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■オープニング本文 武天のとある地方に鷹来沙桐が訪れていた。 かねてより理穴監察方の依頼で沙桐は火宵に関する動向を探っていた。 やはり、火宵は母親の故郷や繚咲周辺に現われていた。 だが、悪さはしておらず、何かを探しているようだったと聞く。 とりあえずは此隅に戻ろうとし、ある街で一泊を決めた。 素泊まりの宿を見つけ、食事に入った店で一杯やっていた時、近隣の集落に出かけた娘が戻らないという話が聞こえた。 沙桐が話を聞くと、そこの集落にはアヤカシが出るそうだ。 「アヤカシが出るの?」 沙桐が入ってきて、男達は「まぁ、座んな」と勧めた。 「ああ、その割には悪さはあまりなくてな、近づかなければ大丈夫ってな感じだったんだよ」 その娘は随分裕福な家の娘であったが、両親が幼い頃に死別し、現在は兄と暮らしていた。 話しに寄れば、その兄も最近姿を見せなくなったそうだ。 「お兄さんどうしたの?」 沙桐が尋ねると、男達は顔を顰めて、見かけなくなる前にどこかの使いの人が兄を尋ねてきたと言った。 「そのお嬢さんは見合いの話も出ててねぇ」 「へぇ、相手は?」 「さぁ、聞いた話だと、結構な大きな領主だから、何人もそんな候補がいるって聞いたよ」 沙桐は男たちの話をふうんと、相槌を打つ。 「唯一の身寄りが不在で不安がっていたから、周囲の人達が気を配っていたんだがなぁ」 見合いの話に誰もがよかったねぇと、誰もが言っていたその矢先の話だ。 「アヤカシが出るなら退治しなきゃね」 「アンタ、倒せるのか?」 「ん、一応志体あるしね。あと、開拓者を呼ぶから大丈夫」 にこっと笑う沙桐は集落の方向を聞いてから代金を払って店を出た。 翌日、沙桐は集落へと赴いた。 静かな集落で、老人と子供が多くいた。 痩せた畑ではろくに収穫も出来ず、働き手となるものは街で働きに出ているらしい。 娘の話をすると、皆が知っていた。 彼女の知り合いにここの集落の出身者がいるらしく、年老いた親に幼い子供を預けて働きに出ているらしいので、娘が何かと世話をしていたようだった。 話を聞けば、娘が集落を出る間際、誰かが集落の入口まで迎えに来ていたようだ。 「迎え‥‥ね。まぁ、生きているならいいんだけどね」 ぽつりと沙桐は呟いてギルドへと向かった。 |
■参加者一覧
真亡・雫(ia0432)
16歳・男・志
鷹来 雪(ia0736)
21歳・女・巫
弖志峰 直羽(ia1884)
23歳・男・巫
和奏(ia8807)
17歳・男・志
紅 舞華(ia9612)
24歳・女・シ
オドゥノール(ib0479)
15歳・女・騎
溟霆(ib0504)
24歳・男・シ
杉野 九寿重(ib3226)
16歳・女・志 |
■リプレイ本文 集まった開拓者の半数は疑問と心配を抱いていた。 「僕は‥‥娘さんが心配です」 素直に吐露したのは真亡雫(ia0432)だ。沙桐に何か考えがあったことでのアヤカシ退治依頼と思ったが、心に引っかかっているようだ。 「俺も心配だよ。娘さんの行方はこっちで追うから」 雫を安心させるように沙桐が言う。 「心配してるのは私も同じだ。私達でも調べたらいい。その上で娘さんの捜索の手助けにもなる」 「さっすが、舞ちゃんカッコイー!」 雫を諭す紅舞華(ia9612)に弖志峰直羽(ia1884)が囃し立てる。 「娘さんに接触したのは見合い関係の人かな? 俺も故郷に妹がいるんだよね。縁談なんて出た日には、小舅しちゃうかも‥‥って俺の話はいいよねっ」 「え、斬っちゃえばいいじゃん」 「沙桐君、でんじゃらすだよ!」 あっさり言い切る沙桐に直羽が驚く。当人は至ってまじめだ。 「領主様ともなると、お嫁さん候補はたくさんいらっしゃるのですよね」 ぽつりと呟いたのは白野威雪(ia0736)。 「領地の色によって違ってくるんじゃないかな」 そういったのは溟霆(ib0504)だ。 「そうだね。俺の所は小領地の娘、もしくは縁のものとかだけど。他にもいるみたいだけど、どこの誰かも知らないし、興味ない」 さらっと言う沙桐に雪が目を見開く。 「ああ、領主だったんだ」 「まぁね、今は叔父とばー様が代行しているけどね」 あっさり言う沙桐にオドゥノール(ib0479)が微かな違和感に目を細める。 「お見合いとかするんですか?」 杉野九寿重(ib3226)が言えば、沙桐は首を振る。 「俺が決めた人と一緒になるよ。父さんが出来て俺にできないだなんて悔しいし」 「よっ! 男前!」 「君に愛される人は幸せ者だね」 直羽が煽るように言えば、溟霆が穏やかに笑うその視線は雪だ。 「め、溟霆様!」 顔を赤らめる雪にオドゥノールが雪に耳打ちをする。 「まるで赤い林檎のようだな」 「もう! オドゥノール様まで!」 声を荒げても可愛らしい雪を和奏(ia8807)がじっと見ている。 「沙桐さんの決意は強そうです」 素直な和奏の言葉に雪はもう顔を赤くして黙るしかなかった。 ● 集落へ行く際に雪が沙桐に今回の経緯を教えてほしいと言う。 本来は近づかなければ何も起きなかったのだ。 何故、集落まで来るようになったのか、疑問を抱いていた。 「たまーに森に密猟者が来るのは村の人達も知っててね、どうにもそういった奴らが来なくなったからおりてきたみたい」 あっさりと答える沙桐の話にオドゥノールがため息をつく。 「迷惑だな‥‥」 「密猟者さんが来なくなったのにどうして‥‥」 雪の疑問にあっさり答えたのは溟霆だ。 「アヤカシの主食はなんだい?」 その言葉に雪は黙るしかなかった。 「因果応報か」 ふーっと、舞華が呟いた。 集落に到着すると、話通り、老人と子供しかいなかった。 「お姉ちゃん、だいじょうぶかな‥‥」 ぽつりと呟く子供に直羽と雪が優しくあやしていた。 「では、かなり近い所まで奴等は降りてきてるんですね」 老人達に話を聞いているのは雫と舞華だ。老人達は時折集落の奥に生えている山菜をとりに来たりしているらしく、そこで動物のものではない影をよく見ていた。 紙に簡潔な地図を書いてもらい。場所を確認する。 「ワシら、老い先短い老人ならば構わないのだ。だが、子供達には‥‥」 心配する老人達に和奏が静かに声をかける。 「自分達がアヤカシを倒すまで家にいて下さい」 和奏の言葉に老人達は頷くだけだった。 「沙桐君は話を聞きに行かないのかい?」 溟霆が言えばもう聞くだけ聞いたからいいとだけ言った。 「アヤカシ退治は良いよねぇ‥‥」 くすっと笑う溟霆に沙桐は口元を緩ます。 「志体持ちのよき宿命。一般人と相対するには負担強すぎるよね」 「怒られると思ったよ。戯言でも」 「‥‥こういう仕事をしてるとさ、思うよ。いいな、開拓者って。でも開拓者だって大変なのに」 沙桐の視線がどこを見ていたのか分かった溟霆は沙桐の様子を見ていたオドゥノールと目を合わせてそっと微笑み、瞳を伏せる。 地図と証言を頼りに進んでいくと、瘴索結界・念を使って雪と直羽が交互に確認していく。 直羽が使っているとふと、何かに気付く。 「心眼、お願い。方向はこっち」 小声で直羽が言うと、和奏が頷き、心眼・集を発動させる。 「います。更に確認をお願いします」 和奏の言葉に雫と九寿重も発動させ、二人が確認を取ると、同じ場所に気配を感じた。 「全て瘴気という事から、人はいないでしょうが、油断せずに」 九寿重が言えば全員が頷いた。 「こちらに気付いたようだな。駆ける音がする」 超越聴覚を使っていた舞華が言うと、緊張が走る。 「じゃ、作戦通り、前衛さん、よろっしくー」 直羽の言葉に前に出たのは雫、九寿重、舞華だ。 「沙桐君は雪ちゃん守ってねー」 「へ!」 「直羽様!?」 ぴょこんと、身軽に配置につく直羽が沙桐に言えば、二人が驚く。 「言われる前にやるだろ、彼は」 オドゥノールが言えば、直羽がてへぺろっとおどける。 「やー。反応が楽しくってさ☆」 次の瞬間には表情を引き締めて直羽は足音がようやく聞こえた向こうを見た。 「後ろの音が別れた。直羽、瘴索結界! 和奏、心眼を!」 舞華が声を出すと、二人が術を発動させる。 「横から来る、残りは横からに注意して!」 「東から三つ」 「西から三つ」 直羽と和奏が言ったその次の瞬間、前から剣狼が現われ、横から羽の生えた八尺ものの大蛇が現われた! 前の押さえ役はそれぞれ一匹ずつ剣狼を押さた。 横から出てきた六体の小雷蛇は払いのけられたり、戦輪で迎撃され、間合いを計る。 「一気に出てこられたか、すぐ援護に向かう」 舞華の力強い言葉に戦闘開始となった。 「早く終わらせなくては」 娘の事が気になる雫だが、目の前のアヤカシに集中する事にした。 ふわりと、美しい刃紋が目を奪われる数珠刃の大太刀に春待ちの梅の香りが纏う。 剣狼が襲い掛かり、白梅香の発動で知覚が鋭くなった雫はその切っ先で剣狼をいなす。軽々と着地をした剣狼は品も無く、目の前の人間を見据えている。 剣を構えたまま動かず、すっと、瞳を閉じた雫に剣狼は喜んで飛び掛る! 剣狼が地を蹴った瞬間を雫は見逃さず、赤の瞳を啓くなり即座に剣狼を把握し、剣を振るった。 雫の放ったその剣筋を剣狼は理解できないだろう。 冷酷無比とも称されるその剣筋に血飛沫を上げる事も剣狼に許されていない。 飛び上がっただけの衝撃の音を立てて剣狼は地に這った。 雫は一度剣狼を振り向き、蛇へと加勢しに走る。 言葉もなく、舞華が剣狼に忍刀「蝮」を向けるなり、剣狼に切りかかる。 奔刃術が上げられた素早い動きは無駄が無く、剣狼の右前足の付け根を容赦なく斬り捨てた! 斬られた衝撃と足のバランスが崩れ、剣狼は立ち上がるのに一苦労のようであったが、後方の様子を考えると、舞にとっては一刻の無駄は出来ないのだ。 すぐさま剣を動かし、一切の無駄がないその動きと剣筋は剣狼の肩から腹にかけて思い切り斬りおとした。 二度と、人間の肉を食む事が出来ぬように。 黒い刀身のソメイヨシノを剣狼に向け、九寿重は剣狼の様子を窺がう。向こうはどうにも久々の人間に興奮しているようでもあった。 間合いと標的を確認でもしたのか、剣狼は即座に九寿重の方に走り出して襲い掛かる! 九寿重は低く体勢を構え、剣を振るうと、剣狼の足の一本を切り落とした。 後ろ足が九寿重の肩にかすれ、着物に爪の跡が走り、血が滲む。 跳びかかったのと、足を斬られた所為もあり、転んだが、三本の足で体勢を整え、九寿重の方に振り向き、再び走り出す。 周囲を確認し、九寿重はもう炎魂縛武をソメイヨシノに纏わせていた。 炎を見ても恐れず、気にもしないアヤカシは目の前の食料にかぶりつきたいが為に本能のままに走る。 「愚か」 ぽつりと呟いた九寿重は炎の刀身で剣狼を斬った。 前衛が剣狼を押さえている間、後方は蛇と戦っていた。 「随分と長い事で」 戯言を交えつつ、溟霆が戦輪「朧」を小雷蛇に向かって投げつけた。溟霆の狙い目は胴体よりは翼。逃げられないように二枚の朧が小雷蛇の翼を切り裂く。翼を傷つけられ、身悶えするアヤカシは高度の取れない翼で一度上空に上がる。 溟霆は小雷蛇の動きを見逃さないように狙いつけ戻ってきた戦輪を手に取る。 違和感を感じた溟霆は小雷蛇の雷撃に気付いた。だが、彼の上空に投げられたのは穂先に黄色の宝珠が取り付けられた、黄金色の刃の槍だ。 雷撃を受けたその槍はそのまま重力に従い、地に落ちるが、上空に上がった小雷蛇はそのまま溟霆を急撃する! 軌道を変える事はないと感じた溟霆は蝮を構え、ギリギリまで引き付け、瞬時に交わすが、蝮の切っ先はそのまま小雷蛇の頭直ぐ下かから尻尾まで真っ二つにした。 直羽の盾となっていたオドゥノールは小雷蛇の動きを見計らいつつ、魔槍「ゲイ・ボー」で払いのけていた。 視界の向こうで、溟霆と対峙していた小雷蛇の周囲にぱちっと何かが弾けた気がした。瞬間に理解したオドゥノールは即座に手にしていた槍を溟霆の頭上を目がけて投げた! 直羽はオドゥノールが槍を投げた事に驚いたが、彼女を援護する為に白霊弾を対峙している小雷蛇に発動させ、翼をボロボロにさせた。 溟霆頭上に投げられた槍はそのまま雷撃を喰らい、役目を終えた槍は地に落ちる。オドゥノールは蒙古剣をもう手にしており、オーラを発動させて自分と対峙している小雷蛇に刃を向けていた。 「直羽よけろ」 オドゥノールが直羽の羽織を引っ張り、無理やり姿勢を低くさせられる。だが、敵から目を逸らす事はできずにいると、彼女の意図に気づいた。 小雷蛇は主の下に戻ろうとした槍に胴体を貫かれ、オドゥノールが手を伸ばして蒙古剣で身体を斬り、溟霆の戦輪によって首を斬られた。 「恩はちゃんと返さないとね」 地に崩れた小雷蛇の向こうで溟霆が微笑む。 和奏は自分と対峙した小雷蛇に瞬風波で迎撃した。無数の風の刃と渦巻く風が翼を捻り、ボロボロにさせていた。 それでもアヤカシは本能になぞらい、逃げる事はしない。 ボロボロの翼をはためかせて和奏を狙う。 和奏は鞘に納めたままの刀の柄を握り締める。 間合いをつめ、動かない事で引き付け、頃合を見計らう。 アヤカシは動かない和奏の脳天から狙い、大きく口を開ける。 時が来たその刃は何よりも研ぎ澄まされており、そのまま小雷蛇の口から刃が触れ、微かな皮と刃が触れる振動を感じたが、そのまま真っ二つに小雷蛇が和奏を起点にして分かれていく。 華やかな作りの割りにしっかりとした刀身の刀は持ち主によく似ていた。 まだ小雷蛇はいる。前衛達が加勢してくれた事を理解した和奏は残りの退治に向かう。 剣狼の援護に回り、蛇の加勢に回った雪は翼を目がけて白霊弾を撃った。 片翼を失った蛇はのた打ち回り、雪を目がけて襲い掛かる。雪を守る沙桐が剣を振りその胴を叩き斬る。 蛇はまだ動きを止める事は無く、そのまま前進する。諦める事無く、雪がもう一度白霊弾を打ち込み、頭上に命中した瞬間、沙桐が蛇に止めを刺した。 雪が周囲を見やると、もう戦闘はほぼ終わっていた。だが、九寿重に気付くと、雪は彼女に駆け寄った。 「杉野様!」 九寿重の肩に走った赤い肩に気付いた。 他の皆に今のところ怪我は見られないが、念の為、雪が閃癒を発動させる。 「すみません」 九寿重が言えば、雪は「御気になさらず」と微笑む。 それから心眼と瘴索結界で残りがいないか確認したが特にはいなかった。 集落に戻り、アヤカシは退治した旨を伝えると、とても喜ばれた。 「おにーちゃん、おねーちゃん、ありがとー!」 子供達に合唱され、開拓者達の表情も笑顔が綻ぶ。 手を振って見送られる開拓者達だったが、もう一つの目的を果たしに行った。 町に戻った開拓者達はいなくなった娘の情報を得る事にした。 「ああ、一華ちゃん。知ってるわよ」 「よくここにくるの?」 雑煮を貰いつつ、溟霆が店員の娘に話しかける。 「ええ、お兄さんの秋明さんと一緒に」 こくりと頷く店員はいなくなった事を心配した。 「お見合いも残念ね。結構大きな領地の領主様と見合いがあがってるだけに」 「領主といえば、歳は結構あるんじゃないのかい?」 「お兄さんの話だと、とても若い方らしいわよ。とはいっても、実際に会った事は無いみたいだけど」 それからは世間話をしつつ、雑煮を食べていた。 呉服屋で聞き込みをしていた舞華と直羽も一華の事を聞いていた。見合いの事も知っており、見合い相手の領地について知っていた。 「貌佳の絹は中々のものです」 「地名なの?」 直羽が聞けば、店員が頷く。 「小さな領地が四つほどありましてね。それを纏めて繚咲というんですよ」 「領主の名は?」 舞華が尋ねると、店員は苗字だけ言った。 「鷹来家です」 聞きなれた名前に二人は顔を見合わせた。 一華と秋明の家は昔からこの町に存在する所謂旧家。 沙桐が役人の名で家に向かうと、留守を預かっている女中が沙桐の名前を聞いてとても驚いていた。 きょとんとする沙桐に女中は秋明が持ってきた見合い相手の苗字が鷹来と言った。 瞬間、沙桐の表情が険しくなったが、即座に柔和な笑みに戻す。 「そうでしたか、私はお嬢さんの行方が消えたという話を町で聞きまして。お兄さんも不在の中、留守を預かる事になり、さぞ辛かったでしょう」 沙桐の言葉に女中はそのまま泣き出してしまった。雪と九寿重が女中を支えると、女中は沙桐に不安をぶつける。 昔から兄は妹を大事にしており、両親が幼少に死に、共にいてやれない分、大事にどこかいい所に不自由の無い嫁入りをさせようと考えていた事。 妹は兄と離れがたく、見合いに困っていた事。 二人の思いの狭間に立たされ、二人がいなくなった事で心が衰弱する。責任強い人間ならばその重圧は強い。 沙桐達は女中の心の内を理解し、彼女が泣き止むまで待った。 情報を集めた溟霆達が一華の家に入り、情報交換をする。 「兄の秋明は見合い相手に呼び出されるような形で行ったそうだ」 舞華が言えば、沙桐は頷いた。 「先だって、上司に一華ちゃんと秋明さんの件は手紙で送ったけど、これから俺は繚咲に赴く。何か分かれば必ず皆‥‥開拓者ギルドに知らせる。多分、依頼の形で」 「構いません二人の無事を祈ってます」 雫の言葉に沙桐が頷き、一足先に立ち上がる。 一華の家を出た沙桐を雪が追う。 「沙桐様‥‥」 「ん?」 雪は言葉を失う。言いたい事は沢山あるのに。沙桐は雪が刺している簪に触れ、雪の頬を撫でる。 「俺は共にいたい人と夫婦になるよ」 意志の強い瞳は酷く悲しすぎた。 「‥‥別の意味で厄介な事になりそうだな」 ふうっと、オドゥノールが溜息をついた。 |