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■オープニング本文 大道寺光元――武天の王族、光元親王である。巨勢王とは近しい親戚に当たる。巨勢王を「おじ君」と呼ぶ。中身は真面目なのだが刹那的なところがある人物で、縁談を断っては複数の女性を側に置いている。頭は切れる謀略家である。だが、困窮した民のために私財を投じて活動家を支援するなど国民の人気は意外に高い。アヤカシには断固たる態度を取ることで知られる。少年時代に、とある里を訪問中にアヤカシの攻撃を受け、誘拐されたことが深く残っているとか何とか、市井の噂では言われている。光元は奇跡的に救出されたのだが、自身はそれについて語らず、何があったのかは分からない。 「奈津――」 光元は、隣室に控える側用人の牧原奈津のもとを訪れた。 小柄な牧原奈津は大道寺家の側用人であり、沈着なお姉さんである。大道寺の理解者であり、冷徹な参謀。酒豪であり、内に秘めた気は相当強い。論客でもあり、怒らせると激情家の一面を現し、その怖さが知れ渡っている。 「殿下。何か」 「やはり、土岐の里の件は放っておけない」 「土岐家はほぼ全滅と聞きます。手遅れだったようです」 「里に残っているアヤカシどもを叩き潰す必要があるだろう。逃げ遅れた民もいよう。許せない」 「殿下が動かれたとなると、また禍津夜那須羅王に狙われたりしないかと心配ですね」 「手を打て。武天の現地の兵では足りないと言うなら、金で動く連中を集めろ」 「傭兵だけでは心もとないですね……開拓者を呼んではいかがでしょうか」 「良いだろう。全権は彼らに委ねる――」 開拓者ギルド――。 光元の側近で番方の赤城洋子がギルドの門をたたく。赤城は光元の警護官を務める女性である。豪胆な人物で、幾多の戦場を経験している兵士だった。冗談が通じないところがあり、勘に触る気に入らない言葉を言う相手は主であろうと投げ飛ばしてしまう。 開拓者ギルド相談役の橘鉄州斎(iz0008)は、赤城が置いた大金が包まれた風呂敷に驚いた様子だった。 「これが依頼料か?」 「それも含んでいるが、傭兵を雇うのに使って欲しいと殿下が仰せだ」 「成程……気前の良い話だが。金は惜しまないと言うわけかね」 「凄いお金……」 橘の助手の森村佳織は、呆気にとられて風呂敷を見つめていた。 「アヤカシを殲滅するためなら、殿下は財を惜しまないお方だ」 「承知した。では、この金は使わせて頂きましょう」 橘が頷くと、赤城は言った。 「成果を報告して欲しいと殿下は仰せだ。依頼が終わったら此隅へ報告に来てくれ。宜しく頼んだぞ」 かくして、大道寺光元からの依頼がギルドに張り出されることになる。 |
■参加者一覧
朝比奈 空(ia0086)
21歳・女・魔
焔 龍牙(ia0904)
25歳・男・サ
滝月 玲(ia1409)
19歳・男・シ
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
海月弥生(ia5351)
27歳・女・弓
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
ジークリンデ(ib0258)
20歳・女・魔
嶽御前(ib7951)
16歳・女・巫 |
■リプレイ本文 「天厳蟲か……アヤカシには色んなものがいるものだな……」 焔 龍牙(ia0904)は、飛空船の中で思案を巡らす。 「蟲アヤカシと言えば何となく大発生でもしそうな感覚がするが……子供のアヤカシを召喚するとは、いかにもそれらしいですね」 「みんなを助け出さなきゃ、蜂の餌食になんてさせないぞ」 言ったのは滝月 玲(ia1409)。焔の幼馴染で依頼に居合わせることも多い。 「分かりやすいですが、残酷な蟲のようですけど、知能も意外に高いようですからね。油断はできませんね」 「俺はサムライのルオウ(ia2445)! よろしくなー!」 赤毛の熱血ルオウ少年が言う。 「今度は蜂かよ! 次から次へってさ、負けるかよぉ!」 ルオウ、アヤカシの残酷な破壊活動に怒りが湧きあがって来る。 「武天王族による依頼で、廃村を巡るアヤカシ勢の完全殲滅敢行ね。大盤振る舞いで大量動員ができる事だし、張り切って行かないとね。お偉いさんの気前の良さに応えて頑張ってみせるわよ」 言って肩をすくめるのは海月弥生(ia5351)。金髪の可憐な戦乙女が印象的な娘である。 「みなさんよろしくお願いします。私は主に空から天厳蟲退治を支援します」 弥生と同じく、戦乙女の弓術士、コルリス・フェネストラ(ia9657)が口を開いた。 「傭兵の方は順調に集まったようで、何よりですね」 コルリスは言って、弥生に笑みを向けた。 「何とか、無事に集まりましたね」 「それにしても……アヤカシの魔手は私たちの手の届かない処に及び悲しみを産みます。失われた命は戻りませんけれど、せめてこれ以上アヤカシの魔手が広がらないように尽くしましょう」 言ったのは大魔術師ジークリンデ(ib0258)。 「巫女の嶽御前(ib7951)と申します。よろしくお願いしますね」 修羅の娘が口を開いた。巫女の嶽御前である。 「さて……敵の数がかなりの数になりますが、雑魚とは言え侮れませんね。天厳蟲には戦術的な思考能力もあるそうですから。うまく各個撃破に持ち込みたいところですね」 焔が言うと、滝月が頷いた。 「空中戦は仲間も大丈夫でしょうけど、敵はこっちの三倍近くですからね」 「まあ俺は細かい作戦は苦手だけど、とりあえず片っぱしから引き付けて片づけてやるぜい!」 ルオウは言って、脇差に手を掛けた。ルオウが持つ脇差「雷神」。全長61センチ。伊織の名と共に立花家に代々伝えられてきた刀である。武州の戦いにおける戦功一番槍であるルオウに贈られた品である。武天では刀と脇差の大小二本差しがサムライの正式な差料。反りの強く磨り減った薄手の刀身からは経てきた時代が窺える。光りにかざすとうっすらと雷紋が浮かび上がるその刀身には雷神の力が宿っていると言われ、刃を振るう度に雷の幻影が駆け巡るという。雷雨の下で装備していると、攻撃時の命中判定に恩恵を受けると言う逸品である。 「そうね。ひとまずあたしは指揮に回るけれど……各個撃破には賛成ね。前衛陣で後衛に攻勢が及ばぬ様にくい止めつつ、咆哮で各個分断を促し、纏めて夜の子守歌にて眠らせることが出来ればと思うわ。その上で、ジークリンデさんや魔術師の範囲攻撃等で確実に撃破していく……と言う感じでいきましょう。周囲警戒方向を分担してお互いの死角を補い、個々の孤立分断を防いで挟撃され無い様に配慮するのも必要ね。あたしの方では、索敵スキルでアヤカシの進攻方向や数を見極めて、周囲に告知をして貰い戦線の穴を埋める様にみんなに動いてもらうわ。嶽御前さんには、消耗を見極めて回復して貰う様お願い」 「分かりました。解毒も行いますから、何かありましたら、私のところへ戻って下さいね」 嶽御前は言って小さく笑みを浮かべた。弥生は思案顔で続ける。 「空中勢力にはコルリスさんや、あたし、弓手攻撃により牽制。雑魚掃討後に天厳蟲へ加勢出来れば理想的ね。囲んで完全に討伐を成し遂げましょう」 「今回私は弥生さんのサポートに回りますから、全体の傭兵指揮はお任せします」 コルリスは言って、弥生に笑みを向ける。 「そうですね……より細かく言いますと、村に散開している天厳蟲の子らを幾つかのブロックに分け、サムライの咆哮で誘引して村から離していき、傭兵を含む術士たちは範囲魔法の十字砲火にアヤカシを誘い込み、敵群を殲滅していく、と言ったところでしょうか」 ジークリンデが言うと、焔や滝月は「そんなところですね」と頷く。 「それから――」とジークリンデは続ける。 「誘引して敵を引き離した処に巫女などを送って生存者の救助ができるように図るべきでしょう」 「そうですね。ではそれについては私が支援しましょう」 言ったのは嶽御前。 ジークリンデは穏やかに頷き、言った。 「誘引役の傭兵のサムライは龍に騎乗し機動力を重視してもらいましょう。私も炎龍に騎乗し、戦陣が崩された際に穴を埋め、敵が機動力を使い術士たちに奇襲を仕掛けてきた場合に冷静に迎撃できるように致します」 「では……私は先に出ますね。土岐の里の前に、空から警戒します。皆さんとは後で合流しましょう」 コルリスは言って、龍に向かった。 土岐の里に到着した開拓者たち、傭兵たちは、飛空船から飛び出し展開する。弥生とルオウは地上から接近する。 「来るぞ! アヤカシ集団!」 焔は蒼隼に騎乗して、抜刀して魔槍砲を構えた。天巌蟲の子らが咆哮して加速して来る。 「行くぞ! 天厳蟲!」 スキル「咆哮」を発動させ、「天巌蟲の子」が集まってきたところに、蒼隼のスキル「ソニックブーム」にて攻撃する。 「蒼隼! 集まってきたところをソニックブームで仕留めるぞ!」 「ガウウウウウ!」 衝撃波で立て続けに蜂アヤカシが切り裂かれる。 さらに、「咆哮」で「天巌蟲の子」を集めて、太刀「阿修羅」で攻撃する。 「蒼隼! ここからは速さと連携で切り崩すぞ!」 スキル「ファクタ・カトラス」を発動させ、蒼隼と協力して太刀「阿修羅」で攻撃し退治していく。素早く相手に接近し、すれ違いざまに斬りつける技。ファクタ・カトラスは元々騎乗戦闘用に編み出された技であり、騎乗状態で大きなアドバンテージを得られる。「天厳蟲の子」を撃破していく。 滝月も炎龍の瓏羽に騎乗して立ち向かう。 「よーし行くぞ瓏羽!」。 加速すると、動きを止めずスピードを生かした一撃離脱で斬撃を仕掛ける。旋回しつつ、機会を窺う。チャンスと思ったら危険な毒針のある蜂のお尻部分を切り飛ばす。そのまま、毒針にも注意しつつ羽を切り落とし味方の得意な陸戦に持ち込む。 「ルオウさん! そっちへ行くぞ!」 「おう! 滝月任せとけい!」 「玲! 来るぞ!」 「ああ――」 滝月は、龍の下にも注意を払い、囲まれそうになったところで霊刀「カミナギ」を構え「風神」を発動し、隙を突き一体を攻撃して離脱する。 「ちい……!?」 毒針が突き刺さる。滝月は、いったん後退して、嶽御前のもとへ向かう。 「嶽御前さん、すみません。毒にやられてしまった」 「大丈夫です。そのための解毒ですから」 「ありがとう!」 前線に戻った滝月は蜂を撃破していく。 「てめえらの相手はこの俺だぁ! かかってきやがれってんだ!!」 ルオウは、地上にて傭兵のあんちゃん達、特に弓兵を護りながら「咆哮」を使用する。そのまま自分の方に引きつけて「回転切り」。凄絶に切り裂かれる蜂の集団。 「でやああああ! 回転、剣舞! ……二連!!」 回転切りの二連撃で蜂を撃破していく。そうやって敵を引きつけて、徐々に倒しながらボスに近づいていく。 「ルオウさん! いけるか!」 滝月は飛び降りると、ルオウ達に敵が集まり過ぎない様に途中で迎撃する。霊刀を構え気力で知覚を上げ「風神」を発動。 「今だ!」 「行くぞ! 叩き潰せ!」 蜂が弱った所を斬撃や傭兵を含め仲間に合図し叩く。 弥生は、傭兵たちを指揮して、大軍に立ち向かう。 「サムライと騎士で敵の攻撃を押しとどめて! サムライ衆、咆哮をお願い!」 「承知したぜ!」 さらに、吟遊詩人たちが、夜の子守歌を奏でると、天厳蟲の子らは墜落する。 「今よ! 落ちた敵に一斉攻撃!」 弓術士と魔術師たちが範囲攻撃を叩き込む。 「弥生さん、蜂どもが二手に分かれてきます!」 鏡弦で捉えた動きを伝える。 「ジークリンデンさん、コルリスさん達に伝えて。こちらは適時咆哮で引き付け、各個に撃破でお願い!」 「上空からも来ます!」 「弓術士で迎撃するわよ! 撃て!」 弥生は自身も六節で迎撃していく。 コルリスも鏡弦を使い、アヤカシの位置を把握し、仲間達に報告。弥生らの空戦や傭兵指揮を支援する形で動く。 「アヤカシが側面から来ますか……」 応鳳に火炎や駿龍の翼を命じ、自身も弓矢で迎撃して、弥生への敵の襲来を可能な限り食い止める。 コルリスは、仲間達や傭兵達の戦闘や探査系の術を確認していたが、天厳蟲の位置を捉えたのは自身の鏡弦だった。 「あそこに見えるのが……天厳蟲」 血だまりの中に巨大な蜂が鎮座している。 「あれは……!」 応鳳に高速飛行と駿龍の翼を命じ、アヤカシ達をかわしながら天厳蟲を射程距離に収められる距離まで接近する。 「翔!」 月涙+鳴響弓の合成射撃技で、天厳蟲にダメージを蓄積させ、できる限り弱らせ、仲間達や傭兵達が天厳蟲へ本格的に攻撃ができるまでの時間を稼ぐ。 ジークリンデは、魔術師のクロスファイアに参加して、咆哮で誘引された敵の群れに対して範囲魔法を撃ち込んで殲滅していく。傭兵の術士のブリザーストームに合わせ、殲滅を図る他、敵の突撃に対してもブリザーストームを速射して撃退していく。だがジークリンデの超魔術を以ってしても、簡単には片付かない。 「ここは……これで行きますっ」 距離があり、敵が大挙して押し寄せ、ジークリンデはメテオストライクを解き放った。爆炎が炸裂してアヤカシを薙ぎ払う。 嶽御前は、手近な仲間と協力しつつ、指示を仰ぎながら後衛にて瘴索結界「念」で天厳蟲やその他のアヤカシを探査していた。 「大量の蜂は探知できますが……天厳蟲は見つかりませんね」 嶽御前は仲間達にアヤカシの動きを報告する。 「天厳蟲が新たなアヤカシを召喚した様子はありませんね。これ以上の力は無いのでしょうか」 「そう願いたいものですが」 焔は、嶽御前に言ってうなった。 「嶽御前さん! 解毒を頼む!」 傭兵たちがやって来ると、嶽御前は解毒と神風恩寵で回復する。 「戦況は有利になりつつあるようですが……」 嶽御前は上空の押されている場所を確認すると、傭兵の巫女たちに地上での治療及び敵の探索を頼むと、暮に騎乗し空戦に加勢する。 霊刀「カミナギ」と狼の小楯を構え、加速した。 空戦を行う盾役となり、アヤカシの攻撃を受け止め、解毒と神風恩寵で支援しつつ空戦も援護する。 「本職ではありませんが、守り手は引き受けます。皆さんはその間にできるだけ攻撃を」 「巫女さんに立たせるわけにはいかねえ! すぐに回復してくれ! いけるぞ――!」 『グギギ……人間旨い……皆殺し……』 天厳蟲は異変を察知して、動き出した。 「貴様! 土岐の里の仇! 討たせてもらう!」 焔が上空、旋回から仕掛けた。太刀「阿修羅」で切りつける。 『グギギ……お前達も食ってやろう……』 嘲笑うかのような天厳蟲の声に、焔は怒気をはらんだ声を叩きつけた。 「貴様は許さん!」 「行くぞ! 邪悪な女王蜂!」 滝月は早駆を使い天厳蟲の背後に回り込むと、刀で切り掛かった。狙いは羽。滝月は狙い通り羽を切り、地上戦に持ち込む。 『わしの羽を……!』 天厳蟲の毒針がその体から放たれる。ドカカ! と滝月は直撃を受けた。 「あ……ぐ……!」 血を吐く滝月。猛毒がダメージを与える。滝月は転がった。 「滝月さん!」 嶽御前が駆け寄り解毒する。 「ありがとう。とんでもない猛毒だな……」 滝月は残っていた血の塊を地面に向かって吐き出した。 「んにゃろう! 俺が相手だー!」 ルオウは咆哮で仕掛けるが、天厳蟲はびくともしない。 「んならこれでも食らいやがれええええ!」 タイ捨剣を仕掛ける。古流示現剣術の奥義。相手に一撃蹴りをかまし、間髪入れずに袈裟懸けに刃を走らせる。 切り裂かれた天厳蟲は咆哮すると、毒針を飛ばして来る。ルオウは毒を食らったが、嶽御前が回復する。 「すまねえ嶽御前!」 「凄まじい毒ですね……」 「あの野郎……ぶっ潰してやる!」 弥生は、包囲の輪を敷きつつあった。 「全火力を天厳蟲に叩き込んで! 撃て!」 自身も、六節で矢を連射する。 コルリスは、勇敢に立ち向かう弥生の防衛に戻りつつ、攻撃を開始する。 「翔!」 月涙+鳴響弓の合成射撃技を叩き込む。 『グガガアアア! 小賢しい人間ども!』 「弥生様、気を付けて下さい!」 「コルリスさん、すみません!」 突撃して来る天厳蟲に、コルリスと弥生らで全弾叩き込む。 天厳蟲の足がさすがに止まる。 『ガアアアアアア……!』 全身から毒針を放出する天厳蟲。 開拓者たちは距離を保った。 「厄介な毒針ですが……飛べない蜂はただの蜂ですわね」 上空に回り込んだジークリンデから、超絶アークブラスト四連射が叩き込まれる。 天厳蟲の絶叫が響き渡る。焼け焦げ、苦しみにのたうち回る天厳蟲。 「今だああああ!」 ルオウ、焔、滝月らが突進し、コルリスと弥生らが集中砲火を叩き込む。 『グガアアアア……人間……ども……!』 天厳蟲は、咆哮を残して、瘴気に還っていく。 かくしてアヤカシ達は全滅した。 ……それから開拓者たちは手分けして里の生き残りを探す。 「ここは……」 開拓者たちは、堅く閉ざされた大きな家屋の扉を開く。 悲鳴が上がった――。 突進してきた若いサムライを焔は受け止めた。 「待って下さい! アヤカシは倒しました! 俺たちは開拓者です」 「そ、そうなんですか……?」 若いサムライは、言って後ろの民を見やる。 「おいみんな! 助けが来たぞ! 助かった――!」 王都此隅――。 「――と言う次第です。里長の嫡男信弘様は民とともにご健在です」 開拓者たちの報告に、大道寺は「ご苦労であった」と頷いた。 「この世の暗雲を切り開くは、真お前たち開拓者であるな。土岐の里の再興はこれからであろうが……信弘には立ち直ってもらわねば」 「一つ、よろしいですか殿下」 「何だ」 「殿下がそこまでアヤカシにこだわる理由は何ですか?」 すると、側用人の牧原奈津が「失礼ですよ」と言った。大道寺は「構わん」と手を上げる。 「私は確かにアヤカシに脅かされたが、自分が無力ではないことも知っている。いつかアヤカシを殲滅するまで、私も戦う。そんな王族が一人くらいいても構わんだろう。周りには迷惑を掛けるだろうがな」 大道寺光元は、言って笑って見せるのだった。 |