【龍王】交錯する戦い
マスター名:安原太一
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/07/27 23:10



■オープニング本文

 武天国、龍安家の治める土地、鳳華――。

●東部〜魔の森、東の大樹海〜緩衝地帯を越えて
 魔の森の前進は止まらない。龍安軍は、厳しい退却戦を強いられていた。大アヤカシ不厳王(iz0156)の軍勢は、死人戦士を中心に攻撃縦隊を組んで里を踏み潰していく。
『ハッハッハ! 鳳華滅亡の日は近いぞ! 偉大なる不厳王様のお力を以ってすれば、人間など恐れるに足らん!』
 アヤカシの大将は人外の言葉で咆哮した。
『禍津夜那須羅王亡き今、我々の誰かが上級に上がる順番よ!』
『人間を食らい、怨念を食らい、悲しみと苦痛を食らい、我々はより強力になるのだ!』
 アヤカシ達は咆哮して、前進していく。

「栗原様! アヤカシ軍来ます!」
 禍津夜那須羅王討伐の論功行賞により、首都天承の次席家老から、東部前線の総司令官として、上級サムライ大将に任命された栗原直光は、アヤカシ軍の戦列を前に怯むことなく敵軍を見つめていた。無論これは左遷ではなく、現場を重視しての配置である。望遠鏡を下ろすと、号令を下した。
「飛空戦艦、宝珠砲、全砲門砲撃開始」
「は――! 全砲門攻撃開始!」
「砲撃開始!」
「ってえ!」
 ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! と砲撃とともに、龍安軍は戦列を整えた。

●北部〜魔の森〜厳存秘教国〜白仙山
「何度も何度もやってくれるじゃねえか龍安軍……!」
 賊集団、厳存秘教の頭目、天山寺仁海はぼろぼろになりながらも酒を煽り、肉にかぶりついた。
「おう、このまま攻撃に徹しても、得るものは少ない。俺は決めた。北の山岳地の中心、白仙山に拠点を移し、要塞を築くぞ!」
「お頭〜そりゃあ名案でさあ!」
 賊たちは笑声を上げる。

「来るな!」
 山村に暮らす子供が、踏み込んできた天山寺の前に立ち塞がった。
「何だガキ! ぶちのめされたいか!」
「ここはケモノの主、白狐様が暮らされている神聖なる山だ! 盗賊は帰れ!」
「白狐だあ? ケモノなんぞに用はねえ! たたっ切ってやる!」
 村人たちが蹴散らされて行く――と、影が舞い降りた。
 狐である。全身白毛の、巨大な四尾の狐――ケモノの主、白狐であった。
「な、なんだこの狐! 妖狐か!」
 すると、白狐の体から閃光がほとばしり、賊たちを吹き飛ばした。精霊術である。
 白狐は言った。
「全く……鳳華も暮らしにくくなってきたな。こんなところにまでアヤカシに与する者がやってくるとは……」
「な、何だこの妖狐! めちゃくちゃ強え!」
「に、逃げろ!」
 賊たちは逃げ出した。
「白狐様!」
 村人たちが駆け寄る。
「お前たちは龍安弘秀のもとへお逃げ。天山寺はまたやってくるだろう。ここは多分もう駄目だ」
「白狐様はどうするんですか?」
「どうするかねえ……鳳華も住みにくくなってきた。不厳王の手の者がやって来るのも時間の問題か……」

「あのケモノ……ぶち殺してやる!」
 天山寺はいきまいて壁を蹴り飛ばした。
「たかだか妖狐一匹! 白狐だか何だか知らんが……俺の邪魔はさせねえ!」
「お頭……龍安軍はどうするんで?」
「ちっ……しょうがねえ。迎撃だ! ケモノは後で血祭りだ!」
 天山寺は咆哮した。

●南部〜混沌とする南部各地
 南部の民は、魔の森から出現した十体の巨大な狼アヤカシに襲われ、各地で混乱に陥っていた。狼アヤカシは中の一体がひときわ大きく、恐らく中級アヤカシと思われた。統制された動きで狩りを開始し、被害が拡大していた。龍安軍は結束してこれを迎え撃つ。

 反乱軍の陣中では、武官の女――沙羅が兵士達を叱咤していた。
「みなの者! 遂に魔の森からアヤカシの攻撃が始まった! 我々も打って出るぞ! 民を見殺しには出来ん! 今は龍安軍と休戦し、里を守るのだ!」
 沙羅は、天承の龍安弘秀に文を書いて送った。

●西〜鳳華中央〜首都周辺〜龍安家の中枢
 天承の城で、龍安弘秀始め、家老衆たちが集まっていた。筆頭家老の西祥院静奈、禍津夜那須羅王討伐の論功行賞で家老に取り立てられた楢新之助、また家老の水城明日香、坂本智紀、天本重弘、相談役の芦屋馨(iz0207)、シノビの頭領赤霧など。
「魔の森の前進ですが、まだなお止まる気配はありません。現在も激しい後退戦が続きます」
「こればかりは神頼みだな……。祈るしかない」
「栗原様が現地で指揮を取られています」
「何とか、アヤカシ被害を最小に食い止めねばならん。――北部の状況は?」
「天山寺どもが北の山岳地帯に入りました。白仙山に拠点を築くつもりのようです」
「あそこには白狐が住みついていたはずだが? 村人たちは無事なのか」
「白狐に助けられたようです」
「天山寺め……」
 弘秀は笑った。白狐は精霊術を操る高位のケモノである。迂闊に手出しすればただでは済まないはずだ。
「ただ、北部の魔の森からのアヤカシは依然活発で、何とも言えません」
「引き続き対応が必要だな。――それから南部だが」
「南の魔の森から巨大な狼アヤカシが出没しました。数は10体と少数なのですが、統制がとれており、若干名の民に犠牲が。早期の討伐が必要ですが。軍の防備の薄いところを確実に狙って攻撃をかけてきますので、現地では苦戦しているようです」
「例の、沙羅と言う女から文が届いた。一時休戦し、アヤカシの討伐に力を貸すと。この女、南部で影響力を増しているぞ。残っている兵士の支持を取り付けている」
「弁は立つようです。魔力的な話術の持ち主だとか」
「ふむ……。それぞれ対応をよろしく頼むぞ。それから、これは決めたことだが、禍津夜那須羅王を討伐した将兵たちに休暇を出す。報奨金も与える。交代で休みを取らせるように」
「承知いたしました」
「では以上だ。よろしく頼む――」


■参加者一覧
華御院 鬨(ia0351
22歳・男・志
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
コルリス・フェネストラ(ia9657
19歳・女・弓
宿奈 芳純(ia9695
25歳・男・陰
罔象(ib5429
15歳・女・砲
サラファ・トゥール(ib6650
17歳・女・ジ
嶽御前(ib7951
16歳・女・巫
中書令(ib9408
20歳・男・吟


■リプレイ本文


 天承城にて――。
 サラファ・トゥール(ib6650)は龍安弘秀に言った。
「一見拠点むきに見えるが、こちらが包囲攻撃しやすい場所を選び、天山寺軍を逃げ込める偽拠点を用意してはいかがでしょうか。予め逃走先を用意すれば追撃も包囲も容易と思われます。華御院さんの奇襲攻撃の後に、空賊たちをそこへ誘い込むことが出来れば」
「では準備を進めてくれ――」
 
 華御院 鬨(ia0351)は女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出している。今回は京美人の女装をしていた。
「それにしても天山寺……そのしつこさをもっと人々のために使えんもんやろうか」
 と無理な要望とともに感想を言った。それから北部の山岳地帯に飛んだ。
 と、白狐は、華御院を待ちうけていたかのように姿を見せた。
「……華御院鬨じゃな」
 白狐は、言って大きな体を地にうずめた。
「あんさんが白狐どすか? 何でうちの名を?」
「長く生きておると、知恵も付く」
 白狐の言葉に、華御院は肩をすくめた。
「同じ敵やという事で、ひとつ協力させてもえやせんか」
「ここは知っての通り天然の要害じゃ。龍安弘秀も、無理に攻め込むことはせんじゃろうが……空賊たちの空路を押さえておくべきじゃろうな」
「そうどすか」
 それから華御院は言った。
「もし、この地を守れたら、報酬はうちの舞ぐらいしか出やへんが、今後一緒に戦って頂けませんやろうか」
「ほう、随一の舞い手がわしのために舞ってくれるのか?」
 白狐は言って、体を起こした。
「わしに出来るのは後方支援くらいじゃがの、出来ることはさせてもらおう」

 それから華御院は軍に戻り作戦会議に出席した。
「先回りできるなら、龍騎兵×10、飛空戦艦×2、宝珠砲×20程度で攻撃をして、天山寺がやってくる所を白狐に聞いた通り、空から一気に残りの兵で奇襲を仕掛けてはどうでしょうか」
「そうだな……」
 サラファが言った。
「私は引き続き天山寺軍に潜伏し内偵や制空権確保後の味方部隊の誘導、そして偽拠点を作り、戦闘後逃走する天山寺軍をそこへ逃げ込ませる事を提案します」
 そこで中書令(ib9408)が言った。
「サラファさんの『あえて拠点に見える施設を急拵えで作り、そこへ天山寺一味を誘導』は可能でしょうか?」
「準備は可能だろうが、賊どもをおびき寄せるのは簡単ではないだろう」
「では、私達龍安軍が急遽拠点を作ったという情報をサラファさんに天山寺一味に流させ、それを天山寺一味に奪い取らせる形で誘導する方が罠と思われないかと思われます。偽装拠点自体も予め私達だけが知る隠し通路を密かに張り巡らせたり、拠点周囲に防御用に見せかけた柵を用意し、少し動かせば中の拠点を包囲できる形になる様配置を工夫する等、仕掛けは必要と思われます。怪しまれないよう見張りの兵は置いて頂く事になりますが、襲撃されたら逃げる偽装をして、敵達が拠点に入る間に密かに空陸で周囲を包囲し、今度こそ逃走不可能な包囲網を構築した上で、拠点内へ敵を押し込む形で全方位から攻撃し、今度こそ天山寺一味を潰すか捕縛する方式を提案します」
「ふーむ……では準備は進めてみるが、サラファの工作活動を見て、判断しよう」
 次いで罔象(ib5429)が言った。
「よろしくお願いします。ではサラファさんの計略である偽拠点設置を進める前提として話を進めさせて頂きます――。空戦戦術として味方龍騎兵へ焙烙玉配布と、龍騎兵が二人一組でペアを組み、片方が咆哮で敵をひきつけ、もう片方がその敵を横撃、真上からの攻撃等で倒す『繰引』戦術と、『繰引』戦法の応用として私の周囲に敵が集まる様、咆哮の角度等を調節し、集まったところで龍騎兵は退避して頂き、魔砲『スパークボム』でまとめて倒す『空雷』戦法を提案いたします。それから、制空権確保後は地上へ焙烙玉を投下する爆撃で敵地上戦力を壊滅後、地上部隊が進撃し敵軍を偽拠点へ誘導し、そこを密かに包囲し殲滅する方式を提案いたします」
「サラファの工作が成功することを祈ろう」

 サラファは天山寺軍がいる山岳地帯へ入り込んだ。
「よおサラファ。よくここが分かったな」
「この辺りで有名なケモノに手を出した賊がいるって評判よ。派手な事は控えたら?」
 天儀酒や葡萄酒を振る舞ったり芋幹縄や干飯を使い炊き出しを行い、踊りやヴィヌ・イシュタルで賊達を懐柔する。
「龍安軍をぶっ潰す前祝いだ!」
 天山寺は咆哮した。
「来る途中で龍安軍が拠点を作ってるのを見たわ。迎撃するのが先らしいけど、負けたらそっちを奪う方がてっとり早くない?」
「拠点? どこだ」
 サラファは地面に地図を書いた。
「ここよ。北の境界地域」
「ほう……」
 それからサラファは敵陣で諜報活動を行い、ナハトミラージュで姿を消し密かに味方部隊へ戻る。

「どうであったか」
「天山寺は信じたみたいです。罔象さんや華御院さんが空を叩いてくれたら、引きずり出せるんじゃないでしょうか」
 言って、サラファは敵軍の居場所の地図を書いていく。
「地上部隊の案内は引き受けます」
「よし、では始めるとしよう」

 中書令は白狐のいる山村へ向かうと、賊達を夜の子守歌で眠らせ、鼠などの小動物を集めておき、離脱する。
 華御院が部隊を率いて加速していくと、空賊たちが舞い上がって来る。
「来ましたな。さすがに反応が早い……!」
 華御院らは突進すると、地上からは威嚇の砲撃が始まる。
 空賊たちは喚きながら舞い上がって来ると、突進して来る。
 華御院はまず前進していくと、瞬風波で相手の進行方向を塞ぐ様に叩き込み、賊たちの方向を転換させる。
 天山寺が突進して来る。紅焔桜&虚心で回避しながら一気に近づく。
「残念どすが、この土地はうちらの拠点にするどす」
「んなことが出来るか!」
 天山寺は突進してきたが、華御院は瞬風波を叩き込んだ。
 それから華御院は賊の飛空船艦に接近していく。ナンバリングがあるか確認する。後部にナンバーがあった。前回のナンバーとは違う。
 罔象は「私から離れて下さい!」と退避を警告後、魔砲「スパークボム」を放つ。これを敵飛行戦力を全て駆逐するまで続ける。「空雷」戦法で制圧していく。敵飛行戦艦も破壊した。それから地上の味方、空中の龍騎兵と連携し、魔砲「スパークボム」で空から爆撃を行う。撃ち落とした敵を偽拠点へ追いたてる。
「こっちよ!」
 サラファは天山寺軍の逃走を手助けし、偽拠点まで誘導。
「あたしは荒事は苦手だから後は貴方達次第よ」
舞い戻った中書令は密かに包囲に加わり、持参した小動物入りの袋を開け拠点周囲にばらまき、敵シノビや志士の周囲警戒を妨害する。夜の子守歌で敵を眠らせて行く。
「何だここは!」
 天山寺は咆哮した。
「そこまでどす」
 華御院が舞い降りてきた。
「何!」
 上空を罔象らが押さえ、ばらばらと龍安軍が包囲する。
 天山寺は突進してきたが、華御院に打ちのめされ捕縛された。

 ……それから、飛空船の割り出しが行われると、今回は理穴で作られたもので、理穴商人が購入したものだと判明する。


 コルリス・フェネストラ(ia9657)は龍安弘秀のもとを訪れていた。
「北部の天山寺軍が残した拠点跡、撃墜した飛行戦艦残骸より、大砲や弾薬や武器、兵糧等使えそうなものを回収し、武器等は修理後物資と共に各戦場へ流用する事を奏上いたします。現地で武器や物資を調達できれば兵站の負担は軽くなります」
「そうだな……回収するのは常策とは言え、飛空船の残骸を調べるのは戦闘終結後になるだろう」
 それから宿奈 芳純(ia9695)が言った。
「弘秀様、一つの集落の壁を黒く塗り潰す程の墨が用意できるでしょうか」
「墨を何に使う気だ?」
「集落跡での戦闘の際、結界呪符『黒』を張り巡らせても敵に察知され難くする様、墨で集落跡の壁を黒く偽装する案を提案いたします」
「良いだろう。墨を持って行きなさい」

 コルリスは東軍に到着すると、挨拶後言った。
「みなさん、今戦場にいる不厳王は幻影で撃破できる事を味方に周知する様お願いいたします」
 それから「あくまで一案ですが」と前置きし作戦案を提示する。
「まずは各兵士達に焙烙玉と盾、弓矢を支給願います。それから、今回は退却とみせかけ集落跡へ敵を誘引し胡蝶陣で迎撃。龍騎兵は四指戦法で飛行する敵を順次撃破し制空権確保。飛空戦艦は上空より、宝珠砲兵は地上高所より地帯射撃をお願いします。射撃精度を下げ射撃地区一帯を射撃で敵軍を順次殲滅。それから、不厳王発見時は空鏑で合図致しますので。飛行戦艦、宝珠砲は順次退却とみせかけ、迂回し集落跡を密かに包囲する動きをとり、集落周辺の丘陵や森林等に潜伏。開拓者や一部味方部隊は包囲完了まで集落内で胡蝶陣による迎撃で時間を稼ぎます。最後に、包囲完了後全方位から全軍でアヤカシ指揮官及び不厳王の幻影に集中攻撃し撃破致します」
「了解した。ではその流れで行こう」
 栗原は言うとコルリス案に許可を出した。
「私もコルリスさんの案に賛成致しますが」
 宿奈は言った。
「味方シノビに各行動の伝令役と、川を防衛線に使う際、空き瓶の川底への多量敷設をお願い致します。進撃する敵を川の中で転倒させ、そこへ宝珠砲等で砲撃する方式や、空戦では自分の周囲に咆哮で敵を集めてもらい、悲恋姫でまとめて倒し制空権確保を支援する方式、集落跡の戦闘では集落跡の壁を予め黒くした後、味方陰陽師隊に結界呪符『黒』」を展開させ、防壁兼味方部隊を潜伏させる壁として使い、戦闘を支援する案を提示致します」
「さすがにそんな大量の空き瓶は無いぞ」
 栗原は冷や汗をかきつつ、後の作戦案には許可を出した。
 そこで、元気な声がした。
「俺はサムライのルオウ(ia2445)! よろしくな〜」
 赤毛の少年が溌剌と言った。相棒の滑空機シュバルツドンナーから降り立つ。
「よおルオウ!」
 猛者達が集まって来る。
「久しぶりだな〜おっちゃん達!」
 ルオウはがっしりと握手を交わすと、がしがしと手荒い歓迎を受けた。
「また一緒に戦おうぜ、任せとけ!」
 と言って士気を上げたり色々話しかけて仲良くなっておく。
「今回は作戦があんだぜ」
 ルオウは言った。
「龍の速度に歩調を合わせながら砲撃戦をしてる間に密かに側面に回って皆を連れて突撃するぜい!」
 ルオウは言うと、一撃離脱の戦いを説明する。
「俺が先頭に立って突撃をかけ、龍騎兵達と一緒に敵を攻撃するぜ。一撃したら即座にヒット&アウェイで龍騎兵達ごと離れる。追撃されたら殿を努めるぜ! それから、龍騎兵達の突撃と方向転換は武天の呼子笛を吹きならして合図したい」
 ルオウは笛を取りだした。
「長く一回なら突撃。短く二回なら自分の進行方向に方向転換。短く三回切って鳴らしたら散開。これで合図するから、方向転換や突撃をしかけてもらい、また危険時は散開。攻撃しては逃げを繰り返し、『咆哮』も使って敵を釣りこんで砲撃、非物理のエリアに誘い込む。俺も作戦がうまくいったら最後には敵指揮官に突撃するぜい!」
「ルオウ、よろしく頼む」
「おう!」
 言って、ルオウは龍騎兵隊に説明しに行く。

「砲撃開始――」
 コルリスの合図で、砲撃が始まった。
「よっしゃ! 行くぜー!」
 ルオウも龍騎兵隊を率いて加速。
 地上では宿奈が陰陽師隊と共にいた。黒く塗りつぶした集落の壁に紛れ、結界呪符「黒」で防壁を作り、味方部隊を潜伏させる。
 なだれ込んできたアヤカシは一面の黒に立ち止って喚き散らした。
「突撃!」
 龍安軍は一斉に突進して彷徨うアヤカシを討ち取った。
 宿奈は黒羅を駆り舞い上がると、弐式加速で突進。程よく敵が集まったら「みなさん離れて下さい!」と退避警告後、悲恋姫でまとめて撃破する。
 ルオウは先頭に立って突撃。まずはグライダーから立ち上がり、回転切りを打ち込む。一撃したら即座にヒット&アウェイで龍騎兵達ごと離れる。殿を努めると、笛を短く二回鳴らし、方向転換。咆哮で敵陣が乱れたところを、笛を長く一回鳴らして突撃。切り裂き撃破すると、短く三回切って鳴らして散開。
 攻撃しては逃げを繰り返し、咆哮も使ってアヤカシを砲撃、非物理のエリアに誘い込む。
 コルリスは山紫の鞍上で不厳王を確認すると、空鏑で合図を送り味方を偽装退却させ、
「翔!」
 月涙+響鳴弓の合成技で不厳王や敵指揮官を牽制しつつ集落跡へ誘引する。
 自らも前進すると胡蝶陣を指揮。
 ルオウは上空で敵陣に再接近。不厳王の幻影に弐式加速+強襲で突撃をかけつつタイ捨剣を叩き込む。すれ違い様に急反転、振り向く前にもう一振りタイ捨剣で斬り裂く。
 宿奈は隷役+黄泉より這い出る者を駆使して、陰陽師隊にも非物理攻撃の集中攻撃をお願いし撃破に尽力する。
「翔!」
 コルリスは不厳王の幻影を撃ち抜いた。
 幻影は爆発し、アヤカシ達は逃げ散って行く。
 コルリスは陣を立て直すと後退した。


 嶽御前(ib7951)は龍安弘秀のもとを訪れた。
「今南部で展開中の龍安軍を通じ、各里に向け『いかなる内容でも怒らず聞く』と約束した上で要望を集める事を奏上致します。今耳を傾ける姿勢を見せ、要望の形で不満を吐き出させれば、今後南部の里長達の協力を得て、発展させる材料になると愚考します」
「俺も怒るつもりはないが。ただ、今後の南部再編については進めるつもりだ。里長たちから領地をいったん召し上げ、長達には代官などとして改めて統治に当たってもらいたい――」

 嶽御前は南部に向かうと、軍と合流した。
「みなさんよろしくお願いいたします」
 それから言った。
「危ない時は自分も前に出て戦うと表明致します。基本的には龍安軍と元春信軍の共同作業でアヤカシを倒す形とし、自分は瘴索結界『念』でアヤカシを探索したり、閃癒で味方を治療、強い敵には浄炎で浄化する形をとると表明致します」
「うむ、ではよろしくお願いしますぞ」

 嶽御前は味方部隊と元春信軍に挨拶後、
「手に負えなくなったら私を呼んで下さいね」とアヤカシ退治を開始。
 瘴索結界「念」でアヤカシ探査を開始する。
 アヤカシはすぐに見つかった。嶽御前は中級アヤカシのもとへ向かう。
「負傷者は私のところへ」
 所属に関係なく閃癒で順次治療し戦場へ送り出していく。
 巨大な狼アヤカシと対峙する。
『ぐふふ……人間……あの方のために食らい尽くしてやろう』
 嶽御前は砲術士や弓術士、陰陽師と連携、サムライの咆哮で引き寄せ横から遠距離攻撃でダメージを与える。
「サムライ衆、連携して当たって下さい」
 嶽御前も前に出てベイルを構え、浄炎で攻撃。
 中級アヤカシの狼は打撃を受けて逃走した。その後、下級の狼を全て撃破していく。
 嶽御前は全てのアヤカシを退治後瘴索結界「念」で討ち漏らしが無い事を確認し、練力回復アイテムで練力補充。襲撃を受けた各里の人々の治療に回り閃癒で治療するのだった。