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■オープニング本文 武天は此隅にも師走はやってくる。 大通りに店を構える呉服問屋三京屋は歳末という事もあり、更に忙しい。 三京屋本店店主の天南は今日も小袖姿に藍地の半被を着て店員達に慌しく指示を与えている。 「天南さん、そろそろお昼行って来て下さい」 「あら、そんな時間?」 「というか、もう昼餉の時間は過ぎてますよ」 店員達に言われて天南は昼休みをすっかり忘れていたようだった。 「あんまりお腹すいてないんだけどな」 半被を脱いで羽織を着た天南が御飯は外で食べると言って街を歩いていた。 さて、どこで食べようかと首を思案していると、この先に甘味屋がある事を思い出し、そこで汁粉を食べようと決めた。 そこの甘味屋は随分前に奥さんが亡くなり、男親一つで甘味屋をしつつ、子供を育ててきた。最近は長女が看板娘として店頭に立っており、奥さんがいた頃のように盛り上がってきたとか。 天南もここの甘味屋にはよく通っており、常連でもある。 店の近くに行くと、遠巻きに人が集まっており、子供の泣き声が聞こえた。その泣き声は甘味屋のちびっ子達だ! 「どうしたの!」 店の中で泣いているちびっ子達は天南の姿に気付き、天南に駆け寄る。 「おねーちゃんが! おねーちゃんが!」 「うわああああああんっ!」 泣く事で手一杯のちびっ子達に天南はとりあえず、しゃがみ込んで子供をあやす所から始めたが、奥からのそのそと親父さんが現われた。 「おじさん、その怪我!」 天南が叫んだその店主にはいくつもの傷や痣が見え隠れしていた。 相当殴られたのだろう、瞼も腫れている。 「娘を連れて行かれた‥‥」 「もしかして、前々から嫌がらせしてきたゴロツキ?」 辛うじて答えられる店主に天南がきゅっと眉を寄せる。 「連れ戻すわ!」 「天南ちゃん!?」 立ち上がった天南に店主が驚く。 「元々、非があるのは向こうよ。筋違いもいいところ!」 「しかし、大店の店主が出て行って、店に傷が‥‥」 おろおろと店主が言えば、天南は更に声を張り上げる。 「ここで見捨てる方が三京屋の看板に傷がつくわ! それに、お店を盛り上げる人だって必要だし、開拓者呼んでくるわ!」 そう言って、天南は店を飛び出した。 |
■参加者一覧
神凪 蒼司(ia0122)
19歳・男・志
風雅 哲心(ia0135)
22歳・男・魔
鷹来 雪(ia0736)
21歳・女・巫
弖志峰 直羽(ia1884)
23歳・男・巫
珠々(ia5322)
10歳・女・シ
楊・夏蝶(ia5341)
18歳・女・シ
羽喰 琥珀(ib3263)
12歳・男・志
緋那岐(ib5664)
17歳・男・陰 |
■リプレイ本文 甘味屋に向かった開拓者達は暴れられた後だろう惨状を見て顔を顰めた。 「酷い‥‥」 可愛らしい顔を顰めて口にしたのは楊夏蝶(ia5341)だ。 「喧嘩が出来ない人を傷めつけるとは不届き至極。弱き者を相手に自分達の強さを見せつけた所で何になりましょうか」 珍しく厳しい口調の白野威雪(ia0736)に天南が少しだけ目を丸くすると、そっと微笑む。 「ここまでくると立派な犯罪だな。何にせよこれ以上奴らをのさばらせておくわけにはいくまい」 風雅哲心(ia0135)が言えば、珠々(ia5322)が頷く。 「知らないということはふしあわせなことです。自分たちがやった事はそれ以上の報いになって返ってくると知っていれば、悪いことはしないでしょうに」 「知らぬとなれば、そういった事もやるのは当たり前か」 珠々の言葉に神凪蒼司(ia0122)が溜息をついた。 「ま、ここはガツーンと教えてやるべきだな」 にやっと、笑って言うのは緋那岐(ib5664)だ。 「じゃあ、とっとといこうぜ!」 羽喰琥珀(ib3263)が言えば、全員が頷いた。 「俺は残るよ。親父さんの手当てをしなきゃならないから」 「私も残ります」 弖志峰直羽(ia1884)と雪がそう言うと、残りの面子は任侠屋の方へと向かう。 「接客業なのに傷だなんて‥‥雪ちゃん、俺恋慈手で傷を塞ぐから、白霊癒で援護お願い」 巫女である直羽と雪が手分けして親父さんの傷を癒している。 二人の術で淡く光る親父さんにちびっ子達は目を丸くして見ている。 「けがなおったの?」 ちびっ子達に尋ねられた直羽は首を振った。 「傷が塞ぐのは術で出来るけど、傷跡を消すのはその人次第なんだ。でも、もう大丈夫だよ」 にこやかに笑う直羽に子供達も少しだけほっとなる。 「弖志峰様、傷口が熱いようです」 「氷嚢持ってきて」 傷口の確認をしていた雪が直羽に言えば、直羽が桶の上で氷霊結を発動させる。術で作った氷水を氷嚢の中に入れる。 「ちょっと冷たいけど我慢してね」 直羽が声をかけて親父さんの頬骨辺りの傷に氷嚢を当てる。 反射的に顔を顰めている親父さんに氷嚢を渡す。 「何か具合悪かったら遠慮なく言ってね」 にこっと直羽が笑うと、親父さんは礼を言う。 「お腹空いたろ。何か作ってあげるよ」 直羽が言えば、子供達がこっくりと頷く。直羽と雪がいる事で子供達の気持ちに余裕が出てきたのだろうか、もう泣いてはいなかった。姉の心配だけはしているが。 哲心はとりあえず、役所の方へと向かった。 今回の一件はあまりにも酷すぎると思い、役人に動いてもらおうとしていた。 役所で丁度良く顔を出した役人に事情を話すと、役人は誰からの依頼かと尋ねてきた。 「三京屋という呉服問屋の主人からだ」 哲心の言葉に男は頭を抱えたが役人は必ず捕縛に参るとだけ言った。 安心した哲心は任侠屋へと向かった。 任侠屋の方ではもう他の開拓者が配置についていた。 その中に依頼人である天南の姿があった。 子供のこぶし大の石を弄びつつ、琥珀が中の様子を心眼で視る。 中では嫌がる娘を鼻の下を伸ばしながら見つめて男達が酒を飲んでいる。 「おらぁ、もうちょっとこっちこいよ」 酒でろれつが回ってない男が娘の肩を抱きよせる。 「へへへ、そろそろ楽しもうとするかねぇ」 他の男が卑しい顔をして娘に近寄り、手を伸ばす。 ぐいっと、襟が引っ張られ、娘の肌が露になった瞬間‥‥ 「うぉ!」 娘の襟に手をかけた男の額に痛みが走った。 鈍い音を立てて床に転がったのは子供のこぶし大の石だ。 「あん、石だぁ?!」 「誰だ!」 いきり立つ男達の怒声が響いた。 瞬間、誰かが壁に叩きつけられた音がした。 「ご近所迷惑なので、お掃除に参りました」 箒を持った少女が構え、その後ろには少女より年上の少女が娘を護るように抱きしめている。 誰もがいつ入られたのか全く分からない。壁に叩き付けられたのは娘の肩を抱いていた男。 「何だ、おめぇら!」 「やいやい、お天道様の見ている前で堂々と人攫いなんてしやがる性根の腐った野郎どもっ、叩きのめしてやっから大人しく出てきやがれっ」 正面から入ってきた琥珀が威勢よく啖呵を切る。 「なんだと、このガキが!」 男が琥珀の頭を掴もうとすると、琥珀は素早くかわして、下手から思いっきり竹刀を振り上げた。 パァンと、小気味いい音がし、男は吹っ飛んで奥の襖の向こう‥‥押入れに首から突っ込む。 「自分達より弱い奴への暴力に、挙句の果てには娘を手篭めか」 哲心が冷たく言い放つと、その冷たさと相反し、男達の怒りに火がつく。 「うるせぇ、やっちまえ!」 一人が叫ぶと、夏蝶と珠々が娘を抱き寄せて比較的大丈夫な所まで歩く。 「味方です。大丈夫ですから」 何があったか分からない娘に珠々がぽんぽんと、背中を優しく撫でる。 「大丈夫よ、お父さんの所に帰ろうね」 夏蝶が言うと、娘は一度だけ頷いた。 「ぐあ!」 男の一人が悲鳴を上げた時にはもう、蒼司の手によって投げられていた。 「娘の恐怖をしっかり理解してもらわねばな」 翠の瞳が冷たく男を見下ろす。 「行ってこいよー」 緋那岐が発動させたのは人魂だ。 召喚したのはもふら。しかも顔は狙いを定めた男と似ていた。 「うわぁあああああ!」 顔は自分そっくり、首から下はもふらという奇怪な動物に囲まれた男は体中を噛み付かれる。 「‥‥わざと作るってやりづれぇな」 ぽつりと緋那岐が呟いた。 「‥‥迅竜の息吹よ、夢魔の囁きとなりて彼の者に安らぎを与えよ」 哲心が穏やかに詠唱すると、任侠屋の一人ががっくりと眠りに落ちてしまった。 「よっくも‥‥やりやがったな‥‥」 最初に珠々に吹っ飛ばされた男が背を向けている天南に向かって猛進する。 瞬間、男は一番響いた音で壁に叩きつけられた。 叩き付けたのは武天の役人である沙桐だ。その顔は怒りに満ちており、怒り任せに男を蹴りつけたのを即座に理解できた。 「天南、何やってるんだお前!」 いつもは優しい表情と穏やかなお坊ちゃん的な様子の沙桐とは違っている。 「永和から聞いたぞ! お前に何かあったら三京屋はどうする! お前といい、ばーさまといい、何で危ない真似をする! 心配するのはこっちだぞ!」 「落ち着け。彼女も腕に覚えがあるのだし、何より無事だ」 ほぼ八つ当たりに近い沙桐の怒りを蒼司が宥め、更に珠々が声をかける。 「娘さんが怯えます」 「は? ‥‥え?」 不機嫌に低い声で沙桐が振り向くと、夏蝶と珠々が。正面を向けば蒼司。 「大丈夫かー?」 緋那岐が気を使い、沙桐からサァーッと血の気が引いたなりきょろきょろと辺りを見回す。 「いないわよ。甘味屋で待ってる」 夏蝶が言うと、沙桐の表情に血色は戻らない。 「ふぅうん、見られたくないんだぁ」 にんまりと、夏蝶が沙桐に笑みを浮かべると、沙桐が身の危険を覚えた。 ● 「美味しい?」 直羽が優しく子供達に声をかけると、卵粥を食べていた子供達は頷く。 「良かったです」 一緒に作った雪もほっとしている。 店の入り口が賑やかになったと思い、直羽が顔を出すと、皆が戻ってきていた。 「あ、おかえりー。はっやいねー。娘さん、お父さんは向こうにいるよ」 娘がおぼつかない足取りで奥に入り、横になっている親父さんと抱き合っている。お姉ちゃんの帰還に子供達も娘に抱きついている。 「よかったな」 ほっとしたように緋那岐が笑う。 「皆様、ありがとうございます、ありがとうございます」 親父さんと娘が泣きながら開拓者に礼を言った。 ちくんと、珠々の心に小さな棘が刺さる。 「かぞくはいっしょがいいものです」 珠々が呟くと、沙桐がそっと頭を撫でた。 「沙桐様‥‥!」 驚いたように雪が沙桐の名前を呼ぶと、沙桐は後ろめたそうに笑う。 壊された店は男性陣が直し中。 「あ、茶碗の破片には気をつけろよ。摘まないで箒で掃くんだぞ」 琥珀がちびっ子達に割れた陶器の扱い方を教えている。 先程哲心が会った役人‥‥橘永和も一緒に直している。沙桐は彼から天南の話を聞いたようだった。 「あの後はどうなんたんだ?」 蒼司が言えば、永和は祝言の報告をした。 「そうか、祝言ができていたのは良い事だおめでとう」 平素凛然とした蒼司であるが、祝い事だと少しだけ表情を和ませる。 「片づけが終わったら味見だ」 「味見!」 反応するのは琥珀だ。ぴんっと、耳が立つ。 「紹介をするのに味見をしなくてはな。だが、親父さんは立てるのか?」 蒼司が心配すると、親父さんは一応、厨房には立てるようだ。 「皆様にお礼の一杯を作るのは可能ですが、店になると少々無理がたたります。申し訳ありませんが皆様で料理が出来る方はいますか? 味付けは私がしますので」 親父さんが申し訳なさそうに言えば、心得たと言ったのは蒼司と哲心。 二人とも甘味作りが出来るので、作るのは可能だ。 とりあえず、店修繕組が先に味見をする。 「白玉にサツマイモか、これは裏ごしているのか?」 哲心が言えば、親父が頷く。 「裏ごしする事で芋の舌触りの悪さが軽減されます」 「小豆の甘さもいいが、箸休めの柴漬けの塩見がなんとも」 味見なので、少量でもう少し食べたいと思う程度でいいだろう。また後で食べようと期待感が沸き、その期待感は客にも伝わるのだから。 「うまーい! 早くまた食べたい!」 琥珀が言えば、哲心がふと笑う。 「では、ご教授願おうか」 蒼司の声かけで哲心と共に厨房に立つ。 いい匂いが店の外にも広がり、人が見にやってくる。 店の中も綺麗になっており、営業再開かと首を傾げるばかり。 「店主が終始厨房に立つのは辛いのでな。少しの間、俺達が守らせてもらう。味も近くなるよう心がけるが、込める心は店主にも負けぬ」 厨房の小窓から覗いたお茶目なお嬢さん方に哲心が笑みを浮かべて声をかける。 「もう、任侠者など来ないから安心して食べに来てくれ」 「た、食べに必ず来ます‥‥」 更に蒼司が声をかけると、娘さん達は赤面して行ってしまった。 その直後、期間限定で美形二人が厨房に立つという噂が立った。 女性陣は三京屋の店の中にいる。 「さーって、きゃんぺーんがぁーるになってもらいましょうかしらねぇ♪」 いつぞやの約束を果たせといわんばかりに天南が珠々に押し迫る。 「あの時は忙しかったからねぇ、今回は逃がさないわよ」 片目を瞑る天南に珠々は厭な汗が背中を辿る。 三京屋のお姉様達に担がれて珠々は着替えに向かわれた。 ただ、綺麗な着物を着たいだけだったのに。 楽しいのは天南だけではない。 「んふふ〜。正々堂々できるのって楽しいわね♪」 笑顔の夏蝶が沙桐に化粧を施している。 「‥‥なーんかあるよね」 じとりと沙桐が夏蝶を見やると、夏蝶は微妙な沈黙を落とす。 「だって、この間麻貴に苛められたしぃ」 「麻貴に? 何されたの?」 沙桐が尋ねると、夏蝶はしどろもどろになってしまう。 「それよりも! 沙桐さん本当に嫌なのね」 勢い込んで話題を変える夏蝶に沙桐は少しだけ拗ねた表情となる。 「だって、見せたくないよ‥‥夏蝶ちゃんは好きな人に思わないの? 俺は‥‥あんな怒った所見たら嫌われるかもって怖いよ」 しゅんとなる沙桐に夏蝶も心が絆される。 「でも、わかってほしいとは思うかも」 夏蝶の脳裏に移るのは闇色に舞う色鮮やかな彼の人‥‥ 琥珀は汁粉が入った鍋とお椀や餅を持って開拓者ギルドへ。 「どうしたの?」 今回の依頼を担当した受付嬢が声をかける。 「店の宣伝! 皆食ってくれよ!」 琥珀が言えば、受付嬢も手伝って少量ずつ渡す。 「依頼に来たのか、俺達開拓者がやくざ者を倒して店を盛りたててるんだ。大丈夫だ!」 これを食べて元気出せと依頼に来た一般人に渡す。 職員達にもとても好評であり、特に、兎の形をした柚餅が女性陣に喜ばれ、後で食べに行くと嬉しそうだった。 再び三京屋のお姉様に弄られた珠々は呆然としていた。 沙桐を思いっきり女装できた夏蝶も着替え、ノリノリでビラ配りをしていた。 「はぁーい、寄ってらっしゃい見てらっしゃーい♪」 ノリノリで可愛らしくビラを配るのは直羽だ。 勿論、髪もつけ毛をつけて、化粧もばっちりと。 「緋那岐君、いいな‥‥」 恨めしそうに沙桐が見つめるのは緋那岐だ。 看板息子宜しく女の子達にきゃぁきゃぁ言われながらお店を宣伝している緋那岐の姿。 「やると決めたらやらないとね‥‥」 顔は笑顔で心で泣く直羽が沙桐を励ます。 年末の三京屋は問屋兼小売屋なので客の出入りが多い。 琥珀の提案で買ってくれた人に半券を渡して限定の兎の柚餅を食べられるという催しを天南が即実行した。 近隣の提携している小売屋にも協力してもらい、割符を配っている。 美しい客引きの姿もあり、甘味好きの男性や娘さん達が店に現われる。 元々美味しい甘味屋でもあり、限定という言葉についつい気を引かれてしまう。 店の中では看板娘と雪が客の応対をしている。賑やかになると、更に緋那岐と夏蝶が客の対応をする。 買い物に疲れた人々を優しい味の甘味が心を癒し、久々に店が活気付いた。 夕暮れ近くなり、人がはけると、全員が疲れの色を見せていた。 商品は全部品切れで完売御礼となり、帰る客から拍手まで貰った。 「任侠者退治の方が気が楽だったかも」 ふーっと、琥珀が溜息をつく。 「皆様、お疲れ様です。甘味しかございませんが、何か食べますか?」 看板娘が声をかけてきた。 「そんなに疲れて帰り大丈夫?」 「一番いい甘味をおねがいします!」 高価な服を着せられて神経をすり減らされた珠々に娘が声をかけると、珠々は勢い込んで叫ぶ。 「俺は汁粉を。味見だけではなく、きちんと食べたいからな」 蒼司が言えば、緋那岐と琥珀も頷く。 少し経って出来上がった親父さんの味は疲れた身体と心にとても優しい。 「三京屋で買い物をしてなかった者も多くいたからな、時期に一足も戻るだろう」 ほっこりと温まった哲心がそっと微笑みつつ呟く。 「限定って言われると弱いのって不思議ですね」 兎の柚餅を食べつつ、雪が言う。 「サツマイモ入り白玉の汁粉だって期間限定なんだよ? 四季折々の旬があるからこそ、皆その刹那を楽しむんだよ」 沙桐が言うと、雪はそうですねと微笑む。 「沙桐様の女装も限定の時間だから見るのを楽しむべきですね。今回も麻貴様にそっくりでした」 雪の言葉に沙桐はがっくりと肩を落とした。 「天南さん、どうか、この事は御内密に!」 手を合わせて直羽が口止めをしている。 「うーん、私は言わないけど、言った所で酷い目に遭うのは沙桐だし」 中々不遇な沙桐に傍らで聞いていた夏蝶が苦笑する。 「やっぱうまーい!」 琥珀がちびっ子達と一緒に元気よく汁粉をかきこむ。 「おかわり!」 珠々と声を合わせて年少組が声を上げた。 きっと、甘味屋家族にとって良い年越しになるだろう。 |