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■オープニング本文 ●熱き砂塵 エルズィジャン・オアシスを中心とする戦いが始まった。 アヤカシはオアシス――もっと言えば、オアシスにあった遺跡の内部から出土したという「何か」を狙っている。 王宮軍と遊牧民強硬派の確執も強く、足並みも中々揃わない状況が続いている。もちろん、アヤカシはそれを喜びこそすれ遠慮する理由などはなく、魔の森から次々と援軍を繰り出しているという。 おそらくは、激しく苦しい戦いになるだろう。 しかし、何も主戦力同士の大規模な野戦ばかりが戦いの全てではない。熱き砂塵の吹きすさぶその向こう、合戦の影でもまた静かな戦いが繰り広げられようとしていた。 オアシスの近郊を戦闘用小型砂走船が行く――。 「始まったな」 開拓者は言って、灼熱の太陽を見上げた。暑い。じりじりと照りつける太陽は体から水を奪っていく。この暑さは人間には楽なものではない。 そして、魔の森の方角からオアシスに向かって前進する大軍がある。敵の本軍だろう。 開拓者たちはオアシスの周辺の偵察に出ていた。戦いは大規模なものだけではない。いつ砂漠の海からアヤカシが出現するとも限らない。小規模な戦闘はオアシス周辺でも繰り返されており、開拓者達は敵の別動隊などに目を光らせていた。 望遠鏡で砂漠の海に目を凝らす。 と、砂がざざーっと大きく盛り上がって、大地から船が飛び出してきた。「幽霊船」である。幽霊船は言ってしまえばアヤカシが搭乗する砂走船であり、ぼろぼろの船そのものがアヤカシでもあった。見ると、ナール・デーウに率いられたアタナトイが幽霊船に乗っている。 「出やがったぞ。宝珠砲回頭! 撃ち方用意!」 開拓者達は砂走船の宝珠砲を幽霊船に向ける。一般的な小型砂走船であれば、船首と船尾の二箇所に一基ずつが設置されており、側弦を敵に向けて宝珠砲を方向転換することにより二門で同時に砲撃を加えることができる。万屋の開発した砲で、命中精度と射程に優れる。 「撃て!」 ドウ! ドウ! と二門の宝珠砲が火を吹く。 着弾とともに砂塵が巻き上がる。幽霊船は駆け抜けて行く。 開拓者は望遠鏡で幽霊船の動きを追っていた。もとより砲撃戦で決着がつくとは思っていない。 ナール・デーウが咆哮すると、アタナトイらがぼろぼろの大砲をこちらに向けて来る。 アヤカシたちの大砲が火を吹き、瘴気弾が至近で炸裂する。 「当たるものかよ」 開拓者は言って、手を上げた。 「バリスタ砲用意! 狙っていくぞ! 幽霊船にぶちこんでやる!」 小型砂走船に搭載されている火薬と張力を利用したバリスタ砲である。ロープや鎖を装着できる形式のもので、矢の先端には鋭く頑丈な返しが入っている。直接攻撃用の武器というよりは移乗白兵戦用の装備であり、敵幽霊船などへ打ち込んで逃さぬようにして接近する。 幽霊船は軽快に疾走していく。ナール・デーウは咆哮して、幽霊船を操り、反撃の態勢を取りつつ船を加速させる。 砂漠の海を舞台に、砂走船の開拓者たちと幽霊船のアヤカシ達の遭遇戦が始まろうとしていた。 |
■参加者一覧
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
玲璃(ia1114)
17歳・男・吟
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
菊池 志郎(ia5584)
23歳・男・シ
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
将門(ib1770)
25歳・男・サ
カルフ(ib9316)
23歳・女・魔
奈々生(ib9660)
13歳・女・サ |
■リプレイ本文 華御院 鬨(ia0351)は女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出している。今回は泰国風の先生の演技をしていた。 「砂漠とは、肌荒れが心配あるどす」 と風に吹かれながら、芸人としての心配をした感想を云う華御院だった。熱砂に照りつける太陽と、吹きつける砂塵は、確かに美容の敵と言えそうだった。 「さて……まずはどう出ますか?」 言ったのは市女笠と外套で身を包んで日差し対策をしている玲璃(ia1114)。望遠鏡を下ろすと、仲間たちを見やる。 「まずは、幽霊船の瘴気砲を破壊してから、それから一気に攻撃に移るのが良いかと思うあるどす」 「そうですね……瘴気砲はやはり先に潰しておきたいところですね」 「はっはっはー! 砂漠の海賊とは俺のことだぜ! ジャウアドなんかに負けねーぞー!」 舳先に立って、赤毛をなびかせているのはサムライのルオウ(ia2445)少年。 「まあ、細かい作戦は任せるぜ! こっちは連中の土手っぱに吶喊したら咆哮で動きを封じて乗り込んでやんぜい!」 ルオウは言って、「だー!」と拳を突き出した。その目の前に瘴気砲が炸裂する。砂を盛大にかぶるルオウ。 「どわ! や、野郎! 何しやがんだ!」 「ルオウさん大丈夫ですか?」 ひっくり返ったルオウに、玲璃が手を差し出す。 「けほけほ、すまねえ。玲璃の兄ちゃん」 「張り切り過ぎですよ。いつものことですけどね」 「いやー、やってくれるじゃんか」 ルオウは起き上がって笑った。 「幽霊船との戦闘あるどすが、まずは幽霊船の足止めをするために、幽霊船の移動する前方に宝珠砲を撃ち込み、幽霊船の移動を妨げるある。その後に瞬風波の射程内に近づき、紅焔桜&朝顔&瞬風波で宝珠砲を撃ち込み、幽霊船の瘴気砲をメインにダメージを与えるある。そうどすな、射程内に近づけない場合は紅焔桜&朝顔で瘴気砲を攻撃するあるよ」 華御院は言って、望遠鏡に目を戻した。 「幽霊船を見るのは初めてです。アヤカシも自分で歩いたり飛んだりするだけでなく、乗り物で移動するんですね。……って暢気なことを言っている場合ではありませんね、逃さず殲滅します!」 菊池 志郎(ia5584)は言って、思案顔。 「すぐに幽霊船に接舷してしまうと、ひどい乱戦になる恐れがあります。白兵戦は、ある程度相手方の戦力を減らしてからにしたいですね。俺はまずは精霊砲を放って、幽霊船に損傷を与えていきます。気持ちを集中させて術を発動させ、大きな被害を与えて動きを鈍らせたいところですね」 それから、と続ける。 「バリスタ砲は、それじゃあ俺が撃ちますね。敵方の船が鎖と矢で固定された後も、精霊砲を幽霊船とそれに瘴気砲に対して連続して放ち、相手の遠距離攻撃を不可能にします。弓も怖いですね……王宮の砂迅騎のみなさんも、砲撃に当たらないよう攻撃の前面に出るのは控えてもらえるようお願いします」 「ナール・デーウごときに遅れは取らんつもりだ」 「幽霊船は厄介なが相手だが、船の上にいる兵隊の方がもっと厄介だがなあ……」 砂迅騎たちは望遠鏡で幽霊船の動きを見ていた。 「また来るぞ!」 砂走船の斜め後方に、瘴気砲が着弾する。 「最初に幽霊船の砲台を潰しましょう。バリスタで固定すればこちらの宝珠砲の命中率は上がりますが、向こうも同じですから」 コルリス・フェネストラ(ia9657)は言った。 「私はバリスタの射程距離に入る手前、彼我の距離が120メートル以内に縮まり始めたら射撃で幽霊船の瘴気砲を潰す事に専念し、瘴気砲を潰した後残りのアヤカシ及び幽霊船退治に移る事を表明します」 みな異論はない。 「弓での攻撃はコルリスに任せるよ」 将門(ib1770)は言って、肩をすくめた。将門は宝珠砲に付いていて、幽霊船に向かって砲撃を行っていた。 「さすがに、この距離だとまだ当たらないな」 砂塵騎が着弾地点から観測して、将門に伝える。 「距離300メートルです!」 「よし」 将門は宝珠砲を撃った。 ズズン! と砲弾が砂漠に着弾して爆発する。回避された。 「お互い小回りが利くからな……こいつは確かに接近しないと難しい」 カルフ(ib9316)は市女笠と外套で身を覆い、陽射しや砂嵐対策をした上でパトロールに参加していた。 「私の習得している術はバリスタや宝珠砲より射程が短いので、接舷後の白兵戦の時に主に使用し、皆様を支援しますね」 カルフが言うと、玲璃が頷いた。 「ではカルフさん、そのようにお願いします。私もバリスタ砲で繋がってからの支援になりますね」 13歳の白兎の獣人、サムライの奈々生(ib9660)は、舵を取っていた。操船を行い、口笛を吹いていた。 「砂漠へ来て、幽霊船を見て、アヤカシに勝つ! 砂漠の上の砂走船を走らせるなんて、そうある機会じゃないね! わくわくしちゃうなあ……なんてね」 奈々生は言って、仲間達に笑顔を向けた。 「奈々生! また来るぜ! 幽霊船から砲撃! 二時方向!」 「はいな♪」 奈々生は舵を切ると、砲撃を回避する。 瘴気砲が着弾して、砂塵を巻き上げる。 「当たりはしませんよ〜。私の操縦に隙はない! でも、ここからが勝負ですね! ひとまず、コルリスさんが120メートルで攻撃開始。バリスタ砲の射程が100メートル。華御院さんの瞬風波が射程20メートル。菊池さんの精霊砲が射程50メートルですね。舵取りの責任は重大ですね!」 「奈々生さんよろしくお願いしますね」 コルリスは言って、矢を装填した。 「ああ。舵取りよろしくな。こっちも先制出来るようにやってみる」 将門は言って、宝珠砲で狙いを定める。 「何とか……頑張ってみますね!」 奈々生は言って、舵を切る。 「それでは、みなさんに加護結界を付与しておきましょう」 玲璃は言って、戦闘開始前に結界を付与して回る。 「それじゃあ、行きますよ!」 奈々生の操船で砂走船は加速して、幽霊船に接近していく。 「距離120メートルです!」 「では行きますね」 コルリスは、瘴気砲の砲撃に注意を払いつつ、夾叉されたところで、奈々生に言った。 「奈々生さん、幽霊船が夾叉――狙いを付けてきました。船の速度を落としたり旋回する等、次の砲撃で直撃されないようお願いします」 「了解しました! 旋回します!」 「おーし! 行け行けー! 風が味方だー!」 ルオウは舳先に立って、接近に備える。 コルリスは鏡弦でアヤカシの各位置、特に幽霊船の動力部分や瘴気砲の位置を把握しようとした。 「アヤカシ総数17体ですね。ということは、ナール・デーウが1体と、幽霊船が一体、アタナトイが15体ですね。数では敵が上ですか」 「奈々生殿! 回り込んでくれ! 敵船を狙う!」 将門は言って、宝珠砲を回頭させると、ドウ! と撃った。 直撃! 砲弾が幽霊船を直撃する。 「翔!」 コルリスは月涙+響鳴弓の合成技で、まず瘴気砲へ射撃を打ち込み続ける。 アタナトイから反撃の弓が飛んでくる。ドカカカ! と砂走船に矢が突き刺さる。 「ふう……」 菊池は回避しつつ、立ち上がった。 「奈々生はん、幽霊船に対してすれ違いざまに攻撃できるよう操縦願うある」 華御院は、宝珠砲を構えつつ言った。 「了解しました! みなさん行きますよ!」 奈々生は幽霊船に対して反航戦が可能なように舵を切った。回頭して加速する砂走船。 「敵船至近!」 砂塵騎が叫んだ。 「頂くあるよ」 華御院は紅焔桜&朝顔&瞬風波で宝珠砲を叩き込んだ。 爆散する瘴気砲。 「よし! 食らえ!」 「精霊砲!」 「翔!」 将門に菊池、コルリスは宝珠砲に精霊砲、矢を叩き込んだ。 幽霊船に攻撃が集中炸裂。瘴気砲は破壊された。 「よっしゃー! 瘴気砲は落ちたぞー!」 ルオウは望遠鏡から幽霊船の状況を見やる。飛んできた矢を刀ではたき落とした。 「幽霊船はどうですか」 コルリスはルオウに尋ねた。 「船はまだ動いてやがるなー。しぶとい奴だぜ!」 「そうですか。――奈々生さん。引き続き接近願います。続いてバリスタ砲を叩き込みます」 「了解しました! それじゃあみなさん! しっかりつかまって下さいよ!」 奈々生はコツを掴んできたようである。砂走船は幽霊船の背後に回り込み、加速していく。 「よし、それでは行きますよ。バリスタ砲……発射!」 菊池は、バリスタ砲を撃ち込んだ。 砲撃が幽霊船を直撃し、貫通した。砂走船と幽霊船が連結されると、玲璃は瘴索結界「念」で幽霊船にいるアヤカシの位置や数、動き等を探索していく。 「幽霊船上のアヤカシ、後ろに移動してきます。アタナトイでしょうか。弓に警戒して下さい」 玲璃が言うと、幽霊船からアタナトイが放った矢が飛んでくる。ドカカカカ! と突き刺さる。 玲璃は、瘴索結界「念」で幽霊船構造の死角に隠れ、見えにくい敵の動き等を把握し、仲間達に随時報告していく。 「さすがにアタナトイ15匹は多いな……おい、大丈夫か」 ルオウは舳先で矢を叩き落としていたが、王宮軍の兵士が直撃を受けた。 「大丈夫ですか。すぐに回復しますので」 玲璃は、負傷した砂塵騎を精霊の唄で治療する。 「これが巫女の力と言うやつですか……凄いですね」 砂塵騎は、見る間にふさがっていく傷跡に感嘆した。 「俺の出番が無ければそれに越したことも無いですが」 菊池は言って、肩をすくめた。 「幽霊船の足を止めないことには、アタナトイは接舷して叩き斬るしかないか。奈々生殿、回避はよろしく頼む」 将門は言って、宝珠砲を叩き込んだ。 直撃! 幽霊船を弾丸が貫通して、破壊した。アヤカシ達は転がった。幽霊船の動きが鈍る。 「よーし行けー!」 ルオウは加速する砂走船の上で、咆哮を叩き込んだ。幽霊船が引き寄せられてくる。 砂走船はそのまま衝角で激突した。 カルフは、射程距離に入ったところで、仲間達に、 「幽霊船とあの火の巨人、どちらの動きを封じてほしいですか!?」 と指示を仰ぐ。 「「「火の巨人をよろしく頼む!」」」 と声が返ってきたので、ナール・デーウへアイヴィーバインドを放ち拘束する。 カルフは幽霊船へ乗り込んでいく仲間たちの後ろから、仲間達を巻き込まない角度からブリザーストームを放ち、ナール・デーウの炎による延焼を食い止めると共に、幽霊船を含めアヤカシ達にダメージを蓄積させ続け退治を支援する。 「アヤカシ達……ここからは逃がしませんよ!」 カルフは突撃を支援しつつ、ブリザーストームでアタナトイを撃破していく。 華御院は砂走船に乗ったまま、試作八年式金輪銃で遠方から攻撃する。 「アタナトイは邪魔あるどすな」 狙いをつけると、紅焔桜&朝顔&瞬風波で一気に片付ける。リロード。 もがく幽霊船に、華御院は、船体に銃撃を叩き込む。 「行っくぜええええええええ!」 ルオウは幽霊船に降り立つと、回転切りでアタナトイと幽霊船を薙ぎ倒した。 「ルオウさん! 側面から来ます!」 玲璃が言うと、ルオウは反転してナール・デーウの一撃を受け止めた。 『ぐはは……人間ども……お前たちの抵抗など粉砕してくれるわ!』 「喋んなら人間の言葉で喋れ!」 ルオウはナール・デーウをタイ捨剣で切り裂いた。 「ナール・デーウですか……アタナトイも油断はなりませんが」 菊池は言って、刀で影を使用してアタナトイを切り伏せる。 「あんさんが、噂のナールあるどすか。おいたしすぎあるどすよ」 華御院は子供扱いして挑発するが、言葉が通じるわけではない。近づかせない様に遠方から攻撃する。 コルリスは回り込んでいくと、鏡弦で敵の配置を探り出し、月涙で幽霊船に連射を叩き込む。 「アタナトイが船を下りて回り込んできます!」 コルリスは、骸骨の剣士を打ち抜いた。 将門は、新陰流でアタナトイを斬り伏せると、ナール・デーウに突進。気力を消費して命中精度を上昇。 「行くぞ炎鬼!」 隼襲+柳生無明剣×2の斬撃で一気に勝負をかける。 ナール・デーウの腕が飛ぶ。 『ぐおおおお‥‥!』 ナール・デーウは後退すると、口から火炎を吐き出した。 ゴオオオオオオオオ――! と炎が開拓者たちを薙ぎ払う。 「野郎! 熱いだろうが!」 ルオウは突進すると、もう一撃タイ捨剣を打ち込む。袈裟懸けに走った刀がナール・デーウの首を刎ね飛ばす。 炎の巨人は崩れ落ちた。 燃え移った炎にカルフはブリザーストームで消火しようとしたが「いや待て」と手を止めた。砂走船にもダメージが入るかもしれない。考え直して積んであった予備の樽から水を汲んで炎を消していく。 「ふう……危ないところでした」 カルフは吐息して、戦場を見渡す。 奈々生は逃走を図る幽霊船に乗り込むと、地断撃を叩き込んだ。切り裂かれる幽霊船。 「でやあああ……! 私の渾身の一撃です!」 奈々生は刀を突き刺した。幽霊船は軋むような悲鳴を上げて、瘴気に還元していく。 それから開拓者達はアタナトイを撃破し、全てのアヤカシを討伐すると、パトロールに戻った。 夜――。 月が穏やかに輝いている。この闇の向こうで、魔の森からアヤカシが蠢いているのだろう。オアシス近郊の人々は避難を開始している。 玲璃は天幕から出てくると、月を見上げる菊池に歩み寄った。 「菊池さん……メリトさんは無事でしょうか」 「そうですね……心配ではありますが、仲間を信じて待ちましょうか」 「それにしても、砂漠は夜が冷えますね」 玲璃は、ストーンウォールを構築しているカルフに歩み寄った。 「壁は順調なようですね」 「ええ。砂嵐が来ないことを祈るばかりですけれど……」 「少し回りを見てきますね」 玲璃は言って、瘴索結界「念」で周囲にアヤカシがいるか探索し、反応を探る。特にイウサール・ジャウハラには警戒である。 ルオウと将門が天幕から出て来る。 「そろそろ交代するか」 「では、お願いするある」 華御院は言って、天幕へ入った。 「よろしくお願いします! へろへろです〜」 奈々生も言って、天幕へ戻っていく。 「早くアヤカシを追い払って、次回はゆっくり砂漠を船で巡りたいものです」 菊池の言葉に、将門は肩をすくめた。 コルリスは岩清水を手に、戻ってきた。鏡弦で周囲のアヤカシを警戒していたのだ。 「異常は無いようですね」 「今、玲璃が出てった」 「砂漠の海は慣れないものですね……昼間はみなさんお疲れ様でしたね」 「奈々生の奴、ぐったりしてるぜ」 「まあ仕方ありません。でもよく操船を頑張りましたよ」 「そうですね。コルリスさん。あなたも休んで下さい」 「ありがとう。では――」 パトロールは続く。開拓者たちは、夜を徹してオアシス周辺の警戒に当たるのであった。 |