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■オープニング本文 天儀本島武天国、龍安家の治める土地、鳳華――。 東部の魔の森、東の大樹海――。 瘴気が渦を巻き、森全体から立ち上っていた。その中心にいるのは、大アヤカシ不厳王(iz0156)であった。 「不厳王様、攻撃の準備、整いました――」 上級アヤカシ禍津夜那須羅王が歩み寄って来る。 「禍津夜那須羅王、そろそろ、この土地の物語も終わりにしようではないか……二十年……龍安家はよくぞ持ちこたえたものだが。ここ最近の人間たちの反撃、無駄なあがきではあるが……運命には逆らえんのだからな。一つ、彼らに運命の縮図を見せてやろう……人間の運命を」 不厳王の笑声が、魔の森に響き渡る――。 鳳華首都、天承の城で――。 家長の龍安弘秀は、執務室で報告書に目を通していたが、そこへ筆頭家老の西祥院静奈が慌ただしくやって来る。 「お屋形様――!」 静奈の声は悲鳴に近かった。 「どうした」 弘秀は顔を上げた。 「東の大樹海に動きが……魔の森が緩衝地帯を越えて急速に拡大、赤城の里が飲み込まれつつあります」 「何だと!」 弘秀は立ち上がった。魔の森のことはよく分かっていないが、これまでの例からして、森を増殖させるのは大アヤカシの力であろうと思われていた。 「敵は?」 「上級アヤカシ禍津夜那須羅王を筆頭とする死人の軍勢です。里は助かりません……」 「不厳王が、直接動いたと言うのか……」 「更に悪い知らせがあります」 「何だ?」 「北部の上空に空賊と思しき飛空戦艦が展開、城砦都市『凱燕』が攻撃を受けております」 「空賊? 何者だ」 「敵の兵士を捕縛しました。空賊の頭領は天山寺仁海だそうです」 「一体どうやって短期間に戦力を整えた……いや、くそっ、不厳王か、その配下が手を回しているのか」 弘秀は、静奈と歩き出した。これが、不厳王の本格的な攻撃の始まりなのか、それは分からない。ただ、今は対処するしかなかった。 ――赤城の里。 里は燃え上がっていた。屍人や骸骨兵士に制圧され、あちこちに貪り食われた民の亡骸が転がっていた。 逃げることが出来なかった人々は、禍津夜那須羅王の命令によって魔の森へと連行されていく。 逃げることが出来た人々には、だが悲しみと絶望が彼らを打ちのめした。 |
■参加者一覧
柊沢 霞澄(ia0067)
17歳・女・巫
鈴梅雛(ia0116)
12歳・女・巫
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
フェルル=グライフ(ia4572)
19歳・女・騎
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
宿奈 芳純(ia9695)
25歳・男・陰
フィン・ファルスト(ib0979)
19歳・女・騎
将門(ib1770)
25歳・男・サ
罔象(ib5429)
15歳・女・砲
エラト(ib5623)
17歳・女・吟
サクル(ib6734)
18歳・女・砂
嶽御前(ib7951)
16歳・女・巫 |
■リプレイ本文 ●北部戦線の開戦前 「大規模な戦です……麗霞さん、皆さん宜しくお願い致します……」 柊沢 霞澄(ia0067)は言った。霞澄とそっくりの外見をしたからくりの麗霞は、霞澄の側に控えている。 「霞澄様、お気をつけて」 麗霞は淡々と言う。 霞澄は、思案顔で続けた。内気で自分から話す方ではないが、作戦はきちんと伝える。 「作戦概要ですが、東と北に別れそれぞれ対応し、北の空戦を早めに終らせ東へ向かう、と言った流れでしょうか……」 声が小さいので、聞こえにくいところを麗霞がサポートしてくれる。 「北ですが、戦艦を二対一に分けそれぞれ敵艦を一隻ずつ担当し、二隻の方で敵の一隻を抑えている間に、別の一隻と突入班が敵艦に乗込み制圧、のち抑えていた一隻も撃破する作戦ですね……」 「皆様よろしいでしょうか」 麗霞は一同を見渡し、霞澄を助ける。 「私は二隻側の片方に乗込み、味方への支援を行いますね……二隻の艦には距離を置いての砲撃戦を主体に、こちらの騎兵が敵の騎兵を抑える方向で提案を致しますね……。敵味方の対勢、同航、反航等に応じて二隻の艦を敵に対して手前、またやや奥に位置させ、梯形陣を敷き、やや奥の艦周囲を回復エリアに設定します……。騎兵の方々にはある程度の怪我をしたら回復エリアまで戻って頂くようお願いできますか……? 私は艦上から距離、範囲に応じて回復スキルを使い分け味方を回復していきますので……。麗霞さんには船上から騎兵達への合図、私へのタイミングの指示等をお願いしますね……」 「はい、霞澄様」 華御院 鬨(ia0351)は歌舞伎役者で女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出している。今回はクール系の女重戦士を演じていた。 「それにしても……天山寺を前回逃がしたのは失敗やした…。まさかこんな大きな禍になるとは思わんかったどす……不厳王の指示が合ったとはいえ……」 と冷静に感想を云った。 「うちらは凱燕の天山寺を先に集中攻撃し、戦艦を奪えたり、勝てそうになったら、赤城の里に向かう段取りですな。天山寺の艦を早期に制圧出来るか否かが勝敗の鍵どす……。禍津夜那須羅王は、いい加減に決着をつけたいどすが……」 華御院は思案顔。ともあれ、合戦以外での上級アヤカシの撃破はほとんど例が無いのも事実だ。 「俺はサムライのルオウ(ia2445)!よろしくなー」 ルオウは、仲間達も含め、龍安兵たちに言った。 「敵艦の制圧だけど、飛行船操縦に長けた兵を借してもらえねーかなー。いや、これ成功するかは分からねえんだけど、船を質量弾として禍津夜那須羅王にぶつける提案を考えて来たんだよなー」 「また無茶を言うな……」 龍安兵たちは呆れた様子で肩をすくめる。そんな発想は兵士達にはなかった。だが、やってみる価値はあるだろうと如月は言った。 将門(ib1770)が口を開いた。 「如月殿、ルオウの言ったことだが、飛空船操船技術を持った戦闘員を選抜して欲しい。彼等とそれを護る精鋭、ルオウ、華御院、俺が指揮を取る鹵獲班を作る。二十名ほどで良い。こちらからの提案としては、飛空戦艦二隻、航空戦力四十から成るA班、飛空戦艦一隻 航空戦力三十から成るB班、そして、別働隊として鹵獲班二十、だな。クラスの配分は如月殿にお任せする」 「ふむ……では、サムライを連れていけ。やるからには成功させる」 「有り難い。北部戦線ですが、霞澄殿が言ったように、AB班で敵船を一隻ずつ抑えている状況でB班側の敵船に鹵獲班が突入。船内の敵兵を戦闘不能にして敵船を奪取。その後、AB班合同で残り一隻を攻める。状況が許すならこちらも奪取ですね。難しければ拘らず撃墜方針です。その後のことは、まず成功してからですが、味方戦艦と鹵獲戦艦に戦闘員を乗せ最大戦速で東部戦線へ。この際、敵の赤城の里への退路を断つ位置に移動。到着と同時に鹵獲戦艦を敵陣中枢、可能であれば禍津夜那須羅王目掛けてぶつけたい。ただ……混戦になっており、味方に被害が出る場合は中止です。普通に包囲殲滅します」 「了解した。戦術は可能だろうが、天山寺どもは意外にタフかも知れん。下級アヤカシよりは厄介だろう」 エラト(ib5623)は一礼して、口を開いた。 「作戦方針は了解いたしました。私は、敵航空戦力及び敵船の迅速な無力化の一案として、味方のサムライに協力をお願いし、咆哮で私周囲に可能な限り龍に騎乗した空賊達を集めて頂きますようお願いします。集めた空賊達に向け夜の子守歌で乗っている龍ごと眠らせ順次地上に落とし無力化しますので、よろしくお願い致します。いかがでしょうか」 「吟遊詩人の超魔術は期待している。龍安兵に吟遊詩人はいないからな」 如月は肩をすくめた。 嶽御前(ib7951)も、軽く会釈して言った。 「私も作戦は異論ありません。私は敵船に突入し制圧する際の治療要員として、駿龍の暮を駆って仲間達や味方に随伴し迎撃戦に参加致しますので、よろしくお願い致します」 「ではよろしく頼む」 「それでは、突入する主な方々に、加護結界を付与させて頂きます。敵の攻撃を一回は防げるでしょう」 嶽御前は、味方に結界を付与していく――。 ●東部の開戦前 「あの時、天山寺を逃がしてしまったばっかりに、こんな事に」 鈴梅雛(ia0116)は小さき声で、悔んだ。 「雛様」 からくりの瑠璃が、雛の肩にそっと手を置く。まだ自我が形成されてはいないようだが、主の感情には敏感なようだ。 「取り逃がしてしまった事が、この事件に繋がっているのなら、何としてもこれ以上の被害拡大は防がないと。北の空賊も問題ですが、アヤカシも放って置く事は出来ませんから」 それから、雛は仲間たち、龍安兵に言った。 「龍安も、みなさんと陣地を築いて、アヤカシを迎え撃ちます。基本的には陣地を利用しての防衛戦主体で、敵の侵攻を防ぎます。ひいなは龍安の巫女の方たちと手分けをして、陣地にて負傷した方々の治療や回復を行います。比較的、戦闘の影響が少ない後方陣地で、集中して回復術を使う事で、術の効果を上げて、回復量を増やします。前線には、フェルルさんたちが出られるようですが、そちらで間に合わない分を、ひいなたちが引き受けます」 それから、雛は瑠璃を見上げた。 「瑠璃さん、陣地の構築や、負傷者の看護や簡単な治療のお手伝いをして貰いますね。雑魚アヤカシが陣地内まで侵入してきたら、そちらの退治もお願いします。今回は敵が多くて、人手が足りません。手伝って下さい」 「承知いたしました」 瑠璃は優しく笑みを浮かべる。 フェルル=グライフ(ia4572)は、力強く言った。 「北軍の合流まで兵の方々の死傷や陣崩壊を減らし、合流後村奪還まで、必ず成し遂げます!」 それから、新之助に言った。 「私とフィーに付いてこられる練度の高い龍騎兵十人をお願いします。これは自惚れでも蛮勇でもありません。多ければ新之助さんの指揮に影響が出ますし、迅速な遊撃をする為にもですっ。シノビや龍の伝令で常に本陣と連絡もお願いします。私からは最前線の戦況をお伝えしますので。逆に必要な時は転戦先を命じて下さい」 「良いだろう」 新之助は、一目見て、フェルルの熟練を察した。並みの開拓者ではない。十人の猛者たちがフェルルの元へ集まってくる。 「では、龍騎兵の皆さんへ。私の目的は、ここを守り抜く事だけではありません。里の奪還、そしてその先、一人でも多く連れ去られた方々を助ける事が目的です。その為にもまずこの戦場の皆さんを生かす、私の全力でです。だから貴方達には大変な命令も出します。それでも私と志を同じくして下さるなら、共に参りましょう!」 「おお!」 猛者達は大きく気合を吐いた。 フェルルは頷くと、相棒の鷲獅鳥スヴァンフヴィードの首元を撫でた。 「フィー、よろしくね。遠慮なんて必要ない、今日は貴女の全力で飛んでっ!」 フィーは高らかに勇ましく鳴いた。 続いて口を開いたのはコルリス・フェネストラ(ia9657)。 「あくまで一案ですが――」 仲間達や楢新之助達と作戦方針や流れを相談。一案と前置きし作戦案を提示し、味方兵への焙烙玉や盾、スリングの手配を依頼するが判断は楢新之助達に任せる。 「基本は塹壕堀りでの塹壕網構築や余裕があれば柵設置を行います。防御陣地を形成し里からの敵達を防ぎます。空戦はフェルルさんの機動戦闘に一任ですね。後方支援は鈴梅雛さんに一任します。陸上各隊の一部指揮は宿奈さん、サクルさん、罔象さんに委ねます」 それから――と続ける。 「まず防御陣地は衡軛陣で形成します。突出して来る敵に対し、防御に敵した陣形です。そして、サムライ部隊の咆哮を駆使し敵の組織的行動を破壊すると共に、味方の望む場所への敵の誘引を実施します。各隊相互協力のもと敵達を順次撃破していきます。また、敵の攻撃は塹壕や盾、防壁で防ぎ、反撃はスリングを使った焙烙玉の投擲で実施します。常に敵と距離を置く戦いを繰り返し、北の味方が合流するまで可能な限り戦力を温存します。最後に、北の味方合流後は反撃に転じ敵軍を撃破。禍津夜那須羅王のもとへ開拓者達は集結包囲しこれを撃破します。その後里の解放に向かいたいと思います」 「分かった。ああ、異論はない。ただ、魔の森を焼き払うのは難しいだろう。不厳王が動いたとすれば」 「それはそうですが……」 コルリスは思案顔で呟き、吐息した。 「では、作戦は大丈夫のようですので、お味方に連絡の上、焙烙玉、盾、スリング配布を行いますね」 コルリスは言って、到着した輸送部隊の元へ向かう。 宿奈 芳純(ia9695)もまた思案顔で言った。霊騎の越影が隣にいた。 「コルリスさんの提案に異論はありません。私からは陰陽師隊を使った戦法案を提案いたしますが、判断はお任せします」 「聞こう」 「今回は各隊の連携が不可欠です――第一に、サムライ隊が咆哮を使う際はいつでも身を隠せる様塹壕の他、周辺に結界呪符『白』の防壁を作りサムライ隊等を防衛します。各隊と連携し北からの増援が来るまで防衛に尽力ですね。そして、北の戦力合流後は、仲間達や味方とともに禍津夜那須羅王への突入を実施します。自分を含む陰陽師隊は味方の支援のもと、総がかりで禍津夜那須羅王に非物理攻撃を集中し続けこれを撃破します。いかがでしょうか」 「俺は異論ない。陰陽隊長、どうだ」 「承知いたしました。禍津夜那須羅王の首、取ってやりましょう、宿奈殿」 「ありがとうございます。禍津夜那須羅王への突撃は各陰陽師の判断にお任せしますので、よろしくお願いします……では私も、ひとまずは塹壕掘りに向かうとしましょうか」 猪突猛進を地で行く突撃娘、騎士のフィン・ファルスト(ib0979)は力強く言った。 「みなさん、戦いましょう! 奪われた命の無念を晴らし、生きてる人たちの未来を護るために! なりましょう……絶望を払う希望に!!」 「おお!」 百戦錬磨の大将たちも、大きく頷く。 「あたしたちの目的はアヤカシ達のこれ以上の進軍阻止、これ以上好き勝手できると思わないでよ、アヤカシ!」 と、フィンは肩をすくめた。 「残念ながら指揮経験はほぼ皆無なんです、あたし。だから他の指揮権のある人の言う事をよく聞きながら前線で戦います。あ、体力ありますし陣地構築もお手伝いです。負傷が無視できないレベルになった人がいたら一旦後方に下がって治療を受けてもらいましょう。抜けた穴はあたしがその分頑張って埋めます。あと、龍騎兵の人には時々空から見た戦場の様子を教えて欲しいです。丘陵地帯だから起伏に隠れて奇襲に来る奴もいるかもしれません――こらっ、ロガエス、何してるの!」 相棒の人妖のロガエスは、総大将の楢を突いていた。 「いやあ……随分若い大将だなあってな」 「すみません楢さん! この子ったら……!」 「人妖ですか。珍しいですね。初めて見ましたよ」 「ロガエス、こっちへ座ってなさい!」 「ふんっ、また俺に命令するのか?」 ロガエスは、ツンツンしながらフィンの横に正座させられた。 砲術士の罔象(ib5429)は、ぺこりとお辞儀して言った。 「私もコルリスさんの提案に合わせますね。私からお願いしたいのは、陰陽師隊に結界呪符『白』での塹壕網の防壁の設置ですね。敵の攻撃から身を守る形に偽装し、塹壕を突破した敵を包囲する形になる様設置してもらい、設置した防壁で敵の攻撃を凌ぎつつ防戦します。それから、頃合いを見て味方は後方塹壕へ偽装退避。敵をサムライ隊の咆哮で防壁で包囲された塹壕へ誘導し、後方や周囲の塹壕から支援射撃やサムライ等、前衛系の味方と連携し包囲。陰陽師隊の結界呪符『白』の防壁効果のある内に、自分は中にいて襲来する敵を魔砲『スパークボム』でまとめて掃討しますね。この流れを繰り返し、禍津夜那須羅王以外の敵を塹壕で食い止め、北からの増援が来るまで持ちこたえます」 「了解した、では陰陽隊と連携してよろしく頼むぞ」 「ありがとうございます」 それから罔象は、宿奈の後を追って味方兵士に作戦案を説明しに行き、自身も塹壕堀りを手伝い塹壕網完成を支援する。 また言ったのは砂迅騎のサクル(ib6734)。 「私としても、みな様の作戦方針に異論はありません。北からの増援が来るまで防戦する事に賛成致します。私からは、砲術士達の戦法案を提案させて頂きます。御味方のサムライと砲術士の方々にご協力願えれば、塹壕での食い止めは可能かと思います」 と戦術案「車懸り」を説明する。 「まず、最も攻撃が予想される塹壕網に砲術士を集め五人一列の組を四段構築します。両脇や前列の塹壕網をサムライ部隊でカバー。続いて、敵が射程距離に入ったら最前列は一斉射撃し、発砲後塹壕内を通り四段列の最後尾に走り再装填します。そうして、その間に続く列の砲術士達が一斉射撃。この要領で各列の砲術士達が四段撃ちでの間断ない射撃で敵を迎撃。砲術士達の機動を、左右で守りにつくサムライ部隊が敵を食い止める形で守ります。最後に、北の味方合流後はで反撃に転じ、今度は射撃を終えた列が最後尾に下がり、装填を終えた砲術士の列が進み、四段構えの射撃で敵を間断なく射撃。射撃支援を受けサムライ隊が左右から挟撃し敵を撃破していきます。楢様にはご存知かもしれませんが、これが、車懸りです」 「ああ、俺は覚えている。良く機能した戦術だったなあ……今回もよろしく頼むぞ」 「ありがとうございます。では、砲兵のみなさんに、ご挨拶させて頂きますね」 サクルはお辞儀した――。 ●開戦 「撃て――!」 飛空戦艦同士の砲撃線が始まる。お互いに最大攻撃能力を持つ舷側に敵の戦艦を捕えようと動く。 「捕獲部隊、行くぞ」 将門は妙見を駆り飛び立つ。華御院は壱華を、ルオウはシュバルツドンナーを駆る。 「頼むぜ相棒!」 「行きましょう、暮」 嶽御前も続く。 龍安龍騎兵たちと空賊は乱戦に入る。 「霞澄様、二時方向、敵一射、来ます」 麗霞は、霞澄を庇って彼女に覆いかぶさった。 直後、敵戦艦の砲撃が霞澄の側で炸裂し、二人は吹き飛ばされた。 「麗霞、大丈夫ですか……」 「霞澄様こそ」 「柊沢殿、ご無事か!」 龍安兵がやってくる。 「ええ……」 「すまないが、負傷兵の回復をお願いしたい。こっちも急務でしてな」 「分かりました……。麗霞、回りを見ていて下さいね……」 「承知しました霞澄様」 ルオウは後ろを見やり、舌打ちする。 「やってくれるじゃねえか空賊どもが! 行くぜシュバルツドンナー!」 華御院、ルオウ、将門、嶽御前らは捕獲部隊を率いて突進する。 エラトは、アギオンに命じて、龍安龍騎兵の咆哮と連携して、空賊たちを夜の子守唄で眠らせて行く。しかし、墜落した空賊たちは激突のショックで目を覚ましてしぶとく舞い上がって来る。 「野郎! あの魔術師が!」 「アギオン!」 エラトは矢を回避する。 「エラト殿!」 エラトの真紅のリュートから眠りの旋律が奏でられる。 「ち……ちくしょう……」 空賊たちは墜落していく。 「行くぞ、突入だ――」 将門らは空賊の飛空船に強行着陸すると、内部の制圧に向かう。 「天山寺……もう逃がさんどす……」 華御院は艦橋の防備を突き破り、突進した。 「天山寺……」 だが、天山寺は早々にグライダーで逃げようとしていた。 「はっはっは! 俺様が捕まるか!」 「あんさん不厳王に始末されるだけどすえ……」 「俺がくたばるか!」 天山寺は離脱する。 ルオウは、回転切りで賊たちを切り裂く。血塵が舞い上がる。 「手加減は出来ねえぜ? 引いた方が身のためだぜ!」 「行け行け!」 嶽御前は後ろの守りを固めつつ、前進する。 「みな様、お気をつけて――」 嶽御前は空賊兵士を叩き伏せると、味方兵士を見やる。 将門は機関部を制圧し、ルオウと華御院らが船を完全に制圧する。 「こっちはこれで四隻だ。残る一隻も頂く――」 だが、空賊の残党は撤退していく――。 「では私を先頭で雁行で行きますよっ、フィー!」 フェルルは加速した。敵の先端に激突、吶喊していく。 「一撃離脱で削ります! 編隊を崩さないで!」 龍安軍は塹壕防御で、スリングでの焙烙玉の投擲攻撃をアヤカシの戦列に加える。 「ではみなさん、罔象さんの支援も兼ねて、結界呪符を張り巡らせていきますよ」 宿奈ら陰陽隊は結界呪符「白」を張り巡らせていく。そこへ、前進した龍安小隊が偽装撤退によりアヤカシを誘い込む。 「行きますよ〜魔法スパークボム!」 罔象の魔槍砲から閃光と爆発がアヤカシを薙ぎ払う。後退して、罔象はスパークボムを連発する。粉々になっていくアヤカシ達。 「撃て!」 サクルは、戦陣「横列射撃」を使い、先頭に立って車懸りを仕掛けていく。塹壕を利用して後退しつつ、アヤカシの先端を破壊していく。 「フィン殿! 十一時時方向、敵集団出ます!」 上空から、龍安騎兵が叫ぶ。 「ありがとうございます! よっしゃ! 行くぞー!」 「死ぬなよフィン!」 ロガエスは言って、矢を装填した。 「あたしの後ろから出ちゃダメだからね、ロガエス!」 「……ふん、そっちこそ無茶が過ぎて死ぬんじゃねーぞ! 他もな!」 フィンは突進して、ハーフムーンスマッシュでアヤカシを一掃する。 「あたしを殺したきゃこの3倍は持って来い!」 「山紫、霊鎧を。――みなさん、禍津夜那須羅王が出ます。楢様にお伝え下さい」 コルリスは言うと、 「翔!」 月涙+鳴響弓の合成技を禍津夜那須羅王に叩き込む。 「瑠璃さん、助けて下さいね。敵が来ます。みなさん、ひいなが援護します。思いっきり、やって下さい」 フェルルは、眼下の禍津夜那須羅王を確認すると、北の空を見た。 「あ……援軍が来ますっ、みんなに知らせて下さいっ」 「禍津夜那須羅王!! そろそろ決着をつけてやる! いくぜええええ!!」 ルオウは突進した。 北からの援軍は、まず捕獲した飛空戦艦を質量弾として禍津夜那須羅王に叩き込んだ。 ――が、禍津夜那須羅王は戦艦ごと衝撃波で切り裂き、龍安兵たちを薙ぎ払う。 「瑠璃さん、手伝って下さい。負傷者をこっちへ」 「はい、雛様」 ひなは後方で戦戦を支える。 「では行きますよ。越影。みなさん、陰陽隊で集中攻撃です」 「各隊、前に!」 宿奈にサクルも反撃に出る。 龍安兵、開拓者たちの非物理攻撃が禍津夜那須羅王に叩き込まれる。 「おおおおおお……!」 禍津夜那須羅王は咆哮すると、緑光の衝撃波を撃ち込んできた。 吹っ飛ぶ龍安軍、開拓者たち。 アヤカシの得体の知れない咆哮があちこちから響き渡る。 「な、何? あれは……」 フィンは巨人を薙ぎ払った後で、地平線の黒い影を確認した。 「魔の森が前進して来るの? これは……」 里は飲み込まれて行く。 龍安軍、開拓者たちはこの異変に後退を余儀なくされるのだった。 |