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■オープニング本文 天儀本島朱藩国、内陸の小さな里、月鹿鈴にて――。 里長の邸宅にて、雪は文をしたためていた。雪は朱藩の旧家からここ宇喜多家へ嫁いできた。二十代も半ばを過ぎて、四人の子宝にも恵まれた。里の民からも愛される聡明な女性であった。 「雪――」 そこへ姿を現したのは里長の宇喜多盛勝であった。 「どうも近郊の魔の森が騒がしい。ちと出て来る。尤もここは見向きもされぬ小さな里だ。伊織の里とは関係ないであろうがな」 「気をつけて。アヤカシの動向はいつだって予測の付かぬものよ。大アヤカシだけが脅威なのではないのだから」 「分かっているさ。用心にしくは無いからな。――それは手紙か?」 「ええ。橘鉄州斎(iz0008)様へ」 「そうか、鉄州斎かあ。あの男、元気にしておるのだろうな」 「お元気でしょう。あのお方はどこにいたってタフなお方よ」 雪の笑みに、盛勝は高らかに笑声を上げた。 「では行って来る。留守を頼む――」 神楽の都、開拓者ギルド――。 ギルド相談役の橘鉄州斎は、デスクに向き合って、珍しく無為な時間を過ごしていた。 「瘴海との決戦が始まろうってのに、待機組とはなあ‥‥こういうこともあるか」 伊織の里では最終決戦が始まろうとしていた。開拓者たちは乾坤一擲の反撃に出ようとしている。鉄州斎は吐息して、瓦版に目を通していた。 そこへ助手の佳織が書類の束を持ってやってくる。 「橘さん、ちょっと手伝ってくれませんか。どうせ居残り番になって暇なんでしょう?」 「待機組のギルド相談役は最後の砦なんだよ。今は多くの戦力が伊織の里に釘付けになってるから、万が一の事件が起きたら、俺が対処しないといけない」 「万が一の事件て何ですか? 大アヤカシ不厳王(iz0156)が攻め寄せて来るとか?」 「そう言う不吉なことを口にするなよ」 「居残り組の相談役は暇でしょう」 「ちょっと最近減らず口が増えて来たんじゃないか」 「部下は上司を見て育つ」 「それどういう意味だよ」 「褒め言葉です。御機嫌とらないと。私はただの助手ですから」 「‥‥‥‥」 鉄州斎は唸るように吐息して、瓦版に目を戻した。佳織は無視することにしたらしい。 「あ、そう言えば文が来てました。雪と言う方から」 佳織は雪からの文を差し出した。鉄州斎はそれを受け取ると、文を開いた。 「月鹿鈴の‥‥お元気そうで何よりだな」 と、そこへ藤原家側用人の芦屋馨(iz0207)と警護の林原鈴香が姿を見せる。佳織は応対のために歩み寄った。 「あら、芦屋様。橘にご用ですか。橘でしたら、今は暇ですから‥‥呼びますね」 「よろしくお願いします」 入れ違いに、橘がやって来る。 「馨殿、何か――」 「鉄州斎殿、禍津夜那須羅王の足取りを追っていたのですが、どうやらあれから朱藩国に入ったようです」 「そうですか。ギルドに今のところ被害報告は来ていませんが」 「恐らく動きがあるでしょう。鳳華での派手な攻撃は足掛かりに過ぎないはずです」 「先手を打つことが出来ればいいのですが。朱藩国に警告を送りましょう。ギルドに依頼が来てからでは遅いかも知れない」 そこでまた、佳織が早足でメモを持ってやってくる。 「橘さん――」 差し出されたメモを受け取り、橘は眉間を押さえて吐息した。 「先を越されたようですね。朱藩国で禍津夜那須羅王の攻撃です。月鹿鈴の里がアヤカシの集団の襲撃を受けたと。雪殿‥‥」 橘は素早く振り返ると、佳織に言った。 「月鹿鈴の里と連絡を取ってくれ。それから、残っている開拓者たちを呼び集めてくれ。俺も出る。急いでくれ――」 「はい――」 佳織は素早く動きだした。 「鉄州斎殿、警告は私が――」 「よろしくお願いします。禍津夜那須羅王か‥‥好き勝手にはさせんぞ」 「鈴香、現場へ行って下さい。鉄州斎殿と開拓者を援護して」 「了解しました」 林原は頷く。 芦屋は足早にギルドから出て行く。 橘もまた、慌ただしく出立の準備を整え始めた。 |
■参加者一覧
井伊 貴政(ia0213)
22歳・男・サ
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
和奏(ia8807)
17歳・男・志
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
長谷部 円秀 (ib4529)
24歳・男・泰 |
■リプレイ本文 「里の様子はどうですか――」 井伊 貴政(ia0213)は、華御院 鬨(ia0351)に問うた。 「少数で攻めてくるなんてなんともアグレッシブどすわ。死人戦士が点在しているようですが、うまく里長たちのもとへ辿り着きませんと」 鬨は望遠鏡を下ろした。鬨は女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出している。今回はを西洋風お嬢様を演じていた。 「那須羅王には以前係わった事があるし、その時仕留められなかったからねぇ。今回はチャンスでもあるし、何か力になれれば、っと」 貴政は望遠鏡を受け取り、里の様子を確認する。里の中にはあちこちで兵士たちが防御陣を築いている。逃げ惑う人々の姿も見える。死人戦士は、威嚇するように咆哮している。 「壁役に出来る人が殆ど居ないっていうのは中々面倒な。それでもやるしかないけどね」 葛切 カズラ(ia0725)が言うと、和奏(ia8807)が偵察から戻って来る。 「里の周辺は見通しが悪いですね。死人戦士さん達は、どういうつもりなのか、本格的な攻撃は仕掛けていないようですが。何れにしても急ぎませんと」 「とにかく、まずはアヤカシの目を抜けて、宇喜多様らと合流しませんと」 コルリス・フェネストラ(ia9657)は地面に地図を描き始めた。 「確かに追い込まれてはいますが相手も少ないのは好機。ここで私達が死人戦士を受け持てば数の優位も得られます。借りは直接返したくもありますが、死人戦士を倒しにいきますか」 長谷部 円秀 (ib4529)は冷静に状況を確認する。 「私たちが今いるのがここです。アヤカシは‥‥ここと、ここ、それからここに。禍津夜那須羅王はここです。私たちは西側から回り込んだ方がいいでしょう」 コルリスの言葉に、一同頷く。 「いいですね。では移動を開始しましょうか」 貴政は重傷で重たい体を持ち上げた。 「よし行こう」 長谷部は立ち上がると先頭に立って行く――。 「アヤカシの動きは収まったか!」 里長の宇喜多盛勝は、駆け込んで来た家老に言った。 「どうにか今は、防衛陣地の外で食い止めております。ただ、ここまでの勢いを考えますと、安心は出来ませんな」 「禍津夜那須羅王か‥‥何でも武天で活動していたそうだが」 そこで、開拓者たちが到着する。 「遅くなりました里長殿――」 貴政は言って、お辞儀した。 「開拓者か、待ちかねたぞ! よく来てくれたな!」 「どうにか、持ち堪えているようどすわね」 「ああ。まあな――」 盛勝は言って、本丸に開拓者たちを招き入れた。 そこには武装した雪もいた。 「雪、開拓者たちだ。間に合ったよ」 「ありがとうございます。よく来て下さいましたね」 「お初にお目に掛かります奥様。井伊貴政と言います」 「初めまして」 それから開拓者たちは挨拶を交わし、里の状況について意見を交換する。 「差し当たり、僕が咆哮で死人戦士と那須羅王の分断を試みます。仲間たちが禍津夜那須羅王を押さえますので、僕はサポートに回ります。その間に死人戦士を撃破と言う流れで」 貴政の言葉に、盛勝は問うた。 「禍津夜那須羅王は強敵なのか」 「ええ。凄腕の剣客ですよ。まあ今回僕は死人戦士のお相手ですが、先の合戦で怪我しちゃったから、あんまし無理は出来ないかな‥‥まぁ、今回は里の戦力をあてにさせて貰います」 苦笑を浮かべる貴政。 「瘴海の件はまだ知らんのだが‥‥それと関係あるのだろうか」 「瘴海は倒れました。禍津夜那須羅王と瘴海は無関係だと思いますよ。そんな訳で、長谷部さんや民の安全確保に振り分けられる戦力以外との連携で死人戦士を引き止めつつ、数的有利を作りながら各個撃破出来たら理想ですが、援護が砲術士さんと一般兵の方なので多くは望めませんかね? とりあえず、僕や長谷部さんが壁役みたいな感じで行きましょう。ま、里に甚大な被害を出すのでは本末転倒だし、無理のきかない身体でもそこそこ無茶はしたいところです。死人戦士を減らすことが出来れば、那須羅王の方へ切っ先を押し出して、そちらの援護も出来れば言う事無しですね」 続いて、鬨が志願顔で言った。 「砲術士の方々には、里に近づけないのと、上級アヤカシを分断する様に攻撃的防御として行動して貰いたいどすわね。上級アヤカシを分断できたら、兵士を幾らか連れて各個撃破をしていきますわ。戦闘自体は、できるだけ派手に戦闘をして、那須羅王を挑発して注目させる様にしますわ。防御陣地は出来上がっているようどすが、村人がいる場合は、そちら側に侵攻させない様に戦闘を」 「兵士達の指示をよろしく頼む。ここは大きな戦とは無縁でな。上級アヤカシの攻撃を受けたことなどないのだ。兵士達は心穏やかではないだろう」 「お任せ下さいどす。そう言うのは何度か経験がありますどす」 カズラは、美しい表情に思案顔。 「私は禍津夜那須羅王狙いの班で行動するわね。里の周囲で死人戦士達との戦闘が開始されたら禍津夜那須羅王の所に赴き戦闘開始するわ。こっちから仕掛けるけど、うまく死人戦士は分断してもらいたいわね。その為には里の兵士達の協力が必要」 「そうだな。もちろん支援はさせてもらう。うまく連携しないと」 盛勝は言った。 「兵士への指揮や采配については過分な権限を与えられても活かせないので‥‥得意な方にお任せしますね。最前線の戦力として使っていただければ幸いです」 和奏は言って、ちょっとぼんやりと盛勝を見つめていた。 「大アヤカシからの指示が受あるからお強いのでしょうか‥‥死人戦士さん、上級アヤカシさんどちらが相手でも大丈夫なので、自分の割振りは采配者にお任せします。井伊様の咆哮に引き摺られた死人戦士さんを上級アヤカシさんより分断することですね。対峙する時は、囲まれないように気をつけること、一緒に戦う兵士さんたちには絶対に一対一で対峙しないよう徹底してもらうこと、まずは腕や脚など狙い動きを止めることに腐心して下さい。反撃できなければ、留めは兵士さんに任せても大丈夫なはずですからね」 和奏の言葉に、盛勝は頷いた。 「ではあなたには上級アヤカシの方へ回ってもらおう。そちらの戦力が薄いようだからな」 「分かりました。上級アヤカシさんの方は足止めが目的なのかな‥‥それから住民対応なのですが、非難場所の設定や誘導は危機管理の一環として統治者が日常的に確認、訓練していて然るべきモノ。ですが、こちらの里にはそういう備えはないのです? 開拓者が行って突然できるものではないですし、管理担当者が責任もってやるべきかと」 「ああ、もちろんそれはそうなのだが、アヤカシの攻撃に住民が巻き込まれたりしたら我々だけでは対応が難しい。アヤカシがただの雑魚ならさしたる問題ではないが、今回は住民が捕まる恐れもありそうだったのでな」 「死人戦士を撃破して住民の安全を出来るだけ確保しませんとね」 長谷部は言った。 「後、少数で死人戦士に当たり王への対応を増やし数の優位を作為」 「禍津夜那須羅王の対応はそっちに完全に任せるが――」 「死人戦士一体に対して複数で当たり、自分はそこを動いて一体ずつ潰していく感じですかね。潰して手が空いたら別の所の救援に回して少しずつ戦勢をこちらに優位に向かせていきます。井伊さんの咆哮でこちらに近づいてきた死人を兵士を指揮して囲み包囲状態から全方からの攻撃で圧倒する。私個人としては正面に位置し、他と協同して死人兵士を受け止め、井伊さんの所まで向かわせないようにしますよ。その後は兵士を人数が足りない所に充当しつつ私は優勢な所に回り同様の方法で順次撃破ですね」 「よろしくお願いします長谷部さん。まあ今回はこんな状態ですので」 貴政は吐息して肩をすくめた。長谷部は軽く笑みを浮かべた。 「死人戦士を倒し終わったら王対応への援軍相手の退路を一部に断たせて、自分はいくつかの組に分けて波状攻撃を行い、敵に休憩の暇を与えない。此方は順次交代して疲労を溜めすぎないように配慮。砲術士が主体ですから、王との戦闘では支援攻撃はお任せしますよ」 そうして、最後にコルリスが口を開いた。 「あくまで一案ですが」 と前置きし作戦案を奏上する。 「まず里の一般兵は全員住民達の避難誘導及び護衛に専念。それから里の砲術士達は各方面の防御施設を利用し各方面で衡軛陣で防戦します。里の砲術士達と開拓者の一部で里防衛を行い、死人戦士達を食い止め動きを制限します。その間に残りの開拓者達が北東の禍津夜那須羅王に忍び寄り総攻撃。禍津夜那須羅王が死人戦士達への指揮が出せない程攻撃を加え、結果として死人戦士達との間を分断します。その間に里周囲の死人戦士達を退治。退治後開拓者が禍津夜那須羅王戦に加勢するかは各自の判断に委ね撃退に尽力と言う流れですね」 盛勝と家老は顔を見合わせて、頷いた。 「分かった。では計画通りに死人戦士を分断して、禍津夜那須羅王を撤退に追い込もう」 「ありがとうございます」 それからコルリスは里外の各隊大将に向け一般兵を介して伝言を託す。 「各方面の櫓と複数色の旗を使い、各方面の戦況が互いにわかる様ご協力をお願いします。各櫓では黒、黄、赤、青の4色の旗の用意をお願いします。各色の意味は黒が戦況報告求む。黄が交戦中。赤が苦戦中。青が敵撃破です。各隊の指示に従い里の各方面間の情報伝達をお願いします」 「了解しました」 「よし! ではよろしく頼む! 反撃開始だ――!」 里の各地で黄色の旗が振られている。開拓者たちを中心に里の兵士達は反撃に出た。 「砕!」 コルリスは一撃を撃ち込み、砲術士と連携して死人戦士を叩いた。死人戦士は自身も弓を構えると、撃ち返して来る。コルリスは反転して回避すると、再度矢を撃ち込んだ。 「地帯射撃!」 コルリスは砲術士たちに合図を送る。ドウ! ドウ! と銃撃が死人戦士を足止めする。 コルリスは素早く回り込み、死人戦士にスキル全開の一撃を叩き込んだ。凄絶な一撃を受けて吹っ飛ぶ死人戦士。崩れ落ちて瘴気に還元していく。 貴政と長谷部は連携して死人戦士に立ち向かっていく。貴政が咆哮を仕掛けると、死人戦士は怒りの咆哮を上げて突進して来る。 「撃て!」 銃撃が死人戦士の突撃を押し返す。 「貴政、無理はしないように」 「どうも」 長谷部と貴政は加速する。 裂帛の気合とともに長谷部は切り掛かった。ズン! と、死人戦士の腕を切り落とした。続く一撃はアゾットを突き刺し、白梅香――! 浄化の力が、死人戦士の肉体を破壊する。 そこへ銃撃が叩き込まれる。死人戦士は雄叫びを上げて前進して来るが、長谷部はアヤカシを真っ二つに切り裂いた。 「さすがですね‥‥!」 貴政は言いつつ、死人戦士と相対する。 「僕も、ちょっと無理はしてでも戦いますよ――!」 一撃、二撃と死人戦士と打ち合う。どうにか死人戦士の攻撃を捌くが、さすがに重体が厳しい。 「貴政の援護をお願いしますよ!」 長谷部は加速すると、砲術士と連携して死人戦士を火力で圧倒して粉砕する。 「禍津夜那須羅王さんはこないな戦術でくるやて、大したことなかったんどすなぁ」 鬨は挑発して見せながら那須羅王の目を引き付ける。切り捨てた死人戦士が瘴気に還って行く。 「上級アヤカシ相手にこの人数は流石にキツイわね〜〜」 カズラは符を装填しつつ、禍津夜那須羅王を見やる。 「なんだか今回は前座みたいな攻め方よね〜〜少数精鋭で眼を潰すって感じで。まあ本命が何処に向けられるかは謎だけどね」 「みなさん気をつけて‥‥」 和奏は刀を構えつつ、距離を保って展開する。 橘と林原も禍津夜那須羅王を包囲するように距離を取る。 禍津夜那須羅王は、手をかざすと、空中から瘴気を掴み取った。 「まずまずか」 それから、長刀を抜き放った。 「さて、余興はここまでだ。開拓者たちか――」 「行くわよ!」 カズラが先陣を切った。斬撃符を連発して叩き込む。アレが鏃状に変形して突撃。凄絶な式の連撃が那須羅王を切り裂く。 「行きますどす!」 鬨と和奏らも加速する。連続攻撃を繰り出す。 那須羅王は長刀で捌きつつ、軽い身のこなしで攻撃をかわしていく。 「瘴海を倒したか――さすがだ。現代の開拓者たちはやるじゃないか」 「と言っても、アヤカシと理解し合えるとは考えてないどすわよ」 「そうかもしれないが、人間の中には我々の力を利用しようと考える輩もいるようだ。度し難い連中だな。我々を利用出来る筈がないのにな」 次の瞬間、禍津夜那須羅王は力を込めて一撃を繰り出した。長刀が緑光の軌跡を描いた。開拓者たちは凄まじい衝撃に吹き飛ばされた。 「ちっ‥‥!」 カズラは反転しつつ蛇神を叩き込んだ。触手部分が絡み合って大蛇の様になり突撃。式の連撃が那須羅王を貫通する。 禍津夜那須羅王は加速すると、一挙に間合いを詰め、カズラの首を掴んで持ち上げた。 「が‥‥は‥‥!」 「陰陽師、中々面白い奴だ。だが簡単には殺さん――」 次の瞬間、和奏の一撃が禍津夜那須羅王を吹き飛ばした。地面に転がる禍津夜那須羅王は反転して起き上がると、和奏と激しく打ち合う。 「まだまだだよ」 禍津夜那須羅王は後退しつつ、里の方へ向かって移動する。 と、背後から砲術士を従えた長谷部が到着する。 「那須羅王ですよ! 撃て!」 砲術士たちが銃撃を開始する。 禍津夜那須羅王は小馬鹿にしたように銃撃を手を上げて受け止めた。 「王! 今回は負けませんよ、個人としてもね――ここで貴様を叩き斬る!」 「お前はこの間の人間か――」 長谷部の猛攻を禍津夜那須羅王は軽く捌くと、押し返した。 その後、開拓者の攻撃を捌きつつ防御陣地まで攻め込んだ禍津夜那須羅王は、里の施設を大地を切り裂くもの凄い衝撃波で破壊した。 逃げ遅れた民から悲鳴が上がる。 「そこまでだ王!」 長谷部と鬨、和奏に橘、林原たちは切り掛かった。カズラも蛇神を連射する。 「くっ‥‥どこまでやる気よ」 開拓者たちと里の兵士達の猛烈な反撃を受けて、やがて禍津夜那須羅王は撤退する。 「終わりましたか?」 貴政とコルリスが駆け寄って来る。里のあちこちで青い旗が振られてる。 「那須羅王は最後には逃げましたどすわ。民に被害が無くて何よりどす」 ――戦後、カズラは見張り台の破損具合を確認する。 「予想が当たってなければ良いけど‥‥」 しかし、彼女の危惧通り、見張り台は破壊されていた。カズラは宇喜多盛勝に最低限の全周囲を確保できるだけの修繕を薦めておくのだった。 「あいたた‥‥」 貴政は無理がたたって崩れ落ちた。 「どうぞ、しっかりして下さいね。ありがとうございます」 里の娘たちが手当てをしてくれた。 「どうも〜」 貴政は我ながら役得と思うのだった。 |