|
■オープニング本文 武天国、龍安家の治める土地、鳳華――。 ●東部〜魔の森、東の大樹海〜緩衝地帯を越えて 大アヤカシ不厳王(iz0156)は、魔の森を活性化させると、緩衝地帯を越えて森を拡大させていく。 「……人間など、滅びゆく種族に過ぎん。ふふ……もはや……手遅れよ。滅亡へ向かって進む人間どもが、何を今更抵抗するか。滑稽極まりない……」 不厳王は、瘴気の渦の中にいて、続々とアヤカシを排出し続けていた。それらは死人の軍団である。 魔の森から続々と溢れだす死人アヤカシは、緩衝地帯を越えて鳳華の東部に展開していく。怪骨、屍人の大軍が続々と溢れだす。また、幽霊兵士の大軍が森から前進する。がしゃ髑髏に巨人兵、死骸の肉塊らが咆哮を上げれば、大気がびりびりと振動する。さらに、上級兵士である死人戦士、死人龍騎兵らが前進する。そして、指揮官クラスの中級アヤカシも多数、異形の死人の幹部たちが、鳳華の東部に襲い掛かっていく。その先頭に立つのは、上級アヤカシ禍津夜那須羅王である。 里の人々は、その光景にパニックに陥った。 「ま……魔の森が前進して来るぞ……!」 「な、何だあれは……! 森が! 森が飲み込んでやってくる!」 東部の里長たちは、誰もが二十年前の出来事を思い出していた。当時ここにいなかった者たちがほとんどだが。鳳華の東方に発生していた魔の森が急速に拡大を見せた。アヤカシたちとの戦いの始まりだった。 里長たちは民を率いて後退する。この魔の森の勢いは近年にない例外である。東の里は、魔の森に沈んでいく……。 龍安軍の指揮官、楢新之助はここ最近で頭角を現してきた龍安家の武将である。東の戦線を支える一翼を担っており、この絶望的な退却戦にあって、不屈の闘争心で陣頭指揮に乗り出していた。 「楢様!」 部下が駆け込んで来る。 「蓮高の里の民の避難、完了いたしました! いよいよアヤカシが来ますな……禍津夜那須羅王が出てきます」 「奴に何度苦杯をなめさせられたか……が、今は禍津夜那須羅王よりも、民を無事に退避させることが肝心だ。あの魔の森の前進を前にしていてはな……本当に奴が言うように三カ月と持たんぞ」 「何とか止められないのでしょうか……この森の拡大を」 「大アヤカシ不厳王を倒さねばなるまい。森を活性化させているのは大アヤカシだろうからな……」 「ですが……大アヤカシは魔の森の奥地に……」 「確かに届かん。頭が痛い。くそっ――」 楢は言って、刀で地面を突いた。それから吐息して、ぴしゃりと自身の頬を打つ。 「とにかく、ここで考えても仕方ない。後退しつつアヤカシの攻撃を拡散させる。引き付けたところで敵集団を各個に撃破していくぞ。禍津夜那須羅王には相応の戦力をぶつけて抑える。奴を暴走させるなよ!」 「はは――!」 新之助の言葉に、部下は疾風のように駆けて行った。 新之助は吐息してがしがしと頭を掻いた。 「それにしても……寝てないな俺も……みな同じだが。根比べだなこいつは。だが敵は不眠不休で動ける、きついハンデだな全く……」 ●西〜鳳華中央〜首都周辺〜龍安家の中枢 「……新之助はよくやる」 家長の龍安弘秀は、前線からの報告に目を通しつつ、筆頭家老の西祥院静奈を見やる。 「魔の森が収まる気配はないか」 「いまだ。ですが、無限に広がることは無いのではないでしょうか。天儀全土に点在する魔の森を見ても、大アヤカシにも限界があるのではないかと……楽観的な推測に過ぎませんが」 「ところで開拓者から上がってきた件だが」 「はい」 静奈は、報告書を差し出した。 「軍備の増強ですが、現場からの意見として慢性的な人手不足であるとの声は出ています。前線においては、倍以上のアヤカシ相手に民を守りながらの退却戦は至難でしょう。避難民への心理的なサポートは支援が必要かと。南部の交渉は均衡状態に持ちこんでいますが……。避難民の受け入れは追いついていません。南へ向かった民はほぼいないようです。戦わずに済む方法は見つかっていませんが……。不厳王らアヤカシと内通する者はいないようですね――アヤカシが紛れ込んでいるかどうかはともかく。大規模な民の受け入れ先の準備は進めているところです。魔術師、吟遊詩人の雇用についても意見がありましたので、こちらは進めております。練力回復アイテムの前線への補給は手配を進めています。輸送船につきましては、何隻か専用の飛空船を回しました。寸断された街道の整備につきましては、一部復旧の見通しが立っていますが、引き続き兵を投入しております。天山寺が使っていた飛空船ですが、造船所は特定できましたが、少なくとも敵から発注を受けたわけではないようです。船はその後正規の手続きを踏んで売却されています。飛空戦艦、宝珠砲の新規生産を開始しました。飛空船艦は大型ですと木材の乾燥に一年は掛かりますが、中型であれば半年ほどで建造できますので。宝珠砲は本格的な増産に踏み切りました。また、正規兵員も雇い入れています。何かと引退する兵士も多い土地ですので、兵を急に増やすのは難しいところですが。それから、いつどこで戦闘が起こっても即時兵力と物資が現地に届く様、物資と兵力の輸送手段の体制強化と。再三危惧されています敵の諜報活動ですが、反乱軍に内通する者を捕えています。ざっとまとめてありますので、確認下さい」 「分かった。後で読ませてもらおう。ひとまず、新之助を助けてやれ。予備兵力から少し援軍を送るか」 「そうですね。全軍を動かすのは不可能ですが……」 「よろしく頼む」 「では、失礼します」 静奈が退室するのを弘秀は見送り、天井を仰いだ。重々しく吐息すると、弘秀は分厚い報告書に目を通し始めた。 |
■参加者一覧
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
玲璃(ia1114)
17歳・男・吟
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
宿奈 芳純(ia9695)
25歳・男・陰
メグレズ・ファウンテン(ia9696)
25歳・女・サ
フィン・ファルスト(ib0979)
19歳・女・騎
長谷部 円秀 (ib4529)
24歳・男・泰
罔象(ib5429)
15歳・女・砲 |
■リプレイ本文 ●戦闘開始前 歌舞伎役者の華御院 鬨(ia0351)は女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出している。今回は京美人の女装をしていた。 「とりあえず、今回は人の命を守るんが優先どすな。やはり、守りながらの撃退は難しいどすし」 と前回の失敗を糧にポジティブに考える。 華御院は楢に言った。 「うちはサムライ龍騎兵をいくらつれて、死人龍騎兵、飛行死骸龍など飛行するアヤカシが一気に上空から攻め込まれない様にして、避難民の保護をしながら戦闘を行いやす。自分は後方でサムライ龍騎兵の状況を確認し、苦戦している所があったら駆けつけて、前線を突破されない様に指示を出しながら戦闘をさせて頂きやす。それから、中級アヤカシは自分から対応して、手が足りない場合は複数のサムライ龍騎兵で対応してもらいます。今回は手堅く行かせて頂きます」 「分かった、そっちは任せるぞ。まあそう気に病むな」 コルリス・フェネストラ(ia9657)は、あくまで一案だが、と作戦案を提示した。 「まずは各兵士達に焙烙玉と盾、弓矢を支給して下さい。それから、蓮高の里内で鼠等生命反応を示す小動物をかき集め用意しておきます。基本戦術は川と斜面を利用した敵の迎撃となります。龍騎兵は四指戦法に拘らず、状況に応じた戦法で敵を倒し制空権を確保。一般兵は斜面に塹壕を掘り塹壕に身を潜め、敵の攻撃を凌ぎつつ弓や焙烙玉で応戦。防御陣地を作る際、味方が包囲攻撃しやすい位置にある防御陣地には味方兵の代わりに兵に偽装した多数の案山子や旗を立て、集めた鼠等を放ち敵にそこが本陣だと思わせ、敵軍を誘き寄せます。敵がそこに集まったら斜面上から集中攻撃。その間に禍津夜那須羅王への攻撃部隊が出撃します。最後に、禍津夜那須羅王発見合図後は一般兵は退却し里防衛網や殿の使用する塹壕を構築。開拓者は禍津夜那須羅王を包囲攻撃し撃破します」 「……うまく進むことを祈ろう。禍津夜那須羅王には……盛大に後で借りを返す」 宿奈 芳純(ia9695)は越影から降りると、諸将に挨拶する。 「私もコルリスさんの作戦に合わせあましょう。こちらも一案ですが――まずはサムライ隊が咆哮を使う際はいつでも身を隠せる様防壁や、周辺に結界呪符『白』の防壁を作りサムライ隊等を防衛し連携します。禍津夜那須羅王発見後は、仲間達と共に禍津夜那須羅王への突入を実施します。自分を含む陰陽師隊は味方の支援のもと、総出で禍津夜那須羅王に非物理攻撃を集中し続けこれを撃破します」 「分かった。では、陰陽隊の指揮は任せる」 「ありがとうございます」 宿奈は一礼すると、陰陽師隊や各隊に挨拶後作戦を説明しにいく。 メグレズ・ファウンテン(ia9696)は瞬から降りると挨拶する。 「私はフィンさんと組み、敵の群れを切り開きながら禍津夜那須羅王のもとへ向かい、仲間達の盾役等にもなる事を表明いたします」 「では、個別の戦術は任せる」 楢は頷いた。 フィン・ファルスト(ib0979)も禍津夜那須羅王に向かうことを表明する。 「不厳王は魔の森の奥……だったら、引きずり出すしかないですよっ。そのためにも……あんたは邪魔よ、禍津夜那須羅王! だらだら長引かせたら避難してる人たちの負担が大きくなるだけですっ」 長谷部 円秀 (ib4529)は、思案顔で言った。 「そろそろ王への借りが随分と溜まってきました。返さないと不味いですねぇ。相手、願いますか。個人的には王への借りを返したいと思います。それに鳳華にも随分と愛着がつきましたし」 それから長谷部は、作戦案を提案する。 「私は陸戦担当で行きますね。防御部隊とは別にサムライ等近接戦力で機動打撃部隊を編成出来ますでしょうか。防御の攻撃で敵が止まったところを右側面より小迂回して打撃を与え均衡を崩してみようかと思います。そのまま防御部隊の攻撃と連動して敵の腹を食い破り、集団としての行動を阻害。特に指揮官を見つけた場合は優先的に潰し、敵の統制を崩します。また、攻撃に固執せず、引けば攻め、攻めれば退き、右を守れば左を攻めるという敵の嫌がる方向へと攻撃し主導的に戦闘を遂行すべきでしょうか」 「了解したぜ長谷部。そっちは任せる」 「ありがとうございます。注意するのは一人で戦わず、常に集団で戦うことですね。相互に隙を補い合うことで危険を極限します」 続いて口を開いたのは罔象(ib5429)。 「私からは、空戦戦術として龍騎兵が二人一組でペアを組み、片方が咆哮で敵をひきつけ、もう片方がその敵を横撃、真上からの攻撃などで仕留める『繰引』戦術を提案いたします」 「繰引戦術か、お馴染みになってきたな。よろしく頼む――」 罔象は、味方龍騎兵隊へ『繰引』戦法の応用として、自分の周囲に敵が集まる様咆哮の角度等を調節し、集まったところで龍騎兵は退避し魔砲「スパークボム」でまとめて倒す『空雷』戦法を提示する。 「よっしゃ、任せとけお嬢ちゃん」 メグレズは塹壕掘りに向かうと、周囲の森林から木を切りだし、逆茂木設置や木工技術を駆使して傾斜のある陣地の上に丸太の束を置いて、落下防止の板を前に立てて回り、敵が傾斜を駆けあがってきたら板を外し丸太が斜面を落下し敵群を潰せる様傾斜を利用した仕掛けを多数設置し防御を支援しておく。 美しき巫女の玲璃(ia1114)はお辞儀して進み出た。 「巫女隊、サムライ隊のみなさん、よろしくお願いします。私の方からはサムライ隊の護衛のもと、戦場で負傷した味方のもとを回り、その場で治療し順次戦線に復帰させ、防戦を継続させる機動治療を提案いたします」 「了解しました玲璃殿。お久しぶりでございます。助けられた者です」 「それは――」 それから玲璃は、各隊に負傷者が出たら伝令などで場所や人数を教えてくれる様お願いして回る。 「お任せ下さい玲璃様。必ず」 「ありがとうございます」 それから塹壕掘りを手伝い、戦場構築を支援する。 宿奈もまた、塹壕掘りを手伝い、また川岸や各所に地縛霊設置を陰陽師隊にお願いして回り、敵の進撃妨害を支援しておく。 ●戦闘開始 「行きますどす、みなさん、よろしくお願いしやす!」 華御院は言って、飛び立った。後方から戦線を確認しつつ、適時出る。加速するとアヤカシ龍騎兵を撃墜した。 「突破されそうなところを重点的に押し返して下さい」 華御院は後ろにいる避難民の様子を確認していた。前回は失敗してしまったようだが、今回は同じ轍は踏まない。 「ここから先は行かせませんどす!」 咆哮して突進して来る上級死人戦士と激突する。 「オオオオオオオオオ――!」 十合にわたって打ち合い、秋焔桜と白梅香で敵の首を切り飛ばした。 「アヤカシ軍、右前方から来ます。数20」 玲璃は瘴索結界「念」で策敵を行う。戦場を動くアヤカシ達を探査し、アヤカシの位置や数、動き等を報告する。 「敵軍突進してきます。対応して下さい」 「玲璃殿! こちらへ! 負傷者です!」 護衛のサムライがやってくる。 「分かりました」 瘴索結界「念」の反応をもとに移動距離が短く敵との遭遇も可能な限り避けられるルートを探り当て、環を駆り味方を案内する。 「それでは、みなさんを私の周りに集めて下さい。巫女隊のみなさん、いいですか」 「了解しました」 そこで精霊の唄でできる限りまとめて治療し、迅速な治療を実施する。護衛役のサムライ隊にも精霊の唄で順次治療。 「みなさんよろしくお願いします。一般兵のみなさん、危険と見たらすぐに後退して下さい」 コルリスは言って、山紫を駆って飛び立つ。 「龍騎兵隊、四指戦術にこだわらず、制空権の確保をお願いします」 コルリスは言いつつ死骸龍を撃ち落とした。 「よし! 行くぞ!」 龍安騎兵隊は戦闘隊形を展開して前進する。 地上では味方が包囲攻撃しやすい位置にある防御陣地に味方兵の代わりに兵に偽装した多数の案山子や旗を立て、集めた鼠等を放ち敵にそこが本陣だと思わせ敵軍を誘き寄せる。 敵がそこに集まってきたら斜面上から集中攻撃する。 「撃て!」 矢が怒濤のように撃ち込まれる。ばたばたと倒れて行くアヤカシ達。 「私達も支援を開始ですね」 宿奈は言って、陰陽隊を率いて結界呪符「白」の防壁を築いていく。 「サムライ隊のみなさん、よろしくお願いします。禍津夜那須羅王が出るまでは、こちらで支援しますので」 「よろしくお願いする宿奈殿。引き付けて敵を討つ!」 サムライ隊は飛び出した。 「よーし丸太を落とせ!」 メグレズが指揮して作らせた丸太が解き放たれると、斜面を転がって丸太が落下していく。押し潰されるアヤカシだが、ダメージを与えるには至らない。アヤカシ軍の戦列が崩れる。 「禍津夜那須羅王への攻撃は正面を迂回し背後に回り込む片翼包囲機動で行きます。着いてこられる方は来て下さい」 メグレズが言うと、フィンも言った。 「あたしも行きますね! よっしゃ、いっくぞー!」 「猛者を連れていけ」 楢は言って、メグレズとフィンを送りだした。 メグレズは瞬を駆り仲間達や味方部隊と連携し鋒矢陣をとり、自分が先頭を駆け、 「前へ!前へ!」 と瞬へ高速走行を命じ、敵からの攻撃をベイルで防ぎつつ、回転切りも駆使して立ち塞がる敵を無双の如く薙ぎ払いながら突き進む。 フィンは練力を温存してアーマー、ランスロットを駆り加速する。刀でアヤカシを粉砕して突き進む。 長谷部も部隊を率いてアヤカシ軍の右側面から打撃を加える。味方軍との連携によって、アヤカシ軍の均衡を大きく崩した。 「敵が出てきたら引きますよ。もう一度タイミングを合わせて出ます」 長谷部は兵士達を指揮しつつ、攻撃のタイミングを図る。 上空、罔象は、アヤカシが集まってきたところで友軍に警告を送る。 「いったん私から離れて下さい」 罔象の魔槍砲から閃光がほとばしる。爆発と閃光が弾ける。「空雷」戦術によってアヤカシを撃破していく。 罔象は友軍と連携して上空を制圧していく。 「私たちは禍津夜那須羅王以外の敵を撃破します」 宿奈からの狼煙銃が上がった。 「行きましょう」 宿奈は望遠鏡を下ろすと、練力回復アイテムを受け取り、前進する。 「行きますどす――!」 華御院は一撃離脱で打ち込む。禍津夜那須羅王は長刀で軽く弾く。 コルリス吟遊詩人には天鵞絨の逢引を、魔術師にはアイアンウォールやアークブラストをお願いし、自身も「翔!」――月涙+鳴響弓の合成技を放つ。 宿奈は結界呪符「白」で陰陽師隊を守る壁を作り、陰陽師隊には錆壊符を放ち続ける事を指示すると、自身は黄泉より這い出る者を放ち続ける。 玲璃は壁に隠れつつ精霊砲を撃ち込んでいく。 メグレズが鬼切りで突進する。 強制排除で飛び出したフィンも突進する。オウガバトルを使い前衛で戦いつつ術者たちの時間稼ぎをする。 禍津夜那須羅王は受け止めつつ二人を弾き飛ばした。 「邪魔だ――」 長谷部は死角、背面に円運動で回り込み、奇襲的に玄亀鉄山靠を叩き込んだ。さらに白梅香で防御を抜く。 禍津夜那須羅王は長刀を叩き込んだが、長谷部は瞬脚で後退した。 直後――。 禍津夜那須羅王は地面に長刀を突き立て、衝撃波を打ち込んだ。 吹っ飛ぶ開拓者たち。 「みなさん、回復します!」 玲璃は手を振り上げると、精霊の唄を歌い始めた。燐光に包まれる玲璃。巫女の力がダメージを回復していく。 メグレズ、華御院、長谷部、フィンは再度加速した。 禍津夜那須羅王は長刀を構える。フィンの切り札――オウガバトル+極地虎狼閣「タイラントクラッシュ」弱点っぽい場所は勘も加味して見切りぶち込む。 「ヤツ用の奥義の一つ……喰らっとけえええええ!!」 ズドドドドド――! と禍津夜那須羅王の肉体に攻撃が貫通する。 「諦めろ人間。勝ち目はない」 禍津夜那須羅王は微かに態勢を崩して、だが長刀を回転切りのように操り、開拓者たちを吹き飛ばし、巨大な衝撃波で大地を切り裂き龍安軍を吹き飛ばした。 「今回はこの辺りが限界ですか……」 コルリスは仲間たちに後退の合図を出す。後方に築いた塹壕を通って、開拓者達は退却するのだった。 ●天承城にて 華御院は、傭兵や支援物資の供給がしやすい様に各地で、現状の鳳華の状況などの広報活動を弘秀に提案した。 「それにより傭兵を呼び込み、支援物資の融資をしてもらう機会を作ります」 「悪くない案だとは思う。万屋や武器商人などに招待状を送ってみるかね」 「うちも一肌脱ぎます。歌舞伎の公演などで呼びかけを行います」 「では早速進めよう――」 弘秀は華御院が持ってきた書類を決裁した。 「弘秀様、遠目で龍安軍旗に見える旗の大量作成が可能でしょうか」 コルリスは意見書を差し出して言った。 「旗ならいくらでもあるが、まだ増やすのか?」 「そうですね。私に考えがあります。可能なら大量作成と戦場での使用許可をお願いしたく存じます」 「分かった。では決裁しておこう」 メグレズは、意見書を弘秀に差し出した。 「味方サムライ隊の中から、霊騎や馬に騎乗し地上の迅速移動や突撃による破壊力を持つ騎兵隊の編成は可能か伺いたく存じます」 「もちろん可能ではあるがな。それほど霊騎に重きを置いていなかったのでな。ふむ……」 弘秀はメグレズの意見書に目を通していく。 「分かった、こちらの案はそのまま進めてくれ」 弘秀は決裁を出した。 フィンは、弘秀のもとを訪れていた。 「南部兵士に北部と東部の状況の噂を流してみたんですが――」 フィンは報告書を差し出す。 「どうであった」 「今、反乱軍はがたがたみたいで、離脱者がこちらに流れています。あの、南部から寝返る兵たちに、罪の軽減が出来ないものでしょうか。こっち来たくて躊躇してる人いるかも、です」 「兵たちを罪に問う気はない。本来の敵はアヤカシだからな」 弘秀は言って吐息した。 長谷部は、具申書を持って弘秀のもとを訪れた。 「新兵器を開発してはいかがでしょうか」 「というと?」 弘秀は書類に目を通していく。 「大砲などの志体によらない兵器を改良し、予備兵力を増大させます。都市防衛のために城壁に備え付け能力を向上させるなど。特に発射速度、射程を重視して開発します」 「特注の大型宝珠砲――要塞砲かね」 「そうですね」 「ふうむ……新しい兵器となると時間はかかるが……」 「進めるべきかと思います」 「分かった。では、進めてくれ――」 罔象は、家臣らと協議した意見書を持って弘秀を訪ねた。 「現在避難中で建設作業が可能な住民達に日当を払う形で、今後避難が必要な里の住民達の避難経路の改修を作業員を集め実施し、より迅速な避難誘導ができる様奏上いたします」 「今、避難民を働かせるのは何とも言えんが……では、募集を行ってみるかね。専門は軍が行う。あくまで補助的になるだろう」 言って、弘秀は決裁を出した。 |