骨運び、骨休め。
マスター名:拓生 志季
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや易
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/06/24 17:46



■オープニング本文

●依頼の伝書・一枚目
 開拓者諸君は、麻雀という遊戯を知っているだろうか。
 一から九までの数字が彫られた九種が三色、それらが各々四枚ずつの百八枚と、文字が彫られた七種が四枚ずつの二十八枚。計百三十六の牌と二つの賽子を用い、四人で『アガリ』の早さや役の良し悪しを競う、卓上遊戯だ。
 複雑難解な決まり事と、役の豊富さ。そして何より運や直感、経験が求められる場面が多く、とても奥深いものとなっている。故にこれを楽しむのは殆どが大人で、希少ではあるが、麻雀をするための専用の卓を立てる賭場も存在する。
 噂の域を出ない話ではあるが、麻雀を楽しむためだけに賭場で全財産を全て投げ打った者、あまりの強さに賭場を一つ再起不能に追いやった者などもいるそうだ。
 かくいう私も麻雀の魅力に取り憑かれた者達の一人で、暇を見つけては友人を招き、技を競っている。

●依頼の伝書・二枚目
 前置きが長くなってしまったが、ここからが本題だ。
 麻雀に使用する牌は職人が作るものだが、これには陶器、黒檀、珊瑚、竹など、様々な種類がある。中でも獣の牙や骨を用いた牌は、その希少さと加工の難しさから最高級とされ、一流の職人が手掛けたものは見た目、手触り、重さ、どれをとっても他の何より群を抜いている。
 私はどうしても、それを手に入れたいのだ。
 ついては開拓者諸君に骨の入手を依頼したいのだが、何も狩猟をして欲しいというわけではない。
 我が国朱藩の北部山奥に、とある村がある。
 そこでは巨大な猪を山の神の恵みと称え崇める風習があり、その年に村の猟師が獲ってきた一番大きな獲物の骨を神体として祀るのだそうだ。
 そして先日、不要になった骨が出たとの通達があった。
 本来なら、私自らすぐにでも出向きたいところなのだが‥‥現在、我が国は興志王の考えの下で新大陸発見への動きが強く、私も部下達もその準備に東奔西走している身。要するに、忙しいのだ。
 そういった訳で、開拓者諸君に依頼することにした。具体的な依頼内容は、状況によって以下の二つに分かれる。
 甲、全ての骨の運搬が可能な場合、我が屋敷までの運搬。
 乙、運搬が困難な場合、保存の指示と、骨の一部(牙一つ)を品質確認用に持ち帰る。
 村からの通達には「巨大な猪」「その骨」としか記述されていなかったため、このような形にさせてもらった。
 甲の場合、報酬は十分に用意させて貰おう。乙の場合は労力を考慮して少しばかり減額させて頂くが、ご了承願いたい。
 
●依頼の伝書・追伸
 尚、村では現在、新たな神の降臨を祝した宴が開かれているとのこと。仕事に支障の無い程度ならば、楽しんでくるといい。
 開拓者諸君の働きに期待している。

●その頃、村では
「ほう‥‥ふむ‥‥なるほど」
 伝書を眺め、静かに頷く村長。
 その周りを村人達が、あたかも珍しいものを見るような様子で輪になって囲んでいる。
「爺様、何て書いてあったんだい?」
 村長はその問いに、
「氏は祭りに来られないとの事じゃが‥‥代わりに開拓者を寄越すそうじゃ」
 と、些か嬉しそうな表情で答えた。
「ええっ!?」
「開拓者ですって?」
「そりゃあいい。彼らが来れば、祭りも賑やかになるな」
 村人達から歓声が湧き起こる
「本物の開拓者!?スッゲー。オレ、冒険の話が聞きたい!」
「もふらさまも来るかなぁ?」
「久々の客を迎えるんだ。気合入れて準備しなくちゃな!」
「おうよ!早速取り掛かろうぜ!」
「料理も豪華にしなくちゃね!」
 山奥の村は久々の開拓者来訪の報せに湧き、祭りの準備に取り掛かった。


■参加者一覧
桔梗(ia0439
18歳・男・巫
樹邑 鴻(ia0483
21歳・男・泰
向井・智(ia1140
16歳・女・サ
四方山 連徳(ia1719
17歳・女・陰
ルーティア(ia8760
16歳・女・陰
セリエ(ib3082
17歳・女・シ


■リプレイ本文

●幸せもふら
「うおおお!もふもふ!もふらさまもふうううッ!」
 豪快に喜びを表現する向井・智(ia1140)には、そうせずにいられない理由があった。
「もふ。くるしゅうないもふ」
 と、満更でもない様子の黒いもふらは、桔梗(ia0439)のパートナーである幾千代。智は幾千代を腕の中でもふもふしつつ、
「うむ、将来有望だな」
 と、しみじみ呟く、チャールズに跨っている。彼もまたルーティア(ia8760)のパートナーにして、もふらである。
 もふら好きが、喜ばずに居られる様な状況ではなかった。
「‥‥何ていうか‥‥悪いな」
 そんな智を眺めながら、恋仲である樹邑 鴻(ia0483)が、申し訳なさそうに呟く。それに対し、桔梗は目を細めて、
「大丈夫。幾千代も喜んでるから」
 と、穏やかに告げ、ルーティアも、
「彼女のもふら好きは、知ってるからな」
 と、笑い飛ばす。
「本当に幸せそうだね」
 鴻達のやり取りを見ていたセリエ(ib3082)は、そう言いながら改めて智を眺めつつ、
「もふら様もいいけど、自分は祭りの料理が気になるな。美味しい食べ物があれば、幸せかも」
 と、未だ見ぬ料理に想いを馳せ、不敵な笑みを浮かべた。すると、
「それを言うなら、拙者は桔梗殿とルーティア殿が居てくれて幸せでござるー」
 四方山 連徳(ia1719)が、からからと笑って、
「お二方のお陰で馬を借りずに済んだでござるー。お財布安心二重丸でござるよー」
 と、人差し指と親指で円を作って見せる。
「仕事をこなせば依頼主が幸せになって、仕事をしている私たちも幸せ‥‥」
 もふもふしながら皆の話を聞いていたらしい智が、相も変わらず、もふもふしながらほっこりと笑う。
「みんなに幸せを与えるもふらさまは、とっても素晴らしいです‥‥もふもふ‥‥」
「‥‥そう言われると、神の遣いと呼ばれるだけの事はある気がするな」
 智の言葉に、鴻は困ったように苦笑して続けた。
「でも、智の幸せな時間はそろそろ終わりみたいだぞ?」
「え?」
 智のもふもふする手が止まる。
「おお、村が見えてきたでござるー」
「もう着いちゃったんですかっ!?」
 智の幸せは終わりを告げ、セリエの幸せは始まりへの秒読みに入る。
 幸せは、多種多様。一人一人、人各々。
 それも、一人一つとは限らない。

●歓迎
 そこは、高さ五間ほどの小さな滝を中心として拓かれた、小さな集落だった。
「いらっしゃい!」
「本物の開拓者!?ホントにほんと!?」
「わぁっ!もふらさまだ!!」
「これ、お前達。少し落ち着きなさい」
 長老と村の子供達が開拓者達を迎える。
「遠路遥々、お疲れさまでした。歓迎しますじゃ」
 ゆったりとした口振りの村長が、髭を撫でながら静かに笑い、
「いくよ?せーの‥‥っ!」
「『みぬし』のむらへ、よーこそ!!」
 子供達が、元気に歓迎の言葉を斉唱した。
「な‥‥な‥」
 思い掛けない出迎えに、智は肩を震わせる。
「なんて可愛い子達ですかっ!!」
 子供達の元へ駆ける智。あまりの俊足に驚いた子供達は、きゃあきゃあと嬉しそうな叫び声を上げ、蜘蛛の子のように散っていく。
「ふぉっふぉ。子供たちもあんた方の来訪を楽しみにしておったゆえ、相手をしてやって下さると、助かりますじゃ」
 村長は虚空を見つめながらすうっ、と、振り返り、相変わらずゆっくりと告げた。さっきまでこの場に居た、智に向けた言葉であるらしい。
 そんな村長がこちらに向き直るまで待ってから、
「荷車の貸し出しと、宴席への招待。それに、この歓迎‥‥ありがとう」
 桔梗が謝辞を述べ、村長とはまた違う、ゆったりとした動作で礼をする。
「いやはや‥‥感謝したいのは此方の方じゃて‥‥」
 村長が今度こそ遠い空を眺め、話を続ける。
「街道こそあるものの‥‥こんな山奥の小さな村を訪れる者なんぞ、『みぬしさま』以外に居りはせんからのう。客人を迎えられるお陰で、村に活気が出たというものじゃよ」
「なるほど。その辺りは詳しく聞きたいところだけど‥‥」
 子供たちも口にした『みぬし』という単語に興味を持つ鴻。しかし、その表情は困ったような苦笑い。
「とりあえず、拙者たちが運搬する、巨大な骨、とやらを見せて見せていただけるでござるか?」
 同じく苦笑し、そう切り出す連徳。
「おお、そうじゃの。それでは、荷車へ積み込む方々はこちらへ。ああ、三人も居れば十分じゃろうて。積み込みをしない方々は、ご自由に寛いでいてくだされ」
 村長はそう言って、村の外れにある森の方へと歩き始めた。
「ふぅむ、三人でござるか」
 こういった役割分担は、想定外だった。が、
「俺は積み込みに行くよ。村長に色々と話も聞きたいし」
「俺も、積み込みに。もふらが居ないと、荷車、引けないから」
「拙者はどちらでもよいでござるー」
「じゃ、自分はやぐらの組み立てを手伝いに‥‥え、傾いてる!?」
「それなら、自分は‥‥子供達と遊んでこようかなー」
 これもまた、思いの外簡単に決まった。

●みぬしさま
「その向こうにあるのが、今日でお役目の半分を終えたみぬしさまじゃ」
 村長は目の前の、木の根が絡み合って形成された地の盛り上がりを指して告げる。開拓者達が木の根を登り、向こう側に目をやる。と、そこは窪地になっていて──
 中心にそれが、鎮座していた。天を突くように反り返ったその牙は、確かに獣のものだ。牙を除く部分の殆どが深緑の蔦で覆われており、緑毛の巨大猪の様にも見える。
「‥‥見事でござる」
「これは‥‥凄いな」
「‥‥‥」
 開拓者たちはそれぞれ感嘆を表し、暫しの間みぬしさまに見入った。
「肋骨の内側を覗いてご覧なされ」
 村長の言葉に従い、蔦の葉を掻き分けて木漏れ日を取り入れ、中を覗く。
 そこには、綺麗な朱色をした握りこぶし大ほどの果実が、背骨からぶら下がる形で実っている。
「へぇー‥‥『実主さま』って事だったのか」
 鴻が納得したように呟いた。が、村長は、
「ふぉっふぉっ‥‥さて、どうなのじゃろうかの」
 と、肯定しないまま、向きを変えて歩き出し、
「この向こうにあるのが、これからみぬしさまとなる御骨じゃ」
 一際高く折り重なった木の根を指して、言う。
 一番近くにいた連徳がそこへ登り、視線を下ろすと、そこには未だ蔦の這わぬ骨があった。
「此方は、少しばかり小さいでござるな」
「うむ。去年は少しばかり、小さかったようじゃの」
 連徳の言葉に答える村長は、更に方向を変える。
「今年の御骨は、今ごろ村で神輿になっておるかの。今年もあまり大きくは無いが‥‥綺麗なみぬしさまじゃ。きっと良い実をつけて下さる」
 語りを終えた村長が立ち止まり、ゆっくりと振り返る。
「そして、これがあんた方に運んでもらう御骨。役目を終えたみぬしさまじゃ」
 示された骨は、他に比べるとやや大きい。そして、そこに絡む蔦は完全に干からび、枯れていた。

「村長。一つ、いいですか?」
 最後の骨を荷車に積み込みながら、鴻が尋ねる。
「ふむ、何ですかな?」
「『実主さま』と『三主さま』村長はどちらだと?」
 村長は暫しの間、空に目を泳がせるが、
「ううむ、考えたこともなかったのう。慣わしを受け継いだだけの凡人には、想像も付かんですじゃ」
 と、笑う。
「ひょっとしたら、両方の意味かもしれないでござる」
 荒縄を荷車に回し、骨を固定する連徳。結び目を一つ一つ確認しながら、愉快そうに想像を膨らませている。
「若しくは、昔の言葉で全く別の意味‥‥かも」
 桔梗は、これから軽く一仕事する幾千代を気遣いながら、誰も気づかぬ笑みを浮かべた。

●開拓者の力
「ほーら、こっちこっち」
 子供達を煽るセリエは、内心で少し焦っていた。
「大丈夫、油断しなければ捕まらない。油断しなければ‥‥」
 呪文の様に呟きながら、村を駆ける。と、そこへ、
「とりゃっ!!」
 頭上から、子供達が飛びかかる。
「わ!?っと、危ない危ない」
 割と本気な、セリエの逃走劇。
 捕まえた子に靴を差し出す、と、公言したために、開拓者に憧れるやんちゃ坊主達の心に火が着いたのだ。
「西へ行ったぞー!」
「連携良いっ!?」
 屋根の上からセリエを探して指示を出す物見役も居れば、
「今だっ!!」
「そんなとこにもっ!?」
 縁の下から足を狙う、文字通りの伏兵が飛び出してきたり、
「ここまで来れば‥‥」
 上手く追跡を逃れ、家の影で休んでいると、
「居た!見つけた!!」
「まさかの窓から!?」
 と、いった具合。恐ろしいまでに地の利を活用してくる。
「靴無しであの道程を帰る訳には‥‥!」
 滝近くにある村の広場を早駆で通り過ぎながら、セリエは逃げる。割と、必死で。

「ん?今のは‥‥」
 チャールズが、駆けていくセリエに気付く。が、
「何してるんだー?」
 ルーティアの声に気を取り直し、丸太を運びを再開。
「よしよし‥‥ご苦労さん。皆、ちょっと離れていて下さいなー」
 そう言って、チャールズの背に乗せられた、一間ほどもある丸太に手を掛けるルーティア。
「離れてって‥‥お嬢ちゃん、いくらなんでもそれを一人では‥‥」
 言いかけた若者は、そこで目を瞠り、固まった。
「よい‥‥せっ!」
 鬼腕を用いたルーティアは、軽い掛け声と共に丸太を持ち上げた。更にそれを垂直に立て、抱きかかえるようにして歩き出す。
「ん‥‥ここか」
 柱を差し込む穴を視認し、周囲の安全を確認すると、そこへ丸太を真っ直ぐに落とし込む。
 ドスンッ!という音がして、丸太が自立。ややあって、広場で見ていた村民達から感嘆の声が上がった。
「開拓者ってのは、とんでもねぇなあ!」
「あんな細腕で‥‥まったく、大したもんだよ」
 少し気恥ずかしい思いで、賞賛を口にする人々に苦笑を返す。しかし、祭りの最中に櫓が倒壊されては、こちらとしても堪らない。
 ルーティアは直ぐ様、次の丸太に手を掛けた。

 どすん、と、重い音が、胸に響く。
「ルーティアさん、頑張ってますねー」
 私も手伝った方がいいかな?と思う智だったが、子供たちの前で口に出すのは気が引け、そこまでに留める。
「どうしたの?」
「ううん、何でもないですよー」
 鬼ごっこに参加しなかった、女の子達や大人しい気風の子供達。彼女達は、村では見られない風体の開拓者に興味津々だった。
「髪の毛が金色!キレイ!」
「めがねが、村長さんのと全然違うー」
「こんな大きな斧、持ち上がるんですか?」
 子供達は、智に話す暇を与えず、口々に素直な思いを告げる。
「ちょっと待って。順番、順番ね?」
 智は、一先ず落ち着かせようと静粛を求める。が、そこへ、
「サムライの姉ちゃん!言われた通りにやったけど、シノビの姉ちゃん捕まらないよー!」
 鬼ごっこ参加組のやんちゃ坊主が割り込んできた。
「‥‥うーん、地の利を活かしてもダメですか」
 とは言うものの、セリエが開拓者としての本気を出せば、それは当然だと考える智。
 だが、彼女はセリエの本気の理由を知らない。
「何か良い方法無い!?」
 不躾とも言える頼み。
「そうですねぇ、うーん‥‥」
 やんちゃ坊主の、やんちゃたる所以を見た智は、くすりと笑って、
「相手は一人、あなたたちは大勢だから‥‥交代しながら絶え間なく追跡して疲れさせる、という作戦はどうですか?」
 子供たちに更なる知恵を貸す。
 それでも、智はセリエが捕まるとは思っていない。
 それ故に、割と本気で作戦参謀を務めた。

●祭宴
 篝火の炭が爆ぜる音。やぐらから響く打楽器の音。滝が跳ねる絶え間ない水音。
 それらの中で、桔梗が舞う。
 舞を眺める者達は、只の一言も発さない。発する事が出来ない程に、桔梗の目が、所作が、音と動きの流れが語る。
 やがて、桔梗は止まり、御骨を向いて一拝する。舞の終わりを告げる礼だ。
「ありがとう。巫女さまの舞に、みぬしさまも喜んでおるじゃろうて」
 村長が沈黙を破る。
「さて、お待ちかねの宴じゃ。開拓者は勿論、村の者も、大いに楽しんでおくれ」

 舞の奉納を終え、幾千代の元へ戻った桔梗。そこに、数人の子供達が歩み寄って、
「これ、どうぞ」
 手拭いを差し出した。
「ありがとう」
 桔梗は手拭いを受け取り、汗を拭う。
「それで、あの‥‥もし良かったら、もふらさまを‥‥」
 年長らしい少女が控えめに申し出る。少女の後ろには、隠れるようにして幾千代を見つめる、小さな子供達。
「あ、えと‥‥だいじょぶ。怖くないから、おいで」
 桔梗が告げると、子供達は嬉しそうに、しかしおっかなびっくりで、幾千代に近づいていく。
「やさしくなでるもふよ」
 幾千代は軽く頭を振ながら、そう言った。

「これ、中々に美味いな。後で作り方でも教えて貰うか?」
 鴻は、隣に座る智に、提案する。対して智は、
「待ってください、こっちのもとっても美味し‥‥あ!セリエさんそれ待って!!」
 と、叫ぶ。その向かいで
「パクパクもぐ‥‥え?あ、ごめん‥‥もう食べちゃった」
 辛くも靴を守り抜いたセリエが、凄まじい食欲を発揮している。
「んん‥‥美味でござるー‥‥あ、今度の目は四五六の半でござるな」
 普通に食を楽しんでいるかの様に見える連徳は、
「おお!また当てた!」
「はっはっは!こりゃ敵わんなぁ」
 背後で賽子を振る大人たちに、人魂の能力を披露して余興とし、
「さーさー、今度は田楽だよー!欲しい人はおいでー!あ、これ美味いな!」
「ルーティア、俺にも一つくれ」
 チャールズに車を引かせ、自らも食べながら、皆に料理を配るルーティア。

 村人は開拓者の話を、開拓者は村の料理を肴に、宴は大いに盛り上がりを見せた。
 やがて夜は更けてゆき、明くる陽が昇るまで、村は賑わい続けた。

●復路
「麻雀の牌って、こういう材料からも出来るんだなぁ」
 振り返り、骨をしげしげと眺める鴻。
「麻雀かぁ、実家に居た頃はよくやったな。また打ちたくなってきたぞ」
 ルーティアは笑う。が、すぐにその表情が曇らせ、
「ただ、うちの両親とはもう打ちたくないな‥‥」
 と、どんよりとした溜息をつく。
「そうだな‥‥俺も奴らとは二度と打たねえ。あの二人は悪魔だ」
 釣られて、チャールズもぶるっと身を震わせ、ため息を吐いた。
「‥‥そうだ。智、帰ったら麻雀でもするか?」
「いいですねー。あ、ルーティアさんとチャールズさんもどうですか?」
「お、それは嬉しいお誘いだなぁ」
「まぁ、俺もルーティアも弱いけどな」

「もふもふ‥‥うまいもふ。でも、足りないもふ」
 荷車を引きながら、桔梗の手からおやつを頬張る幾千代。
「もう少しで終わり‥‥帰ったらご馳走、あげるから。頑張れ」
 桔梗は幾千代を励ましながら、優しく頭を撫でる。
「この分だと、昼飯時には着けそうでござるなぁ」
 朗らかな声を上げる連徳。
「こんな依頼ばかりなら、楽で良いのでござるが‥‥」
「確かに‥‥美味しくて、稼げて、その上中々に楽しい仕事だったなー。少しだけ危なかったけど」
 セリエは子供達の最後の猛追を思い出し、トトンッ、と、靴を鳴らした。