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■オープニング本文 武天国、龍安家の治める土地、鳳華――。 ●東部〜魔の森、東の大樹海〜緩衝地帯を越えて 静かになった。 東部総指揮官の上級サムライ大将、栗原直光は、部下から魔の森が止まったとの報告を受けてサムライ大将たちと霊騎で近づいていった。 望遠鏡でアヤカシ軍の方を見やる。アヤカシ達は魔の森周辺に展開しており、ざわざわと蠢いていた。中級アヤカシだろう、立派な鎧を身に付けた死人戦士達が下級アヤカシの群れに指示を出しているのが見える。上空には大小の死骸龍がまばらに飛んでいる。 「どれくらいになる?」 栗原は問うた。 「止まってから一週間ほどです。魔の森の前進が完全に停止しました」 「そうか……」 栗原は吐息した。だが、この静寂を、栗原は不厳王(iz0156)の停滞とは思わなかった。これはアヤカシ達が攻勢をかけて来る前の静けさだろうと。 「奴ら、魔の森の奥地で準備を整えているぞ」 栗原は手綱を返した。 「全部隊に伝えろ。西部への浸入は許さん。東部地域で奴らを押し留めると――」 魔の森の奥地で――。 大アヤカシ不厳王は、瘴気の淀みの中にいた。 「不厳王様――」 影が近付いてくる。 「南の魔の森で奇妙な動きが。何者かが我々の森に侵入しているようですな」 「それで、分かったのか」 「分かりません。いずこかの勢力の者か……いかがなさいますか?」 「放っておけ……まずは、東部の龍安主軍を弄ぶ。部下達にも餌が必要だろう。上級に上がろうと競争しているようだからな」 「は……では、そのように」 影が退くと、不厳王は瘴気を吐き出して眼孔を閉じた。 ●北部〜魔の森〜厳存秘教国〜白仙山 天山寺仁海が捕縛されたが、厳存秘教の動きは途絶えなかった。残った賊たちは天山寺を見限り次へ進んでいた。 北部最大の山岳、霊峰「白仙山」に入った賊たちは、その下見を行っていた。 「ここは開拓し甲斐があるぞ」 北部の山岳地帯は守りに堅く、攻めるに難しい土地である。賊たちは飛空船の支援を有しており補給の心配をする必要は無い。 空っぽになった山村を歩き、賊たちは酒を煽った。と、視界の先に白い影を捕えてぎょっと見開いた。 白毛の妖狐、鳳華のケモノの主――白狐である。 「てめえ! ケモノ!」 賊らは抜刀して白狐に牙を剥いた。 「愚かな連中だ……不厳王の手先となるとは……アヤカシと与した人間の末路は非業だぞ」 「やかましい! ケモノの分際で人間を見下したような態度を取りやがって!」 「わしにはお前たちの最後が見えるのだよ」 「ふざけるな!」 賊たちが突進すると、白狐は笑声を残してふわりと森へ消えた。 「畜生……まあいい。東じゃ魔の森が止まった。俺たちの国作りはこれからだ! アヤカシを出し抜いて生き残ってやる!」 賊たちは咆哮した。 ――魔の森ではアヤカシ達が蠢いている。 『盗賊どもは、何を考えているのだ? 山へ荷物を運び入れては城を作っているようだが。戦う気があるのか』 『奴らの行動は理解できん。不厳王様への忠誠心は本物なのか?』 『我々を出し抜こうなどと考えているとしたら、愚かな奴らだ。不厳王様に消される運命よ』 アヤカシ達は笑った。 北部に展開する龍安軍のもとに、捕縛された天山寺仁海がいた。間もなく天承へ運ばれるはずである。 天山寺は牙を剥いて、龍安軍を睨みつけていた。 「これで勝ったと思うなよ龍安家。俺は死なねえ。何度でも復活してやる。地の底から舞い戻り、必ずお前達に復讐する」 天山寺の言葉に、サムライ大将は呆れたように言った。 「今度また逃げ出せると思っているのか? お屋形様を甘く見てるのか。即刻処刑だ」 サムライ大将は首をかっ切る仕草をした。 「俺は死なねえ! 俺は……!」 天山寺は鎖につながれ屈強な兵士たちに引きずられて行く。 かくして、龍安軍は引き続き空賊たちとアヤカシへ攻撃を開始する――。 ●南部〜沙羅と言う女〜魔の森 沙羅は龍安軍に投降して来た。 「お前が沙羅か」 沙羅は兵士達に拘束される。 「負けを認めましょう。噂に聞く龍安軍はやはり強かった」 それから尋問が始まった。沙羅は自分のことを武天の衰退した武家の末裔と答えたが、龍安家に特別な思い入れがあるわけではない様子だった。 「この国の武家の末裔として、巨勢王(iz0088)への忠誠心は変わりません。全ては鳳華を思えばこそ」 「いたずらに騒乱を起こし、春信様を扇動したことを思えば、本来ただでは済まんぞ」 龍安家は、すでに沙羅に対して特別な関心は無かった。頭首の弘秀も、春信以外の里長や兵士を処断することは無かった。弘秀は春信をいずれ出家させるつもりであったが、今は天承で尋問と言う形で話合いの席を持っていたのである。 ――魔の森から、小型の狼の下級アヤカシ、剣狼の群れが出現して里へ襲い掛かっていた。雑魚であり、東部や北部のような脅威は無かったが、今回の反乱鎮圧を受けて、弘秀が発令した南部再編の障害となりつつあった。 ●西〜鳳華中央〜首都周辺〜龍安家の中枢 天承の城で、龍安弘秀始め、家老衆たちが集まっていた。筆頭家老の西祥院静奈、家老の水城明日香、坂本智紀、天本重弘、楢新之助、相談役の芦屋馨(iz0207)、シノビの頭領赤霧など。 「魔の森の前進ですが、ようやく停止しました」 「止まったか。だが、これで」 「はい。下位のアヤカシ達は兵力を以って東部地域の制圧に乗り出して来るでしょう」 「東部に残っている民を全て避難させるしかない。アヤカシを魔の森近郊から出すなよ。それで、北部だが」 「空賊たちは結集して北の山岳地帯へ進行しています。空から物資を手配し、白仙山に拠点を移しつつあります」 「北部の山岳地帯へ逃げ込まれたら厄介だぞ。奴らの空路を絶て」 「飛空戦艦と龍騎兵隊を差し向けています。ただ、ここへ来て、アヤカシ達も空へ上がってきました。北東に空賊、真北にアヤカシ航空戦力です」 「地上はどうなっているか」 「地上のアヤカシは、これに合わせて魔の森へ後退しています。北の戦闘地域だった場所を、解放出来そうです。長期戦に備えていたのが功を奏しました」 「南部の方は落ち着いたと思うが」 「そうですね。魔の森から剣狼の群れが出ていますが、適時対処しています。指示通り、里長たちには再編の通達を出しました」 「南部はアヤカシを後退させながら、西部のような城砦都市を中心とした街作りを進めたい。一時的に退避している領民たちを移住させ、将来的には、西部並の活動が出来るように」 「幾つか計画の素案を進めております。基本的には軍事拠点も兼ねたものですが、天承並みの機能を持つ都から、第二の都市『凱燕』や『信清』のような都、また『宗王』や『久竜』のような商工業都市などになります」 「南部の再編を進めつつ魔の森を封じ込め、いずれは東部の不厳王を挟撃、反撃としたい」 弘秀は言って、みなに檄を飛ばすのだった。 |
■参加者一覧
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
宿奈 芳純(ia9695)
25歳・男・陰
オラース・カノーヴァ(ib0141)
29歳・男・魔
嶽御前(ib7951)
16歳・女・巫
凍也(ib8625)
17歳・男・サ
中書令(ib9408)
20歳・男・吟 |
■リプレイ本文 ● 宿奈 芳純(ia9695)は天承所に出向くと、龍安弘秀と会う。 「弘秀様。以前使用した北部の賊軍に見える黒い衣服が用意可能でしょうか」 「ああ、可能だろうが?」 「であれば、味方陸空部隊の一部を空賊変装用に使用し、幻影符で賊達にアヤカシに襲われる幻影を見せ、アヤカシ達を攻撃したら偽装部隊がアヤカシを攻撃し、同士討ちを演出し殲滅する案を提示いたします」 「いいんじゃないか。あとは現地で相談してくれていいぜ」 「ありがとうございます。そうしましたら、補給部隊に変装用衣類の用意をお願い致します」 宿奈はグライダーの黒羅を駆り北部へ飛ぶ。 華御院 鬨(ia0351)女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出している。今回は京美人の女装をしていた。 「天山寺がいなくなっても、空賊はまだ戦うどすか。殲滅しないといけんのやろうか」 と人同士で戦う事を悲しむ。 「華御院、まあ仕方ない。連中も投降するつもりはないだろう」 「そうかも知れませんどすが……」 と、そこへ巨大な白毛の狐、ケモノの白狐が姿を見せた。白狐は、龍安軍の兵士たちと友好関係にあった。 「華御院や、人間同士の争いにわしが口を挟むのもどうかと思うが、不厳王の崇拝者たちは油断ならんぞ」 「白狐はん。今回も戦ってくれますか。要請に応じてくれたら、今回は舞を舞ってちゃんと報酬を支払いますから」 「それは楽しみじゃのう」 白狐の言葉に、華御院は北部の地図を持ってきた。 「白狐はんは千里眼が使えると聞きました。空賊の拠点がどこか、分かりますやろうか」 「白仙山一帯の山村じゃな。今はここにおる」 白狐は、地図上の村を指差した。 「では、うちは空賊が出撃中に空賊の拠点をアヤカシ風の変装――瞬風波などで、妖術っぽくも見せます――と味方の幻影の能力により、しれっと荒らしてきますどす。もし、見張りがいたら、隠れている振りをして見つかり、直ぐに逃げますので。この行動により空賊のアヤカシへの印象を悪くしやす」 それから、と続ける。 「戦闘作戦どすが、空賊を集中的に攻撃をしやす。この行動により、アヤカシばかりが得をしている印象を受けさせてはどうやろうか」 「アヤカシが賊たちを攻撃してくれたら幸いか」 宿奈は、華御院の提案に賛同する。 「私も華御院さんの作戦案に賛同いたしますね」 それから宿奈は、自身の提案を言った。 「弘秀様から許可を頂いてきました。味方部隊の一部を厳存秘教国の賊達に偽装し、空賊と飛行アヤカシを合流させ、乱戦の中幻影符を使い賊を混乱させアヤカシを攻撃させ、それに合わせ厳存秘教国軍に偽装した味方部隊がアヤカシ達を攻撃し同士討ちを引き起こさせ、混乱する隙をまとめて退治し、敵拠点発見後も幻影符で華御院さんの活動を支援する案を提示いたします」 「了解した宿奈。では、そのように」 「ありがとうございますどす宿奈はん」 「一助になれば」 そうして、龍安軍は出立した。 空賊たちとアヤカシ達が舞い上がって来る。空賊に偽装した龍安軍がアヤカシ達をおびき寄せると、宿奈は空賊の一人に幻影符を使った。 「何だ!?」 空賊は、自分たちがアヤカシに襲われる幻影を見た。 「大変だ……!」 宿奈は黒羅を駆り、複数の空賊たちに幻影を見せる。 「攻撃開始!」 偽装した龍安軍がアヤカシに攻撃を開始すると、賊たちに混乱が広がる。 やがて始まる同士打ちに、宿奈は混乱に乗じて悲恋姫で敵を撃破していく。 それから華御院が先陣を切って、空賊たちを集中攻撃する。 賊たちは乱れて後退した。 それから華御院は賊たちの拠点に忍び込んだ。宿奈が見張りに幻影符を使うと、騒動が起こり、華御院が突進した。 アヤカシに変装した華御院は拠点を瞬風波で破壊していく。 華御院は離脱すると、変装を脱ぎ棄て、もう一度空賊たちの拠点に向かった。 「今の状態ではアヤカシに従って戦闘している様にしか見えへんどす。寝首を取られん様に気をつける事どすなぁ」 「何だと貴様……!」 華御院は彼らのプライドを刺激する様な説得をしてアヤカシと分裂させる様に仕組んでおく。 帰還した華御院は、白狐にお礼の舞いを舞うと、協力の約束を取り付けて天承に向かった。龍安弘秀と会う。 「鬨――」 「弘秀はん。飛行戦艦のナンバリングを確認しやしたが、今回は朱藩のものどした。天山寺から戦艦の出所を確認してきやしたが、やはり一般の造船所どした。武天と理穴の商人は見つかりましたやろうか」 「ああ。商人二人を逮捕した。どうやら、不厳王の崇拝者らしいな――」 「そうでしたか……」 ● コルリス・フェネストラ(ia9657)は天承城にいた。龍安弘秀と会う。 「弘秀様、北部の空賊が残した拠点跡、撃墜した飛行戦艦残骸より復興に使えそうなものも回収し、賊やアヤカシ退治後、北部の復興への着手を奏上致します。北部も敵を掃討できれば復興可能な地域と思われますが、判断はお任せします」 「そうだな……北部も、放置は出来んな。アヤカシが山岳地帯へ退いた今、復興可能な地域は取りかからんとな……」 「よろしくお願いいたします」 コルリスは甲龍の山紫から降り立つと、味方部隊に挨拶する。 「みなさま、今回も宜しくお願いします」 「おう、コルリス殿」 コルリスは早速軍議に加わった。 「あくまで一案」と前置きし、作戦案を提示するが、判断を委ねる。 「では、聞こうか」 栗原は言うと、吐息した 「はい。まずは、各兵士達に盾、弓矢を支給願います。それから、宝珠砲は丘陵地の高所へ配備し戦場観測も兼ね戦況をシノビを介し前線へ連絡いたします。続いて、お味方は退却時偽装し、集落跡へ敵を誘引し胡蝶陣で迎撃。龍騎兵は四指戦法で飛行する敵を順次撃破し制空権確保。そうしまして、制空権確保後、飛空戦艦は上空より、宝珠砲兵は地上高所より地帯射撃で敵軍が渡河中の時を主に狙い順次殲滅します。敵指揮官見時は私が空鏑で合図致しますので。飛行戦艦、宝珠砲は退却とみせかけ迂回し、集落跡を密かに包囲する動きをとり、集落周辺の丘陵の傾斜に紛れ潜伏。開拓者や一部味方部隊は、包囲完了まで集落内で胡蝶陣や各行動で時間稼ぎします。最後に、包囲完了後全方位から全軍でアヤカシ指揮官に集中攻撃し撃破致します」 「大よその流れは良いだろう。兵士達が確実に作戦案を実行できるように――各大将。よいか」 「ははっ」 赤毛の少年が姿を見せた。 「俺はサムライのルオウ(ia2445)! よろしくな〜。本当、アヤカシどもはひっきり無しに湧いてくんなあ……」 熱血ルオウ少年は、言うと、拳を突き出した。 「大変だけど皆で力合わせて抑えてやんぜぃ! 相棒は滑空機のシュバルツドンナー。俺はまずはアヤカシの偵察に出るぜ〜」 「ルオウ。よろしく頼むぞ。気を付けてな」 「おう!」 ルオウは駆けだした。 「さーて、俺は……と」 魔術師のオラース・カノーヴァ(ib0141)は煙管を吹かして口を開いた。 「龍騎兵を指揮させてもらおうか。ここに来るのも久しぶりだが、何とも厄介な状況になっているようだな……魔の森が拡大してくるとは。ここまで押し込まれるのは初めてだな。大アヤカシ不厳王(iz0156)か?」 「あの大アヤカシは、古の万覇軍を作りだした張本人だ。今、東部に前進して来た魔の森から出ているのは、あの万覇軍も含め、異形の死人たちだな」 「だが……東部は、これはかなり危険な状態になってしまったなあ……」 オラースは言うと、煙管を吹かして思案顔を浮かべた。 「ま、そいつはさておき、俺は部隊の希望を出しておくか。九割は前衛クラス、一割は巫女で頼む。弓隊、砲術隊、宝珠砲に支援を依頼しておきたい。範囲攻撃で上空のアヤカシどもを粉砕してやるさ」 「了解した。大魔術師の力を借りよう」 「はっ、言ってくれるじゃねえの」 オラースは笑った。 「アヤカシが多い東の抑えに回るぜい! いくぜぇ、ドンナー!」 ルオウは滑空機に騎乗すると、鳳華の戦場を翔る。滑空飛行と巡航飛行を織り交ぜ、仲間の作戦や準備が整うまでは、滑空機単機で近寄り、飛び回って辺りの地形を確認したり、敵の総数を数えたりと偵察する。 丘陵地帯、平原が広がり、無数の里の跡地が広がっている。それらがやがて魔の森に飲み込まれている境界へ到達する。東へ広がる魔の森は広大で、上空を死骸龍が飛び回っている。ルオウは反転すると、南北に戦場を縦断した。アヤカシ達の主戦力が展開しているところから、南北の境界を偵察する。 「やっぱ、やばいのは中央だな……」 ルオウは、眼下に展開するアヤカシ達を見やる。有象無象から巨人、上級の死人たちまで――。 ルオウは、アヤカシに対しては自分からは仕掛けず、近寄ってくるものを撃破していく。回転切りと成敗! を使用して切り捨てて行く。そうして、ある程度戦ったところで、これは敵わないと雰囲気出しつつ尻尾撒いて逃げ帰る。弐式加速で振り切って離脱する。 これを何度か繰り返して離脱ルートも同じルートを使う事で、自分のパターンとして相手に覚えさせると、その間に、宝珠砲等の射撃で離脱ルートを射程に収まる様に密かに展開しておいて貰う。 「砲撃開始!」 龍安軍が前進して来るアヤカシ軍に砲撃を開始した。 コルリスは甲龍の山紫を駆り、霊鎧を命じ集落より前で敵軍迎撃を指揮する。 龍安軍は咆哮でアヤカシを引き付けつつ、胡蝶陣で迎撃。偽装退却でアヤカシを引きずり出していく。 上空では四指戦術で迎撃を開始する。 「敵が渡河してきます。一斉砲撃を開始して下さい」 コルリスは望遠鏡を下ろすと、言った。 大小の宝珠砲が数分から十分の間隔で砲撃を撃ち込んでいく。 「さーて仕事と行くか」 オラースは言って、リンブドルムを駆って前進した。ブリザーストーム、トルネード・キリク、サンダーヘヴンレイを叩き込む。 「サムライ衆! 咆哮で引き付けてくれ! それから離脱!」 オラースは言うと、加速してトルネード・キリクでアヤカシを切り刻んでいく。オラースの超絶的な破壊力で、上空のアヤカシが打ち砕かれると、一時的にアヤカシ航空戦力は後退した。 コルリスはアヤカシの指揮官を発見すると、空鏑で合図を送り味方を偽装退却させ、 「翔!」と月涙+響鳴弓の合成技で敵指揮官を牽制しつつ集落跡へ誘引していく。 龍安軍は胡蝶陣で迎撃する。 『グハハハハ! 人間ども! 次は俺様が上級に上がる番よ!』 炎に包まれた骸骨軍馬にまたがった死人の巨人武将が兵士を率いて殺到して来る。 「コルリス様、包囲完了しました」 「では、砲撃と、総攻撃を開始して下さい」 コルリスも出ると、 「翔!」 で敵指揮官撃破に尽力する。 ルオウは滑空機で敵の中枢に突撃。ある程度粘りつつ、やっぱり数に勝てないと逃げを打つ。今度は咆哮を使って多くの敵を引き連れていき、同士撃ちを狙った。戦場からはあえて急反転して突撃かけて逃げる。有象無象のアヤカシ達はルオウを追って激突して消滅していく。 コルリスたちは、突撃して来たアヤカシの武将を包囲殲滅し、アヤカシを後退させた。 ● 嶽御前(ib7951)は天承城にあって、龍安弘秀と会った。 「弘秀様、今南部で展開中の龍安軍を通じ、南の魔の森を包囲する形での防御施設を作り、いつアヤカシが出没し襲撃されても防御施設で食い止め、南部復興への影響を小さくする案を奏上致します。まだ強い敵は出ませんが長期不定期戦想定で対応すべきかと」 「そうだな。俺たちは前例のない事業に取り組もうとしている。対応は必要か」 中書令(ib9408)も口を開いた。 「南部の復興につきまして、南部の地図があれば閲覧を所望致します」 「ああ」 弘秀は、地図を持ってこさせた。 中書令は閲覧した上で、 「今後どの場所へどのような都市や施設を、どのような主旨の下作る予定でしょうか。判明している範囲でお伺いしたいのですが」 「南部はほぼ開拓された平地だ。都市は複数作ることになるだろうが、中心となるのは鳳華の都に続く巨大な城下町を考えている。軍事拠点も兼ねたものとなるだろう。いつか、攻勢に出る際に、南からも本格的な攻撃が可能な状態を作りたい。生活圏を同時に確保しながら、長い戦いに備えることになる」 「そうですか。では、アヤカシ退治後、素早い部隊展開や今後の復興活動における迅速な物資、労働力搬送に必要な道路や空路整備を密かに進めておくべきかと愚考します」 今後のアヤカシ退治への素早い対応も視野に入れた、陸空の道路、空路整備を中央、西部の負担にならない範囲で進めるインフラ整備を奏上しておく。 「以前天山寺軍の襲撃に偽装して港の海に隠匿した資金を密かに回収し、今後南部で何があっても対応できる為の積立金とし、いざという時活用するのも手かと存じます」 「そうだなあ……ではそろそろ回収しておくかね――」 嶽御前は霊騎の天を駆り、味方部隊と合流する。 「危ない時は私も前に出て戦いますので、よろしくお願いします。それから、龍安軍と編入された元春信軍の共同作業で、アヤカシを退治する形とし、私は瘴索結界『念』でアヤカシを探索し、閃癒で味方を治療、強い敵には浄炎で浄化する形をとりますね」 「了解しました。ではともに参りましょう」 「探索は私が引き受けます。また、非常時は私たちを呼んで下さいね」 中書令は駿龍の陸から降り立つと、 「私は陸を駆り、怪狼達の多い場所へ向かい夜の子守歌で敵をまとめて無力化し、龍安軍による討伐がしやすくなるよう支援する事を表明致しますね」 「では、よろしくお願いいたします」 そうして、アヤカシ退治が始まった。 嶽御前は魔の森へ向かうと、瘴索結界「念」でアヤカシを探査。位置や数、動きを味方に伝え迎撃支援する。 「アヤカシの頭目を発見しましたら、銃や弓矢、非物理の遠距離攻撃を活用し、サムライの咆哮で敵を引き寄せ、横から遠距離攻撃でダメージを与えていきましょう」 「承知しました!」 若い兵士達は勇んで立ち向かっていく。嶽御前も前に出てベイルで攻撃を防ぎ浄炎でアヤカシ達を攻撃し殲滅を支援する。 中書令は味方サムライ部隊にお願いし、咆哮で自分のもとへ怪狼達を集めてもらうと、夜の子守歌で怪狼達をまとめて眠らせ、龍安軍や元反乱軍の兵士達に討ち取らせる形でアヤカシ退治や龍安軍単独でも南部地域を守れる様経験を積ませ、戦いを通じ両者の軋轢が少しでも取り除ける様支援していく――。 嶽御前は、全てのアヤカシを退治後瘴索結界「念」で討ち漏らしが無い事を確認し、味方陣地で練力回復アイテムで練力補充後、襲撃を受けた各里の人々の治療に回る。 中書令は弘秀が計画中の南部復興計画に向いていそうな場所を、南部各地の防衛計画の為の調査名目で陸を駆って各地を調べ、手帳に詳細を記録し、後日清書して弘秀達に調査報告書を提出した。 |