もふ柄山のもふ太郎
マスター名:八倍蔵
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや易
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/03/06 15:32



■オープニング本文

 あるところにおじいさんとおばあさんと一緒に暮らすもふらさまがいました。
 もふらさまの名前はもふ太郎。
 一年程前おじいさんが山へ芝刈りに、おばあさんが川へ洗濯に行きました。
 おばあさんが洗濯をしていると、川上からもふもふした毛に包まれたもふらさまが流れてきたのです。
 おばあさんはそのもふらさまを家に連れ帰り、もふ太郎と名づけたのでした。

 ある日もふ太郎は大好きなおばあさんの昔話を聞いて一大決心をしたのです。
「僕はまた冒険に行くもふ!」
 おじいさんとおばあさんは驚きましたが、もふ太郎の一大決心を汲んでくれました。
 おばあさんはもふ太郎が大好きな甘いおだんごを作ってくれました。
 おじいさんはまた『もふ太郎』と書かれた鉢巻と旗を作ってくれました。
 おだんごと鉢巻、旗を持ったもふ太郎は意気揚々と出かけるのでした。

 所代わってとある村。
 村人達が村長の家に集まっていた。
「あれ、なんとかならねえだか」
「毎回、こんなんじゃやってられねえだ」
 村への一本道に熊のケモノが現われたのだ。
 その一本道の真ん中にどかっと居座り、通る者に力比べを仕掛けてくるのだ。
 村人はその道を通るたびに放り投げられ、打ち身を作ってようやく村へ町へと歩みを進められるのだ。
 中には食糧を奪われた者もいる。
「村のもんでどうにかなんねえだか?」
 村長は村人達に聞き返す。
「村一番のヨサクさんでも投げられただ」
 村で一番の力持ちであるヨサクでも敵わないとなると、村では打つ手は無い。
 まだケモノに食われた者はいないが、いつ牙を向くか分からない。
「うん、しかたねえだ。開拓者に依頼するだ!」

 開拓者ギルドに依頼が張り出された。
『ケモノ退治』
 その張り出された依頼書を眺めながら、受付嬢は目をこする。
 ケモノ退治の依頼書を眺めている、あの子供くらいの白いもふらさまがいるのだ。
 頭には鉢巻、背中には『もふ太郎』の旗。それぞれが二つに増えている。
「僕がこの熊と相撲を取ってくるもふ!」
 またもふ太郎が開拓者ギルドにやってきたのだ。
「犬、猿、雉、熊、蟹、臼、栗、蜂のお供を集めるもふ!」


■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191
20歳・女・泰
俳沢折々(ia0401
18歳・女・陰
紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454
18歳・女・泰
胡蝶(ia1199
19歳・女・陰
斉藤晃(ia3071
40歳・男・サ
平野 拾(ia3527
19歳・女・志
スワンレイク(ia5416
24歳・女・弓
利穏(ia9760
14歳・男・陰


■リプレイ本文

「今日はたくさんいるもふ〜!」
 もふ太郎は目をきらきらと輝かせました。
「もふ太郎さんもふ太郎さん、犬の紗耶香に、この前のお団子を下さいな!」
「犬のもふ龍にも、あの美味しいお団子、下さいもふ!」
 おだんごをせがんでいるのは、紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454)さんと、その朋友のもふ龍です。
 一人と一頭はこの前もらったおだんごの味が忘れられないようです。
「もふもふですわーもっふもっふですわー!」ときゃいきゃい言いながら両手を振り回してもふ太郎に飛びついてきたのはスワンレイク(ia5416)さんです。
「わたくしは雉のスワンレイクですわ」
 もふらさまが大好きなスワンレイクさんは、もふ太郎ともふ龍の顎をもしゃもしゃとかき、全身をくまなくもふもふ撫で回します。
 続いて、丁寧な挨拶の利穏(ia9760)さんです。
「もふ太郎さん初めまして。熊の利穏と申します」
 熊というには少し小柄な利穏さん。
「よろしくもふ。でもちっちゃいもふ」
 もふ太郎も、もふ龍より小さいのに自分のことは棚に上げてます。
「ち、ちゃんと熊ですよ。が、がおーっ」
 両手を伸ばし、懸命に熊の鳴きまねをする利穏さんです。
 その後からは赤い着物に、夜なべして作った特製のカニさん手袋をつけた俳沢折々(ia0401)さん。
「ちょっきんちょっきん、わたしは折々、蟹の薬屋さんだよ。むかしむかし、お猿に柿をぶつけられた蟹は治療の大切さを知ったからね」
 折々さんはお医者さんのようです。
 これで投げ飛ばされても大丈夫です。
「冒険を通じて子供は大人になるか。ええこっちゃええこっちゃ」
 ぐびぐびとお酒を飲んで現われたのは斉藤晃(ia3071)さん。
「わしは臼の晃や。よろしゅうな!」
 豪快です。すでに出来上がっているのでしょうか。
 開拓者ギルドでの最後は拾(ia3527)さん。
「もふ太郎さんのお供をします、蜂のひろいともうしますっ!よろしくおねがいしますねっ」
 ぺこりとお辞儀する拾さん。
 ちらちらともふ太郎が背負う風呂敷が気になるご様子。
(「あれの中身が噂のお団子かしら?」)
「じゃあ、みんな、手を出すもふ」
 もふ太郎が背負った風呂敷の中からおだんごを取り出すと、六人と一頭の手に渡していく。
「みんな、これを食べて、相撲をがんばるもふ!」
「おー!」
 もふ太郎と六人、そして一頭は、おだんごをほおばり威勢を上げるのでした。

 もふ太郎達一行が村への一本道を目指していると、一本の大きな木がありました。
 再び舞い降りてくる一つの影。
 茶色の浴衣に赤い帯、猿のお面をつけた水鏡 絵梨乃(ia0191)さんです。
「よう、もふ太郎。また会ったな」
 紗耶香さんの作ったお弁当をおつまみにお酒を飲んでる晃さんは、目ざとく絵梨乃さんにセクハラを仕掛けようとします。
「今日もええ天気やし、水鏡はええちちし‥‥」

 バキィ!

 晃さんが言い終わらないうちに、晃さんの顔に絵梨乃さんの拳がヒットします。
「もふ太郎の前でセクハラは禁止!」
 くるりともふ太郎に向き直る絵梨乃さん。
「で、今日は何をしに行くんだい?」
 もふ太郎は絵梨乃さんにケモノ退治にいくことを説明をします。
「熊と相撲を取ってくるもふ!」
 本当は絵梨乃さんも依頼の内容は知っているはずですが、うんうんと頷きます。
「ふむふむ、なるほど。わかった、団子をくれたらボクも協力しよう」
 もふ太郎一行に猿さんも加わりました。

「何で私はこんな場所にいるのかしら」
 村への一本道の入り口で、胡蝶(ia1199)さんは悩んでいました。
 開拓者ギルドの受付嬢から、丁度良い依頼があると勧められたそうです。
 依頼を受けた後に、あの『もふ太郎』が関わっていると知りました。
 そして今日は栗のお面にイガのついた蓑を着て、もふ太郎一行を待ち受けているのです。
(「慣れたら何かが終わってしまう気がする」)
 胡蝶さんはそう思っているようです。
 やがてもふ太郎一行が近づいてくると、疲労感で重い足取りながらも歩みを進める胡蝶さん。
「あ、あの、も、もふ太郎さんもふ太郎さん、ケモノ退治に付き合いますから、おだんごひとつ、くださいな」
「あ、蜂さんもふ!今日は栗さんもふ?」
 この前は蜂さんであった胡蝶さん。
「そ、そんなことはどうでもいいのよ。それよりおだんご、くれるの?くれないの?」
「あ、あげるもふ、あげるもふ!」
 きつく言い寄る胡蝶さんに、もふ太郎も少したじたじ。
 こうしてもふ太郎一行に栗さんも加わりました。


 村への一本道の真ん中に黒い塊が、でーんと寝そべっていました。
 黒い熊に精霊の力が宿り、神々しい飾りのような角が生えています。
「アレに勝てば開放され‥‥じゃない、村人が助かるのね」
 胡蝶さんは一刻も早く帰りたそう。
 もふ太郎一行の気配に黒熊さんはむくりと体を起します。
 もふ太郎を肩車していた利穏さんでしたが、黒熊さんを警戒してもふ太郎を肩から降ろします。
 黒熊さんはもふ太郎一行に、上からの目線で、右の手の平を上に向けるとくいくいと手招きします。まさしく、通ってみたけりゃ俺を倒してみろと言わんばかりです。
「ようし、熊さんと相撲もふ!」
 早速相撲を取ろうと意気込むもふ太郎を、晃さんはとどめます。
「まあ、まてまて。大将からでたら盛り上がりに欠けるやろ?わしらお供の見せ場がなくなってまうやんけ」
 晃さんは、大将はでんと構え、お供に任せろと熱く語ります。
「そうですわ、まずは皆さんがお相手しますわ。さあ、頑張りましょう!」
 晃さんに同意したスワンレイクさんは、もふ太郎一行を応援します。
 その間に胡蝶さんは黒熊さんの前に大きな円を描いています。
「相撲を取るのなら、土俵がないと駄目でしょう」
 実が胡蝶さん、土俵を描きながらも皆の視線がそれた隙にごにょごにょと何かを細工中。
 描かれた土俵の傍らでは、折々さんが薬とお札の準備をしています。
「じゃ、私から‥‥」
「もふ太郎さんの前に、ひろいにお相手さしてください!」
 土俵を描き終えた胡蝶さんが一番手を名乗り上げようとする前に拾さんが手を上げます。
「あ、まっ‥‥」
「よし、行司はボクがやろう」
 拾さんを止めようとする胡蝶さんの言葉をさえぎって、絵梨乃さんが行司を名乗り出ます。
 見つけたヤツデの葉を軍配に絵梨乃さんはビシッとポーズを決めます。
「ボクが行司をするからには、反則は許さないからな」
「ねぇ、私が‥‥」
「じゃあ、蜂さんから行くもふ!」
 拾さんと黒熊さんが見合って、行司の絵梨乃さんが「はっけよい、のこった」とヤツデの葉を振り上げた瞬間、土俵の二人と一頭の足元が、地中から突然生えた巨大なイガグリの棘によって炸裂しました!
 胡蝶さんの仕掛けた『地縛霊』の仕業です。
 片手で額を押さえ空を仰ぐ胡蝶さん。
「今のは無し!」
 起き上がった行司の絵梨乃さんが無効を宣言します。
「胡蝶、ボクが行司をするからには、反則は許さないからな」
 さすがに土俵に何かを仕掛けるのは反則です。
 胡蝶さんはそ知らぬふりを決め込みました。

「はい、蟹の薬屋さんが治療して仕切りなおしだよ」
 『地縛霊』で吹き飛んだ拾さんと絵梨乃さん、そして黒熊さんを、折々さんがてきぱきと治療していきます。
「さあ、これでよし。頑張りなさい」
 折々さんの『治癒符』が傷を癒すと、黒熊さんはがうがうと頭を下げます。
「黒熊さん、ひろいともう一度勝負です!」
 拾さんはもう一度勝負を挑みます。
 黒熊さんは、何かがうがうと唸ります。
 その中に『ありが』という言葉が聞こえました。
「あの熊さん、自分の名前は『有賀』だって言ってるもふ」
 もふ太郎が通訳してくれました。もふ太郎には黒熊さんの言っていることが分かったようです。もふ太郎の能力といったところでしょう。
「では改めて、有賀さん、勝負です!」
 拾さんの挑戦に、有賀さんもがうと唸り声で答えます。
「ひろいさん、頑張れー」
 スワンレイクさんの声援が飛びます。
「拾君と有賀君の勝負、どのあたりが見どころかな、解説の晃君」
「そうやな、なにぶん体重差が有りすぎや。そこをどう立ち回るかが重要なとこや」
 折々さんと晃さんは解説に回っているようです。
「さあ、見合ってー、はっけよい、のこった!」
 絵梨乃さんの合図で拾さんと有賀さんの相撲勝負が始まりました。
 拾さんは有賀さんの目の前で突然手を叩いて、猫だましです。
 有賀さんが振り回す手をどうにかよける拾さん。
 よけてよけて、有賀さんが疲れるのを待つ作戦のようです。
 だけど。

 くう。

 もふ太郎のおだんごの入った風呂敷が目に入った拾さんのお腹が小さく鳴りました。
 気のそれた拾さんを有賀さんは見逃しません。拾さんを掴むとそのまま押し出してしまいました。
「はう、やっぱりつよかったです‥‥」
 負けた拾さんは、がっくりうなだれています。

 次は紗耶香さんが名乗り出ました。
「次はあたしと勝負よ」
「ご主人様、がんばるもふ!」
 もふ龍も応援します。
「今度の勝負はどうだろう、解説の晃君」
「さっきと変らんな。体重差をどうするかや。それにしてもええちちしと‥‥」
 解説の折々さんと晃さんですが、再びセクハラを働こうとした晃さんに行司の絵梨乃さんのツッコミが入ります。

 ゴスッ!

「セクハラは禁止だといったろーが!」
 晃さんの顔に絵梨乃さんの蹴りがヒットします。
 それはそれとして紗耶香さんと有賀さんの勝負です。
「はっけよい、のこった!」
 拾さんと同じく、紗耶香さんもよけてよけて、有賀さんが疲れるのを待つ作戦のようです。
 やがて有賀さんの息が荒くなってきましたが、それは紗耶香さんも同じです。土俵の中の一人と一頭はぜえぜえと肩で息をしています。
 痺れを切らした有賀さんが紗耶香さんに突撃してきました。
 そこを紗耶香さんは勝機とにらみ、有賀さんに足払いを仕掛けました。
 ですが、余力があったのは有賀さんのほうでした。
 払おうとした足を弾かれ、紗耶香さんは押し倒されてしまいました。
「ご、ご主人様ー!」
 疲れて動けない紗耶香さんを引きずっていくもふ龍でした。

「えっと、僕の番かな」
 自信なさげに立ち上がる利穏さん。
 女性陣があんなに頑張っているのに、男の自分がこうも腰が引けているのは、利穏さん自身、無念のようです。
「熊さん、かつもふ!」
 そんな利穏さんの心中を知ってか知らずか、応援するもふ太郎。
「あの有賀も、疲れ知らずというわけではなさそうです。肩で息をしていますから、もう少しですわ」
 応援しながらも有賀さんの観察をしていたスワンレイクさんが、こっそり利穏さんにアドバイスを送ります。
「は、はい‥‥」
 スワンレイクさんから声をかけられた利穏さんはがちがちに緊張しています。
「今度も似たような勝負だがどうかな、解説の晃君」
「こないときこそサムライの『強力』なんやけどな。あの様子じゃ期待でけへんな」
 がちがちの利穏さんに期待薄な折々さんと晃さん。
「しゃーないな。利穏、ちとこっち来い」
 晃さんは利穏さんを木陰へと呼び寄せます。
「は、はい?」

「ついてんやろ『男の子』」
 利穏さんの『もの』を押さえる晃さん。
「『誰かが勝てる』やなくて、『自分で決める』くらいの気持ちでいけっての」
 軽い痛みでなみだ目の利穏さん。
「はい、いってきます」
 少しは緊張がほぐれたようです。

「はっけよい、のこった!」
 さすがに有賀さんも三連戦でお疲れのご様子。
 利穏さんの押しにグッと耐えています。
「がんばれー!」
「まけるなもふー!」
「のこったのこった!」
 押しつ押されつ、耐える利穏さん。一進一退の攻防です。
 しかし、ついに決着のときです。
 有賀さんが押してきたところを、利穏さんは耐えると見せかけ、力を抜いて半身ずらします。
 勢い余った有賀さんの浮いた足、素早く払う利穏さん。

 ドーン!

 有賀さんはくるりと回って背中から地に落ちました。
「や、やった‥‥」
 利穏さんも信じられない様子です。
「かったもふ、やったもふ!」
「召し捕ったもふ〜!」
 もふ太郎も大喜びです。もふ龍もご主人様の仇とばかりに勝鬨を上げます。
「ようやった、祝勝会や!」
 晃さんはいそいそと宴会の準備を始めました。
「ここで一句、『朽葉揺れ 発気揚揚 声響く』 俳沢折々 」


 紗耶香さんの作ったお弁当を広げて、有賀さんも交えて、利穏さんの祝勝会が始まりました。
「やっぱりこのおだんご、おいしいです!もふ太郎さんっ、おだんごもう一つくださいなっ!」
 口いっぱいにおだんごを頬張る拾さん。
「ようやった、ようやった。相撲はパワーだけや。あらへん、心技体揃ってこその力士やで!」
 晃さんは、利穏さんと有賀さんを称えています。
「そういえば、もふ太郎は相撲をとらなくていいの?」
 胡蝶さんがもふ太郎に聞いてきます。
「後ろ足で余り立ってられないから、僕らの相撲は押し合いもふ」
「こんな感じもふ」
 もふ太郎ともふ龍が、土俵で頭を押し合って見せます。
「きゃー、かわいいですわー!」
 もふ太郎達の相撲を見て、スワンレイクさんのテンションも急上昇。
「のこったのこった」
 絵梨乃さんも、もふら相撲の行司を務めます。
「そういえば有賀君はなんでこんなことをやってたんだい?」
 折々さんが有賀さんのことを問いただしました。
 がうがうと答える有賀さんの言葉を、もふ龍に押し出されたもふ太郎が通訳します。
「『精霊の加護を受けたからには、その力で一番になってみたい。雄(男)ってそういうもんじゃないか』だもふ」
「わ、分からなくもないですけど‥‥」
 後に続く、やりすぎな気もするという言葉をおだんごといっしょに飲み込む利穏さんでした。

 有賀さんは、強いヤツに会いに行くと修行の旅に出るそうです。
 ひとまず、紗耶香さんと一緒にもふ太郎を送っていくことになりました。
「もふ太郎さんのお団子はとてもおいしいですから、作り方を教えてほしいですね」
「がうがう」
「『あれは美味かった。修行にもって行きたい』だもふ」
「ご主人様にも作って欲しいもふ〜」

「おじいさん、おばあさん、ただいまもふ!」
 意気揚々と凱旋するもふ太郎。
「おばあさん、お団子の作り方、教えていただけませんか」
 紗耶香さんは早速おばあさんにおだんごの作り方を教えてもらいます。
「おやおや、いいですよ」
 おばあさんはお米の粉を器に用意すると、空気が変りました。
 おばあさんは左手にお湯の入ったやかんを持ち、左足を軽く浮かすと、右足だけですーっと器に近づき、やかんのお湯を注ぎます。
 次の瞬間、右腕だけでおだんごの生地を練り上げたおばあさんの背中に『団子』の文字がオーラによって浮かび上がりました。

「が、がう(世の中には、まだまだ上がいる)‥‥」
「す、すごい‥‥」
「もふ‥‥」
 呆然とする一人と二頭がいましたとさ。

 めでたしめでたし。