【魔法】あだるとたっちで?
マスター名:鳥間あかよし
シナリオ形態: イベント
相棒
難易度: 易しい
参加人数: 25人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/10/30 19:43



■オープニング本文

※このシナリオはIF世界を舞台としたマジカルハロウィンナイトシナリオです。
 WTRPGの世界観には一切関係ありませんのでご注意ください。

●ぴぴるまぴぴるま

 バニーガール。
 バニーガール。
 バニーガールッ!

 いいと思いませんか。異論は認めない。
 スーツとおっぱいの間にちょっと隙間ができるのがね、そこが大事なんですよ。段差。わかってますか。ここテストに出ますからね。
 バニースーツを着るとね、その子の魅力が当社比3倍増しなわけですよ。割りじゃないですよ、そんなチャチなもんじゃござんせん。乗算です。ぺったん子もむっちりバインも手広くカバーする最強装備ですよ。
 たとえばここに儀弐お(回線が切断されました)。

 なんと不届きなと冷や汗をかきながら。
 とうとうと持論を述べるジャック=オ=ランタンを前にあなたは固まっていた。
 なんで布団の上で正座して下世話な妄想を聞かされにゃならんのだ。

「どうもおわかりいただけないようですね。なんと嘆かわしいことでしょうか。仏陀も閻魔も悲嘆にくれております。あなたこのままじゃ極楽でも地獄でもつまはじきですよ。それはお困りでござんしょう?
 物はためしと申します。探すのをやめた時見つかることもよくある話ですが、まずは探さなきゃナイナイの神様だって出番がござんせん。何事も経験。若いうちの苦労は買ってでもしろと言うじゃございませんか。言ってるのはたいてい売る側と相場が決まっておりますがね。いやいや世の中うまくできてるもんでございます」

 なんなんですか、あなた。
 飯も食って風呂も入って戸棚もしめてこんこんこんなんのおとー? おばけのおとー、きゃー、はしてないですけども、あとは寝るだけって時にとつぜん枕元に現れて。

「ではちょいとこれから格式ある、あるんですよ、バニーは由緒正しい紳士の社交場を彩る華なのです。うぃきぺであの参考画像こわいですけど騙されちゃいけませんよ。
 ともかく高級クラブでワインとチーズとバニーさんを御体験いただきましょうかね。ジャズバンドの生演奏もございますよ。バーテンダーは小柄な女旅泰らしいですけど、たいした関係はありませんな。
 おもちかえりは厳禁です。美しい花をしおれさせる真似は紳士として恥ずべき行為ですのでね。
 ではでは、夢で会いましょう」

 ジャックは手にしたランタンを振る。強烈な眠気があなたを襲った。

 ちょっとまって当方(以下分岐)

>男なんですがっ!

>たしかに女ですけどっ!

>相棒ですーぅ!


■参加者一覧
/ 羅喉丸(ia0347) / 柚乃(ia0638) / 礼野 真夢紀(ia1144) / エルディン・バウアー(ib0066) / ルンルン・パムポップン(ib0234) / 十野間 月与(ib0343) / 綺咲・桜狐(ib3118) / プレシア・ベルティーニ(ib3541) / フランヴェル・ギーベリ(ib5897) / 神座真紀(ib6579) / アムルタート(ib6632) / サフィリーン(ib6756) / 玖雀(ib6816) / ラグナ・グラウシード(ib8459) / 乾 炉火(ib9579) / 戸隠 菫(ib9794) / 音野寄 朔(ib9892) / 麗空(ic0129) / 紅 竜姫(ic0261) / 紫ノ眼 恋(ic0281) / 徒紫野 獅琅(ic0392) / ジャミール・ライル(ic0451) / 緋呂彦(ic0469) / イグニート(ic0539) / 零式−黒耀 (ic1206


■リプレイ本文

 
『神、おっぱいを創造したまわねば、我、画家を志さざらん』
 ――ピエール=オーギュスト=ルノワール


 分厚いカーテンを踏み重厚な扉を抜けると、華やかなホールに出る。
 左右にずらりと並んだバニーが、一斉に玖雀(ib6816)に会釈をした。
「なんだここは!」
「紳士の社交場よ。今夜は楽しんでいってね」
 異様な空間に絶叫した玖雀に、セレストブルーに銀の縁取りのチャイナバニー、司空 亜祈(iz0234)が微笑みかける。白虎、改め、白ウサギ耳尻尾。おっとりした外見に似合わず、デコルテに開いた窓からのぞくご立派な谷間が魅惑的。隣で水色スーツの鶴瓶バニユリも、何度もうなずく。
 突然照明が落ち、二階席をスポットライトが照らす。手すりに片足をかけ不敵に微笑むのはピコピコサンダル、スクゥゥゥル水着ィ、うさみみライクな水中メガネ。
「コクリ・コクル(iz0150)参上! とうっ☆」
 列の手前、白スーツの銭亀バニ子の隣に、しゅたっと降り立つ。
 明るくなったホールに固いヒールの音が響いた。緋色のカーテンを背に、黒絹に椿を染め抜いた和ニーが立つ。腰のネームプレートいわく、バニねさん。列の中ほどに居た羅喉丸(ia0347)は目をむいた。
(「アイエ、アイエ、儀弐王ナンデ……売上の為にそっくりさんを用意したのか? いやしかし、あの接客業の極北に位置するジト目は」)
 義憤を覚え、彼は拳を握る。
「姑息な店長だな。Aさんの威を借る狐め。Aさんなる単語の意味など俺にはさっぱりわからないが」
「聞き捨てならないわ」
 顔を向けた先、向かいの列でモデル立ちしていたのは音野寄 朔(ib9892)。黒スーツに網タイツとハイヒール、備えは万全。しかし神器たる兎耳カチューシャとうさしっぽアクセを忍犬の和に任せ、このバニーの殿堂でなお狐耳しっぽを貫いている。あえて言おう、猛者であると。おかげで和は耳が四つだ。
「Aさんなる単語が何であるか私もまるっきり理解してないけれど、店長と同列に語るのは狐への侮辱よ。謝って、早く謝って」
「すまない。狐には悪いことをした」
 だが朔は顔をしかめたままだ。
(「なんて面妖な……」)
 山吹の地に昇り龍が刺繍されたバニースーツに身を固める羅喉丸。隣で相棒の上級人妖があたふたしている。
「蓮華、どうしたんだ。サイズが合わないのか」
「羅喉丸、疲れておるんじゃろう、いや、疲れておるに違いない。あんなに依頼を受けるから(原文ママ)。とにかく休め」
「バニーを着て、バニーに接客されながら、蓮華と一緒にチーズを肴にワインを楽しむ。任務は完遂だ、問題ない」
「最初の六文字のせいで大惨事じゃ!」
 涙目の蓮華は緑スーツにへちょ兎耳。体型のわりにぷっくりした胸元には師匠の威厳が三枚仕込んである。三枚仕込んでこれかよと言ってはいけない。
「話が進まないわ」
 Dカップをぶるんと揺らして谷間から扇子を引き抜き、固まったままの玖雀へ朔は艶やかに微笑む。それを合図にバニー達がにこやかに声をはりあげた。ジト目の和ニー以外は。
「いらっしゃいませー!」
「いらっしゃいませ」
「バニメイトへようこそー!」
「バニメイトへようこそ」
 仕事は終わったとばかりにスタスタ去っていく和ニー。
 魂抜けかけの玖雀の手を取り、朔が席までエスコート。
「どうぞこちらへ。お触りはいけませんわ、代わりにワインはいかが」
 先回りしてテーブルに前脚をかけていた和の頭を扇子でつつく。
「和? チーズのつまみ食いは駄目よ、そこの兎のおねーさん方に遊んでもらいなさいな」
 とてとてと進んだ先のソファには、麗空(ic0129)。念のため記しておこうか、男の子だ。
「うさぎ〜。……うさぎ〜……わんこ〜? ……へんなの〜」
 客としてソファにちんまり座っていた彼は視線をあげ、ぶんぶん手を振った。
「おー、くじゃくー!」
 ぎょっとしたのはウサギリンゴを作っていた紅 竜姫(ic0261)。麗空を横抱きに、玖雀の席へ移った。リンゴをしゃくしゃく食べている麗空の横で玖雀に寄り添い、耳打ちする。
「なんで玖雀がここに居るのよ。でもよかった、あの南京じゃなくて。何処なのここ」
「わから、ん……」
 語尾が細ったのは竜姫が赤と黒で決めたバニーだったから。黒兎耳に赤ハイヒール。真紅のエナメルレオタード、艶光る燕尾服。網タイツはもちろん後ろシームの黒。手首と首にファーを飾っているせいで露出は低い、そのぶん。
(「段差……!」)
 視線に気づいた竜姫が一瞬少女のようにとまどい、きつい目になった。
「や、待て、不可抗力だ! 仕方ねぇっつーか、見てしまうんだ、男のサガだ!」
「言い訳にもなってない!」
 ろんじのずつき こうかはばつぐんだ!
 はずみでウサミミカチューシャが床に落ちる。吹っ飛んだ玖雀は力強い腕に抱きとめられた。
「どなたかは知らないがありがた、え゛、お、おまっ、何、やって……!!」
「礼には及ばないぜ玖雀の兄ちゃん!」
 白い歯を光らせる緋呂彦(ic0469)。黒いウサミミ、生足、ハイセンスなアクセサリに引き締まった尻と股間に食い込むハイレグ。酸欠金魚状態の玖雀を片腕で姫抱っこしたままサムズアップ。
「竜姫の姉ちゃんはまあ、かわいい兎になっちまって……俺とは大違いだなあ! いや、胸は負けてねえかな?」
「……」
「ろんじー、しんけんにくらべなくていいとおもう〜」
「べ、べつに女のプライド賭けてないから、本当だから」
「はっはっは! ようし! 顔見知りなことだし、こいつは俺からのサービスだ!」
 卓上に天儀酒を酒瓶ごとドーンと置いて高笑い。ソファに向けて玖雀を放り投げた。竜姫の胸へ、もろに顔を突っ込む。
「……っ!? この変態!」
 骨法起承拳から空波掌のエリアルはいりました。どうですか解説のバニ子さん。浮かせから空波へのつなぎが躊躇なかったねェ実況のバニユリさん。
 うつろな目で宙を舞った玖雀が司空亜祈の胸に落ちる。
「きゃあっ!」
(「ん?」)
 違和感。竜姫の時は感じなかった、なんだこれは。
 ついうっかり疑問に手をかけた玖雀は、結果、段差をわしづかんだ。亜祈と目が合う。みるみるうちに白虎、違った、兎耳まで赤くなっていく。
「い、入れてない! 一枚しか入れてないもんっ!」
「ごふぁ!」
 黄泉より這い出たバニーにまたも空中高く突き飛ばされる。
「くすん。だ、だって看板バニーだから、私、いつもよりがんばらないとって思って、ふええ」
「いいんだよ」
 後ろから優しく肩を叩かれる。振り返ると十野間 月与(ib0343)が慈母の如きまなざしを向けていた。
「女の子が着飾って何が悪いの。それは上げ底でも偽乳でもない、努力よ。デコレーションの下の素肌は大事な人だけが知ってればいいんだから」
 たっぷりした谷間から花を取り出し、亜祈の髪に飾る。
 白ウサミミにもこもこ縁取りハーフコート、セクシーな赤セパレート。バニーの上からサンタ属性を乗っける離れ業を着こなしつつも、結婚指輪が光る。からくり睡蓮のオーソドックスなバニー姿が主人の衣装を引き立てていた。
 亜祈の瞳に涙があふれる。
「私、これから毎日牛乳飲むわ」
「寝る前のストレッチとバストアップ体操も忘れちゃダメよ」
「はい師匠!」
 後ろで玖雀がぽてりと落ちた。竜姫のウサミミを拾った麗空がのぞきこむ。
「くじゃく〜、いたいた」
 ウサミミをかぶせる。
「くじゃく〜、うさぎ〜」
 指差してケラケラ笑い、満足したのか麗空は席に戻った。竜姫の膝に座り段差に頭を預けてウサギリンゴもしゃもしゃ。
「子どもは気楽でいいよな……」
 最後の気力を根こそぎ奪われ、玖雀は今度こそ力尽きた。


「月与さーん。こっち来てー!」
 カウンターの向こう、小柄な女旅泰の隣から礼野 真夢紀(ia1144)が手を振る。近寄った月与に割烹着を押し付けた。
「お願い、軽食作り手伝って。チーズをワンタンの皮に包んで揚げるだけなんだけど、そこの旅泰さんができた端から食べちゃうから月与さんが頼りなの。しらさぎの姿も見当たらないし」
「はいはい、って、あらら」
 割烹着を脱いだ真夢紀はツインのお団子テール、ぱんつ見えないのがふしぎなミニスカセーラー服、赤い膝丈ヒールブーツ。
「まゆちゃん、うさぎはうさぎでもうさぎ違いじゃない?」
「言わないで、それ、まゆも思ってるの!」
 スカートの前後を必死で押さえつけながら真夢紀は叫んだ。
「しらさぎ何処!?」
「マユキ、いた」
 振り返ると浅葱の和ニーに付き沿われたからくりが立っていた。
「クジャクのとこにいたけど、このヒトにツレテきてもらったの」
「戸隠 菫(ib9794)だよ、しらさぎちゃんて言うんだ。よろしくね」
 ウインクする菫のバニースーツはシックな若草色のショート丈着物を羽織っている。二の腕を無防備にさらすゆったりした着物との間の、段差。思わず自分の胸に手をあてる真夢紀に、羽妖精の乗鞍 葵が近寄る。
「頼んでたの、できたかな?」
 髪と目の色にあわせた碧のバニースーツ。和ニーな主人とは逆にクラシックな衣装で飛び回る。黒い網タイツに包まれたふとももがまぶしい。段差は言うに及ばず。
 真夢紀はつかつかとカウンターの向こうに戻り、割烹着を羽織って仕上げた揚げチーズを菫に手渡す。
「い、胃袋を虜にするのも女の魅力だって月与さんが言ってた」
 包丁を握って猛然と調理をはじめた真夢紀に、しらさぎがぺったりひっついていた。
「受け取ったはいいけれど、どこに届けようかしら」
「あっちがいいんじゃないかな、菫」
 葵に言われて目をやると、ソファに腰かけたコクリ・コクルが足をぶらぶらさせている。
「コクリちゃん、揚げチーズ食べる?」
「食べる食べる!」
 大喜びのコクリを前に菫は思案顔。
「コクリちゃんは接客する側だから、ただ食べるだけじゃつまんないな。藍、ぽーいしてあげて」
「よし行くよ。お口でキャッチできるかな?」
「任せてっ」
 皿の上の物を取って投げると、コクリは器用に受け止めた。
「おいしい〜☆」
 幸せそうに頬張る。
 その様子を満面の笑みで眺めているのが、白い礼服で男装したフランヴェル・ギーベリ(ib5897)。バニ子とバニユリを両手に抱いてご満悦。
「ほみ、、ちっぷ〜? じゃあ、ボクにも食べさせてくれると嬉しいな〜♪ ボクお腹減ったの〜」
 腹の虫を鳴らしながら寄ってきたのはプレシア・ベルティーニ(ib3541)。艶光る黒のバニー姿、左のふとももに巻いた飾りガーダーが光を受けてきらめく。ふっさりした狐尻尾の根元には、ウサギ尻尾が鎮座していた。そっくりな見た目の人妖、フレイヤがあわててカフスをひっぱる。
「こら!お客様のものをもらっちゃだめでしょ! って、あああ、嬉しそうにもらって……って、お客様が喜んでいるから……いいのかしら?」
 葵と菫が交互に投げるチーズをコクリと一緒にひょいぱく、ひょいぱく。夢中になってぶつかったりしてるがご愛嬌。弾みでプレシアの段差が揺れる。コクリは揺れない。
「水着だからねっ。体を締め付けるんだよ!」
「ふにゃ、そういうものなのー?」
「そういうものなのっ」
 新しい皿が運ばれ、またひとつ投げられたチーズにプレシアがかぶりつく。
「ぴみゃあ! 熱、熱いー!」
 飛び上がって口元を押さえる。出来たてだったらしい。
「火傷しちゃったよ〜。ふにゃ! 玖雀さん発見! お水ちょーだい♪」
 この後、特に理由のないラッキースケベが玖雀を襲い、三たび宙を舞う羽目になるがそれはまた別の話だ。
 フランヴェルは卓上のチー鱈を手に取ると笑顔でコクリを呼び寄せた。バニユリとバニ子にもつまみを渡す。
「ところでバニーは胸の谷間に煙草の火種を挟むって事、知ってるかい? ボクは吸わないから代りにチーズを挟んで欲しい♪」
「ボクたち、谷間少ないよ?」
 ない、とは言わないコクリであった。フランヴェルは前髪をかきあげる。
「そこがいいんだよ! ……じゃなくて、ならバニースーツと胸の間に挟むといい♪」
 三人が言われたとおりにした途端、フランヴェルは鷹のように目を光らせた。
「ではチーズを頂く!」
 疾風が駆け抜けた後、バニーの胸からつまみが消えていた。
「す、すごい。肌に触れずチー鱈だけを」
「さすが開拓者さんだねェ」
 バニユリとバニ子がごくりと唾を飲み込む。
 黒鳥役バレエダンサー顔負けの連続回転を続けながら、フランヴェルはチーズに残った肌のぬくもりをさらに味わうため上を向いた。次の瞬間ぱったり倒れる。
「いけない、喉を詰まらせてるよ。バニ子ちゃん、そこのワインをっ」
 あわてて介抱するコクリに言われ、バニ子は瓶を手に取った。首をかしげる。
「これなら挟まるんじゃないかねェ」
 言うなりスーツの胸元に瓶を押し込む。
「八っちゃん、ダメダメ。見えてるよ」
「何が」
「見えちゃいけないものが!」
 ぐいぐい。ぎゅーぎゅー。必死で取り上げようとするバニユリに、よくわからないがとりあえず抵抗しているバニ子。床にはフランヴェルの鼻血があふれ、ダイイングメッセージが残されていた。
『トレビアン、ああトレビアン、トレビアン』


 綺咲・桜狐(ib3118)と相棒の烈火は逃げ惑っていた。烈火は管狐なんだが主人の2Pカラーみたいな見た目になっている。自前の狐耳と尻尾をうさみみしっぽに上書きされた二人は段差が寂しい。
「ん、バニーはいいですけど……サイズが。烈火、あいつまだ追って来る!」
「桜狐、逃げるのじゃ。我までこのような格好をさせられては応戦できぬ!」
 下品な高笑いが響く。
「ガハハハハ! 右を見ても左を見ても、ちちしりふとももおっぱいおっぱい! なんだ、俺様専用のハーレムか!」
 ビキニパンツ一丁の、高度に政治的な配慮で言う所の、男の魅力全開で迫ってくるのはイグニート(ic0539)。股間のスゴイタカイ・ビルが罪なきバニーを狙っている。
 桜狐と烈火は胸元をかばいながら悪鬼の手から逃げまわる。ソファの影を通りすぎたとき、角にすれてスーツがずり下がった。
「ひゃん!」
 バランスを崩して転ぶ。とっさにかばった烈火を下敷きに。
「やあっ、ごめん烈火。すぐどくからね」
「ダメじゃ、動いてはいかん。スーツが」
「えぇっ? 一体どうなって、きゃぁ、見えてるっ!」
「ぐふふ、俺様にふさわしい兎丼。さて、どこから揉んでくれよう」
「ひゃああお客さん、お触りは禁止ですっ!」
「やめよ、触れるなら我にするがよい! 桜狐はダメじゃ、触るでないわ! 触ったら高いのじゃぞ!」
 イグニートの魔の手がウサしっぽごと丸いお尻をつかもうとした、その時、剛剣のごとき殺気が宙を薙ぎ考えるより前に飛びすさる。甲高い音と共に暗器が床へ突き刺さった。
 桜狐と烈火を背にかばい、イグニートの前に零式−黒耀 (ic1206)が立っていた。
「ほう、黒髪ショトカにジト目だと? 貴様、わかっているではないか。これでバニねのように胸があれば言う事はなかったが安心しろ、俺はぺたんもつるんもないんも受け入れる度量の広い男だ」
「そのバニねさんさんから伝言です。『勝負』、以上になります」
 言うなり手にした細く短い何かで剣舞を始め、イグニートを壁際へ追いつめる。素足がたたらを踏む音と複雑なステップが不協和音を奏でた。鋭い体捌きで、黒耀は手にしたそれを喉元に突きつける。
「ご安心ください。ショーでございます。本番はこれから」
 剣舞の獲物は刃ではなかった。炭水化物に加熱処理を施し糖分混入させた油脂を塗布して乾燥させた物体。
「ポツキーだと? フッ、くくく、はーはっはっは! いいだろう受けて立ってやる。ぐふふ、その澄ました顔がいつまで続くかな?」
 まったくの無表情のまま黒耀はイグニートに寄り添い吐息がかかるほど顔を近づけた。差し出したポツキーの端が唇をなぞる。それをくわえ、目を閉じたイグニートは期待に胸を踊らせながら音を立てて咀嚼した。
 んちゅ。
 しっとりと濡れた感触にイグニートは相手の頭をわしづかみ、思いっきり唇を吸い薄目を開ける。ぼやけた視界に映ったのは、きらめく金髪。
「誰だキサマはー!」
「エルディーナとお呼びください!」
 全力で突き飛ばした相手は金髪よりさらに輝く笑顔。
 広い肩、鍛えあげられた肉体、彫刻のように見事な腹筋、鎖骨がどーたら尻エクボがうんたら腰骨の、へそ下の、くるぶしのでっぱりが、語りたいところだが紙幅が足りないので三千字ほど割愛しよう、エルディン・バウアー(ib0066)、その人である。

 一方その頃、舞台袖。
「バニねさんさん、任務完了です。次のご命令を」
 和ニーは手元のプラカードを掲げた。何か書いてある。
『ごゆっくりどうぞ』
「了解しました。ゆっくり体勢に移行します」

「おお神よ、おもてなしのプロの衣装に恥じぬ接客をしてごらんにいれます、見守りたまえ。改めまして、ご紹介しましょう、本日あなた様の接待を務めさせていただきます栄えあるバニー達です!」
 彼がキラッ☆のポーズを取ると同時に物影から三つの影が飛び出す。
「たなびくはスネ毛の調べ、ピュアイヌイ!」
「はじけるワキガの香り、ピュアヤッサン!」
「光の使者ピュアライル! ええっ、俺何言っちゃってんの!?」
「我ら、オッサン・バニー・ユニット! 聖なるバニーを汚す者よ、素直におうちに帰らんかい!」
 爆発エフェクトを背景に、てんでばらばらなポーズを決めるOBU。
「シリーズを統一しろ、堪忍袋の尾も切れるわ!」
 腹の底から異議を唱えるイグニートの後ろで、ルンルン・パムポップン(ib0234)と紫ノ眼 恋(ic0281)はすなおに拍手している。
 ピュアヤッサンこと羽妖精のヤッサン・M・ナカムラは愛らしい乙女(パートナー全身図・4000円※クリエーターにより変動します)と見せかけて、その実体はモンド・N似の53才のおっさん。頬にべっとりと貼りつき、誘惑の唇で吸いつく。
「ご指名ありがとう、今日はハッチョウボリーの旦那と言われたわしの話術、とくと味合わせてやろう……1番テーブル、お饅頭入るぞ!」
「緋呂彦もヤッサンも似合ってるぜ。よぅ綺麗な兄ちゃん、一緒に酒飲まねぇか?」
 満足げにうなずいたOBU発起人ピュアイヌイこと乾 炉火(ib9579)が、すすっと後ろから近寄りイグニートの尻を撫でる。夜春を使った仕草は無駄に官能的だ。今、常春に空目したんでそろそろ寝ようと思います。
 さて、限りなくマッパに近いブルーなイグニートは青ざめた。いかに相手の効果時間中、色仕掛けやその他相手からの好意の程度が問われる各種判定において、効果値を加えて判定しても彼はドストレートな野生児である。生存本能に忠実に逃走を開始した。
「逃げたぞ追え!」
 炉火の号令にピュアライルことジャミール・ライル(ic0451)をのぞくOBUの面々が一斉に襲いかかる。
「待つでふ〜、神父さまとポツキーぽりぽりするでふ〜。なんでこんなうらやましい事するのに逃げるでふか〜」
 律儀にビキニバニーの衣装を着た結果、プードルみたいになったすごもふパウロが短い足でてちてち追う。その脇を訴訟も辞さない高温お湯割りを手にエルディンがイイ笑顔で走っていく。
「わしもまだまだ若いもんには負けんぞ!」
 弾丸のように飛んでいったヤッサンがイグニートの後頭部に命中。標的は机と共にひっくり返った。
「どう考えても差し引きマイナスだろうがー!」
 哀れな叫びを背中で聞き、ジャミールはカタカタ震えながら膝に乗せた恋をだっこしていた。
「ご指名があるようだが、いかなくていいのか」
「ううん、見えない。なんにも見えない。俺、恋ちゃんしか見えない。バニーかわいいよバニー」
「あたしは誇り高い狼であって兎ではないのだがな。ふむ、だがあの脚力を活かした戦術なれば考する価値はある、か……?」
 細いながらも均整のとれた肢体に黒のバニースーツと後ろシームのストッキング。この角度ならスーツの隙間となだらかなバストラインの織り成す絶妙な段差がのぞく。ああ眼福だ眼福だ。脳裏に焼きついた男バニーの姿を上書きしようとジャミールは恋の胸元を凝視する。
 動じない恋はジャミールの頭に手を伸ばし、ずれたウサミミをなおしてやる。
「やはりこういうのは君の方が似合うかもしれんな……」
「そう、ありがと」
 恋の相棒からくり、白銀丸と目が合う。からくりなりにげっそりした彼と無言で会話する。
(「だからってどうして俺達が着るの……?」)


 場内のライトが落とされ、緋色のカーテンが二重三重のスポットライトで照らされる。
「レッディースアーンバニーィィィズ! 今宵のショーへようこそ。ごゆっくりお楽しみ下さい☆」
 コクリの声にあわせてドラムロールが鳴り響き、真っ暗になったあと、照らし出されたのは。
「「ひゃっほーい♪盛り上がっていくよー!」」
 アムルタート(ib6632)と羽妖精のサイ。
 利き手に樹理穴扇子、体をくねらせ、生演奏にあわせて複雑なステップをこなしつつ形のよいヒップを震わせ、ターンを決める。
「わーいバニーだー♪」
「バニーだー♪」
 歓声を上げる二人は色違いのピンクとオレンジ。主人がピンクでサイがオレンジだ。
「ところでバニーって何すんの、アム?」
「さあ? 知らないけどとりあえず踊ろう! なんか踊れって言われたし!」
 勧めた本人は舞台袖から声援を送る神座真紀(ib6579)。
「いいで、その調子や。あたしらの魅力で男どもを悩殺するんやで!」
「任せて、男も女もバニーも虜にしちゃうよ!」
 バイラオーラをまとって身をよじり流し目を送ると、さらに情熱をこめて踊るアムルタートの周りをサイが飛び周り、羽からこぼれる光の粒で華奢ながらもほどよく凹凸のある体のラインを強調する。
 さらにサイは誘惑のキスを振りまく。
 そのひとつをもろに食らった柚乃(ia0638)が舞台に飛び出した。
「ふわああ〜。綺麗なお姉さんがいっぱい、兎おいしいです〜!」
 さっきまでスタンダードなバニーを着るのを真っ赤になって恥ずかしがっていたのに、サイのキスを受けた柚乃は光の早さで着替えてのけ、ステージのアムルタートに抱きついた。
 いつもの額飾りにウサミミがオン。ぴょこぴょこステップを踏むたび、夢紡ぎの聖鈴が鳴る。衣装はまっしろな毛皮を贅沢に使ったビスチェタイプの変則バニー。二の腕はふんわりした薄手の袖が覆い輪郭が透けていた。
「あれって兎業界では素っ裸になるんじゃ……ま、柚乃が楽しんでるしいっか。黒服やるわよー!」
 宝狐禅の伊邪那もノリノリだ。バックダンサーよろしく後ろで飛んだり跳ねたり。宙返りを決めるとびっと前脚をかかげた。
「ヘイ、ギターソロカモーン!」
「カモーン!」
 かき鳴らされる激しいリズムに合わせ、柚乃はアムルタートと二人、手を繋ぎ背を合わせて黄金ボディの段差を揺らす。
 袖から二人を伺っていたサフィリーン(ib6756)はポンチョの襟元をかき寄せた。
「あれ? ちょっと想像と違う大人の世界……それでも一応オトナの世界、デビュー☆ ちょっとだけお邪魔します!」
 二人の間に飛びこみ、ポンチョを脱ぎ捨てた。燕尾ジャケットの下は薄紫のバニースーツ。尻尾はふわふわ。体を動かすたび右に左に揺れる。メロディに乗せて小麦色の肌を揺らしながら人差し指を頬に添える。
「この衣装に合うのは……ラインダンス? 一緒に踊ってくれる人募集だよっ!」
「呼ばれて飛び出たコクリ・コクル参上! 本日2回目!」
「無私のハートはNPCのしるし、おおらかクラッシュ司空亜祈よ!」
「ざいくろーん」
「ジョオオカアアー! バニ子&バニユリ推参! 呂さんは? 食べる係ですか、はい」
 ホールに散らばっていたバニー達も流れるような歩みで舞台へ集まる。明るくアップテンポなBGMにそろって足を高く上げた。ジャケット付きの赤レオタードに身を包む真紀が中央で開脚し、そのままぺたりとステージに伏せ、はりのある尻からふとももへのラインを見せつける。
「どや、この胸、この脚線美。圧巻やろ♪ ご希望なら踵で踏んだってもええで男共♪」
「は、はずかしいよぅ……」
 イケイケな主人と逆に羽妖精の春音は羽までほんのり赤い。しっかり主人とそろいのバニーを着せられている。春音が一生懸命吹くフルートに乗せアクロバティックなポーズを決めながら、サフィリーンと真紀は舞台の隅で微動だにしない和ニーを見つけた。
「あ、しげね様! 本物? 王様なのにバニーさん? はじめましてっ、一緒にダンスしませんか?」
「バニねさん笑顔やで笑顔。こっち来て踊りぃな、バニーさんたる者、皆を楽しませんとな」
 和ニーは手近のコクリを呼び寄せ、耳打ちした。コクリが二人を振りかえる。
「イメージ商売ですので、だって」
「手遅れと言わざるをえない」
 真顔でそう返した真紀は軽く頬を叩いた。
「はっ、あかんあかん。あたしとしたことが、つい笑顔を忘れてしもうたわ」
 メロディが変わり、バニー達が客席に下りていく。
 柚乃が澄んだ歌声を響かせた。花が咲き、羽根が舞い散る。
 亜祈が澄んだ歌声を響かせた。花瓶が割れ、シャンデリアが落ちる。
 音波攻撃を物ともせずサフィリーンは軽やかな足取りで踊り疲れたアムルタートをもてなす。
「カクテル、お待たせしました」
 テーブルに置いた瞬間、亜祈の歌が高く響きパリンと割れた。
「あああ、のど渇いてたのに! せっかくだし次はワインがいいな♪」
「少々お待ちくださーい。うふふ、チーズもご用意します♪」
 ステージではOBUがうつろな目のジャミールを中心にエクサイルめいて回転しながら、スタイリッシュどじょうすくい。派手なレーザービームと打ち込みビートのテクノ民謡がクラブミュージックに聞こえなくもない。 
「どうしたジャミール、踊り子だろ。見せ場だぜ?」
「いやだって炉火ちゃん、色々限界っつか無理だろ、誰得だよ!」
「俺得です!」
 叫んだのは徒紫野 獅琅(ic0392)。客席で仁王立ちしている。だいぶ酔ってるっぽい。
「じゃあ獅琅ちゃんも着ろよ!」
「自分は客です。絶対バニー着ません」
「制裁!」
 三回転半からの飛び蹴りが獅琅に決まった。
「自分だけ安全圏でぬくぬくしようなんざふてぇ奴だ。恋ちゃんが言うから断りきれなかった俺の身にもなれ!」
「勘弁して下さい、何でもしますから許してください!」
「何でもするんだな」
「何でもします」
「ならばバニーを着ろよ!」
「トートロジーはやめてください!」
「そう拒むものではないぞ、獅琅殿」
 ふりかえるとヤッサンが腕を組んでいた。もっこりしたハイレグが目の前に。
「おもてなしの精神は、慈悲と慈愛の心、神の愛に通じるものです」
 エルディンが肩を叩く。カットアップされた胸筋との、段差。
「面白そうだからと何も考えずに、それでいいんだ」
 緋呂彦が腕を広げる。
「誰に何と言われようと、己の道を進む。それがOBUのソウルだぜ」
 炉火の黄金バニースーツが輝く。
 ぽっと頬を染めた獅琅。
「なんということでしょう。大人の手管は反則ですよね」
 炉火が、エルディンが、ジャミールが、ヤッサンが、緋呂彦が、手を伸べる。
「さあ……めくるめくバニーの世界へ……」

「うおわぎえるるいえいあいああああ!!」
 
 飛び起きた獅琅。
 静かな夜、いつもの自分の部屋。
「ゆ、夢……」
 全身を冷たい汗が濡らしていた。
 頬をぬぐい、辺りを見回した獅琅は枕元の異物に気づいた。あんの南京が居た位置に書き置きがある。

※このシナリオはIF世界を舞台としたマジカルハロウィンナイトシナリオです。 続きはOMCでどうぞ。