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■オープニング本文 「おっちゃん! これで米くれよ!」 にょき、と伸びた細い手の平に乗った銭を店先の男は一瞬で数え冷たく少年を追い払う。 「無理だね。それだけじゃ米は売れねーや。麦も買えないよ」 「そんなー、日銭でやっとこれだけ稼いだのに」 少年は店主の顔を見つめ、懇願するように上目づかいに言う。 「なー、頼むよ。今日はこれだけでさ。売ってくれない? 家におっ母と妹、弟がいるんだよ」 「あーだめだめ。俺はな、その手に話で物を売ってくれと言うやつが大っきらいなんだよ」 「‥‥なんだよ、それ。お、オレだって金さえあれば全額払うのによ!」 少年は泣きながら、市を歩く人々に逆らうようにして走りだした。 天儀――宙に舞う美しい世界だったが、人々からしてみれば宙に浮いているのは雲であり太陽であり、どこまでも続く鮮やかな青。 そこでは人々は常にアヤカシに脅え飢えに苦しみながら住む場所。それでも人々は歯を食いしばり生き、手に手を取り合い補いながら生きていた。 少年にも手に手を取り合い生きていきたい人がいた。けれど、少年は今は小さく寄り添うしかなく、助けたい人を助けることもできないで、歯を食いしばり焦る気持ちを押さえることができずにいた。 少年はどんっ! 前を見ずに走っていたため、何かにぶつかり跳ね飛ばされた。尻もちを付き、上を見上げる。 「おっとととと、すまないな少年」 自分からぶつかったのに――少しばつが悪かったが先ほどのやり取りのいらだちの方が大きく可愛げのない口をきく。 「おっさん、前を見て歩いてくれないと困るんだよ」 男は笠を目深にかぶっている。だが雰囲気から察するに怒ってはいないように思えた。 「これだから大人は――じゃ、オレ急いでいるか」 少年は走り抜けようとした。そのとき襟元をつかまれ猫のようにぶらされ、男の視線にまで持ちあげられた。 「少年、どうしたのだ? 怒っているようだが」 「おろせよ! 別にあんたに怒っているわけじゃないんだから!!」 「しかし、気になるではないか?」 「‥‥米が買えなかった。ただそれだけだ!」 「ふむ、それだけでそんなに怒るものなのだろうか? ‥‥ではこうしよう、ぶつかってしまった詫びに、米を買ってやる。子どもは笑顔が一番だからな」 「嫌だ! 施しなんてもう――まっぴらごめんだ」 「もう‥‥?」 笠を深々とかぶった男はつぶやき、考え込み始めていた。少年は下ろすように暴れるが男に体を抱え上げられ、荷物のように肩に担がれた。 「な、なにするんだよ! お、おろせ! オレは荷物じゃないんだぞ! さっきから!!」 「立派な心がけの主に仕事をやろうと思ってな。まあ、そう暴れるな」 暴れるなというほうが無理な話だ。怪しすぎるというものだ。だが、どれだけ暴れても男はびくともしない。逞しい腕が体をしっかりと支えていた。どこに連れて行かれるのだろうか、いつの間にか必死に母親と妹弟のこれからのことを神に祈った。 「おおお、ここだここだ。よし、少年ここで仕事をやろう」 下ろされ見上げるその入口。 そこは開拓者ギルド入口だった――。 |
■参加者一覧
橘 琉璃(ia0472)
25歳・男・巫
東海林 縁(ia0533)
16歳・女・サ
柚乃(ia0638)
17歳・女・巫
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
真田空也(ia0777)
18歳・男・泰
ロウザ(ia1065)
16歳・女・サ
雷華 愛弓(ia1901)
20歳・女・巫
吉田伊也(ia2045)
24歳・女・巫 |
■リプレイ本文 笠をかぶった男が、机越しに話しをしている。 「無茶をするよ。こっちとしては金が入るからいいんだけどよ」 「すまんなー、あはははっ」 豪快に笑いながら机の上に麻袋を置くと、一人の女性が勢いよく走り寄ってきた。 「待ったー! 少年を売り飛ばそうって魂胆ねー! そのお金を置いて‥‥あれれ? 受付の人がお金を貰ってる?」 現れた東海林 縁(ia0533)は笠の男に向かって指をさすが、その指がしおれていく。 笠の男ば黙ったままだったが、変わりにギルドの受付が慌てて説明をする。 「え、何、少年に仕事をね‥‥あははっ、なーんだ、そういうことだったら手伝うよ!」 右足右手を前にだし、縁はまわれ右をして少年がいる入口へとかけていく。 「くくくっ、威勢のいい嬢ちゃんだ。じゃ、俺は帰るわ」 「っておい。仕事受けていかないのかい!」 「そんな気分じゃないなー」 男は笠を深く落とし、窓から逃げるようにして出ていった。 「残りは七人、と。依頼を受ける人ー! 受付すませて入口に向かってくれ!」 後を追うように、六人の開拓者もまた席を立ち入口へと向かった。 屋根の上に影が一つ。 「なんだ あれ。ぐりぐり して やりたい!」 ロウザ(ia1065)は獲物を見つけたケモノさながら屋根から四肢を投げだした。 少年は途方に暮れていた。 男はギルドに入ったきり戻ってこない。信用しているわけではないが、もし万が一にも仕事がもらえるのならと期待してしまう。迷っているとそこに、黒い塊が空から降ってきた。 「な、何、いったい何!」 「ん? なまえ? ろうざ の なまえ きいてる?」 「ひ、人!?」 ロウザは鼻をひくつかせ、少年の匂いを嗅ぐ。微かに塩の匂いがする。ペロッと舐める。 「ないていた? どうして? ああ! わかった。おまえ まいご」 「ち、違うよ!」 逃げよう、舐められた頬を手の甲で拭いながら、ジリジリと入口から離れていくはずだったが、現れた開拓者七人につかまれ身動きが取れなくなってしまった。 暴れようとする少年に説明し、理解してもらった。時間がない、ということもありさっそく仕事の話に移る。 「仕事を頼むのですから、まずは君がどんなことを得意としているのか教えてください」 橘 琉璃(ia0472)は美しい顔に微笑を浮かべ尋ねる。 「‥‥‥」 少年の口から言葉が発せられない。 「自分で稼ぎたいのでしょう? でしたら、堂々と主張なさい。出来なければ誰からも頼られませんよ、厳しいですがそれが大人の社会です」 吉田伊也(ia2045)の言葉に少年は険しい表情になり、叫ぶ。 「オレ沢山あって困ってるだけだ!」 「これはこれは、威勢がいいことで」 「まったくその通りですね」 琉璃と伊也は少年の頭上で視線を交わし微笑みあった。 そして、集まった開拓者達は自分が頼みたいことを並べていった。 少年は市場周りの仕事から取りかかった。 猫を見たいという伊也、甘味処を知りたいという葛切 カズラ(ia0725)と雷華 愛弓(ia1901)と縁。情報を仕入れたいという柚乃(ia0638)、そして、鈴を欲しがっていた琉璃の買い物もこなす予定を立てた。 「最初っから飛ばすわよ!」 カズラは一軒目の甘味処を目指し張り切っている。 「この辺りには三軒の甘味処と二軒の天ぷら屋。あと、蕎麦屋と鮨屋が四軒ずつあるんだ」 「詳しいんですね」 驚きを隠せない愛弓。 「仕事探して、よくぶらついているからね‥‥」 「んじゃ、どの店が一番美味しいの?」 「え‥‥オレ、食べたことがないから分らないよ」 縁の問いに言葉を詰まらせる少年。 「じゃあ、味を知るということも必要ですね」 柚乃は少年に恥じる必要がない、という笑顔を向け案内を頼んだ。 少年が一軒目に案内したのは路地裏にあるオンボロ店だった。 「趣がある店ですね」 一声目は伊也のこの一言だった。 「駄目? 味は確かだって聞いたことがあるんだよね」 「問題ないよ! さー行こう!」 縁は先陣をきり店に入っていく。が、少年は伊也を連れて行きたい場所があるといい、皆が食べ終わる頃に戻ってくるという。 「あら、今後案内人をするかもしれないのに、味を知らないなんてお笑いぐさよ?」 カズラの言葉に言葉を詰まらせ、品が来る前に戻ってくる約束をする。 甘味処のさらに奥へと進んでいく伊也と愛弓と少年。 奥へと進むとそこにはゴミ山が広がっていた。そこには猫だけではなく、犬も、鳥も集まってきている。 「なるほど。餌があるから集まってくるんですね」 「伊也さん、嬉しそうです」 愛弓も楽しみにしていたが、それ以上に伊也は楽しそうにしている。 「ここの動物は人に馴れているのですか?」 三人が近寄っても、逃げる気配がない。 「オレ‥‥分からないや。いつも、こうなんだ」 「あなたはもう少し、自分の頭で考えることをするべきですよ?」 「え?」 「先ほども、分らないと言っていましたけど、私達はあなたにお金を払って案内を請うているんです。それを、わからないで終わらせるのはいかがなものでしょうね」 伊也が言いたいことはもっともだ。少年は少年なりに、今日の仕事をこなせる自信はあったが今のままでは仕事をしているとは言えない。 「くすくす、見てください、伊也さんっ!」 二人の思い空気を壊すべく、愛弓は少年の頭に猫を一匹乗せてみる。 「!!」 「ふふ、伊也さんの顔が驚きの顔になりました〜」 大成功とでもいうように、笑顔を浮かべる愛弓。驚かされた方といえば、もう普通の顔になっている。 「そろそろ戻らないと皆さん待っているのではありませんか?」 少年の頭から猫をもらい、抱きしめる伊也は今後の自分の予定も伝える。 「私はもう少しここにいます。甘味にはあまり興味ありませんから、ギルドの方に戻るとします」 「そうですか‥‥残念です」 愛弓と少年は歩きだした。伊也は少年の背中に言葉を投げかける。 「ここの猫のボスはどれか分かりますか?」 「‥‥今ここにはいないけど、知ってるよ」 「では、仲の悪い猫はいます?」 「もちろんだよ。後から教えてあげますよ」 少年は振り返り、伊也に伝えた。 「上出来です」 そして、また少年は何かを拾った。 「伊也さんに褒めてもらえてよかったですね」 「別に‥‥」 そっけない言い方をする少年に、愛弓は微笑んだまま手を差し出す。 「そういえば自己紹介まだでしたね。私は雷華 愛弓、あなたは?」 「‥‥」 「どうしたんです?」 「少年‥‥それが名前」 「‥‥少年さん! 笑ってください! 営業には笑顔が必須です!」 愛弓は少年の、名前を言いたくない空気を汲みとり、一段と高くした声で笑いかけた。少年は目を逸らし、何かを拾う。 店に戻ると、三人は待っていてくれた。 カズラは一枚絵のように、美しく煙管を吸い、柚乃はきちんと待ち、縁は匙を片手にすぐにでも食べ始められる格好で待っていた。 「すみません」 伊也が猫と一緒に遊び、そのままギルドに戻ることを告げ二人は席に着く。 「美味しそうですね、少年さん」 「いちいち、オレに話しかけないでいいよ」 「‥‥友達になりたいって思ったらダメでしょうか?」 愛弓は自分の望みを口にする。だが、少年は聞こえないふりをした。 「ほら、しっかり領収書を持っておきなさい〜」 「え?」 「このお金は依頼人に払ってもらうのよ。ほほほほっ」 「い、いいんでしょうか?」 カズラの言葉に遠慮がちに確かめる柚乃。 「いいよー! これもお仕事のうちの一つ!!」 元気よく相槌をうつ縁のいい方に、賛同する愛弓。 一行は次なる店を求め店を出たが、柚乃が歩みを止めた。 「私はこの辺りで少し別行動させていただきますね」 「まだこれから行くのに」 「いえ、私はもう十分堪能させていただきましたから」 柚乃は一人になると、街の人々に何か仕事がないか聞きまわった。ギルドで雇ってもらえなかったことを考えての策だったが、どの店も足りているということと、子供ということで渋る。 「どうしても、ダメなんでしょうか?」 「無理だね。子供なんてすぐに弱るし、重い荷物も運べない」 頭を下げ、礼を言いその場を去る。何度もこれを繰り返しても、結局少年が働く場所は見つけられなかった。 もう少し聞き込みをし、柚乃はギルドに戻ることにした。 特に落胆することもなく、こうなることは柚乃も分かっていた。 一行は三軒目の甘味にきていた。その頃になると、もう食べているのは縁ぐらいだ。一応カズラの前にも品はあったが、全くの手つかず。愛弓と少年にいたっては水だけが置かれていた。 そこに一人の男が入ってきた。 「おーい、少年。みんなお前の帰りを待っているぞー! ‥‥縁、頬についてる」 のれん越しに現れたのは、真田空也(ia0777)だった。 「へえ!? どこどこ‥‥えへへ、ありがとう!」 店の中に入ってきた空也は頬についた小豆をとり、自分の口へと運ぶ。 「おいおい、遊びに来たんじゃないんだぞ? しっかりしてくれよ――おっ、これうまいな!」 「そうでしょ、そうでしょう〜!」 二人の様子を眺めていた愛弓は頬を染め二人に聞く。 「あ、あの‥‥お二人の関係は‥‥あ、いえ! べ、別にいいんですけどね、少年さん」 「だから、オレに一々振らなくていいって‥‥」 友達になることを諦めていない愛弓は何かと話題を少年に振った。 「それで、何しにきたの?」 口に運ぶ方が忙しい縁はそれでも、一応空也の用事を聞く。 「ああ、そうそう。少年の仕事があるから呼びにきたんだ。武具の手入れしてもらわねーとな」 少年の頭を大きな手が覆う。 「あ、ならあたしのショートソードも〜ポイッと」 縁も便乗し自分の武器を少年に投げる。 「お、おい! いくらなんでも投げるのは危ないだろうが!」 「そこはお愛嬌で!」 三人も一緒に店を出るのかと思えば、この場に残り後から合流するらしい。 少年と空也は店を出て、ギルドへと向かった。その最中、何度も少年は拾う動作を欠かさなかった。 少年の手元には空也の武具と縁のショートソード。そして、錆びついた鈴があった。 「いいか、武具には侍の気持ちが込められているんだからな。傷つけるのはダメだ。あと――」 「それで、自分の鈴はどうして錆だらけなのですか?」 琉璃は苦笑しながら、空也の話から少年をそらさせた。 「武具を磨くって聞いたときに、錆びついた鈴を磨いた方がお金‥‥かからないから」 「なるほど。お客様想いというやつですね」 ここで、空也は説明が終わったのだろう。ふところから自分が使っている、道具を取り出した。 少年は最初、武具が傷つくことを怖がり力を込めることができなかった。それを見て感じた空也は言う。 「今の仕事の出来で次の仕事が決まる! 自分で銭を稼ぎたいなら、油断をするな! 容赦もするな! 全力でやれ!」 「はい」 少年はそのまま夢中に、細かく丁寧に作業を進めていく。そんな横顔を見つめながら空也は聞いてみたかった言葉を口にする。 「なあ‥‥施しって何が――」 「よくあることだよ」 少年はそれだけいうと、作業を続けた。 背後で、ジャラ、ジャラという音がする。 少年が拾って集めた石を仕訳しているロウザが気にいる石と、気に入らない石を仕訳していた。 「これ‥‥だめ これ おしい! これ まあまあ これ よい!」 一個一個に評価を与えながら、自分が気に入る石を選んでいく。 少年はそんな音も気にならないほど没頭し、磨き続けた。 「はい、これ頼まれていた鈴とお釣り」 「ありがとうございました」 琉璃は磨かれた鈴を受け取り微笑み、少年に礼を述べた。 戻ってきた一同の話を琉璃は聞き、ギルドの受付係へとその話を通した。 まだまだ案内役としても要領も追いつかない状態ではあるものの、彼はきっと役にたつことを強調し少年の仕事をもぎ取った。 「と、いうわけで君はこれからギルドで働きなさい」 「‥‥うん、ありがと」 「それで、これが報酬。あのおっさん、からだよ」 空也は少年の両手に麻袋を置いた。 「綺麗に磨いてくれて、ありがとう!」 縁はショートソードの出来栄えに見惚れているようだった。 「これは君へと褒賞です」 「‥‥え、でも。オレの給料はあのおっちゃんがくれて」 伊也が差し出す衣類はどこもほつれた後もなく、少しだけ猫の毛がついている気もしたが綺麗なものだった。 「いいんですよ、それにもし、商売が上手くいかなかったら質に入れてギルドに依頼をしないさい。また、助けてあげますから――私はあなたが気に入ったんですよ」 少年はそれを施しだと言い、突っぱねることもできたが胸に収めた。 そこに遠慮がちにだが、はっきりとした口調で柚乃が伝える。 「私、街で色々聞いたんです。もしギルドで仕事がなかった場合のことを考えて」 顔が物語っている。 「ない、そうです。だから、この仕事を大切にしてくださいね」 「‥‥うん」 「ほら、仕事をするには笑顔が大事ですよ!」 柚乃の言葉に落ち込む少年に、愛弓は励ましの言葉をいう。 「そうだね。ありがとう、二人とも」 外は陽が沈んでいた。開拓者達はまだまだ、少年に教えたいことがあったが、もう見送らなくてはいけない。 「オレ、まだまだ今日の仕事終えられてないんだ。だから少し一人で情報を集めてくる」 少年はここにきて初めて、開拓者達の目を見て自分の意見を言った。 「これからって、今からはちと危ないんじゃないのか?」 空也がもっともなことをいう。 「‥‥だけど」 「自分の力以上のことを望めば、痛い目にあいますよ?」 伊也も少年が真っすぐ帰るように促す。 「わかった。調べた情報は、ギルドに預けておく。猫の情報と食事処の情報。街のこと調べておくよ――今日のお給料に見合うだけのね」 少年は一礼し、開拓者ギルドをあとにした。 「ほら、領収書」 「は?」 居なくなるとカズラが伊也に近づき、右手を差し出す。 「あの子の服のお金はきっちり、経費として落とすのよ。じゃないと、私たちが食べた甘味分が貰いにくくなるでしょう?」 自分は気にしない――そう言いかけた伊也だったが、カズラは絶対に譲らないと感じたため素直に領収書を渡した。 数日後――。 少年の元を訪れたロウザがいた。 「どうしたの、こんなところに」 こんなところ、それは少年が世話になっている家の入口だ。 「におい わかる」 ロウザは褒めろ、とでもいうように胸を張る。が、すぐに自分の目的を思い出したのだろう。ふところから一つの首飾りを取り出し少年の首にかけてやる。 「これ やる」 「これ‥‥オレが集めた石だ」 「うん! がんばてる だから やる」 少年は握りしめる。 握りしめ、ロウザの顔を見て笑った――そして、言う。 「ありがとう――」 ここで、始めて少年は後悔した。彼らにも同じように笑いたかった――また会える日があれば、と願うばかりだ。 |