜を使えるもう一人の手によって撃沈した。 賑やかな宴は子供達の就寝と共にお開きとなった。 |