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■オープニング本文 武天国、龍安家の治める土地、鳳華――。 ●東部〜魔の森、東の大樹海〜緩衝地帯を越えて 大アヤカシ不厳王(iz0156)は、魔の森を活性化させると、緩衝地帯を越えて森を拡大させていく。 「……何だと?」 不厳王は、部下の死人が持ってきた報告に、髑髏の眼孔を持ち上げた。不厳王の近衛兵は、平伏して告げる。 『禍津夜那須羅王様――すでに龍安軍の包囲下にあり、長らく連絡が途絶えております』 「ふむ……」 不厳王は、骸骨の指先を持ち上げると、近衛兵を下がらせる。それから緑光の瘴気の塊を持ち上げると、そこに向かって話しかけた。 「朱藩、理穴、武天、各地の状況を報告せよ――」 それからまた不厳王は、瘴気の渦の中にいて、続々とアヤカシを排出し続けていた。それらは死人の軍団である。 魔の森から続々と溢れだす死人アヤカシは、緩衝地帯を越えて鳳華の東部に展開していく。怪骨、屍人の大軍が続々と溢れだす。また、幽霊兵士の大軍が森から前進する。がしゃ髑髏に巨人兵、死骸の肉塊らが咆哮を上げれば、大気がびりびりと振動する。さらに、上級兵士である死人戦士、死人龍騎兵らが前進する。そして、指揮官クラスの中級アヤカシも多数、異形の死人の幹部たちが、鳳華の東部に襲い掛かっていく。 不厳王は動いた。魔の森から出没すると、龍安軍の先端に軽く瘴気の波動を叩きつけた。吹っ飛ぶ龍安兵士。 「何だ奴は……!」 「まさか……不厳王……!?」 次の瞬間、兵士達を緑光の閃光が飲み込んだ。 龍安軍は民を率いて後退する。この魔の森の勢いは近年にない例外である。東の里は、魔の森に沈んでいく……。 ●北部〜魔の森〜厳存秘教国 「畜生……龍安軍が……!」 賊集団、厳存秘教の頭目、天山寺仁海は悪態をついた。龍安軍の攻撃で築いた町が破壊されてしまった。とは言え、賊たちはまだ健在である。どこからとも知れない飛空船が着陸し、物資を補給していく。 「お頭! この貸しは高くつきますぜ! 龍安の奴ら、思い知らせてやりましょう! へへ……見て下さいよ! 新品の刀と鎧が届きましたぜ!」 「おう。だが……気がかりなこともある。龍安春信が攻撃してきた件がある。反乱を起こした春信が……俺様の邪魔をするならぶっ潰す! 野郎ども! 旗を上げろ! 黒い旗をな! 船を出せ! 龍を駆っていくぞ! まずは鳳華の北部を手に入れる! 邪魔する奴には容赦することはねえぞ!」 「おおー!」 龍安春信に攻撃されたと思わせたのは開拓者たちであるが。 最悪の無法者たちの咆哮が響く――。 ●南部〜反乱軍〜鳳華に蔓延する不穏の影 南部に、里長たちが集まっていた。立て続けの敗戦に、春信始め、里長たちは頭を痛めていた。春信の支持を疑う声が開拓者の計略でばら撒かれたこともあって、兵士や民が離散していくのを止めることは出来ない。そしてまた、開拓者の計略により、北部の厳存秘教に攻撃されたとの噂が広がり、敏感な民は足早に退避を始めていた。 「何か妙案はあるか」 春信は、里長たちを見渡した。里長たちは無言である。彼らの間に疑心暗鬼が渦巻いていた。 と、一人の女性が進み出た。眉目秀麗な美女である。最近になって春信の軍に加わった武官で、名を沙羅と言った。 「良い案があります」 「聞こう」 「逃亡者には見せしめを」 「何だと?」 「今、春信様の力を示すには、断固たる見せしめが必要です。春信様の意思を表すためにも」 「し、しかし沙羅殿……」 里長たちが口を開くと、沙羅は一喝した。 「あなた方は本当に春信様をお支えする心を決めているのですか――」 「では、見せしめを」 春信は言った。 それから間もなく、逃亡を図った春信軍兵士たちが捕えられ、厳しい処分を受けた。 ●西〜鳳華中央〜首都周辺〜龍安家の中枢 天承の城で、家老衆たちが集まっていた。東の大樹海からの不厳王の出現。北部の天山寺とアヤカシ、南部の春信らの決起。どれも危機的な問題だった。 今、天承城を預かるのは、サムライ総大将の山内剛であった。龍安弘秀と筆頭家老の西祥院静奈は、禍津夜那須羅王との決戦に赴いていた。 「今頃、戦いは決着がついているだろう」 山内は言って、家老衆の水城明日香、坂本智紀、天本重弘、芦屋馨(iz0207)らを見渡す。 「まだお屋形様との連絡はとれんのか」 「戦場は現在混沌としておりまして、正確な情報が入って来るのはもう少し時間が掛かるかと思われます」 明日香が言うと、山内はうなるように吐息した。 「引き続き、北部の天山寺軍が攻勢に出てきます」 坂本は言った。 「天山寺軍の補給線は厄介ですね。町や砦を再建しており、また飛空戦艦を新たに仕入れたようですね」 「厳存秘教国か……これではいたちごっこだな。せめて、天山寺を捕縛ないし撃破しないと、切りが無い。いっそ奴を暗殺するか」 「それも一つの方法ではありますが……」 「ところで、反乱軍の方だが、春信様が逃亡者を処断したと言うのは事実なのか」 「間違いありません」 天本が頷く。 「信じられんな。あの春信様が、形勢不利とは言え、同じ家の兵士だぞ」 「反乱軍の間には、急激に猜疑心が蔓延しており、また南部の民は離散し始めています。里長たちの一部は、我が軍に協力すると申し出ています。もはや時間の問題ではないでしょうか」 「嫌な戦いだ。一刻も早く終わりにせんとな。だが、春信様が強硬手段に出るとは……迂闊に刺激して、民を人質に取られたら厄介だな」 「そこまでするとは考えたくありませんが……」 「宜しいでしょうか山内様」 芦屋が進み出た。 「何でしょう」 「手元に来た情報ですと、どうやら、南の魔の森が動き始めているようです。反乱軍の一部とアヤカシの小集団との間で小競り合いが発生しています」 「それは聞いていませんな」 「十名程度の小隊が処理に当たったようですので。ただ、これまで南の魔の森は完全に沈黙していましたので、警戒は必要かと」 「どう思う水城」 山内に問われて、水城は思案顔。 「そうですね……偶然にしては出来過ぎですね。南の魔の森が動いたとなりますと、不厳王が指示を出しているかも知れません。ただ、本当に偶然と言う可能性もありますが……」 「反乱軍との交渉材料には使えそうだな」 言って、山内は立ち上がった。 「では、お屋形様が戻られるまで、今少し、我々で問題に対処するとしよう。よろしく頼むぞ――」 正直なところ、誰もが禍津夜那須羅王との決着が気がかりではあったが、残っている者たちは祈るしかないのだった。 |
■参加者一覧
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
メグレズ・ファウンテン(ia9696)
25歳・女・サ
罔象(ib5429)
15歳・女・砲
ユーディット(ib5742)
18歳・女・騎
ライ・ネック(ib5781)
27歳・女・シ
サラファ・トゥール(ib6650)
17歳・女・ジ
中書令(ib9408)
20歳・男・吟 |
■リプレイ本文 ●天承城にて コルリス・フェネストラ(ia9657)は龍安弘秀に意見を奏上した。 「弘秀様、禍津夜那須羅王戦に参加した全将兵に感状と一時休暇をお与え下さい。今後いつ休息できるかわかりません。損害軽微といえそこに至るまで将兵達は尋常ならぬ苦労を強いられた筈です。その苦労に報いる為なにとぞ」 「ああ、その件は十分に検討するよ」 「また今回の戦ですが。味方部隊の一部を南部では天山寺軍、北部では春信軍に偽装し、襲撃させ両者の対立を更に煽ることを提案いたします」 「そのまま進めてくれ」 そこでサラファ・トゥール(ib6650)が言った。 「今回も各軍に偽装に必要な服装の用意が可能でしょうか? 可能なら北部方面の工作や諜報、北部の味方部隊の一部を春信軍に偽装し、天山寺達と戦う作業を手伝う事を表明致します」 「前回のものも使ってくれ。追加の服装は送っておこう」 メグレズ・ファウンテン(ia9696)が進み出た。 「味方の中から前線からの要請に応じ、戦闘中の味方へ練力回復アイテムを順次届ける伝達態勢を各戦場で確立させる事を奏上したく存じます」 「これはかなり実用されていると思う」 「それから、宝珠砲を迅速に戦場に展開したり退却させる為、宝珠砲を載せた荷車を作成し、移動時は荷車に乗せ、馬等に連結して運ぶ方式を採用してはいかがでしょうか」 「……そうだな。全ての宝珠砲に浮遊宝珠が配備されているわけではないから、補助的には騎砲兵の運用も必要だろう」 ●南部 中書令(ib9408)は南部の味方と合流すると、引き続き南部の春信軍との交渉に臨むことを伝える。三度目となる反乱軍との交渉に臨んだ。 「春信様、先の戦いの件は御存じですね? 龍安弘秀様が禍津夜那須羅王を討伐されました。弘秀様がアヤカシへの対処が手ぬるいと春信様は仰ってましたが、これでもなお手ぬるいですか?」 ざわめきが走る。 「誰の目にも、弘秀様の方が着実に結果を残している事は明らか。それで貴方がたはその間、何を成し遂げられたのです? こちらにはそちらの実績が聞けませんので教えて頂きたいのですが」 中書令は厳しく問う。 春信は怒りに身を震わせた。 「言葉は無いようですね。不満や批判ばかりでやるべき事も期待される事もしていない。それでご自分達が弘秀様より優秀とどうして言えるのです? これ以上どちらが優れているかと争うのは無意味です。今ならまだ間に合います。一人でも多くの民や兵士を救う為、振り上げた拳を下げてアヤカシとの戦いに手を携えて頂けませんか?」 と和睦を求める。 「そ、それは……」 「無礼者!」 口を開いたのは女――沙羅だった。 「話術を持って我らの正義を貶めるならば、考えがある!」 「私は春信様にお尋ねしているのですが」 「この沙羅の言葉は、私の言葉も同然。私は最後まで志を貫いて見せる」 「では、なお行いを改めぬとあらば、弘秀様もお望みにならぬご決断をする事になりましょう。今後住民を盾にする様な真似をしたらご自分の正当性を自ら否定する事になりますよ」 と最後通告と警告を残し退出する。 帰還した中書令は、交渉結果内容を報告すると、 「南部の各里や兵士、住民達に禍津夜那須羅王討伐を龍安弘秀軍が成し遂げた事、春信が和睦を拒み、具体的成果も示さずなお自分が優秀だと主張している事等を触れ回る様、お願いできますか」 仲間達や味方のシノビ達にお願いする。 「みなさんよろしくお願いします」 ライ・ネック(ib5781)は前回も着用した天山寺一味が着ている様な黒を基調とする戦闘服等を手配していた。 「特に強硬派で戦意の高い里に対して、天山寺軍に偽装し襲撃し、春信軍と天山寺軍の対立を煽る事や、寝返りを打診した各里と連絡をとる事を行ってはいかがでしょうか」 「春信様周辺を切り崩してしまえば、無事に着地させることも可能でしょう」 中書令の交渉結果を聞いたライは、弘秀軍が禍津夜那須羅王討伐に成功した事も含め、交渉での春信の言動の数々を記した紙を多数作成していく。 それからライは変装すると、反乱軍勢力下にある各里を回り、各集落での住民達や兵士達から情報を密かに収集する。 「春信様は鬼になってしまった……」 「里長たちにいいように担ぎ上げられて、騙されたんですよ春信様は」 ライは作成した紙を各里に密かにばら撒いていく。 「禍津夜那須羅王討伐……春信様と龍安軍の交渉は決裂。ここも危ないぞ」 南軍兵士に動揺が広がる。 ライは密かに戻り結果を報告してから、また寝返りを打診してきた各里を回り、里長周辺に接近する。秘術影舞で姿を消し、里長と声のみで密かに接触する。 「弘秀様は寛大なお方。反乱鎮圧後も里を安堵する事をお約束いたします。ですから、それまで表向きは春信支持を表明し、里の兵士や住民を守る様お願い致します」 「我々は弘秀様を支持する」 「ところで、見せしめを決意させた人がいると、噂で聞いたのですが」 「それは沙羅殿だ」 「沙羅殿?」 ライは内部に侵入すると、秘術影舞で姿を消し兵士に扮して沙羅に接近した。沙羅の言葉を超越聴覚で聞き取る。 「みな様、最後まで春信様をお支え下さいますようお願いしますよ。これは、私からの命令です」 「承知しました沙羅殿。我々はあなた様の命令に従います」 「禍津夜那須羅王討滅――これを機に南部の反乱も終息させたいですね」 ユーディット(ib5742)は指示を出した。 「あまり必要ないと思いますが南部周辺地域に禍津夜那須羅王打倒した弘秀殿の勇名と、脱走兵の続出とそれを処分するまでに追い詰められた春信殿の劣勢を広めて下さい。反乱軍への新規参加者を抑制します」 「承知しました」 「その上で他の方々も行っていますが反乱軍所属の里長に今寝返れば反逆は不問であるし、寝返りの仲間を増やせば、功績ともなるでしょう、と教唆願います。成功すれば重畳、失敗しても疑心暗鬼の種を蒔けるでしょう」 「了解です」 それから、ユーディットはさらに防衛陣地の強化に努める。 塹壕、防柵で守りを固め堅守。宝珠砲は隠して交戦。だが、春信軍はもはや士気は低く、動きは鈍い。ユーディットは宝珠砲二十門を出すと集中砲火を浴びせた。 敵陣が崩れたところを陣地から守備隊の精兵二十ほどと出陣する。 「敵本陣を攻撃、撃破を目指しましょう」 ユーディットはヘーラーに乗機して、その先陣を努める。 敵陣を突破すると反乱軍は崩れる。 「今降伏すれば正規軍への復帰を約束しますよ。敵はあくまでアヤカシです」 「う……分かりました」 次々と反乱軍は投降して来る。 ●北部 華御院 鬨(ia0351)は女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出している。今回は京美人の女装をしていた。 「禍津夜那須羅王がいなくなっても一息もできないどすなぁ。さて、うちの汚点である天山寺仁海の討伐に行きやすか」 と気合いを入れる。 「みなさん今回もよろしくお願いします」 罔象(ib5429)は挨拶をすると作戦方針や流れを相談する。 「私からは敵との空戦戦術として、龍騎兵が二人一組でペアを組み、片方が咆哮で敵をひきつけ、もう片方がひきつけられた敵を横撃、真上からの攻撃などで仕留める『繰引』戦術を提案いたしますね」 「繰引戦術ですな。賊ごときに後れは取りません」 サラファは合流すると、天承で許可をもらった計略の内容を説明する。 「承知しました。では、引き続き計略を実行していきましょう」 「私は先に潜入して天山寺の町で破壊工作を実行します」 サラファは賊たちから姿を消していた理由を聞かれた。 「あたしだって逃げるのに精一杯だったわよ」 サラファは鬱陶しそうに言った。 それから天儀酒や葡萄酒を振る舞い、踊りやヴィヌ・イシュタルで賊達を懐柔する。 「ところで――」 サラファは賊にしなだれかかって酒を注ぐ。 「今回はどうやって龍安軍を迎撃するのさ。前回もこてんぱんにやられたろ?」 「今回は機動力に勝る小型飛空船で行く」 「あらそう。でも、アヤカシに後ろから来られて不安じゃない?」 「心配ない。魔の森の奥地で統率されているんだ」 それからサラファは、船や武器を調達した賊達もヴィヌ・イシュタルで懐柔する。 「不厳王の崇拝者を甘く見ない方がいいぜ。アヤカシはどんなに強くとも人界で商いするわけにはいかないだろうが、な」 サラファは帰還して、敵陣の地図を書き始めた。詳細な地図を書いていく。 「お疲れさんだなサラファ」 「いえ。見たところ、ろくな防備があるわけではありませんが、両翼はアヤカシが展開してきているようですね」 「よーし! 反乱軍の偽装工作は出来ているな! 行くぞ!」 サラファは龍安軍と、一部偽装部隊を密かに町近くへ案内し、春信軍の天山寺達への襲撃を偽装する。 「龍安春信様の命により、天山寺仁海を討つ!」 賊たちは激しく抵抗して来るが、龍安軍に切り倒された。 サラファはナハトミラージュで姿を消すと、松明で街の各所に放火していく。燃え上がっていく賊たちの町。 「火だ! おい消せ! 全部燃えちまう!」 「駄目よ!」 サラファは急いで賊たちに駆け寄った。 「このままじゃみんな火に飲まれちゃう。こっちよ! 龍安軍が来てない方向があるわ! みんなを誘導するから付いてきて!」 サラファ怪しまれない様、賊の一部を避難誘導して助け、恩を売った後自分は逃走した。 「行きますどす」 華御院は壱華を駆り飛び立った。 「精鋭部隊のみなさん、よろしくお願いします」 華御院たちは自軍が空賊と戦闘している間に少数精鋭で、小型飛空戦艦に攻め込んでいく。友軍が苦戦している振りをしながら、その間に乗り込んで突進すると、一気に機関部を制圧する。 「龍安軍どす。ここは頂きます」 自爆させるまでに爆薬などを投棄する。自爆できなくなったらところで、艦内を制圧して乗っ取った。 「ではみなさん、うちらは次の敵艦へ行きましょう」 そこで華御院は天山寺と会う。 「貴様は……また開拓者か!」 「お久しぶりどすなぁ。アヤカシの味方なんぞしても裏切られるだけなことが未だ分からんとはなさけないどす」 と呆れた挨拶をして攻撃をする。 一撃二撃と華御院は紅焔桜&虚心で舞う様に回避をし、間髪いれずカウンター気味に白梅香で攻撃する。 「ぐお!」 切り裂かれて、天山寺は後退する。 「野郎……シノビ!」 「何どす?」 秘術影舞で姿を消したシノビが鬨を押さえる。 「死ね!」 天山寺は加速した。 「やりますな」 華御院はシノビを投げ飛ばして天山寺にぶつけた。 陰陽師が術式を飛ばしてくる。 「華御院、ここは失敗だ」 「仕方ありませんな。撤退しますか」 「開拓者を逃がすな!」 天山寺の咆哮を振り切って、華御院は離脱した。 罔象は瓢を駆る。友軍が「繰引」戦術による撃破を試みる中、味方サムライ部隊に咆哮で敵を集めてくれる様お願いする。 敵が程よく集まったところで、 「私から少し私から離れて下さい」と警告後、魔砲「スパークボム」で飛行する敵をまとめて始末する。 撃墜されて行く空賊たち。 「罔象さん。あっちに天山寺が乗っておりやす」 「華御院さん。では、あの船は落として構いませんか?」 「よろしくお願いしやす」 「分かりました」 罔象は敵飛行戦艦の攻撃をかわしながら主要機関部に向け騎射+魔砲「スパークボム」の合成技で砲撃を行う。魔砲が貫通して、飛空戦艦は煙を上げて後退する。 罔象はいったん味方陣営で練力回復アイテムで再度練力を補充後、瓢を駆り、引き続き魔砲「スパークボム」で天山寺勢力の施設や地上の賊、アヤカシを攻撃する。 燃え盛る空賊の町に砲撃を浴びせ、罔象は地上を破壊していく。また龍安軍は空爆を行った。 ●東部 コルリスは味方部隊に挨拶後、一案と前置きし作戦案を提示する。 「まずは各兵士達に焙烙玉と盾、弓矢を支給して頂きます。続いて、陣地に予備隊を残し、予備隊は高所から戦場観測を行い状況を逐次シノビ等伝令を介し味方部隊に報告願います。私たちは敵軍は東の集落跡で迎撃。分散と集合を繰り返し思わぬ角度からの攻撃を繰り返し敵を分散させ常に局所では数の優越を確保して敵を順次駆逐する胡蝶陣を展開。龍騎兵は四指戦法で飛行する敵を順次撃破し制空権確保。飛空戦艦は上空より、宝珠砲兵は地上より地帯射撃でアヤカシ達を順次殲滅願います。一般兵は斜面から焙烙玉で応戦します。不厳王等強敵が出たら空鏑で合図します。飛行戦艦、宝珠砲、一般兵は退却。開拓者は味方退却の時間を稼ぐ、と言う流れで」 「お任せ下さい。貴女の作戦で行きましょう」 メグレズが口を開いた。 「私は敵の群れを切り開きながら、敵指揮官のもとへ向かい、仲間達の盾役等にもなる事を表明いたします。基本戦術はコルリスさんのもので宜しいかと思います」 それからメグレズは戦闘開始までに、宝珠砲用の周囲の森林から木を切りだし、高所にある陣地に逆茂木設置や木工技術を駆使して、傾斜のある陣地の上に丸太の束を置いて落下防止の板を前に建てて回る。 「こうしておいて、敵が傾斜を駆け上がってきたら板を外し丸太で敵群を潰します」 メグレズは木工技術で傾斜を利用した仕掛けを多数設置しておく。 その後また友軍大将と相談。 「敵指揮官への攻撃ですが、集落跡へ敵軍を引き込んだ後、迂回し背後に回り込む片翼包囲機動を提案しますが、どうでしょうか」 「そうですな。無理は禁物ですぞ」 戦闘が始まる――。 「撃て!」 空と陸から砲撃が始まる。 コルリスは迎撃を指揮しつつ、吐息して前を向いた。戦場の張り詰めた空気はいつでも慣れないものだ。 四指戦術と胡蝶陣で迎撃。 「コルリス様、地上から伝達です。メグレズ様が突入されました」 「そうですか。私達も迎撃の用意を――」 メグレズは瞬を駆り友軍と連携し、先頭を駆ける。 「瞬! 高速走行!」 敵からの攻撃を防ぎつつ槍を振るい、回転切りでアヤカシを薙ぎ払う。 敵指揮官へ迂回突撃。上級死人戦士の胴を寸断した。 「メ、メグレズ様!」 「どうしましたか」 メグレズは、巨人に引かせた龍骨戦車に乗る不厳王を目撃する。不厳王は右に左に閃光を放っている。 「私が殿を務めます。味方に報告を――!」 やがて、コルリスもそれを確認する。 空鏑で合図を送り味方を退却させる。 「メグレズさん!」 赤く染まった片腕を押さえて後退するメグレズ。コルリスは巫女を呼んだ。 龍安軍は戦線から離脱していく……。 ●戦後、天承城にて 華御院は意見書を持って弘秀のもとを訪れた。 「失礼しやす」 「おう。お疲れさん」 「天山寺の飛空船の出所どすが。これから作る飛空船には購入場所や購入者が分かる様に隠れて暗号でナンバリングしてもらう様にするのはどうやろか」 「そうだな。まあある程度当たりを付けてシノビを放っておくか。当たりが出るかも知れん――」 |