朱の影、橘の里に迫る
マスター名:安原太一
シナリオ形態: ショート
EX :相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/02/17 17:28



■オープニング本文

 開拓者ギルド――。
 ギルド相談役の橘鉄州斎(iz0008)は、報告書に目を通していた。この日、橘の手元には目立った事件は無く、珈琲を飲みながら久方ぶりに穏やかな午後の時間を過ごしていた。
 そんな橘に、アシスタントの森村佳織が駆け寄って来る。佳織も随分とここで経験を積んで、今では橘に無くてはならない存在となっていた。
「橘さん――!」
「どうしたの、大事件か?」
「橘の里から急報ですよ! 空賊が里を攻撃しているんですって! お兄様の厳楼斎さんからたった今連絡が入ったのよ!」
 橘の里は、一年以上前に一度アヤカシの攻撃を受けて、生き残った鉄州斎の兄である厳楼斎が立て直しを図っていた。橘家は歴史ある武天の旧家であり、鉄州斎もそこで育ったのだ。鉄州斎も兄から近況は聞いていた。魔の森のアヤカシは大人しくなったと聞いていたのだが。
「空賊か……何でよりによってちっぽけな橘の里を攻撃する。……連中に理由なんて必要ないんだろうけどな」
 すると、佳織は呼吸を整えて言った。
「鉄州斎さん、落ち着いて聞いてね。空賊の名前は、『赤龍党』なの」
「何だって?」
 鉄州斎は驚愕した。赤龍党と言えば、天儀全国に指名手配されている凶悪な賊集団だ。橘も何度か剣を交えた宿敵である。
「くそっ、復讐か? 佳織、すぐに開拓者を集めてくれ。それから――」
「高速船の手配、ですね」
「よろしく」
 鉄州斎は出立の準備を開始する。

 ――橘の里。
 橘厳楼斎は、兵士達に命じて、民の避難を最優先にしていた。赤龍党は、里に火を放ち、逃げ遅れた民を切り殺していた。
「奴らはどこまで来ている」
 厳楼斎は逃げてきた村の長老に問うた。
「厳楼斎様、東の村落は全滅しました。赤龍党は、手当たり次第に里を破壊しております……このままでは、私たちの土地は滅ぼされてしまいます」
「お前たちは近隣の里へ逃げよ。神楽の都に連絡を入れた。領主様にも兵を送って頂くよう伝えた。今は、生き延びよ」
「厳楼斎様……無念です」
「急げ。民を頼むぞ」
 言って、厳楼斎は赤く染まる東の空を見上げた。
「鉄州斎……今一度助けてくれ……赤龍党が狙うのは、ここがお前の橘の里だからだ」

 ――赤龍党は、炎の向こうからやってくる。
「お頭、厳楼斎が、神楽の都の鉄州斎へ連絡を入れたようです」
「よし、今度こそ鉄州斎を仕留めるぞ。これ以上の失敗は出来ん」
 ぼさぼさの長髪の隻眼の巨漢がうなるように言った。男の名を、赤龍と言った。悪逆極まりない賊集団として天儀に指名手配されている「赤龍党」のリーダーである。赤龍党はこれまでに数々の事件を起こし、数多の民を殺害して来た極悪人たちである。だが――。
「依頼人から、次にしくじったら契約を打ち切ると言われた。氷華の奴は殺されてしまったし……分かってるな。これをしくじったら、俺達はおしまいだぞ」
 赤龍ほどの悪党が怯えていた。修羅場をくぐりぬけてきた部下達もそうである。契約の打ち切りとは、それは闇の掟によって始末されることを意味しているからだ。
「橘の里を潰す! 鉄州斎もろとも、全てを葬り去るんだ! いいな! やられたくなかったらやるしかない! ここで決着をつける!」
 赤龍が吼えるように言うと、一党は獣じみた声で「おお!」と吠えた。


■参加者一覧
華御院 鬨(ia0351
22歳・男・志
葛切 カズラ(ia0725
26歳・女・陰
焔 龍牙(ia0904
25歳・男・サ
玲璃(ia1114
17歳・男・吟
コルリス・フェネストラ(ia9657
19歳・女・弓
ウィンストン・エリニー(ib0024
45歳・男・騎
羽紫 稚空(ib6914
18歳・男・志
華角 牡丹(ib8144
19歳・女・ジ


■リプレイ本文

 高速飛空船が行く――。
 華御院 鬨(ia0351)。女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出している。今回は京美人の女装をしていた。
「全く、人の相手などしとうないのに、懲りないもんどすなぁ」
 と呆れ顔で云う。
「ひとまずそれは置き、策としては、西と東の両方から攻めて、赤龍党の幹部は逃がさない様に挟み撃ちにするのがよろしいやろ。うちらは船が一隻どすから、北か南のどちらかに降りて、そこから東西に分かれて挟撃する様に。少なくとも赤龍を倒す事を最優先として、他の相手がいてもできる限り無視どすな。……それでも、赤龍を追いかけていたとしても里人の保護は第一優先どすが。とりあえず、うちは武器らしい武器を持っていないので、里人が逃げている演技をして敵を誘いだしやす。場所の特定は任せて下さい。うちには心眼がありますからな」
 妖艶なる陰陽師の葛切 カズラ(ia0725)は、美しい形の良い眉根を寄せてうなった。
「そろそろ始末しておきたい所なのよね。赤龍党って、どうやらアヤカシと繋がっているみたいだし。ただの雑魚ならいざ知らず、ここまで大きな事件を起こした連中もそうはいないわ。出来ればとっ捕まえて、事情を聞きたいわね」
 それを聞きつつ、熱き男、「焔龍」焔 龍牙(ia0904)は、思案顔で橘鉄州斎(iz0008)を見やる。
「赤龍党が橘家を襲撃とは、ついに、最後の行動を起したか。必ず守って見せる――鉄州斎殿、これがやつらの本当の狙いか? 今回の動きあなたなら、どう見る?」
「ああ……今更になってまたしても俺の里を狙うとは、兄が言うには俺が狙いらしいが。今回で決着をつけやるさ。赤龍党。だが、奴らの背後にいるのは何者か……一口にアヤカシと言っても見当もつかんからなあ」
「それはそうですが……赤龍が口を割るでしょうか?」
「さてな……」
「差し当たり、俺たちは着陸地点から村を迂回して東側に移動。東側から進入して、占拠している赤龍党を攻撃し開放していく、といったところですか。開放を行いながら赤龍を追撃していきましょう」
 美しき巫女の少年、玲璃(ia1114)もまた、思案顔で言った。
「まずは里に到着後、迎撃班と追撃班に分かれ、里内で赤龍党を挟撃し撃破、との流れでしょうか? 私は迎撃班に回りましょう。加護結界はお任せ下さい。着陸後、みなさんで橘一家や里の味方のいる橘家の屋敷に向かい、協力をお願いすることになるでしょうか」
 壮年の逞しい騎士が口を開いた。ウィンストン・エリニー(ib0024)である。
「又もや赤龍党の襲撃であるが、様子から省みるに何やら余裕が無いと見受けられるな。しかしこういう時こそ凶行の危険が増すのであろうし、現れたからには因縁はここで絶ち切らねばならぬしな。故に禍根を封じる為にも、必ずや討伐してみせようぞ。橘一党を襲う妄執はここで成敗せねばなるまいな」
 ウィンストンは言って頭を垂れる。
「ウィンストン、久しいな。元気だったか。赤龍党関係では特に世話になってるな」
 橘とウィンストンはがっちり握手を交わした。
「橘も、何かと事件が多いところであるな。だが、今日で悪夢は終わらせようぞ」
「ああ。何とかな……なるといいが」
 浪志組隊士の羽紫 稚空(ib6914)は、元気溌剌とした声で言って、拳を打ち合わせた。
「俺に出来ることは確実に敵にダメージを与えること……か。ま、出来るなら仕留めていきたいが……俺は、今回の依頼で強くなるぜ、何故かって? その為にこの依頼に参加したんだからな!」
「よお稚空、足元をすくわれんなよ」
 橘は言って、からからと笑った。稚空とは浪志組設立の選抜試験の際に刀を交えたことがある。
「へへ、橘さん……俺もあれから腕を磨いてるんだぜ! 俺も強くなってあんたを越えて見せる!」
「そいつは楽しみだなあ。またいつか、手合わせ願おうか」
 カズラに引けを取らない美しき花魁のジプシー、華角 牡丹(ib8144)は、憂いを帯びた吐息を漏らした。
「戦でありんすか……まったく、嫌な世の中でありんすなぁ。はて、お相手はんにも思う所がありんしょうが……申し訳ありんせんなぁ……わっちらは迎撃班と追撃班に分かれる形でありんすなあ。わっちは迎撃班を担当しましょう。迎撃班は橘はんご一家と味方兵と合流し迎撃態勢を整え、襲来する赤龍達を迎撃ですなあ。追撃班と挟み撃ちにするまで敵を引き付けるのが役割となりましょうね」
「牡丹、よろしくな」
「橘はんも大変でありんすなあ。賊に恨まれる覚えでもありんすか」
「まあ、それがありありらしくてね」
 鉄州斎は、言って肩を落とした。
 弓術士の娘、意外な戦術家のコルリス・フェネストラ(ia9657)は、思案顔で口を開いた。
「みなさんの話をまとめますと……」
 コルリスは続けた。
「強行着陸場所は里の橘一家ら里の味方と合流しやすく、東側に回り込みやすい場所とする。次いで、着陸後は迎撃班と追撃班に分かれ、迎撃班は里に残る橘家一家や味方戦力と合流する為屋敷へ急行。合流後作戦を説明し認めてもらった後、共に赤龍党を迎撃。追撃班は迂回して里東側に回り込み東側を開放しながら赤龍党を追撃。迎撃班と追撃班が敵を挟撃し赤龍ら幹部を確実に撃破、と言ったところでしょうか?」
 そうして、コルリスは仲間たちの同意を取りつけると、鉄州斎に言った。
「以上となりますが、橘さんはいかがでしょうか?」
「そうだな……現場に入ってみないと何とも言えないところもあるが、概ね良いんじゃないかな。後は時間との戦いだな……」
 ややあって、船長が一同に声を投げる。
「みなさん! もうすぐ橘の里ですぜ!」
「よし、船長、里の北へ強行着陸だ。小さな空き地があるはずだ」
 橘は、眼下を見下ろし、船長に指示を出す。
「了解しました!」
 船は橘の里上空に入り、強行着陸する。
「東が燃えているどすな……」
「ひどいわね」
 開拓者たちは、眼下の里を見下ろし、呟く。
 それから、一同は飛び降りると、迎撃班は橘の屋敷へ駆け出し、追撃班は里の東へ回り込んでいく――。

 ――邸に到着すると、武装した兵士たちが行き交いしていて、厳楼斎が開拓者たちを出迎えた。
「鉄州斎!」
「兄上!」
「良く来てくれたな。間に合った」
「それはそうだろう」
「橘様――」
 コルリスが言うと、鉄州斎は頷き、屋敷の中へ一同を連れて入っていく。
「現状は?」
「赤龍党は東の集落を制圧しつつある。これから奴らを迎撃に向かう」
「それに付いてですが、厳楼斎様には、提案を聞いて頂きたく」
 コルリスは、船の中で仲間たちが取りまとめた作戦に付いて語る。
 厳楼斎は思案顔で頷いた。
「あい分かった。では、東からの追撃部隊はお前たちに任せる。こちらは、正面から奴らを引き付ける」
「厳楼斎様、お味方の兵士には、里内の建物等、身を隠せる場所を利用しつつ、地の利を生かし里内を駆け抜け、敵の不意をつく方角から集合と離散を繰り返し、二人には四人、四人には八人と常に局所で数の優位を確保しつつ、着実に敵を倒す胡蝶陣で迎撃する案を提示いたします。私たちには、まだ地の利があります」
 コルリスの言葉に、厳楼斎は頷く。
 さらに、玲璃が言った。
「この後東側より追撃班として、私達の仲間が里東側を開放しながら赤龍党を追撃してきますので、私達が迎撃し敵を食い止め続ければ追撃班と挟撃包囲して殲滅する形にできます」
 と説明し協力を依頼する。
「隊長、開拓者の提案だが、胡蝶陣戦術はとれそうか」
 すると、巨漢のサムライ中隊長が豪快に笑った。
「お任せあれ! 日ごろから訓練しておりますからな! 里の地図を見せて頂けますかな! 迎撃地点を確認したいと存じます!」
「みんな、宜しく頼むぜ」
 鉄州斎は、一人一人と握手を交わした。

 燃え盛る炎の中を、ウィンストン、焔、華御院、カズラ、稚空は行く。
「ひどいわね……」
 赤龍党の凶行の跡がまざまざと残っている。家屋は破壊され、時折、逃げ遅れた民の遺体が横たわっている。
「むう……何と言うことであろうか」
 ウィンストンは、亡骸の前に膝をついて、祈った。
「赤龍党……許さん!」
 焔は感情を露わにした。
「全くひでえな……畜生の働きだな」
 稚空も、亡骸に手を合わせる。
「急ぎましょうか。賊たちが橘はんのもとへ辿り着く前にうちらで後ろを突くどす」
「よし、亡くなった者たちの無念を晴らす」
 開拓者たちは警戒しつつ踏み込んでいく。
 やがて、炎の向こうに影が見えて来る。
「ストップどす。心眼を使うどす」
 鬨は心眼「集」を発動する。
「生命反応は22人。行きましょう」
 開拓者たちはさらに接近していく。
 賊たちの怒号が聞こえて来る。
 鬨はもう一度心眼を使った。
「22人……赤龍党は22人どすな」
「結構な数じゃないの」
「数だけは集めたものだが……」
「行くか?」
「よし、気を付けろ。奇襲攻撃で行く」
「いえ、まずはうちがおびき寄せるどす。武装はレイラどすからな」
「分かりました。気を付けて」
「よろしく、どす」
 鬨は言うと、逃げ遅れた村人の振りをして、赤龍党に近づいていく。
 物影を移動し、ふらふらと歩み寄った。
 赤龍党の一人が、刀を振りかざして牙を剥く。
「よお橘の民人! 残念だったなあ! ここにいたのが運の尽きよ!」
 ずかずかと歩み寄って来る盗賊。
「た、助けて!」
 鬨は悲鳴を上げて逃げ出した。
 盗賊が数人、笑声を上げて追って来る。
「へへ! 待てこらあ!」
 ――次の瞬間、鬨は反転してレイラを一閃した。
 賊は切り裂かれて絶叫した。
「何だ!」
「残念どすなあ。うちは開拓者どす」
「か、開拓者!?」
 と、ウィンストン、焔、稚空が加速する。
 カズラは、呪縛符を解き放ち、神経蟲で動きを封じる。
 あっという間に追い詰められる賊たち。
「関わりなきものは去れ! 歯向かうと容赦はしない!」
 焔は、怒号を叩きつけた。
「ま、待ってくれ! 俺たちは赤龍とは何の関係もねえ! 助けてくれ! こんな仕事受けるつもりはなかったんだ!」
「今更何言ってやがる! 何人殺した!」
 稚空は剣を突き付ける。
「せ、赤龍と氷雷だ! やったのはあの二人と取り巻きだ! 俺達もほとんどは急に雇われた傭兵なんだ! 昔の赤龍党の面子はほとんどいねえ! ボスに消されたんだとよ! 赤龍の奴、失敗続きで、やばいらしいんだよ! 今回橘をやれなかったら、自分がやられるってびびってるんだよ!」
「それで、氷雷というのは誰であるかな。そんな名前は聞き覚えが無いが」
「赤龍の片腕の女志士だ。いかれた女だ。殺された氷華に代わって、赤龍の片腕に付いたらしいぜ」
「ほう……」
 賊たちは、頭を地にこすりつけて懇願する。命乞いをする。
「どうするの?」
「……仕方ない。志体持ちを繋いでおくことも出来ませんし。行かせましょう」
 焔は言って、太刀を突き付けた。
「行け。二度とその面見せるなよ」
 盗賊たちは、したり顔でその場から逃走する。
「さて……赤龍のほかに、ボスがもう一人いるようであるが」
「どこまでもうちがおびき出すんは無理どすし、迎撃班と合流して片づけるしかありませんな」
「そうであるな……タイミングを計るか。挟撃で奇襲を仕掛ける――」

 迎撃班は、各ポイントで赤龍党を待ち伏せしていた。
 コルリスは、家屋の上に乗って、胡蝶陣の指揮を取る。身を潜めて、赤龍党が接近して来るのを確認する。
 コルリスが合図を送りつつ、兵士達は前進する。
「皆はん、正念場でありんすよ。頑張りなんし」
 牡丹は言って、呼吸を整える。牡丹もまだ戦闘経験は浅い。緊張に鼓動が高鳴る。戦闘前の高揚感は牡丹の感情を揺さぶった。
 玲璃も待機していた。里の巫女と連携して、いつでも回復に向かえるように、戦場を迂回していた。
「みなさんよろしくお願いします。赤龍は手強いですから、油断なきように」
「はい――」
 巫女たちは、玲璃の言葉に力強く頷く。
「来ましたね――攻撃開始」
 コルリスは立ち上がると、ひゅう! と口笛を鳴らした。
 胡蝶陣で兵士達は赤龍党の賊たちを包囲していく。
「橘あ!」
 赤龍が咆哮して、踏み出して来る。
 玲璃は狼煙銃を打ち上げると、仲間たちに知らせる。
 そこへ、追撃班のメンバーが合流して来る。
 コルリスは、家屋の上を飛び移り、賊の魔術師を撃ち抜く。
 牡丹は加速した。喧嘩殺法で打ち掛かる。一撃二撃と弾いて、女志士が狂ったような笑声を上げる。
「うふふ……! あんた、その程度で私を倒せると思ってるのかしらあ!」
「牡丹はん大丈夫どすか。あら、新顔どすなぁ。華御院鬨どす。宜しゅうなぁ」
 鬨は氷雷に白梅香と紅焔桜でレイラを叩き込む。
「何よあんた! 私の邪魔をする気!」
「あんさんを逃がしはしません。わっちは、あんさんには裁きを受けてもらいたいと思ってありんす。赤龍党は終わりでありんすよ。無駄な抵抗はやめて欲しいもんどすなあ」
「何だと小娘!」
 氷雷は怒り狂って突進してきた。
 牡丹はかろうじて受け止める。
 その背後から、鬨がレイラで氷雷の首を締め上げる。
 氷雷は、やがて気を失って落ちた。
 玲璃は戦場に踏み込むと、兵士達を回復させていく。
「みなさん大丈夫です。お怪我は回復します」
 周りには、討ち果たされた赤龍党の賊たち、戦闘不能になって捕縛された者たちが転がっている。
 コルリスは、赤龍党の砲術士、弓術師、陰陽師、魔術師を率先して撃破していた。
 胡蝶陣を指揮しつつ、赤龍党を撃ち果たしていく。
「へへっ、相手にとって不足なし……ってか♪ 上等じゃねぇか、喰らえ! 月鳴刀!!」
 稚空は赤龍に一撃を撃ち込む。
 さらに、焔にウィンストン、カズラが連打を加える。
「赤龍、今回で終わりだ! 大人しくしろ。誰の指示で動いている、消されるのであれば答えたらどうだ!」
「やかましい! ほざけ!」
 ウィンストンは横合いよりスマッシュを叩きつける。
「あんたも可哀そうな奴よね〜」
「く……橘あ! 橘はどこだ!」
「お前の相手は俺たちだ!」
 焔は、魔槍砲によるスキル「ヒートバレット」とスキル「クイックリロード」を使った連撃を放つ。切り札――。
「焔龍、炎双弾!」
 吹っ飛ぶ赤龍は、そのまま崩れ落ちた。
 その後、赤龍一党は捕縛され、里の奉行所に連行されて行った。
 後で報告を聞いたところによると、赤龍一党は全員討ち首となり、ここに赤龍党は壊滅したのであった。

「――みなさん、お疲れ様でありんした」
 牡丹は仲間達にねぎらいの言葉を掛ける。
「ふ〜、終わったな。さっさと帰ろうぜ。俺の帰りを待ってる愛する人の元へ……な」
 のろける稚空を、全員で成敗したとか何とか。