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■オープニング本文 理穴国首都、奏生――。 儀弐重音――儀弐王(iz0032)は、沈思に浸っていた。理穴国の国王、中性的な顔立ちをしており、常に冷静かつ冷徹に物事を判断する女性である。少数の親衛隊をつれて前線において常に戦っており、魔の森を焼き払おうとしているが長らく目立った成果を出すことができなかった。だが儀暦一〇〇九年秋、理穴の里緑茂に現れた大アヤカシ「炎羅」との3度にわたる熾烈な戦いの末に、上級アヤカシ「修凱骨」を含め、歴史上はじめて大アヤカシを打ち倒し、魔の森の繁茂を止めることに成功する。ともすれば人を寄せ付けなさそうな外見をしてはいるが、開拓者と共に温泉を楽しむなど、意外に気さくな性格をしている。 理穴東部、緑茂の里の周辺の魔の森に限って言えば、炎羅が撃破された後、幾度かの焼き討ちで後退しているが、今だ健在である。知っての通り理穴の東には冥越があり、理穴は冥越とも地続きであり、いまだ理穴東部の奥地には強力なアヤカシがいると思われていた。魔の森の焼き討ちにも限界があるのは知られていた。いずれにしろ、緑茂の里周辺の魔の森の繁殖は確実に止まっていたが、それが炎羅を倒したことによるものなのかどうかは、最近になっても確実なことは言えなかった。天儀で大アヤカシが倒され始めたのは近年になってからのことであり、これまで魔の森が大アヤカシによって構成されているのだと確信を持って考える者はいなかった。だが炎羅を撃破したことの影響について、ここ最近になってようやく議論が一つの方向へ向かいつつあるのだった。 「陛下――」 声がして、儀弐王は思考の縁から呼び戻された。声の主は、緑茂の里の里長である鋳差である。 「家臣団とも協議していたのですが、やはり、魔の森の繁殖は止まったのではないでしょうか? あれから二年以上。炎羅の死によって、魔の森を増殖させていた力の元が絶たれたのではないでしょうか」 「そう決めつけるのも早計と言うものです。確かに焼き討ちは少しずつ進んでいますが、魔の森に関して私たちには分からないことが多すぎます。それに大アヤカシは炎羅だけではないのですから、何らかの形で、別の大アヤカシが炎羅の後に入ってくるとも考えられます。大アヤカシともなると、縄張りを持つ者も多いようですしね……」 「ともあれ、先年戦場となった武天、朱藩の武州近郊でも大規模な焼き討ちが効果を上げ始めています。里を預かる身としては、このまま出来る限り魔の森を後退させたい、とういうのが正直なところです。民も多くがそう望んでおります」 「そうですね……あなたがそう考えるのは当然でしょう」 それから儀弐王は、緑茂の里を取り巻く魔の森へ、焼き討ちの兵を送ることを決断したのであった。この作戦はあくまで緑茂の里周辺に限ったことである。緑茂の里周辺に点在する魔の森の焼き打ちだ。それより遠方の魔の森を焼くのはやはり不可能であって、いまだに強力なアヤカシの存在が予想されるのだった……。 緑茂の里――。 焼き討ち部隊の弓術士たちが到着し、また、里の民が総出で彼らの支援に当たる。各所に野営所が設営され、里の兵士達も加わり、本格的に焼き討ちが開始される。魔の森の中は、丘陵や小川、瘴気に耐えられず枯れてしまった土地などが緩衝となり、自然に魔の森が区分けされている。従って一度火をつければ全てが焼き尽くされるといった状況ではない。加えてあまり大きな火災であると魔の森以外にも飛び火してしまうため、焼き払いについてはある程度の範囲を焼いたら次に移るといった工程が組まれる。 そうして魔の森に火が放たれると、やがて炎は勢いを増して燃え盛っていく――。 その時である。魔の森の奥地から咆哮が上がり、大気をびりびりと震わせた。 「何だ? 今のは……」 「アヤカシの残党がいるのか?」 弓術士達は、松明を下ろすと、炎の向こうの森を見つめる。 やがて、黒い、巨大な影が、ゆらりゆらりと森の奥から続々と前進してくる。 「な、何――!?」 弓術士達はとっさに弓を構えた。 出現したのは、ぼろぼろの異形の死人巨人。だらりと下ろしたひょろ長い腕に、不釣り合いに発達した上半身と脚の筋肉が盛り上がっている。 一体ではない。巨人たちはあちこちから出現すると、意外な速さで攻勢に出て来る。 「撃て――!」 弓術士達は素早く矢を叩き込んでいく。 数十発の矢を食らって、死人巨人たちは瘴気に還元していく。 ――と、続いて大地を切り裂く衝撃波が飛んでくる。弓術士たちは吹き飛ばされた。 巨人たちの背後から、緑光の瘴気をまとった黒ずくめのアヤカシ剣士が姿を現す。上級アヤカシ、禍津夜那須羅王である。 「理穴の民よ、そう簡単にはいかん。確かに炎羅は死んだが、ここはまだ我々のテリトリー。それに、ガザンナクイナたちは大食漢でここのところ飢えていてな、餌が必要なのだ」 禍津夜那須羅王の言葉に、弓術士達は「おのれ……」と後退する。 開拓者たちと応援に来ていた橘鉄州斎(iz0008)は、弓術士の肩を叩く。 「ガザンナクイナは不厳王(iz0156)配下の巨人兵団だ。あいつは噂の上級アヤカシ禍津夜那須羅王。圧倒されるなよ」 「奴が禍津夜那須羅王か……」 「連携して当たろう。ガザンナクイナの浸入を食い止めつつ、禍津夜那須羅王を追い返す。炎羅を倒した今、アヤカシの勢力は確実に弱体化している。禍津夜那須羅王が単独でこの流れを変えることなど出来ないだろうが、油断はできないがね。奴は強敵でもある」 橘は言って、開拓者たちを見やる。 「行くぞ――!」 開拓者たちと理穴の兵士達は、反撃に出た。 戦いの幕が開く――。 |
■参加者一覧
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
ヘラルディア(ia0397)
18歳・女・巫
焔 龍牙(ia0904)
25歳・男・サ
滝月 玲(ia1409)
19歳・男・シ
月酌 幻鬼(ia4931)
30歳・男・サ
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
宿奈 芳純(ia9695)
25歳・男・陰
ジークリンデ(ib0258)
20歳・女・魔 |
■リプレイ本文 魔の森で戦闘が始まる。開拓者たちは、まず戦線の立て直しを図るべく、各大将たちと打ち合わせに入った。 「禍津夜那須羅王には散々攻められやしたし、そろそろこちらから仕掛けてもええと思っていやしたところに、この依頼とは、よいタイミングどすわ」 とお嬢様らしく強気な発言をするのは華御院 鬨(ia0351)。お嬢様と言っても、彼は歌舞伎役者と言う職業柄女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出しているのだった。今回はを西洋風お嬢様を演じている。 「理穴東部における魔の森焼き討ち実行としてお手伝いなのですが、やはりアヤカシが阻害してきたので直ちに討伐と致しますね。貴方と共に頑張りますね(微笑)」 ヘラルディア(ia0397)は、夫の月酌 幻鬼(ia4931)に笑みを向ける。 「おうヘラルディア。魔の森討伐だ! 心躍るなあ! 鬼がいないのが残念だが」 幻鬼は言って、妻ににかっと牙を剥く。 「那須羅王、あっちこっちと出現して、忙しい奴だな。それも今回までだ! 今度こそ終止符を打たせてもらう!」 焔 龍牙(ia0904)は言って、冷静に思案顔。 「ガザンクイナに対して攻撃を行い那須羅王が現れたら那須羅王に対して攻撃を行い、魔の森『焼き討ち作戦』の支援ですね。支援は魔の森『焼き討ち』の実行部隊にアヤカシ、およびガザンクイナが攻撃や邪魔をさせない様にすることです。仲間の合図か那須羅王を確認したら、那須羅王の所へ急行ですね」 焔は仲間達に確認を取ると、疑惑を持ち上げた。 「それにしても那須羅王がなぜ、この場所に現れたのか? 領域の維持のため、そのために出陣してくるか上級アヤカシが! 何かこの場所に秘密でもあるのか?」 「禍津夜那須羅王の活動範囲は広いからなあ……」 ギルド相談役の橘鉄州斎(iz0008)は呟く。 「禍津夜那須羅王軍の撃退ですが……炎羅の森にまで手をのばすとはね、新たな森の主にでもなるつもりか?」 滝月 玲(ia1409)は毒づいていた。 「相手は禍津夜那須羅王率いる軍な上の見通しの悪い森、ガザンナクイナの配置や火の回り具合なども含め戦況を把握し後手に回らぬよう戦える様に、傭兵のシノビと分担し早駆で移動情報収集を行い超越聴覚で素早い伝達を行い各指揮官の指揮を仰ぐことが肝要ですね。素早く、確実な連携が重要ですね。それから、森を移動中にシノビは森を焼くための油を分けて貰い撒きながら移動した方がいいのでは?」 「ふむ……連携に、シノビによる事前の油を撒く作業ですな」 大将は言って、それを文に書き留めておく。 「炎羅が斃れてから幾年月、思う儘には進まぬようですね。ですが縮こまっていても仕方がありません。疾く敵を討ち、瘴気の侵食を終わらせると致しましょう」 美しき魔女ジークリンデ(ib0258)は言って、氷のような瞳で一同を見渡す。 「本格的な焼き払いは徘徊する敵の排除後、油で導線をつくり木々を切り倒して自分の周りの安全と脱出路を確保した上でエルファイヤーで一気に着火し効率的に焼き払いを行いますね。そこはお任せ下さい」 それからジークリンデは言葉を続けた。 「とは言いましても……禍津夜那須羅王とガザンナクイナがいる状態では焼き討ちなど出来ませんから彼らの排除は必須として、理穴のシノビに偵察を行っていただき散開する敵の位置を正確に把握し、敵の動きに合わせて動いていき戦力を集結して撃破出来るように……でしょうか」 ジークリンデは静かに続ける。 「それからガザンナクイナですが……撃破そのものは敵が散開をしている間に理穴の弓術師たちの一斉射撃で各個撃破を狙うという作戦になりますが、敵の機動力と禍津夜那須羅王の作戦が不明ですので、敵の奇襲作戦に備える為に、私はフロストマインで地雷原を作成し、主攻となる理穴弓術師隊への接近を阻止すると同時に足が止まった敵に対して斉射できるように致しますね」 「うむ……この際だが、大魔術師ジークリンデ殿の魔術は貴重だ。我々だけでは戦術も限られてきますからな。そこはお任せしますよ」 「はい……では出来る限りうまく立ち回りますね」 そこで、コルリス・フェネストラ(ia9657)が口を開いた。仲間達と理穴兵士達を交え作戦相談。「一案ですが」と前置きし作戦案を提示するが判断は任せる。 「まずガザンナクイナ戦ですが、弓術師を中心とした戦闘で迎撃となりますが。森内の木や岩等身を隠せる場所を利用しつつ開拓できた場所も活用し森内を駆け抜け、敵の不意をつく方角から射撃を集合と離散を繰り返し、2人には4人、4人には8人と常に局所で数の優位を確保しつつ、着実に敵を倒す胡蝶陣で迎撃することを提案します。各所戦況に応じ、開拓者達は順次前衛後衛等の形で増援に向かい各所で敵を各個撃破し敵の突破を防ぐ……という形で」 そして――。 「あの禍津夜那須羅王が出撃を確認時は合図の後、開拓者総がかりでこれを迎撃します。禍津夜那須羅王が指揮する余裕がなくなる程集中攻撃し撃破に追い込みます。禍津夜那須羅王に小細工は無用ですね。小細工が通じる相手でもありませんしね」 「うむ……では、その戦術でいくか? 胡蝶陣と言ったか」 大将たちが言うと、宿奈 芳純(ia9695)が口を開いた。 「そう簡単に魔の森は減らせないという事ですか……まあそれは置くとしましても、私もコルリスさんの胡蝶陣を支持致しますね。個々の戦力では、こちらに利がありそうですしね。弓術士主力での迎撃となりますが」 そこで、と宿奈は続ける。 「戦場に岩など身を隠せる場所がなければ少し作ってみようと思います。短時間ではありますが、結界呪符『白』の壁を各所に構築し、理穴兵達を守り胡蝶陣を支援いたします」 「ふむ……では胡蝶陣で行ってみるか」 「森の民と言われた理穴の弓術士達の技を見せてもらいたいねえ。森が戦場であれば、胡蝶陣でもいけるのじゃないか。宿奈も支援すると言っているし。それに、言う通り、個々の戦力ではガザンナクイナに勝るようだ。ここは、ひとまず各個撃破に専念するのが武何じゃないかね。総数不明とは言え、一度に出て来る相手は百も超えるわけじゃないのだろう」 幻鬼が言うと、大将たちは頷いた。 「まあ……各所に戦力を集結すべきなのは間違いないのだがね」 「では、コルリスの戦術でひとまず戦線の立て直しを図る。ということで」 「うむ――」 「ではみな様よろしくお願いします」 コルリスは一礼した。 「最後に、ガザンナクイナとは前衛職を除き距離を置いて戦う事をお願い致します。私は作戦立案者として弓術師達の胡蝶陣を指揮致しますね」 「よろしく」 「貴方、しっかり頑張っていきましょうね。後ろは任せて下さいね。わたくしが支えますから」 ヘラルディアは言って、幻鬼に微笑みを向ける。内助の功とはよく言ったものである。 「皆様も、後方支援はお任せ下さいね。可能な範囲で力添えいたします。わたくし一人では動けませんので、幻鬼様と行動をともにいたしますが、禍津夜那須羅王などは力を結集しないといけませんので」 「まあ、皆知ってると思うが、うちの奴もベテランの開拓者なのでね」 「何と言うか、新婚生活の煌めきと言うやつかね」 橘が言うと、ヘラルディアはにこっと笑った。 「うふふ……わたくしたち、まだ夫婦になったばかりですもの」 少しばかりのろけるヘラルディアは、嬉しそうに笑っていた。 「よし……では行くか。まずは戦線の立て直しを図ろう。禍津夜那須羅王を撃破し、森を焼き払う――」 大将たちは、反撃の号令を下した。 殺到して来るガザンナクイナを華御院は斬り伏せた。素早い体術を繰り出して来る巨人をベイルで殴って後退させ、白梅香を叩き込む。 「そう簡単に焼き討ちの邪魔はさせんどすわ」 華御院の一撃で浄化されていくガザンナクイナ。 立て続けに殺到して来るところへ、弓術士たちが即射を撃ち込む。二十発近い矢を食らって、ガザンナクイナは瘴気に還元する。 「その勢いどすえ」 華御院は言って、森の奥に警戒の目を向ける。あちこちからおぞましい咆哮が響いてくる。 「貴方――」 「分かっているぞ」 ヘラルディアの言葉に、幻鬼は森の奥を見つめる。 燃え盛る火の向こうから、影がゆらゆらと現れる。 「弓術士、援護を頼むぞ」 「了解した」 「行くぞお!」 幻鬼は二刀を持ち上げた。 炎を割って姿を現したガザンナクイナは、腕を持ち上げて、雄叫びを上げた。 ヘラルディアは神楽舞に備える。幻鬼はじり、と間合いを詰める。 「行くぞ行くぞお、ほれ妖怪!」 幻鬼は、二刀で挑発する。 「撃て!」 弓術士達は矢を解き放った。 ガザンナクイナは矢を受けて崩れ落ちる。さらに後ろから加速してくる。 「ヘラルディア!」 「神楽舞・攻!」 「がああああああああ!」 猿叫で加速すると、神楽舞の加護を受けた二刀を撃ち込む。ガザンナクイナは胴体を真っ二つに裂かれた。 「まだ来やがるなあ! はっはあ!」 「貴方気を付けて!」 「おうよ!」 焔もまた、弓術士たちと連携してガザンクイナを迎え撃つ。 ギルド屈指の剣客である焔は、愛刀の太刀「阿修羅」を巧み操り、ガザンナクイナを切り捨てていく。 攻撃方法の主体は一撃離脱、変幻自在に移動して攻撃する。 押し寄せるガザンナクイナを一撃で切り捨て、次の攻撃に備える。 ガザンナクイナの足を狙って、少なくとも移動できない様にしていく。 「そうはさせんぞ!」 「焼き討ち」の実行部隊を邪魔するガザンナクイナに向かって、一回だけスキル「咆哮」を発動させる。ガザンナクイナたちは怒りの咆哮を上げて焔に向かってくるが、粉砕される。 滝月は前衛に出て、弓術士達を守るようにガザンナクイナを斬り伏せて行く。斬竜刀「天墜」でガザンナクイナの首を切り飛ばしていく。 「大丈夫だ! 味方は優勢! 焼き討ちを続けてくれ!」 滝月は言って、早駆で高速移動しつつ、超越聴覚を働かせる。傭兵のシノビと連絡を取る。 「禍津夜那須羅王は出たか!」 「いや、一度後退した」 「ガザンナクイナの攻勢は、こっちはある程度撃破した」 「こっちもだ。いったん小康状態か。油断はできんが」 「気を付けろよ」 滝月は油を撒きながら、森の中を移動していく。 コルリスは、鏡弦で敵の数を探査する。 「前方にアヤカシ四体、来ます」 「胡蝶陣、散開!」 弓術士たちは散開すると、配置に付く。 コルリスは矢を装填すると、弦を引き絞った、 「…………」 緑色の瞳が、静かに森の奥を見つめる。 と、森から影が飛び出してくる。 「撃て!」 弓術士たちは即射でガザンナクイナを打ち抜いて行く。ばたばたと倒れて行く死人巨人。 コルリスの凄絶な一撃がガザンナクイナを打ち抜き、粉砕する。 宿奈は、表明した通り、各所に結界呪符「白」を構築していく。 「これで身を隠して下さい。恐らく、ガザンナクイナにはただの障害物にしか映らないでしょう。十分通用するはずです」 「ありがたい。感謝する」 「結界呪符は十分しか持ちませんので、そこは注意して下さいね」 「了解した」 宿奈は、それから後も慌ただしく駆けまわり、結界呪符を築き上げていく。 ジークリンデは、フロストマインを各所に仕掛けていく。 「少しはガザンナクイナの足が止まるでしょう」 言いつつ、地面に手を当て、術を封じて行く。 「禍津夜那須羅王が指揮を取っている以上、何か仕掛けてくるとは思うのですが……どうでしょうか。杞憂に終わればそれで構いませんが」 「そうですなあ。ただ、各所でガザンナクイナを撃破した旨、報告が着ています」 「そのようですね。やはり本命は禍津夜那須羅王でしょうか」 ジークリンデのフロストマインは、後になって効果を発揮して、ガザンナクイナの前進を止めることになる。 「あれは……」 コルリスは、森から出現した黒ずくめの剣士を目に留める。瘴気をまとっていないが、その人外の金色の瞳がコルリスを直視する。 「禍津夜那須羅王ですね」 コルリスは急いで焙烙玉に松明で点火し投擲し、爆発音で周囲の仲間達に禍津夜那須羅王の位置等を教え、仲間達の集結を支援する。 「コルリスさん! 俺は周りの雑魚を徹底して排除する! ガザンナクイナを近づけないでおきます!」 滝月は言って皆が倒すと信じ、ガザンナクイナが近づかない様に退治に専念する。 「今日は個の力じゃなく仲間の力で制す戦いを!」 「ふん、小賢しい奴よ」 禍津夜那須羅王の肉体から瘴気が吹きだす。 「撃て!」 弓術士たちは矢を撃ち込んだが、全弾その肉体に弾かれた。 開拓者たちが集まって来る。 「あら、こないな所で会うなんて奇遇どすわね。防衛側にまわった時の感想でも聞かせてもらえないどすかしら」 と華御院は挑発気味に挨拶をして、相手の心情を確認してみる。 「ふふ……次の標的は決まっている。市井に流れる話、我々にも伝わっている。厳存秘教を失ったのは痛手だが。次なる厳存秘教を作りださねばな。禍の火種と言うものはどこにでも転がっているものだ」 最初に宿流が仕掛ける。 禍津夜那須羅王の放つ衝撃波等から後衛の仲間達が身を守れる様結界呪符「白」で複数壁を構築した後、 「隷従と蹂躙を命ず。侵せ」 隷役+黄泉より這い出る者の合成技を叩き込む。 「むう……!」 禍津夜那須羅王は牙を剥いた。 続いてジークリンデの超魔術が炸裂する。距離をとってアイシスケイラルで狙撃。4連〜8連射で正確に打ち抜いていき、打撃を与えつつ防御力を激減させていく。 「До свидания(もうお逝きなさい)」 「連!」 コルリスは六節+鳴響弓の合成射撃技で連続した非物理射撃を禍津夜那須羅王の頭等に叩き込み続ける。 華御院、焔、幻鬼が加速する。 「貴方!」 「おうよ!」 ヘラルディアは神楽舞を舞う。 「おおおおおおお!」 華御院は紅焔桜で能力を高めて、隠逸華で攻撃、白梅香での非物理攻撃で手堅く攻撃をする。 「今までとは、一味違うぞ!」 焔は太刀「阿修羅」と魔槍砲「瞬輝」で攻撃を行う。禍津夜那須羅王の手を狙う。 太刀「阿修羅」+スキル「ファクタ・カトラス」と魔槍砲「瞬輝」+スキル「ストライクスピア」による切り札。 「唸れ阿修羅、煌け瞬輝! 焔龍、修羅真輝!」 「しぶとい人間ども――」 禍津夜那須羅王は腕を吹き飛ばされながらも、受け止める。 「せいやあ!」 幻鬼の一撃を受けて、禍津夜那須羅王は後退した。 「ぬん!」 禍津夜那須羅王は片手で長刀を連撃で薙いだ。 衝撃波が来る。 結界呪符が消失する。 禍津夜那須羅王はそこで魔の森の奥地へ撤退する。 ガザンナクイナも撤退し、開拓者たちは兵士と協力して魔の森を盛大に焼いた。 ジークリンデが火を放っていき焼き討ちは大きく前進する。 「魔の森を焼き払う? そいつはイイ、最高だ、最高だぞ」 幻鬼は、燃え盛る炎を前に豪快に笑った。 |