【AP】蘇る伝説
マスター名:安原太一
シナリオ形態: ショート
EX
難易度: 普通
参加人数: 5人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/04/12 20:25



■オープニング本文

※このシナリオはエイプリルフール・シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

 天儀暦七七五六年――。
 封印を解かれた七柱の古のアヤカシ王の一柱、ジール=ベルトは、天儀王朝の同盟国家であるアークラウス大陸へ、自らの肉体である闇から生み出した魔軍一億を率いて攻撃を開始した。天儀王朝は直ちに艦隊の派遣を決定。指揮官には八人の開拓者が選ばれ、朝廷の正規軍である千人の志体持ちが飛空船団を率いてアークラウスへ向かった――。

 アヤカシ軍陣中――。
「くくく……人間ども、我ら七柱の王が解き放たれた今、人類に勝ち目はない。アークラウスを我がものとし、天儀王朝を包囲殲滅してくれるわ! ふははは――!」
 禍々しき姿をした闇の塊であるジール=ベルトは、今まさにその邪悪な意思をアークラウスへ向けようとしていた。
 凶悪なる一億のアヤカシ軍は、アークラウスの空を覆い尽くさんとしていた。

 アークラウス王都、カギン=リル――。
 王アレス十四世は、王都上空に展開する天儀王朝艦隊を見上げていた。
「王朝艦隊……間に合ったか」
「陛下!」
 大臣がいそいそとやって来る。
「うむ、いかがした」
「ジール=ベルトの軍勢、すでに西の結界を突破した模様です。もはや……王国の騎士たちの手に負える相手ではありませんぞ。本当に、開拓者たちは戦えるのですかあの軍勢と」
「そなたは知らぬのか。伝説の開拓者たちの力を」
「開拓者の力は……あれはおとぎ話ではないのですか? 真に選ばれた者たちだけが持ち得る力を振るい、一人が一軍に匹敵すると言う……あれは大昔の大戦を誇張して紡がれた吟遊詩人達の作り話では?」
「知らぬのだなそなたは……天儀朝廷に受け継がれている『真の開拓者』の存在を。彼らは、選ばれし者、と呼ばれる。我々の想像を越えた力を持つ、真の英雄たちなのだ」
 王は知っていた。伝説の開拓者たちの力を。それはおとぎ話などではない。天儀には今も、伝説として語られる者たちが真に息づいていることを。
 今、王国の人々の目に、伝説が蘇ろうとしていた――。


■参加者一覧
羅喉丸(ia0347
22歳・男・泰
華御院 鬨(ia0351
22歳・男・志
アルネイス(ia6104
15歳・女・陰
コルリス・フェネストラ(ia9657
19歳・女・弓
嶽御前(ib7951
16歳・女・巫


■リプレイ本文

「陛下、到着が遅れ申し訳ありません」
 天儀王朝艦隊から降りて来て、言ったのは、第一の泰拳士、羅喉丸(ia0347)。武術の修練の果てに、限定的ながら武術の到達点の1つである天地との合一を果たし、なかば仙術と化した武術を操る泰拳士だ。
「おお、よくぞ来てくれた……待っていたぞ。選ばれし者たちの系譜を継ぐ、開拓者」
 王は、言って羅喉丸と握手を交わす。
 伝説の歌舞伎役者でもある華御院 鬨(ia0351)は、女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出している。今回はをドレスアップした西洋風お嬢様を演じていた。
「こんな大群、わたくしには大したことありやせんどすわ」
 とお嬢様らしく気高く高貴に感想を云う。
「おお、頼もしい。この国は……もはや王朝の力なくしては持ち堪えられん。あの魔軍が相手では……」
「安心しとくれやす。古のアヤカシ王と言ったら、わたくし達の先祖が封印した宿敵どすわ。今度は封印では済まさんどす」
「うむ……」
「陛下、ご安心ください。王朝艦隊が到着した今、魔軍など粉砕してやります」
 言ったのは最強陰陽師のアルネイス(ia6104)。
「ジール=ベルトですね。相手にとって不足なしです。私たちの世界に侵攻して来たことを後悔させてやりましょう」
「陛下、民の避難は完了していますでしょうか。戦いは激しいものになることが予想されます。巻き込まれては一大事にございます。人質に取られては、私たちも万全の力を振るうこと叶いません」
 コルリス・フェネストラ(ia9657)が言うと、王は頷いた。
「大丈夫じゃ。すでに全国民には東の結界へ退避するように通達しておる。輸送船団で総員退避は済んでおる」
「それは何より。心大きなく魔王と戦えますね」
「陛下、この地を守るは王国騎士団。彼らには、東の守りを固めて頂きたく思います。私たちは西の結界を突破して来たアヤカシ軍を迎え撃ちます」
 嶽御前(ib7951)は言って、穏やかな笑みを浮かべる。
「勝てるか? あの魔軍に」
「勝てるか否かではありません陛下。私たちは、勝ちます」
 嶽御前は言って、王にお辞儀した。
「では行きましょうか。俺たちの相手となるは一億の魔軍。久しぶりに、力を振るえそうだ」
 羅喉丸は言って、拳を握りしめた。
 開拓者たちは艦隊に乗り込むと、西の結界へ向かう――。

 闇が、空を、大地を、飲み込んでいく。それを取り巻くアヤカシ魔軍の咆哮が響きわたる。人の世の終わりか、大地は崩壊していく。

 羅喉丸は立った。傍らには、羽妖精のネージュがいる。
「羅喉丸さん、あれがジール=ベルトの魔軍なの」
「そうだよネージュ、俺たちが倒すべき相手だ」
 確かに魔王ジール=ベルトの打倒は大事であり、戦場にいる者は皆一様に覚悟を決めているとしても、無駄に命を散らして良い訳がないので、羅喉丸は一人でも多くの者が無事に帰れるようにするために戦う。
 雑魚の殲滅に専念し、一人でも多くの者が無事に帰れるようにする。また、仲間が対魔王ジール=ベルトに専念できるようにもする。かつて、自分を助けてくれた開拓者の様に、自分も仲間を守るために全力を尽くす。全力で力を振るえば味方すら巻き込むので、朋友のネージュを連れ、今、一人敵の大軍勢の前に立ち塞がる。
「行こう、ネージュ」
「はい!」
 天地合一。羅喉丸の奥義の一つである。朋友のネージュと融合する事で、精霊力を行使できるようになる。天地に満ちる気を操ることにより、自然現象すら限定的に操る。ネージュは雪の精霊なので、特に五行の水行を操る技を得意とする。人の手に余るほどの気を身体に宿し、攻防に使用できる。
「行くぞ!」
 羅喉丸は、前進して来るアヤカシ軍に崩震脚を撃ち込んだ。
「八寒陣!」
 崩震脚を放つ時に水行の気を大地に打ち込み、無数の氷柱を大地から生み出す。その様がまるで、八寒地獄の様に見える。
 怒濤の如く、氷柱がアヤカシ軍数万を飲み込み、衝撃波となって魔軍を打ち砕く。魔軍は悲鳴を上げて消滅していく。
「おおおおおお……!」
 羅喉丸は駆け出した。加速し、魔軍に突進した。
「玄亀鉄山靠!」
 水行を司る四神の玄武の力を借りた最大奥義。敵を空間ごと凍結させて動けなくした上で鉄山靠を放ち、粉々に砕く。
「玄天上帝よ、我に力を――」
 アヤカシ軍百万以上が凍りつき、鉄山靠の衝撃を受け、粉々に砕けちる――!

 ジール=ベルトは異変に気付いた。
「何だあ奴は……まさか……天儀の開拓者か!」

 華御院は壱華に乗って優雅に「壱華さん、お願いしやすわね」と云って、悠然と前進する。
「さあ、行きやしょう。戦いも優雅に、ジール=ベルトに最後の時を」
 華御院が言うと、壱華の疾風のブレスがアヤカシ軍を薙ぎ払う。猛烈なブレスが、アヤカシを粉々に吹き飛ばしていく。自分は全く戦いわない。
「おのれええええ! 怯むな! 人間一人! 束になって掛かれ!」
 大アヤカシが咆哮すると、魔軍が華御院に殺到して来る。
「お黙りなさい、魔の者ども!」
 華御院は一喝した。必殺の”クィーンオーラ”を放つ。このオーラは、一喝することで、周囲の敵の戦闘意欲をなくし、平伏させる。
「うおおおおおおお! これはたまらん!」
 アヤカシ達は戦意を喪失して逃走していく。華御院の前を、モーゼが切り開いたようにさざ波のように道が開いていく。
「さあ、おどきなさい! アヤカシ達! わたくしの邪魔をするんやありません!」
 ”クィーンオーラ”がアヤカシ達を退けていく。
 やがて、華御院はジール=ベルトの元に辿りつく。
 壱華から優雅に降りて「ジェントルマンとしてレディを迎えに来ないなんて最低どすわね」と気高く云ってから戦闘に入る。
「何だと……! 人間ごときが私に……我は七柱のアヤカシの王!」
「それがどないしやした。わたくしは、選ばれし者。かつてあなたを封印した者たちの末裔。今度は封印では済ましません」
 華御院は言うと、
「一人でダンスを躍らせていただきやすわ」
 とダンスを踊りながらブレードファンで攻撃したり、バトルヒールで踏みつけたりして攻撃を開始する。
 踏みつけられた屈辱の魔王は、顔を歪ませながら咆哮する。
「おのれ! 私の闇の力! 思い知れ!」
「あら、何ですの、それ」
 華御院は必殺の”ワインフラワー”を繰り出す。白梅香&紅焔桜&紅椿の合成技。梅、桜、椿の春の花が辺りに乱れて咲いて、不思議な力でダメージを与える。とっても綺麗。
「ぐおおおおおお! 何だこの花畑は……! 息が……出来ない!」
 ジール=ベルトは喉を掻きむしって転がった――。

「さて、この辺りなら土地も開けてますし大丈夫でしょう。――艦隊のみなさん、私から離れて戦って下さいね」
 アルネイスは、天儀王朝艦隊にそう指示すると、飛空船の船頭から地上へ飛び降りた。そのまま空中にて蛇神を改良したスキル、『八岐大蛇』を使い、巨大な八首・八尾の蛇を召喚する――! その首の1つに着地、そのまま魔王ジール=ベルトの元へ進軍を開始した。
「たかがオロチ! 叩き潰せ!」
 魔軍が押し寄せるが、八岐大蛇は雑魚を薙ぎ払い、加速、進軍していく。
「そう簡単には止められないでしょう――?」
 と、衝撃が来て、オロチの足が止まる。
 目の前には、大アヤカシ約百体近くが飛来し、八つの首を抑えられ蛇の進行が停止していた。
「むう……仕方ありません――」
 アルネイスは大蛇を消し、自分の周りを埋め尽くす大アヤカシを悲恋姫で粉々に粉砕した。音の爆弾とも言える衝撃破が大アヤカシ達を吹き飛ばす。
「やれやれ、あの程度で止められてしまうとは私もまだまだ修行不足ですかねぇ」
 と呟き、先程のよりさらに2回りは大きな大蛇を召喚し進行を続ける。
 やがて、ジール=ベルトの元に辿りついたアルネイスは、大蛇から飛び降りた。
「魔王ジール=ベルト! 貴方の存在、もはやこれ以上許すわけにはまいりません! 断罪させていただきます」
 巻き物よりジライヤのムロンちゃんを召喚すると、「合身瞬鎧!」――。
 ムロンの体がアルネイスと重なり、頭の部分にだけ赤い紋様がある金色の全身鎧へと変化する。
「幻と言われたジライヤとの同体化……魔王ジール=ベルト、貴方でその威力を確かめさせていただきます!」
 アルネイスは、飛跳躍で超移動&跳躍をし魔王相手に式を叩き込み、最後には蝦蟇油炎弾と火炎獣を合わせた最強奥義を放つ。
「蝦蟇二重炎獄砲――!」
 ジール=ベルトの腹部に火炎弾が直撃し、魔王は吹き飛ぶ。
「お、おのれ……開拓者ども!」

「全艦砲撃用意――」
 コルリスは言うと、全艦に開戦を命じる。
「各艦、弾着観測や改良移動弾幕射撃を行い、開拓者を支援して下さい」
 仲間達が前進する間、終始その後方に射弾幕を設け仲間達の側面や背後へ回り込む敵軍を潰す。
「砲撃開始!」
「撃て!」
 艦砲が火を噴きだすと、コルリスも伝説の技を見せる。甲板に出ると、矢をつがえ、弦を引き絞った。
 凄絶な一矢が解き放たれる。
「惑」――月涙の応用技。狙った敵に命中する以外のあらゆる干渉を無視する部分は同じだが飛距離と維持時間が大幅に強化され、命中対象数が単体でなく、維持時間が終わるまで標的を次々と仕留めながら貫通し続け、複雑な軌道を描くホーミング機能を有し、一度に複数の敵を射抜き続ける。
 コルリスは「惑」を連射し、艦に接近する魔軍、仲間たちを取り巻く魔軍を破壊していく。一撃が数万のアヤカシを突き抜ける。
 更には、「練」――月涙の応用技である。練力で構築された矢を放ち、あらゆる干渉を無視し仲間達に命中する。矢を受けた仲間は無傷で練力が回復し、回復後矢は消える。これを使い、魔軍と交戦する仲間たちを支援する。
 そして、コルリスの目が、遥かジール=ベルトを捉えると、必殺の「浸」を解き放つ。月涙と鳴響弓の合成技が超絶的に飛躍したものだ。あらゆる干渉を無視し敵に命中後、敵を構築する根源や核に、直接働きかける大音響を内部に浸透させ敵そのものを弱体化させる。
「ぐ……! おおおおおお……! 我が力を……! 失われる!」
 ジール=ベルトは咆哮し、突き刺さった矢を引き抜いた。
「おのれ!」

 嶽御前は、「負傷治療もしますので心置きなくどうぞ」と必要に応じ治療役も行う事を表明し、ジール=ベルトの軍勢に突っ込む。
「京」で敵の動きを確認する。「京」――瘴索結界「念」のパワーアップ版である。索敵範囲と効果時間、アヤカシか瘴気かの区別、地下や別次元への探索や判別も可能になる。
「アヤカシ一億ですか……数だけは集めたものですね魔王」
 仲間達が魔王ジール=ベルトのもとへ行ける様「風歩」で道を作り移動力を上げる。
「風歩」――神風恩寵の応用技である。使用者を含む仲間達の移動力を向上させ、目的地まで強引に風の道を作り、途中立ちはだかる障害を押し通り先に進むことができる。
 風の道が魔軍を切り裂き、仲間たちの道を作りだしていた。
「風の精霊よ……悪しき力に立ち向かう我らに加護を与えたまえ!」
 嶽御前は手を伸ばし、風歩でアヤカシ軍を蹂躙する。
 そして、「焔軍」で召喚した天使騎兵軍団を指揮し、大アヤカシを含む敵達を蹂躙しながら進む。
「焔軍」――浄炎が基本となる大技である。自分の体から巨大な浄化の炎を噴出させ、その中からアークラウスで犠牲になった人々や過去の英霊達を『闇属性が苦手とする属性をもった光る浄化の炎と翼、武器甲冑を纏い光る炎を纏う翼ある馬や龍に騎乗した天使騎兵軍団』に変えて、大量に召喚し敵軍に叩きつける。
「英霊たちよ、アークラウスの光――魂たちよ、我に力を! 邪悪を滅ぼせ!」
 輝ける天使騎兵軍団が、アヤカシ軍百万を飲み込んでいく。
 そして嶽御前もジール=ベルトの元に辿りつく。
「ジール=ベルト、あなたの野望もここまでです。古の王は灰に還って頂きましょう」
「何を……小娘が! 我が闇の力……無限の力を――食らえ!」

 ジール=ベルトは自身の力を結集し、全包囲に最大級の闇の稲妻を放った。
 吹き飛ばされる開拓者たち――。
「さすがは魔王ですわね……まだこんな力がのこっているなんて、甘く見ましたわ」
「中々やりますねえ……」
「みなさん、回復します」
 嶽御前は「癒風」で仲間達を治療、全快させる。「癒風」――神風恩寵の応用技。回復効果・範囲・対象数が桁違いであり、その中にいる味方全員を治療する風を周囲に送り、どんな負傷も治療する。
「食らえ! 無限の力を――!?」
 だが、ジール=ベルトが叫んだ時、開拓者たちの総攻撃が魔王を包み込んだ。
 閃光が爆発し、アヤカシ魔軍もろとも、魔王は消滅した……。

 カギン=リルに凱旋した開拓者、王朝艦隊を、人々の歓喜の声が出迎えた。
 かくして、開拓者たちの手によって、アークラウスの平和は守られた。
 また一つ、伝説は語り継がれる。