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■オープニング本文 武天国、龍安家の治める土地、鳳華――。 ●東部〜魔の森、東の大樹海〜緩衝地帯を越えて およそ二か月。魔の森が停止してから、アヤカシ軍は散発的な攻撃を繰り返すのみで本格的な攻勢は無かった。龍安軍の総大将、栗原直光は望遠鏡を持ち上げると、魔の森を見つめた。最前線では、兵士達が異形の死人兵士達の群れを撃退している。 「ここへ来て、長い休息ですね」 部下の言葉に、栗原はうなるように吐息した。 「確かにな……もっとも、アヤカシに休むと言った考えはないだろう。連中はいつだって空腹だ。飢えが増して凶暴化されても厄介だな」 「確かに」 部下はぶるっと震えた。 そこへ、龍騎兵が舞い降りて来る。 「栗原様!」 兵士は飛び込んできた。 「アヤカシ軍、動きます! 魔の森から大部隊が移動しつつあります!」 「ようやく動いたか……」 栗原は全軍に迎撃の命を下した。 魔の森の奥地で――。 大アヤカシ不厳王(iz0156)は、瘴気の淀みの中にいた。 「不厳王様――」 影が近付いてくる。 「龍安春信に接触し、南部反乱に入り込んでいた女の名前が判明しました」 「女?」 「女の名は、沙羅、と言うそうです」 「沙羅?」 不厳王は人界における記憶の糸を手繰り寄せた。 「まさか、龍安家に巣食う四十年前の怨念か?」 「まさしく」 「くく……それはまた、座興が楽しめそうだな」 影もまた、笑った。 ●北部〜魔の森〜厳存秘教国〜白仙山 厳存秘教の賊たちは、北部の霊峰「白仙山」を要塞化することに成功していた。拠点を築き、各地の無法者を呼び寄せると、武装勢力として旗揚げを行う。彼らは首領たちの合議制を取っていた。 「これまで、不厳王の支配下にあった補給線だが、切り離すことに成功した。俺たちは、これで不厳王の手の平から離れて、独自に活動できる」 「ようやくと言ったところだな。アヤカシの影響を排除するのは不可能かと思っていた」 「血も流れた」 「うむ……」 「この戦続く限り、龍安家は俺たちが持ちかけた交渉のテーブルに付くだろう」 「アヤカシと、龍安家を利用し、力を蓄える。今は雌伏の時だ」 ――魔の森ではアヤカシ達が蠢いている。 『盗賊どもは、どうやら龍安家と手を結んで我々と対するつもりらしいぞ』 『愚か者どもが……全員食らってやるわ』 『不厳王様は、放置しておけと仰せだ。いずれ龍安家の手によって滅ぼされるだろうと』 『我々には攻撃命令が出ている』 『東部の攻撃に合わせて、龍安家の北軍を叩けとのことだ』 『だが、運悪く、事故が起こって、賊どもが紛れていたら?』 『その時は構わんだろう。事故なら食らっても仕方ない』 アヤカシ達は笑った。 北部に展開する龍安軍のもとに、厳存秘教からの停戦の使者が訪れていた。 「アヤカシと共闘する?」 龍安軍の武将は、ふてぶてしく言い放つ賊の頭領を睨みつけた。 「対等にものを言えると思っているのか貴様ら」 「そうは言っても、アヤカシの攻撃が激しくなる中、俺たちを敵に回すこともないだろう。龍安弘秀に伝えろ」 「ここで捕縛される前にとっとと消えろ。大人しく去るなら追撃はせん」 指揮官は言って、頭領を門前払いした。 ●南部〜開拓〜魔の森 この夏の反乱に加担していた武天の武家の女、沙羅は拘留を解かれてから、開拓が始まった南部の里にいた。 南部は今、各地で大規模な土木工事が進められていた。里を再編し、避難した民が暮らせるように、また今後の東部への反撃を見据えての強化、幾つも都市を作り上げようと言うのだ。 沙羅は、歩いていた。工事現場へ近づいていくと、龍安家の監督官に声を掛ける。 「ここは町になるのですか?」 沙羅が言うと、監督官の男は笑って言った。 「ええ、そうですよ。これから忙しくなるでしょう。幾つもの都が立ちますからね」 「そうですか……ところで、避難民は大丈夫なのですか?」 「民はこの二ヶ月間で全員避難しましたよ。今は、里の各地で受け入れています――」 ――南部の魔の森からは、小型の狼の下級アヤカシ、剣狼の群れが引き続き出没していた。剣狼は雑魚であり、東部や北部のような脅威は無かったが、開拓にとっては邪魔な存在であった。 ……魔の森へ、人が一人引きずり込まれて行く。目を覚ました民人は、暗闇の中に浮かぶ剣狼の瞳を見た。 「た、助け……!」 次の瞬間、剣狼たちが襲い掛かった。 その様子を見つめる存在がいた。「それ」は、剣狼を愛おしそうに撫でてやるのだった。 ●西〜鳳華中央〜首都周辺〜龍安家の中枢 天承の城で、龍安弘秀始め、家老衆たちが集まっていた。筆頭家老の西祥院静奈、家老の水城明日香、坂本智紀、天本重弘、楢新之助、相談役の芦屋馨(iz0207)、シノビの頭領赤霧など。 「東部の民の避難は完全に完了しましたが、魔の森から再びアヤカシの大部隊が攻勢に転じます」 「二か月は充填していたか……これだよ」 「アヤカシの将、多数確認されております。兵員を蓄えていたものと思われます」 「不厳王は侮れん。続々と新手を送り込んで来るな」 「上級アヤカシがいないのが救いですが……」 「北部の魔の森が活性化していると聞いたが?」 「そうですね。魔の森からアヤカシの増援が出ています。アヤカシだけで北部を攻撃する構えです」 「それで、厳存秘教の連中だが……どう出るかな」 「賊たちも、永遠に鳳華を占拠出来るとは考えていないでしょう。ただ、アヤカシとの戦が続く以上、我々との交渉次第ではここを拠点にすることは出来る。そんな思惑でしょう」 「逮捕した不厳王の崇拝者たちですが、厳存秘教は物資の調達に不厳王の力を借りなくともよくなるはずだ、と言っておりましたね」 「そんなことで、無法者たちに居座られても困るんだがね……」 「と言って、連中に余計な兵は割けません。アヤカシの攻撃が激しくなっておりますので……」 「アヤカシを片づけてからにしよう。南部の状況は」 「相変わらず、魔の森から剣狼の群れが出ていますが、開拓事業は前進しています。各地で工事を開始し、作業を始めました」 「アヤカシが邪魔だな……」 「魔の森がある以上は、攻撃は避けられないでしょう」 「敵の主軍ではないが。狼を叩け」 ――と、そこで、家臣がやって来て、弘秀に来客を伝えた。 「お屋形様、老中の西祥院真禅様と、大道寺光元殿下がお見えになっております」 「何だ? おふた方が揃って」 真禅と大道寺が入って来る。挨拶もそこそこに、二人は弘秀に言った。 「沙羅と言う女を捕えたそうだな」 「もう解放しましたが」 「弘秀。内々に話がある。ちょっと、話せるか」 「分かりました。みな、下がってくれ」 弘秀は言うと、部下達を下がらせた。 退室した芦屋は、筆頭家老の静奈に言った。 「父君ですが、急なお越しですね? 何でしょうか?」 「さあ……私も父から何も聞いてないんですよ」 芦屋と静奈は、何やら嫌な予感を覚えつつ別れるのだった。 |
■参加者一覧
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
各務原 義視(ia4917)
19歳・男・陰
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
宿奈 芳純(ia9695)
25歳・男・陰
罔象(ib5429)
15歳・女・砲
嶽御前(ib7951)
16歳・女・巫
中書令(ib9408)
20歳・男・吟 |
■リプレイ本文 ● 宿奈 芳純(ia9695)は龍安弘秀と向きあって言った。 「以前使用した厳存秘教国の賊達に見える黒い衣服が用意可能でしょうか」 「北軍陣地にあると思うが」 「では、可能なら味方陸空部隊の一部を賊変装用に使用し、幻影符で賊達にアヤカシに襲われる幻影を見せ、アヤカシ達を攻撃したら偽装部隊がアヤカシを攻撃し、賊軍をアヤカシ戦へ強引にひきずりこむ案を提示致します」 「お前たちも悪魔のような奴だな……」 弘秀は苦笑すると、宿奈の提案に許可を出した。 宿奈は補給部隊に変装用衣類の用意をお願いした後、グライダーの黒羅を駆り北部へ。 華御院 鬨(ia0351)は女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出している。今回は京美人の女装をしていた。 「油断大敵どすな。味方やなく、第三勢力として考えて行動せなあきまへん」 華御院の言葉に、サムライ大将はうなった。 「泥棒だよ」 「うち、ちょっと行ってきますわ」 「気を付けろよ」 華御院は壱華を駆って厳存秘教の拠点へ降り立った。 空賊たちは、華御院の話を聞いて、刀を収めた。 「折角、共闘するんやから、皆はんの事も知っておきたいと思いやして、挨拶にきやした。うちは龍安家お抱え芸人の華御院鬨どす。宜しゅう」 「交渉はしないんじゃなかったのか」 「うちが説得しやした。それに、弘秀はんはあんさんらとは正面から戦うつもりはありません。今のところは」 「龍安弘秀とは、いずれ話がしたい」 「それは、今後のあんさんらの出方次第と違いますか」 華御院は作戦や単なる会話などをして、相手の素性、相手の性格や協調性、誰が不仲なのかなどを把握しておく。 「まあ、今日はこの辺にしときましょう。次があれば、また」 それから華御院は白狐を探して会いに行った。白狐は華御院を待っていたかのように北軍の龍安軍の陣中にいた。 「白狐はん、ここどしたか。今、どうしてはるんどすか」 「まあ、気ままに過ごしておるよ。たまに龍安弘秀に呼ばれることがあるがね」 「今後どうするつもりどすか? ケモノは、簡単に住む場所を変えられるんどすか」 「まあ……山奥にでも隠居するかねえ」 「白狐はんが良ければ、龍安家で匿う事も出来ます。出来るならば、空賊の見張りをしてほしいんどすが」 「嬉しいことを言ってくれるのう。……空賊は、滅びるじゃろうな」 白狐は言って、華御院の言葉を受け入れた。 宿奈は到着したところで、仲間達や味方部隊と作戦相談。 「私からの提案としましては、味方部隊の一部を厳存秘教国の賊達に偽装待機し、戦いをわざと賊軍が見守る近くや白仙山周囲で行う形をとり、幻影符を使い賊を混乱させアヤカシを攻撃させ、それに合わせ厳存秘教国軍に偽装した味方部隊がアヤカシ達を攻撃し同士討ちを引き起こさせ、混乱させ、自分達はアヤカシ退治に集中し、敵拠点へも幻影符でアヤカシが襲撃した様に見せる案を提示致します」 「……お前、悪魔のような奴だな」 サムライ達は唖然として宿奈の提案を聞いていた。 「うまく行けば、アヤカシと賊、両方を潰せるかも知れん」 「それでは有効の印にうちが先陣をきらせていただきやす」 華御院はいくらかの龍安軍を連れて先陣を切るが、アヤカシの陣形をどんどん空賊に向うように仕組む。 「行きますどす……!」 瞬風波の風の刃がアヤカシ達を貫く。華御院は自ら立ちはだかって虚心で回避しながらアヤカシを空賊の方へ引き込む。壱華の手綱を引き、アヤカシをレイラで吹き飛ばし、賊たちの方へ向きを変える。 宿奈は黒羅を駆り弐式加速、急機動を駆使して攻撃をかわしつつ、味方龍騎兵に咆哮で自分の周囲へ敵を集めてもらう。 「退避して下さい!」 宿奈は黒羅を操りつつ、悲恋姫を解き放った。アヤカシ達が消失する。 空賊達の方に向かうと、幻影符でアヤカシに襲われる幻影を見せる。 「何だ!?」 賊は刀を振り回す。 そこで、宿奈は合図し、味方伝令を介して偽装部隊によるアヤカシ達への攻撃をお願いした。混乱が広がる。 宿奈は悲恋姫と黄泉より這い出る者でアヤカシを撃破していく。 華御院らの攻撃で、アヤカシ達が白仙山へなだれ込んでいく。 宿奈は白仙山の賊の拠点に加速すると、幻影符で味方がアヤカシに見える幻影を順次送り込む。幻影符は状態異常を引き起こすほどの威力は無いが、戦況は混沌として行く。 やがて、賊軍とアヤカシの間で戦闘が始まる。この機に乗じて、龍安軍はアヤカシと賊たちを徹底的に叩き、大打撃を与える。 天承城に帰還した華御院は、ナンバリングに付いて、飛空艇を売った商人の話から、共通点が見つからないか探ってもらう。 「これは……龍安家の手に余りますかね。後は王達に任せるしかないでしょうか」 家臣は言うと、「残念ですが」と首を振った。 ● コルリス・フェネストラ(ia9657)は、龍安弘秀と面会した。 「弘秀様、北部の厳存秘教国の賊達が示す休戦案は『決断を下すには議論不足だ』と実は肯定でも否定でも回答でもない文言で返答し、北部の戦闘後に賊軍の戦艦が落ちたら船のナンバリングを調べ、賊軍の補給ルート解明続行を奏上致します」 「まあ……いずれは討たねばならん相手ではあるがな」 弘秀は肩をすくめると、賊たちへ使者の手配をした。 コルリスは甲龍の山紫を駆り東部へ向かう。 「俺はサムライのルオウ(ia2445)! よろしくなー」 赤毛の少年サムライが溌剌と言った。 「また世話になんぜぃ! よおコルリス!」 「みなさんよろしくお願いしますね」 罔象(ib5429)は言って、ぺこりとお辞儀した。 コルリスは早速軍議に加わると、一案と前置きし作戦案を提示し、判断を委ねる。 「まずは各兵士達に盾、弓矢を支給願い致します。それから、宝珠砲は高所へ配備し戦場観測も兼ね、戦況をシノビを介し前線へ連絡して下さい。戦闘開始後、退却時偽装し、集落跡へ味方サムライ隊の咆哮等で敵を誘引し胡蝶陣で迎撃します。龍騎兵は四指戦法等で飛行する敵を順次撃破し制空権確保に務めて下さい。制空権確保後、飛空戦艦は上空より、宝珠砲兵は地上高所より地帯射撃で敵軍を順次殲滅。アヤカシ指揮官見時は空鏑で合図致します。飛行戦艦、宝珠砲は退却とみせかけ迂回し集落跡を密かに包囲する動きをとり、集落周辺の丘陵の傾斜に紛れ潜伏。開拓者や一部味方部隊は包囲完了まで集落内で胡蝶陣や各行動で時間を稼ぎます。最後に、包囲完了後全方位から全軍でアヤカシ指揮官に集中攻撃し撃破します。いかがでしょうか」 「了解した。アヤカシどもを叩きのめしてやろう」 ルオウは「しゃあ!」と立ち上がった。 「俺は目的は奇襲かねた威力偵察って所だな。指揮官タイプが多いみたいだし、いっちょそいつらを潰しに行ってみるぜー。コルリスの作戦と連携して動き、味方のサムライ達が『咆哮』使うまでに気づかれずにいける所まで行ってみるぜ!」 「それでは私もコルリスさんの作戦案に合わせ、敵飛行戦力を叩き制空権確保に尽力する事を表明致しますね」 罔象は言った。 「空戦戦術としては、味方龍騎兵への焙烙玉配布と龍騎兵が二人一組でペアを組み、片方が咆哮で敵をひきつけ、もう片方がその敵を横撃、真上からの攻撃等で倒す『繰引』戦術と『繰引』戦法の応用で自分の周囲に敵が集まる様咆哮の角度等を調節し、集まったところで龍騎兵は退避し魔砲『スパークボム』でまとめて倒す『空雷』戦法を提案いたします」 「了解した。繰引、空雷ともに有効だな」 「制空権確保後は、地上へ焙烙玉を投下する爆撃で敵地上戦力を壊滅後、地上部隊が進撃し、敵軍を集落跡へ誘い込み、そこを空陸で包囲し殲滅する方式を提案いたします」 「良いだろう。コルリス案と組み合わせ、アヤカシどもを包囲殲滅する」 ルオウはシュバルツドンナーを加速させる。 「行くぜドンナー!」 コルリスは山紫に霊鎧を命じると、集落より前で敵軍迎撃を指揮。アヤカシ軍が前進して来ると、空鏑で合図を送り味方を偽装退却させる。 「翔!」 月涙+響鳴弓の合成技で牽制しつつ集落跡へ誘引する。 咆哮で引きつけ、胡蝶陣で迎撃する。 戦艦と宝珠砲が砲撃を開始する。 ルオウは上を見上げる。咆哮にかかっていなかったり、後ろで統制を立て直そうとしてるアヤカシが居ないかを全体見回してチェックする。 「指揮官は後ろにいるもんだし、強いなら『咆哮』にかからない事だってありえるもんな」 中級アヤカシと思しき亡者たち――派手な目立つ武装や炎に包まれた将をチェックしておく。 ルオウを発見して、アヤカシたちは向きを変えて襲い掛かってくる。一体一体確実に撃破し、咆哮で引きつけ、回転切りでまとめて葬り去る。 数が多くなってきたところで、弐式加速と急反転でアヤカシを誘い込む。 「こっちだ! 来やがれ!」 罔象は瓢を駆り、ラッシュフライトで回避しつつ敵が程よく集まったところで味方に退避を警告、魔砲「スパークボム」で敵をまとめて撃破する。繰引戦術。 罔象は練力回復アイテムを受け取りながら、敵飛行戦力を次々と駆逐していく。 中級アヤカシも、 「殲撃!」 騎射+魔砲「スパークボム」の合成技で倒していく。空雷戦法だ。魔砲の閃光が貫く。 制空権を確保すると、練力回復アイテムで回復、ファストリロードで再装填しつつ瓢に駿龍の翼を命じ、地上の敵の攻撃をかわし、地上の味方、空中の龍騎兵と連携して、 「殲撃!」 集落跡へアヤカシを追いこんでいく。 「爆撃開始!」 焙烙玉が投下され、アヤカシを粉々にしていく。 包囲の輪が完了すると、龍安軍は一斉攻撃を開始した。 「翔!」 コルリスは矢を連射してアヤカシを薙ぎ倒していく。 「行っくぜええええ!」 ルオウは敵陣に加速した。 アヤカシはなぎ倒され、引き裂かれた。崩壊していくアヤカシ軍に、開拓者たち、龍安軍はその背後を討ち、壊滅的な打撃を与える。 ● 「暫く離れていたこともあって、家政について色々と話しておきたいと思っています」 各務原 義視(ia4917)は言うと、龍安弘秀と向き合っていた。 「久方ぶりだな軍師」 弘秀が言うと、各務原はお辞儀した。 「南部の件ですが、長期的な話になってしまいますが……現在の都市計画は軍事拠点の色が濃いと聞きました」 「それは仕方がないな。この天承も作りは軍事拠点なのだ」 「その中でも、商業地区を広めに取るべきでしょう」 各務原は商人の自由な活動を認めてそこからの税収を軍備拡充に充てるという流れを説いた。 「南部は東部反撃の策源地になり得ますから」 要は活力ある社会が前線の兵を養うということ。土木工事のため人も多くいるだろうからこれらを対象とした商人の活動も広く認め税収を確保するようにも提案する。 「都市計画や復興を利用した増収と、その範囲内での軍備増強ということですね」 「元々鳳華は、資源は無い。原材料も食料も輸入に頼っているから、強化するとしたら商業になるところだと思う」 「それから、新たな開墾計画は可能でしょうか? それがダメでも商業作物が作れないかどうか」 「開墾計画は難しいだろうが、商業作物に限ってなら何かできそうだな」 そこで、各務原は話題を軍備に転じた。 「装備の更新につきまして、飛行船に搭載している砲を新型のものに取り替え、取り外されたものは防御施設に回すか宝珠砲と荷車の組み合わせと同様の運用が出来ないものでしょうか」 「それは順次取り行うとしよう」 それから各務原は騎馬を確保するために牧場の増設、アヤカシの出現をすぐに知らせられるように狼煙台の設置を提案した。それらはすぐに実行に移されることになる。 また、戦術面に話が及ぶ。 「複数人で敵一体を攻撃する形で素早く敵の数を減らしていく戦術――局所的各個撃破戦法とでも呼びましょうか――が導入できないか検討して頂けないでしょうか。可能なら何処かの部隊で戦術の確立のため自ら実験の指揮を取りに行きたく存じます」 「了解した。すぐにでも始めてくれ」 「ありがとうございます――」 ● 嶽御前(ib7951)は龍安弘秀と向き合う。 「今南部で展開中の龍安軍を通じ、防御施設以外にも各里毎に兵士達が駐屯し、いざという時住民達が避難できる防衛用屯所を設置し、南部復興への影響をできるだけ抑える案を奏上致します」 嶽御前は言って、まとめた書類を手渡した。 「開拓を進めるには里単位でも対応できる様にすべきかと」 「今は里毎に置いても良いだろう。まだ開拓は始まったばかりだ」 中書令(ib9408)も言った。 「南部の復興について、現状の復興状況を示す地図があれば閲覧を所望致します」 「うむ」 弘秀は地図を持ってこさせた。 「弘秀様、今後どの場所へ優先順位をつけて復興を進めるのでしょうか」 「優先順位をつけるとしたら、都の中心から、民の住居と商業地区、生産地区。城は最初は平屋で良い」 「アヤカシ退治後、被害の復旧も並行して復興活動を進める為、ある程度復興・復旧どちらにも対応できる様、現場で復興にあたる人達にある程度裁量権を持たせる事も愚考します。今後のアヤカシ退治と事後対応も視野に入れ、中央・西部の負担にならない範囲で復旧と復興を優先順位をつけ実施すべきかと」 「まあ、南部は再編とは言え新規開拓地。復興は早くに済ませ、開拓事業を軌道に乗せたい」 それから、弘秀は南部の里長たちから裁量を与えられる人選に入った。 嶽御前は南部に到着。 「よろしくお願いしますね。危ない時は私も前に出て戦いますから」 それから、 「龍安軍と元春信軍の共同作業の既成事実化を進めておきましょう」と。 中書令は挨拶後、 「私は陸を駆り、怪狼達の多い場所へ向かい夜の子守歌で敵をまとめて無力化し龍安軍による討伐がしやすくなるよう支援致します」と表明。 嶽御前は味方部隊に挨拶後、 「では瘴策結界で探索していきますね。非常時は私たちを呼んで下さい」 剣狼の群れを探知すると、友軍を率いて迎撃。 「あれは……?」 嶽御前は、剣狼の向こうに立っている人影を見た。それが手を上げると、剣狼たちは動きを変える。 サムライの咆哮をぶつけてみるが、人影は立ち去って行く。 中書令は味方の咆哮で剣狼を引き付けると、夜の子守歌でまとめて眠らせていく。龍安軍や元春信軍の兵士達に討ち取らせていく。 「今は、鳳華のために」 兵士達は戦いを通して結束していく。 ――全てのアヤカシを退治後、嶽御前は瘴索結界「念」で討ち漏らしが無い事を確認し、襲撃を受けた各里の人々の治療に回る。 中書令は南部復興計画に優先順位をつけより効率的に進められる様、予定候補地を南部各地の防衛計画の為の調査名目で陸を駆って各地を調べ、現在までの南部の魔の森からのアヤカシによる各里の被害状況を手帳に詳細を記録し、後日清書して弘秀達に調査報告書を提出した。 |