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■オープニング本文 ●朱藩 天儀本島朱藩国、首都、安州――。 興志王(iz0100)は、都の工房に足を運んで若い鉄砲鍛冶たちと賑やかに話し込んでいた。政に関心が薄いと思われがちな若い王であるが、興志王は必要な時には判断は下し、実務は家臣たちに任せていた。 ――と、そこへ城から家臣が興志王を呼びに来る。 「陛下――」 「何だ。今忙しいんだがな」 興志王は、白い歯を見せて家臣を見やる。 「朝廷から使者が参っております。藤原家の芦屋馨(iz0207)殿がお話があるとかで」 「藤原の? 芦屋?」 興志王は、先の修羅の一件で開拓者たちの手引きをした芦屋の名を聞き及んでおり、話に聞く限り恐らく藤原も一度は挑発的な態度を取っておいて、状況を逆手にとって朝廷の意見をまとめ上げたのだろうと推測していた。 「とは言え、胡散臭いな‥‥断れないのか」 「すでにお待ちです」 「全く‥‥よお、みんな! ちょっと国王の仕事をしなきゃいかんらしい! 失礼するぜ! またな!」 興志王はそう言って、鍛冶士たちと別れ城に戻った。 執務室の前で、芦屋馨が待っていた。 「あんたが芦屋か、入ってくれ」 「失礼いたします」 「それで? 藤原から話と言うのは? 藤原が切れるのはよく分かった。修羅の件はお見事だったが。単刀直入に頼むぜ。腹の探り合いは御免だ」 「武州の戦の件にございます」 「それが?」 「大アヤカシ瘴海の件につきまして、お伝えすべきことがあります――」 芦屋は、そう言って言葉を続けた。 ●開拓者ギルド ギルド相談役の橘鉄州斎(iz0008)は、瓦版に目を通していた。浪志組設立! と大々的な文字が躍っている。ここ神楽の都で今話題の中心となっているのが、浪志組の件である。橘も先だって浪志組の選抜試験に試験官として参加した。 「続々と諸国から腕に覚えのある連中が集まっているようだな。こいつは大したもんだ。東堂って奴は懐の深さを持っているようだな。この浪志組、全国の猛者達を続々と受け入れているようじゃないか。それに、志ある連中も集まっている。この一件、全国を駆け巡っている」 橘は、助手の佳織に向かって話しかけていたのだが、当の佳織は橘の話を全く聞いていなかった。 「え? 何か言った橘さん?」 「いやだからさ‥‥て、何を真剣に取り組んでるの?」 「これよ――禍津夜那須羅王が朱藩国に出たの」 「そうか――って、おい何だって、那須羅王が? 何で言ってくれないの」 「海の里、清原嶺の里が攻撃を受けたようなの。まだ民人に被害は出ていないみたいだけど。里の周辺は破壊されて、砲術士たちがアヤカシ兵士達をどうにか食い止めているみたいね」 「清原嶺の里と言えば‥‥海産物などの自然が豊かな里だよな。魔の森とも離れているのに。あそこの家長とは顔馴染だ。上級アヤカシに狙われるなんてこれまで無かったぜ」 「それじゃあ、橘さん行きますか?」 「当然だろう、開拓者を集めてくれ。禍津夜那須羅王は化け物だが、それにしたってもう先日の傷が癒えたのか‥‥厄介な」 「依頼書を手配するわね」 「よろしく頼む――」 かくして、禍津夜那須羅王の凶事を食い止めるべく、一行は朱藩国に出立することになるのだった。 ●清原嶺の里。 里長の女性、松山智は、本丸に陣を構えて、村々に防備を固めさせていた。里の志体持ちは砲術士が20人程度。あとは一般人兵士が100人程度だった。それから、里の民を総動員して、防御施設を築いていた。 下級アヤカシは、屍人と怪骨の集団で、一般人兵士の攻撃でも倒すことが出来るが、何しろ数が多い。北東の森から続々と現れては波状攻撃を掛けて来る。 禍津夜那須羅王は里の西に回り込み、10体程度の死人戦士を率いて、里への侵入を試みていた。 「禍津夜那須羅王ですか‥‥あれはその気になればこんな防備など吹き飛ばせるでしょうに。補給を絶ってこちらを生き殺しにするつもりかしら」 智は厳しい顔つきで、吐息して里の地図に目を落とした。 「里長! 開拓者ギルドと風信機が繋がっております! ギルド相談役の橘鉄州斎殿が出ておられます」 家臣の言葉に、智は「橘が?」と歩きだす。風信機の前に立つ。 「橘ですか、松山です」 「松山殿、大事ありませんか」 「禍津夜那須羅王の攻撃は何とか食い止めています。ですが、奴はじわじわとこちらを追い詰めるつもりのようですね。まだ本気ではないようです」 「それは好都合だ。開拓者とすぐにそっちと合流して、禍津夜那須羅王を止めます。何とか持ちこたえて下さい」 「懐かしいわね橘、あなたとゆっくり話が出来れば良いんだけれど」 「急ぎます。頑張って下さい」 「ありがとう。頼みますよ」 そう言って、智は兵士たちに守りを固めるように指示を飛ばすのだった。 |
■参加者一覧
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
鴇ノ宮 風葉(ia0799)
18歳・女・魔
焔 龍牙(ia0904)
25歳・男・サ
滝月 玲(ia1409)
19歳・男・シ
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
朽葉・生(ib2229)
19歳・女・魔
長谷部 円秀 (ib4529)
24歳・男・泰 |
■リプレイ本文 里に到着した開拓者たち、里長たちと会う――。 「これまた、早い登場どす……。もう、傷が癒えたんやろうか……。それか、この世の中、瘴気がそんなに満ちているということやろうか……」 と、華御院 鬨(ia0351)は感想を言った後、橘鉄州斎(iz0008)に聞いてみる。 「確かに早いな……こいつはもしかすると、再生能力でも持っているのかもしれないな」 「再生能力どすか……?」 「ああ、そう考えた方が無難だろうな」 「……戦闘では使った試しがないどすが……?」 「戦闘でみるみる回復できるほどじゃないんだろうが、そう考えるのが自然だと思う」 鬨は思案顔で橘を見やる。 「出来るだけ大きな打撃を与えておく必要がありますな……。倒し切ることが出来ないまでも……」 妖艶なる陰陽師の葛切カズラ(ia0725)は、形の良い眉根を寄せて口許を歪めた。 「それにしても、なかなか面倒な環境に襲撃かけてくれたわね〜〜」 それから、カズラは里長の松山に言ってみる。 「狙われた事の無い場所が狙われてるって事は土地の汚染が目的かしら?」 松山は、吐息して首を振る。 「そこまでは何とも言えないわね。上級アヤカシだけで魔の森は構成できないし、これだけで大アヤカシの前触れだと決めつけることは出来ないわね」 「ふーん……ま、どちらにしても、あの禍津夜那須羅王にもそろそろ後遺症の残りそうなダメージも与えたい所だけど?」 カズラの言葉に、橘が答える。 「奴の弱点が知覚攻撃ってことは分かってるからなあ……。何とかしたいところではあるよな」 「まが、つー……まがつやー……ああ、もぉ、キキリナントカ並みに覚えづらい名前! マガツでいーじゃんマガツでっ!」 鴇ノ宮 風葉(ia0799)は、言ってうなった。 「それにしたって、時々報告書は見てるけど、あんたもとんでもない奴を相手にしてるじゃないの」 風葉は言って、橘の背中をばしばし叩いた。 「お前さん、久しぶりだが、相変わらずあちこちで暴走してるらしいじゃねえか。そろそろ落ち着いたらどうだ」 「あ? あんですって?」 風葉は橘の鳩尾にパンチを叩き込む。 「あたしの進化はとまらんぜい! あによ? 何か文句ある!」 「全く……相変わらずのじゃじゃ馬だな」 「あんたあたしを何だと思ってるわけ?」 「まあ、大変なことがあったのは知ってるぜ。だがまあ、それでも誰かのために生きて行かなくちゃいけない。俺たちは一人じゃないからな。俺達にも自分の人生があるが、こんな困難な時代には、アヤカシの脅威に晒された人々のために尽くさないと」 「……中々出来ることじゃないのよね。戦い続けるのは。あたしたちだってそりゃあ、怖いんだから」 「もっともだ――」 そんな会話を見やりつつ、焔 龍牙(ia0904)は意気盛んに口を開いた。 「禍津夜那須羅王もしぶといな! そろそろ決着をつけないと――」 それから、清原嶺の里の主だった面子に挨拶を行う 「焔 龍牙です。よろしくお願いします。無事で何よりですが……禍津夜那須羅王がここにまで現れるとは」 松山は、吐息して焔の言葉に答える。 「いよいよ私たちも安穏としていられなくなったものね」 「里長、大丈夫ですよ。あの禍津夜那須羅王の好き勝手にはさせません。俺も何度も負けていますが、諦めるつもりはありませんよ。必ず奴の暴挙を止めて見せますよ。好機さえあれば、奴の首、上げて見せます!」 「その言葉が私にとってもどれだけ心強いか」 と、滝月 玲(ia1409)が口を開いた。 「武天に飽き足らずまた朱藩に現れるとは……なにかあるのか? まさかこっちでリハビリ?!」 目を向けると、橘は首を振った。 「いや、奴は全国的にも活動しているようだから、裏があるわけじゃないだろう。ただ、奴が操っているのはアヤカシだけじゃないような気もするな」 「と言うと?」 「……ここ最近賞金首の動きも活発になっているように、奴は人界にも伝手を持っているのじゃないかな……と。これは推測に過ぎんのだがね」 「人界にですか?」 「まあ、アヤカシの方が強力だし、神楽の都じゃ凶風連と言う連中がここ最近はびこっているようだしな。アヤカシ達も人界の動きを探っているようだ」 「禍津夜那須羅王が関わっているとすれば、あの不厳王(iz0156)が背後にいると考えて然るべきなんでしょうね」 「その通りだ――」 「それにしてもあの上級アヤカシ、どんどん強くなっているようですね……そのうち大災害を引き起こすんじゃないでしょうか」 朽葉・生(ib2229)は言って、思案顔で橘を見やる。 「確かにな……今のところ、武天の鳳華で大規模戦を仕掛けているが、どこかで大きな戦を起こす可能性はあるな」 「禍津夜那須羅王の背後にいるのが不厳王であれば、その動員兵力は絶大なものでしょう。私たちは、非常な戦に臨もうとしているのかも知れません」 「ひとたび不厳王が動き出せば、里は軽く魔の森に飲み込まれて行くだろう。大アヤカシは簡単に動くような存在じゃないが……」 「ですが、禍津夜那須羅王がこれだけ活発に動いていると言うことは、何か、全国で不厳王に絡んだ事件が起こっているのかもしれませんね。私たちが知らないだけで。敵の正体は不明と言うことですか……」 「簡単に捕まる相手じゃない。俺たちは防戦一方だし、不厳王の居場所すら不明だからな」 そこで、コルリス・フェネストラ(ia9657)が「みなさんよろしいでしょうか」と、手を上げる。里防衛の流れは仲間達や松山智、中瀬時本達と相談する。 「これはあくまで一案ですが――」 と前置きし、作戦案を奏上するが判断は任せるコルリス。 「開拓者、及び味方兵力を壱班――禍津夜那須羅王と戦う、弐班――里を守り他の敵と戦う。この役割に分担します。各班は里、森の中で戦闘。森の中では視界の悪さを利用し、一発射つごとに樹間を駆け、敵に自分達の位置を容易に悟らせずに常に敵の死角から攻撃し、敵を分散させ、自分達も集合と散開を繰り返し、局所で五の敵には十、十の敵には二十と数の優位を作り上げ各個撃破する胡蝶陣で戦闘します」 コルリスは胡蝶陣の詳細について、里周囲の地図を用いて説明する。 「例えばここは森が壁となっており、守りに適した場所ですが、最後にはここまでに敵を誘い出し、集中砲火でアヤカシを殲滅します」 「ふむ……」 里長らは、地図の上を走るコルリスの指を追い掛けた。 「それから、弐班は里の防衛や敵の奇襲警戒、死人戦士など敵指揮系統の破壊や攪乱など、必要と思える行動を各自実施します。壱班はその間に禍津夜那須羅王を探しだし集中攻撃。ダメージを蓄積させ撤退に持ち込みます」 最後にコルリスは言った。 「この作戦での各自の行動責任は私が負います。いかがでしょうか」 松山は、頷き、 「いいでしょう。ではその作戦で行きましょう。あなたの言葉には説得力がありますね。ですが、作戦の責任は私が負いますよ。あなたの心意気は頼もしいですけどね」 「恐れ入ります。では、皆さんよろしくお願いします」 コルリスは味方兵士達に挨拶の後、現在敵が襲来する北東に面した北、東以外に西と海のある南にも見張りを配置し、敵襲があれば鼓や銅鑼を鳴らし周囲への合図をお願いする。 「方角がわかる様、東は間を開けて一回ずつ、北は二回、西は三回、南は四回ずつ鳴らして下さい」 「承知しました!」 「ありがとうございます」 「防衛戦と……まぁ、鉄砲が多いのは良いですね。防御に向いた武器ですし。私も攻めより守りの方が得意ですし……少し痛い目を見てもらいますか」 長谷部 円秀 (ib4529)は言って、戦術の詳細について意見を述べる。 「防御配備ですが、鉄砲隊の射線が交差するように配置して一発の弾丸でより多く殺傷できる射撃急襲帯をいくつか作成した方がいいでしょうね。その前に柵や障害物で敵が止まるか動きを緩めるようにして、命中率を高めるように配備しておくのが尚いいです。それを何線か作り、逐次後退しつつ里までに敵を漸減させる……という戦術を提案しますね。胡蝶陣で急襲帯まで敵を誘い出し、集中砲火で殲滅ですね」 「分かりました。では、砲術士のその辺りの指揮はあなたに任せましょう」 「恐縮です。ただこの状況では、私は最終的には禍津夜那須羅王へ向かった方がいいでしょうね。最後にはあれに全員でぶつかる必要があるでしょう」 「了解しました」 「では行きましょうか。松山殿、吉報を待っていて下さい」 滝月は言うと、先頭に立って本丸を出た――。 朽葉はまず里の防御の薄い部分を中心に味方の砲術士達が身を守りながら射撃を行なえる様、アイアンウォールで里周囲に壁を構築し、即席の里を守る防壁を展開する。 「これでいいでしょう。防護柵代わりにはなるでしょう」 「そうですね。これなら木よりははるかに頑丈ですし」 長谷部は鋼鉄の壁をこつこつと叩いた。 「ただ、多分北東方面以外からも、森の視界の悪さを利用して敵が迂回し、西側の森や南側の海から襲来する可能性がありますね」 朽葉は北や東以外にも、節分豆で練力を補充しつつ西や南方面にもアイアンウォールで壁を構築し、不意打ちが来ても最初の攻撃は防げるよう手は打っておく。 「どうやら、来ますどす……」 鬨は、前方からざわざわと駆け抜けて来る影を見やり、抜刀する。 「では、きみは右から回り込んで下さい。それからきみたちは適時散開しつつ、急襲帯へ集結。アヤカシを殲滅していきましょう」 長谷部は鬨と兵士達に言うと、朽葉を見やる。 「魔術でのサポートを宜しくお願いします」 「お任せ下さい」 そして鬨と長谷部は影に向かって加速する。砲術士達も散開。 ――鬨は死人戦士に切り掛かった。アヤカシの怒りの咆哮が悲鳴に変わる。鬨の一撃が、死人戦士の腕を切り飛ばしたのだ。 「鬼さんこちらどす……」 鬨は挑発気味に刀を振って、後退する。 長谷部は死人戦士に撃ち掛かった。高速で飛び込み、連打を叩き込めば、死人戦士の肉体に穴が開く。 そこへ、散開した砲術士たちが銃撃を叩き込む。 「よし! 後退しますよ!」 長谷部らは素早く後退する。 死人戦士は集まって来て追撃してくる。 と、さらに集まって待ち構える砲術士たちが一斉砲撃を開始した。鉄砲が立て続けに火を吹く。アヤカシたちの悲鳴が轟く。 朽葉は杖を構えると、 「魔法を使います。左右に退避を!」 と警告の後、ブリザーストームを放つ。凄絶な吹雪が森の中を白く染め上げる。死人戦士がばたばたと倒れて行く。 そうして、開拓者たちは次々と死人戦士を撃破していく……。 カズラ、風葉、焔、滝月、コルリスらは、木々の間を駆け抜けて行く。 「物理攻撃に対しあの鍛えられた体は脅威、強力な術者が増えたいま何とか深手を負わせたいのだが……」 滝月はコルリスに相談する。 「そこはカズラさんと風葉さんにお任せしましょう。おふた方の術を全てぶつけることが出来れば、禍津夜那須羅王と言っても無傷では済まないでしょう」 「滝月さんたちが頑張ってくれたら、あの怪物にただでは済まさず帰してやるわ」 「滝月! あたしらに任せときー!」 コルリスの言葉に、カズラと風葉は頷いて見せる。 「それで……禍津夜那須羅王はどこにいるのかな、と」 焔は用心しながら前方に目を向ける。 後方からはアヤカシの悲鳴や鉄砲の音が聞こえて来る。 「十一時の方向、アヤカシの反応があります」 コルリスの鏡弦に反応がある。 「禍津夜那須羅王でしょう。動きはありませんね」 「よし、それじゃあ俺と玲で正面から仕掛ける。みなさんは側面と背後から仕掛けて下さい。ありったけの知覚攻撃を叩き込んで下さい」 「行きましょう」 滝月と焔は前進し、カズラと風葉、コルリスは側面から回り込んでいく。 「…………」 禍津夜那須羅王は切り株に腰を落として長刀を持っていた。瞑目していた金色の瞳をすうっと開ける。目の前に焔と滝月がいる。 「開拓者か……」 禍津夜那須羅王は立ち上がる。 「ということは……部下達はほぼ全滅か」 焔と滝月は目くばせすると、散開してゆっくりと間合いを詰めて行く。 ――次の瞬間、コルリスが焙烙玉を敵に投げ爆発させ周囲に合図を送り、 「穿!」 鷲の目+響鳴弓の合成射撃技で禍津夜那須羅王を撃ち貫く。凄絶な矢が禍津夜那須羅王を貫通する。 「行くわよ!」 カズラは初撃は氷龍で。アレの凍てつくブレスが那須羅王を巻き込む。 「ぬう……」 禍津夜那須羅王は苛立たしげに、長刀を一閃すると、長大な衝撃波を滝月と焔に叩き込んだ。 焔と滝月は切り裂かれたが耐えた。二人は加速すると連撃を浴びせる。 焔はファクタ・カトラスで一撃離脱、移動しつつ打撃を加える。攻撃目標は足。 滝月は指、主に小指や親指を狙った攻撃で力が入り難くして一撃の威力を落とそうとする。 「別に臆したわけじゃないさ、牙の立て方を変えただけだ」 「続いて行くわよ! 黄泉より這い出る者!」 カズラによって召喚されたアレが、禍津夜那須羅王にがんをつける。 「おおおおお……!」 さすがの禍津夜那須羅王は激痛に腕を押さえる。 続いてコルリスの矢が貫く。 「焔さん!」 滝月は合図すると、泰練気法・壱で覚醒、瞬脚で攪乱接近し破軍×6回重ね掛けの一撃を見舞う。足に連撃を叩き込む。 焔も鋭く回り込むと、魔槍砲「瞬輝」によるヒートバレットを放つ。 「焔龍、炎砲槍弾!」 攻撃目標は腰。爆炎が炸裂。 禍津夜那須羅王は咆哮すると、凄まじい勢いで滝月と焔を吹き飛ばした。 「ぐ……は……!」 二人とも立ち上がれない。 風葉が神風恩寵で回復すると、そこで朽葉と鬨、長谷部が現れる。 「禍津夜那須羅王……前回の傷は癒えやしたか……どうしてそんなに早く傷が癒えるんどす……」 鬨はスキル全開で撃ち掛かり、問うた。禍津夜那須羅王はそれを弾き返すと、 「世界の苦痛がより一層私の傷を癒す」 と言って牙を剥いた。 「将こそ戦いの要……この拳で叩き潰す!」 長谷部はスキル全開で拳を撃ち込む。禍津夜那須羅王は受け止めたが、凄まじい衝撃に後退する。 朽葉がララド=メ・デリタを叩き込み、カズラが黄泉より這い出る者を立て続けに撃ち込む。さらに、風葉が混沌の使い魔で追い打ち。 「久しぶりに使うけどっ! ……どーせ逃がすなら、駄目押しくらいはしときたいじゃないっ?」 禍津夜那須羅王の右腕から胸部に掛けてが破壊される。 「やってくれるじゃないか。私にこれだけの苦痛を与えてくれるとはね。人間風情が――」 禍津夜那須羅王は冷たく言い放つと、地面に刀を突き刺した。 爆発的な衝撃波が全周に放出される。開拓者たちは吹き飛ばされた。 禍津夜那須羅王もジャンプして離脱すると、そのまま里から撤退したのだった。 |