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■オープニング本文 ●戦雲 アヤカシは、東和平野での攻撃を開始した。 その目的は住民の蹂躙。開拓者たちの反撃もあって最悪の事態こそ避けられたものの、各地の集落、特に朽木では多くの犠牲者を出し、北方では北ノ庄砦が陥落し開拓者が後退を強いられた。 日は傾きつつあるが、アヤカシは夜でも構わずに活動する。 前進で消耗した戦力も、魔の森で十分に力を蓄えた新手を加えることで回復していくだろう。 「本隊を佐和山まで前進させる。援軍を集合させつつ反撃に出る」 備えの兵を残し、北面国数百の本隊が整然として清和の町を出陣する。城へと進むと時を同じくして、東和地域にははらはらと粉雪が舞い始めていた。 ……時を同じくして、北面国からの要請に応じた万屋から、新兵器が戦場に届けられようとしていた。それを「宝珠砲」と言った。宝珠の力を用いて弾丸を発射するいわゆる大砲である。大砲と言うものはこの時代すでに存在しているが、この宝珠砲は万屋が開発した最新型の大砲である。 かくして、宝珠砲は大型の輸送船に搭載され、東和平野の作戦拠点である清和の町へ輸送される運びとなっていたのだが……。 大伴定家は、傍らに立つ銀髪の男――理穴国からの援軍の指揮官である鋳差に声を掛けた。 「今回の戦、二年前を思い出すか」 「そうですね……あの時も過酷な戦でしたが、炎羅は弓弦童子のように計略を用いて来る相手ではありませんでしたし。無辜の民を蹂躙するなど……厳しい戦になりそうですな」 鋳差は言って、眉間にしわを寄せる。 「ふむ……そろそろ例の新兵器が到着するはずじゃがの」 「宝珠砲――ですか」 「うむ――」 大伴は、西の空を見上げる。 ……魔の森にて。 弓弦童子は、翔鬼丸から報告を受けていた。 「何だと? 新型の大砲が清和に運ばれて来る?」 「は、どうやら、万屋が北面に手を貸しているようです。宝珠砲と言う大砲だそうです」 「大砲か。あれは的確に運用されると厄介だぞ。まあ……少なくとも部下達にとってはな。わしには『あれ』があるが……くく」 弓弦童子は、手に持った骸骨の杯の中身を飲み干すと、それを投げ捨てた。 「まあ仕方あるまい。人間どもの希望を打ち砕くには宝珠砲を奪い取るしか無かろう」 「では私が――」 「お前が出ずともよい。部下に任せておけ。いずれにしても戦場外に多くの戦力は割けん。大砲は陸路か、空路か」 「空路です。大型飛空船の一隊です」 「護衛は」 「総数二十から三十。恐らく万屋の傭兵たちと、一部神楽の開拓者かと」 「では、以津真天に赤鬼、青鬼らを乗せてぶつけよう。ふむ、大将には鉄甲鬼の羽郎丸を当てよう。五十体ほど連れていけ――」 「ははっ」 翔鬼丸は主の言葉に従い下がった。 ――宝珠砲を搭載した万屋の飛空船隊は、東和平野上空に接近しつつあった。周囲を固めるのは龍やグライダー、鷲獅鳥に乗った傭兵と開拓者たちである。 と、南方の警戒に当たっていた傭兵は異変を察知して望遠鏡を持ち上げた。黒い影が多数接近して来る。 「来たか……」 傭兵は、旋回すると、味方に敵襲を告げる。 飛空船隊にも緊張が走る。 「総員敵襲に備えろ! 宝珠砲を何としても清和に届けるまで、ここで奴らに撃墜されるわけにはいかん!」 開拓者達も迎撃態勢を取る。 鉄甲鬼の羽郎丸は、人外の言葉で咆哮すると、鬼たちを率いて突撃して来るのだった。 『グガガ……人間ども……皆殺し……! 弓弦童子様も鬼使いが荒いお方よな……グフフ』 果たして、飛空船隊の運命は護衛の傭兵と開拓者たちに委ねられたのである。 |
■参加者一覧
鈴梅雛(ia0116)
12歳・女・巫
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
焔 龍牙(ia0904)
25歳・男・サ
滝月 玲(ia1409)
19歳・男・シ
鈴木 透子(ia5664)
13歳・女・陰
エメラルド・シルフィユ(ia8476)
21歳・女・志
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
嶽御前(ib7951)
16歳・女・巫 |
■リプレイ本文 「やはり、襲ってきましたね」 鈴梅雛(ia0116)は言って、仲間達に合図を送る。 「なまこさん、頑張りましょう」 甲龍のなまこさん、逞しく咆哮を上げる。 「ひいなは、志士の方と二人で組んで行動します。傭兵の方たちも、二人組を作って、お互いにフォローし合うようにお願いします。万商店の傭兵の方たちには、分担して各船の防衛などをお願いします。直接の指揮は、隊長の勘兵衛さんにお願いします。ひいなは、支援に徹しますので、護衛をお願いします」 「了解したぜお嬢ちゃん!」 豪放快活な兵衛はにかっと笑うと、刀を振り回して部下達に号令を下す。 雛は嶽御前(ib7951)と、船二隻ずつを目安に分担を分けて、それぞれを護衛する方を効率良く支援できるように動くつもり。 「嶽御前さんは、ここをお願いします。ひいなは、向こう側の支援に回ります。ただ、混戦も予想されるので、手の届く範囲の方は支援します」 「分かりました雛さん。それにしても……アヤカシもどうして打つ手が早いですね。どうして我々の動きがばれたのでしょうか」 嶽御前は言って、暮の手綱を引いた。 「よお! 嶽御前、雛! 宜しく巫女の支援頼むぜ! 頼りにしてる!」 橘鉄州斎(iz0008)は、言ってアヤカシに向かう。 「橘様、お気をつけて」 嶽御前は、それから雛に言った。 「待ち伏せされていたのでしょうか?」 「そうかも知れませんね。でも、弓弦童子のことですから、どこにスパイを放っているとも限りませんよ」 「人間の賞金首もあちこちで活動しているようですし、正直、油断はできませんが……では、行ってきます」 嶽御前は加速する。 「空中で来るとは面倒くさい連中よね〜〜まあ好きにさせるつもりはないんだけど」 名状不能物使い、妖艶なる陰陽師の葛切 カズラ(ia0725)。 「勘兵衛――!」 「よおお姉ちゃん」 勘兵衛は大胆不敵な笑みを浮かべる。 「まずは戦闘教本に則り二人一組でペアを作って、一人が仕掛けるのをもう一人が補うスタイルで行きましょう。聞こえてる?」 「ああ! 聞いてるよ! それで!?」 「サムライと泰拳士で四組、サムライと弓術士で二組、サムライと志士で二組、橘さんと志士で一組、勘兵衛と志士で一組、志士二人で一組、残りの志士の人には巫女の二人と組んでもらう形でお願い。サムライ組には咆哮で以津真天を惹き付けて船から離す役目をお願い。ペアの人は侍に引かれた隙を突いて以津真天を早々に潰すなり鬼を落下させるなりして敵の絶対数減らし優先で! さらに二組四人での行動を心掛ける感じで死角を補い合って迎撃実行って具合で。敵の総数を把握し船に近づけさせない様に、船の上空を取らせない様に船に乗り込まれない様にって具合で、お願いしとくわ!」 「言うは易しだな! まあこっちも騎乗戦力じゃ負けてるわけじゃないが、以津真天は厄介だぜ!」 「それを何とか指揮するのがあなたの仕事よ! よろしく!」 「ここは必ず守って届けてみせる!」 焔 龍牙(ia0904)は言って、太刀と魔槍砲を構える。 「玲! ここは死守だ! 弓弦童子の好きにさせてなるものか! 宝珠砲、必ず届ける!」 「輸送船を守り無事に宝珠砲を清和の町へ届ける。戦の流れを引き戻す一手となるだろう宝珠砲、何としても届けねばならぬっ」 滝月 玲(ia1409)は言って、頷いた。 「以津真天の瘴気毒が気になるな」 滝月は、以津真天の瘴気毒に有効かどうか分からないが念のため瘴気を吸い込まない様に手拭を重ねた手製マスクを面頬の下に装着している。 「向こうの戦力は鬼と以津真天らしい! 船が雲に逃げ込むまで、ひとまず時間稼ぎだな!」 「空船の常道として、二騎一組みの戦術は行うとして、機動力に勝る方が戦いを有利に進めることが出来る。以津真天はその点では厄介かもな」 「俺の蒼隼だってかなりのレベルだ! 以津真天に後れはとらん!」 「俺の瓏羽だってまあ相当成長したとは思うんだけどな。空戦は乗り手と相棒とのコンビネーションが重要。鬼どもにやらせはしないさ」 「ああ! おっと、橘さん!」 「焔、滝月、いけるか」 「そっちこそお願いしますよ! 相談役の助力に感謝します!」 「何の。お前さんたちの働きには頭が下がるよ。今は苦戦しているが、この戦、まだ分からん」 「そうですよね。俺たちは最初負けていますけど、最後に勝っていればいい。命を失った者たちのためにも。奴らを討つ、そうでしょう」 「弓弦童子! あの非道なる者ども! 許さん! 必ず報いを受けさせてやる!」 「宜しく頼む――」 そこへ舞い降りて来るエメラルド・シルフィユ(ia8476)。 「私は久し振りの空戦だな、なまってなければいいが……ラファエロ、行くぞ!」 「エメラルドさん、気合入ってますね」 「貴公こそ、そうではないのか。この剣にかけて、民を救う。私にはそれしか己の道は見えぬ。あいにくと、私はそれほど器用ではないのでな」 「エメラルドさん、俺たちにできることは限られていますけど、最善を尽くしましょう。目の前の民を救うしかありません。あなたが言うように」 「そうだな……私は迷える子羊だが。私は強くあらねばと神に誓った。今ここで、目の前の民を救うことしかで出来ん」 エメラルドは吐息して言った。 「二人一組で連携して行動だな。弱った敵や離れた敵は雷鳴剣で撃ち落とす。私は護衛役に専念し、状況に応じて船間を移動し、対応しようと思う。攻撃は以津真天を狙っていこう。無論、向こうもこちらの龍を狙ってくるだろうが、ラファエロを落とされないように注意だな。青鬼に雷撃無効ということはないと思うが……」 「そいつは大丈夫だぜエメラルド」 橘は言った。 「まあよほど高度な雷神クラスとか、それなら無力化もありかも知れんが、ただの鬼にそんな強力な能力は無いだろう」 「む……そうか相談役」 エメラルドは、橘を見て思わずうなる。戦場の橘が身にまとう剣気は、尋常ではない。エメラルドは肌がざわりと泡立った。一体どうすればこれほどの剣気を……エメラルドはこのような感覚を人間相手に久しく味わったことが無い。この男……。 コルリス・フェネストラ(ia9657)は、仲間たちの間を飛び回り、勘兵衛のもとにいた。 「全体の指揮のほど、宜しくお願いします勘兵衛さん。二人一組で一班を作り、配置場所を敵の動きに合わせ、組み換えながら敵の攻撃から船を守る。その流れに従い、私は後衛となり前衛の仲間と組んで駿龍の応鳳を駆り船を飛行して防衛いたします」 「おお! 頼りにしてるぜ開拓者の姉ちゃん!」 「まずは鏡弦での探査が基本ですね」 コルリスは、接近して来るアヤカシ集団を見やり、弓の弦を掻き鳴らした。アヤカシ達は相当数が戦闘隊形を取り、いったん滞空している。コルリスは鏡弦に反応があるのを探知した。 「南に展開するアヤカシ集団……五十一体ですね。相当数が範囲に入っているでしょうか」 カズラは望遠鏡を下ろすと、「当たり」と口笛を吹いた。 「コルリスさんの言う通り、アヤカシは二十五組、以津真天に赤鬼青鬼の組み合わせね。何か奥に一体馬鹿でかい鬼がいるわよ」 「確かに……あれは鉄甲鬼ですね」 コルリスは望遠鏡を下ろした。 「ですが、あんな巨大な鉄甲鬼は見たことがありません」 鉄甲鬼――羽郎丸の人外の咆哮がびりびりと響いている。アヤカシ達は、二騎一組みの戦闘隊形を取りつつある。明らかに羽郎丸が指示しているのが分かる。大刀二刀流の羽郎丸は、見るからに危険な存在だ。 「あの鉄甲鬼が指揮を取っているようですね。いわゆるネームドアヤカシですね。恐らくは中級か上級の指揮官の鬼ですね」 コルリスの言葉に、カズラは思案顔。 「さてね〜相手も二騎一組みの戦術を取るようだけど。ここは歴史が証明する通り、お互いの戦闘力には大きな差は無いってところかしらね」 「勘兵衛様、船には退避をお命じ下さい。雲に隠れることが出来れば、まだ私たちも戦いやすくなるかと」 「ああ、急がせよう」 「勘兵衛――」 橘がやってくる。 「よお、コルリス」 「どうもお久しぶりです」 「まあな。――勘兵衛、手っ取り早く船を移動させないと」 「分かってるよ。お前もくどくど言うな」 コルリスとカズラは、小さく笑みを浮かべる。 「急ぎましょう」 「よし! おい!」 勘兵衛は部下の一人を捕まえると、船の退避を急がせる。 「船にはさっさと雲に隠れるように言え! まだ間に合う! 巻き込まれて死にたくなきゃ戦場は俺たちに任せろってな!」 勘兵衛の怒声に、傭兵はすっ飛んで行く。 開拓者たちと傭兵たちは牽制しつつ、船を移動させる。 ――アヤカシ達から怒りの咆哮が上がる。アヤカシ達はいよいよ動き出す。 「よーし来るぞ! 奴らを一匹足りとも生かして通すなよ! ここが踏ん張りどころだぞ――!」 サムライたちの咆哮でアヤカシの戦列が乱れる――。 「ファクタ・カトラスは蒼隼と力を合わせた連携攻撃、避けきれるかな!」 焔はファクタ・カトラスを仕掛ける。砂迅騎の騎乗スキルが赤鬼を切り裂く。 赤鬼は咆哮して火炎を吐き出す。焔は炎に包まれるが、直後に脱し、旋回する。 「中々やるじゃないか!」 焔は裂帛の気合とともに打ち掛かる。赤鬼が蛮刀を振り上げるのを叩き割って粉砕した。 以津真天は牙を剥いたが、焔は一刀のもとに切り捨てた。 「行け! 瓏羽!」 滝月が命じると、瓏羽は火炎を吐き出した。青鬼が乗る以津真天が焼き尽くされ、青鬼は悲鳴とともに落下していく。 そして咆哮で引き付けると、そのまま空域をチェンジする。つられて動く鬼達に、傭兵たちが矢を撃ち込む。鬼達は次々と撃ち落とされて行く。 そこへ青鬼が切り掛かって来る。滝月は一撃二撃と弾き返すと、青鬼の腕を切り飛ばした。続いて手綱を引いて以津真天を叩き斬った。墜落していくアヤカシ。 「行くぞラファエロ!」 エメラルドは加速すると、赤鬼に突進する。 ――と、以津真天の毒旋風が来る。 エメラルドは歯を食いしばって突進した。赤鬼と激突。激しく打ち合い、以津真天を切り捨てる。赤鬼は落下する寸前に飛びかかって来た。 「何!」 赤鬼はエメラルドの背後に飛び移って来た。赤鬼は背後から蛮刀を振り下ろす。ラファエロは失速する。 エメラルドは「ふざけるな!」と立ち上がると、怒号とともに雷鳴剣を解き放った。赤鬼の刀を粉砕してその首を切り飛ばした。墜落していく赤鬼。 「響!」 安息流騎射術+響鳴弓の合成射撃技で以津真天を討ち抜いて行くコルリス。 「早く……急いで下さいよ」 飛空船は近くの雲の中へ退避していく。 コルリスは鏡弦でアヤカシの動きを探知しつつ、以津真天を撃ち落としていく。 傭兵たちは二騎一組の戦術でアヤカシ達を撃破していく。 「さすがね〜やるじゃないの」 カズラは言いつつ、焔と滝月を支援するように斬撃符を叩き込んだ。凄まじい破壊力のアレが以津真天と赤鬼を粉砕する。 焔と滝月は、軽く手を上げてカズラに笑みを向ける。 「まだボスが残ってるわ!」 カズラは、後方で咆哮している鉄甲鬼を指し示した。 雛は、閃癒での回復と、以津真天の瘴気毒の回復を主に動いていた。 「志士さん、支援をお願いします」 雛は閃癒を解き放つ。傷を癒す光が周囲へ解放される。ペアを組んでいる志士を信じて、落ち着いて集中するようにして、出来るだけ回復量が上がるようにする。 「接近戦は出来る限り避けて下さい。瘴気感染が広がると、対応しきれません」 「すまない雛殿」 「宜しくお願いしますね」 雛はぺこりとお辞儀する。 嶽御前も雛とは離れた場所で回復に当たる。 「下がって下さいませ。我がお味方を回復します」 神風恩寵――巫女が解き放つ優しい風が兵士を包み込む。 それから、解毒で以津真天の毒を回復する。 「どうにか……船は間に合ったようですね」 嶽御前は、後方を振り返り、雲の中へ退避した船隊を確認する。 ――その時である。大気を震わせる咆哮が轟き、鉄甲鬼の羽郎丸が突進して来る 「奴が来るぞ!」 焔は迎撃に備える。 「みんな離れて! 挨拶代わりよ! これでも食らいなさいな!」 カズラは精神を集中させると、アレを召喚する。 「業火、炎滅!」 カズラの火炎獣が炎を吐き出すと、突進して来る羽郎丸はたまらず悲鳴を上げた。 「みなさん、支援します」 「回復は任せて下さい」 雛と嶽御前が後方に着く。 焔はファクタ・カトラスを一撃離脱で打ち込み、羽郎丸の怪鳥の羽を狙う。 羽郎丸は咆哮する。 『小賢しい人間どもが! 俺様が食らい殺してやるわ!』 「やかましい、人間の言葉で話せ!」 滝月は泰練気法・壱で覚醒し、壱の太刀で体勢を崩させ弐の太刀で破軍を五回重ね掛けした斬撃を浴びせかける。 凄絶な斬撃が羽郎丸の片腕を切り飛ばした。 「これ以上好き勝手にはさせん! 弓弦童子には必ず報いを受けさせる!」 エメラルドは強い口調で言って、羽郎丸へ精霊剣を叩き込んだ。凄絶に切り裂かれる羽郎丸。 「カズラさん!」 「コルリスさん! 支援をお願いね! あの鉄甲鬼、やってやるわ」 「承知いたしました。やってやりましょう」 コルリスは冷静に頷くと、 「響!」 と連射を開始する。 カズラの呪縛符と斬撃符が羽郎丸を捉え、傭兵たちの集中砲火が叩き込まれる。 焔はずたずたになった羽郎丸を見据えると、魔槍砲によるスキル「ヒートバレット」を使った一撃を放つ。 魔槍砲+スキル「ヒートバレット」の砲撃。切り札――。 「焔龍 火炎砲弾!」 爆裂が羽郎丸の肉体で炸裂する。 羽郎丸の肉体は粉々に吹き飛んだ。そうして、この鉄甲鬼は瘴気に還元して消失した。 赤鬼と青鬼の残党は悲鳴を上げて壊走していく。 「よし! 急ぎ着陸だ! 俺は清和へ先に知らせておこう。頼むぞ」 橘は言うと、龍を駆って清和へ向かう。 ――清和。 大伴定家は、飛空船隊が到着すると、開拓者たちから報告を受けた。 「そうか……みなごくろうであった。良くやってくれたの。ところで、もう少し頼まれてくれるかの」 大伴が言うと、雛と嶽御前は顔を見合わせる。 「何でしょうか大伴様」 「宝珠砲を佐和山まで輸送する。その護衛もお願いしたいのじゃ」 「それはもちろん、承知しました」 「すまぬのう、無理を言う」 「大丈夫です。我らはまだ頑張れますから」 嶽御前は言って口許を緩めた。 それから、小型輸送船による宝珠砲の輸送が始まる。 船は低空飛行で佐和山までの道のりを急ぐ。 「待っていて下さい芹内王……雛たちが宝珠砲をお届けします」 雛は、小さな胸に拳を握りしめ、弓弦童子への反撃を誓う。 やがて、佐和山の城が見えてくる。 かくして、宝珠砲は歓呼に迎えられ、無事に佐和山へ到着するのだった。 |