|
■オープニング本文 遭都――。 天儀朝廷の都である。かつての華やかな時代は過去のものであり、貴族たちの凋落著しい今にあっては、都にもアヤカシが入り込んでいる。それらは時として、暗闇から姿を表し、人界に牙を剥く。 朝廷貴族の数が正確に何人いるか数えた者はいまい。藤原、豊臣らに代表される大貴族に名を連ねる者だけでなく、上級貴族たちから下級貴族たちまで有象無象。 浅葉友成は下級貴族の嫡流であり、名ばかりの貴族でさしたる力は持ち合わせていなかった。上級貴族にへつらい、遭都の一角の廃れた邸に居を構えていた。 ある朝、浅葉が目を覚ますと、邸の中は静まり返っていた。異様なほどに。 「静かでおじゃるな……」 浅葉は床から起きると、服を着て「誰ぞある」と侍従を呼ぼうとした。 その瞬間、ウゴオオオオオオオ……! と何かが呼吸する音が聞こえた。 浅葉はその人外の咆哮にすくみあがった。 「な、何でおじゃるか……」 浅葉はそろりそろりと部屋を出て行った。 そして、彼は恐ろしい光景を目にする。 身の丈三メートルはあろうかと言う異形の巨人が庭を徘徊している。その手には、侍従の頭が握られていて、血の滴が零れていた。 「……!」 浅葉は声も出ずに、震えながら身を潜めた。 ゆっくりと、逃げる、逃げる。 だが、客室には、同じ巨人がいて、引き裂かれた警備の兵士たちを貪り食っていた。 浅葉はだが、必死に逃げた。唯一の逃げ道、秘密の地下室へと、逃れる。 扉をゆっくり閉めると、浅葉は深呼吸して、蝋燭に明かりをともした。ここには風信機がある。さすがは下級とは言え、貴族の邸と言うべきか。 浅葉は風信機を起動させると、助けを呼ぶ。彼が頼ったのは、貴族ではないが、この都で影響力を持ちながら、軽いフットワークを持つことで知られる藤原家側用人、芦屋馨(iz0207)だった。 「あ、芦屋殿……!」 「浅葉様、いかがなさいましたか?」 「助けてくれ! 目を覚ましたら、や、邸の中にアヤカシが徘徊しておるのじゃ……! 何体おるか分からん。麻呂が見ただけでも二体はおった! 三メートルほどの巨人じゃ!」 「分かりました。すぐに開拓者を手配しましょう。浅葉様はどちらにいらっしゃるのですか?」 「地下室に逃げ込んでおる」 「では、そこから動かないで下さい。開拓者が助けに向かうまでは」 「わ、分かった……! 頼むぞ芦屋殿!」 かくして、開拓者ギルドに、浅葉救出と、アヤカシ殲滅の依頼が出されるのだった。 |
■参加者一覧
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
カンタータ(ia0489)
16歳・女・陰
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
倉城 紬(ia5229)
20歳・女・巫
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
ウィンストン・エリニー(ib0024)
45歳・男・騎
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
イデア・シュウ(ib9551)
20歳・女・騎 |
■リプレイ本文 華御院 鬨(ia0351)は女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出している。今回は京美人の女装をしていた。 芦屋邸を訪問した華御院。近侍の者に通され、彼女と会う。 「華御院様。今回はありがとうございます」 「そないしても芦屋はんは、色んな事に巻き込まれてやすなぁ。死神でも取りつかれてるんやないか」 と芦屋に冗談がてらに言う。 芦屋は口許を緩めた。 「死神ならいいかも知れませんが、遭都には、もっと恐ろしいものが徘徊しています」 「それは?」 「朝廷貴族たちの思惑です。凋落著しいとは言え、遭都には私も知らない秘密が渦巻いていますからね」 「それは確かに、アヤカシよりも厄介かも知れまへんなあ」 華御院は芦屋に別れを告げ、現場へ向かった。 「うちは打ち合わせ通り、浅葉友成の捜索及び保護を重視に行いやす。瘴索結界などでアヤカシの位置などが分かったら心眼『集』で全員の位置を確認して、人質の大体の位置を確認してから行動しやす。浅葉はんがまだ無事でいると良いんどすがな……ここまで来たら祈るしかありませんが……定期的に心眼『集』を使用して他の位置を確認しながら最も安全な救出ルートを探りながら移動しやす。生き残りは浅葉はんだけやと言うことどすが、一応他にもいないか探ってみやしょうか……」 華御院は、しなやかな指を丸めて顎に当てた。 「街中にこんなデカぶつが出るんだな……よしっ! やっつけてやんぜぃ!」 赤毛の熱血少年ルオウ(ia2445)が言った。 「こっちは戦闘重視班で行動するぜー。みんなの捜索は頼らせてもらうぜ。俺はそっち系のスキルは持ってないからな。紬、頼りにしてるぜ!」 ルオウが言うと、倉城 紬(ia5229)は嬉しそうに笑った。 「はい♪ ルオウさん。私も頼りにしてますよ? お公家様が無事だと良いのですが……」 「おう。なんか来ても俺が守ってやっから安心してろよなっ!」 「はい♪ ルオウさんこそ、無茶しちゃ駄目ですよ。いつも飛び出して行ってしまうんですから」 「へへ」 ルオウは笑ってから、微妙に距離を保つ。紬は男が苦手で、男性との接触に不慣れな為、男性とは一定の距離を取る。故に特定の人物以外は、照れて手すら触れられないので修練中であった。ルオウはそれを知っていたので触れない様に気をつける。他のメンバーにもそう説明しておく。 「と言うわけなんで、みんなよろしくな。こいつ、男がまじ苦手なんだわ」 「もったいないどすな。可愛らしいのに……」 華御院は言って、微かに笑った。 「まずは邸内の捜索ですね。私も瘴策結界を使っておきましょう」 紬は言うと、瘴策結界「念」を発動させた。 「アヤカシは……三体ですね……確かに徘徊していますね。一つ目の巨人と言うことでしたが、単眼鬼でしょうか」 紬の感覚にアヤカシの動きが入って来る。三体のアヤカシは、邸の中を僅かに移動しつつ、時折止まっては、また動き出していた。恐らくこのまま放置しておけば、都に出て行くつもりなのか、町や村へ攻撃を開始するか。ここは遭都の辺境だから、魔の森へ帰って行くかもしれないが。 「ここでアヤカシを止めておきませんと。また新たな被害が出ます」 紬は、小さな拳を握りしめた。 「二班に分かれて行動する流れでしょうか」 コルリス・フェネストラ(ia9657)は言うと、思案顔で邸を見上げた。 「では私は、屋敷を囲む壁などに登って残り、距離をとって射撃で単眼鬼達を順次射抜き、みなさんに単眼鬼達の位置を知らせると共に、突入した方々を支援できる班に回りますね」 コルリスは言って、冷静に状況を確認していた。単眼鬼三体、人質がいなければ、このメンバーでそう遅れを取る相手ではいだろう。尤も、アヤカシと言うものは戦ってみないと分からないところもあり、油断は出来ない。同族のアヤカシでも強さにはばらつきがある。 「単眼鬼三体ですから、正面からでもいけますか? 小細工が通じる相手ではないでしょう」 「浪士組による桜蘭の嵐が静まりも、遭都の闇は未だ晴れぬ状況であろうかな。こうして鬼の襲来を聞くと、何やら内通者の存在を疑わねばならぬ世相故、然るに対するは開拓者足る闇を照らす存在をあるが如く。こうして危機に馳せ参じて無力な者々を救うのであろうな」 紳士的な風貌の騎士ウィンストン・エリニー(ib0024)が言った。 「徘徊する鬼どもを撃破して、救援を請うた存在を是非とも発見せねばなるまいな」 と頭を垂れる。 「急がなきゃ! お公家さんと屋敷の人を助け出すんだっ! 生存者はまだいるはずだよ!」 元気よく言ったのは魔術師の娘リィムナ・ピサレット(ib5201)。まだ10歳と言う幼さでありながら、ギルド屈指の使い手でもある。だが、そこはまだ10歳。実はおねしょを隠すのに必死で布団を洗濯したりとお子様なところもある娘っ子であった。 「コルリス! 華御院! 紬! みんなの探知スキルで敵を探し出して! あたしの雷撃で単眼鬼なんかがつんとやっつけちゃうんだから!」 「元気はつらつですねピサレット様。ですが、もう少し声を落として頂ければと思いますよ」 コルリスが言うと、ピサレットはかーっと赤くなった。 「ご、御免なさいっ。つい興奮しちゃって。ふにゃあ、あたしも注意が足りないなあ」 「いえいえ。そんな落ち込まなくてもいいですよ。正面から戦うことになれば、それはそれで上等ですけどね」 コルリスは優しく言って、ピサレットの頭を撫でた。 「ピサレット一人でもこれくらいのアヤカシなら殲滅できそうであるかな」 長身のウィンストンは、言ってピサレットを軽々と持ち上げ、肩に乗せた。 「ちょ……ウィンストンさん! アヤカシに見つかっちゃうよ!」 「はっはっは。そうであるな」 ウィンストンはちょっと驚かせて、ピサレットを下ろした。 それよりも初の戦闘で緊張しまくっている娘がいた。エルフの騎士イデア・シュウ(ib9551)である。初めての依頼で、初めての戦闘である。よくぞ受けた駆けだし開拓者、と神の声が聞こえる。 「大丈夫……自分ならできる……できる……」 手の平に「出来る」と書いて飲み込んだ。 「華御院様、よろしくお願いしますね。何せ自分、初めての戦闘で、初めての依頼ですから……無論、鬼ごときに遅れを取るつもりはありませんけどね」 「油断は禁物どす。単眼鬼は簡単に倒れるようなアヤカシではおまへん。初めての戦闘どしたら、うちらを頼って下さい」 「足手まといにはなりたくないんですっ」 「まあそう熱くなりなさんな。まずは、目の前の戦いに集中するどす」 「そうですね……よし」 シュウは吐息して、まだ重さに慣れないハーフプレートの位置を整えた。 と、その時である。邸から光が伸びて来て、壁を通り抜けて光線が開拓者達をスキャニングしていった。 「何ですかこれ……?」 紬は、体の上を撫でるように通過していく光の膜にびっくりした。 「アヤカシの術……ですか?」 「何かの探知スキルじゃないかな」 ピサレットが言うと、コルリスは思案顔。 「聞いたことはありませんが、見つかった可能性はありますね。この光をよけて、素早くいきましょう」 開拓者たちは行動を開始した。 「ではシュウさん、行きましょう」 「はいっ」 華御院とシュウは邸に進入した。華御院の心眼「集」で人質の位置を大よそ見当を付けておく。 二人は滑るように駆け抜けて行く。 「うわ……!」 シュウは、食い殺された亡骸を見て、足がすくむ。飛び散った鮮血に震えが止まらない。 「シュウさん」 華御院は、シュウの手を握った。 「だ、大丈夫です」 「行きますどす。こっちどす」 二人は移動していくが――。 「あそこどすな……浅葉はんが隠れている地下室……」 「でも、単眼鬼が……」 「ちょっと、援護が必要どすな」 華御院は、東の方角を見た。 いったん離脱し、コルリスのもとを訪れる。 コルリスは、鏡弦で単眼鬼の位置を把握していた。 「華御院さん、どうされましたか」 「コルリスはん、真ん中にいる単眼鬼どすが、恐らくリーダー格どすな。派手な鎧を着とります。ちょっとどかしてもらませんやろうか。すぐ近くに、地下室があるんどすわ」 「成程。了解しました。支援します」 「よろしくお願いします」 コルリスは東側の壁に立ち上がると、夜明けの日の光を背に受ける形で屋敷の壁に登り、そこから仲間達の動きや鏡弦での敵位置のおよその位置を把握しつつ、 「翔!」 月涙+響鳴弓の合成技で屋敷内の壁や障害物等一切を通り越し、単眼鬼のみ射抜く射撃を行う。 ――ガオオオオオオ! リーダーの単眼鬼は、直撃を受けて咆哮した。 他の二体の単眼鬼が咆哮する。 「よし! 行くぜ紬!」 「はい!」 ルオウは、紬を庇うように立つと、抜刀した。 「ルオウさん、みなさん、瘴策結界で探知します」 紬は瘴策結界「念」で進んでいく。 紬の後ろには、ピサレットが付いた。 「紬、後ろは任せておいてね!」 「よろしくお願いしますね」 紬は、にこやかに言って、前を向いた。 「では、そこを蹴破って行くであるな」 前に立つウィンストンは扉を蹴破って、派手に音を鳴らした。 「紬、敵の動きを探知願う」 ウィンストンは先頭に立って突入する。周囲を見渡し、視覚、聴覚、臭覚、振動等により迎撃してくる鬼の気配を探る。 「ウィンストンさん、角の向こうに単眼鬼が来ます」 「承知したであるな」 「紬、下がってろよ!」 ルオウは紬を庇って軽く押した。 「ごめんな。ちょっと今は遠慮してられねえから……!」 ぬうっと、単眼鬼が壁に手を掛けて姿を見せた。 「行くぜええええええ!」 ルオウは雄たけびと共に蜻蛉で構えを取りつつ、咆哮を叩きつける。 単眼鬼は、苛立たしげに前進して来ると、目から光線を放ってきた。 「うわっち!」 ルオウは火傷して飛びのいた。 「やってくれるじゃねえか!」 紬から離れると、ルオウは自分に引き付けるように正面からぶつかって行った。 金棒が振り下ろされる。ルオウは受け止め、弾き飛ばすと、蜻蛉で踏み込み、一撃を叩き込む。ルオウは速度を生かして、巨大な鬼の懐に潜り込んで刀身を打ち込んだ。接近戦を挑み単眼鬼が容易に武器を振るいづらい状態にする。 ウィンストンは前衛に出ると、壁役を担いつつ相対する。ルオウが引き付けている鬼に正面から加速する。鬼の視線、癖、足捌き、得物の振り具合より破壊効果範囲と射程延長線上を見極め、敵の攻撃範囲を避けつつ突進。鬼が空振りしたところへ懐へ飛び込みスマッシュを叩き込む。 単眼鬼は切り裂かれて咆哮した。 ――と、もう一体が姿を見せる。 ルオウはもう一撃「咆哮」を叩き込み、混戦に持ち込む。敵の巨体を利用して、一方を盾にし、股の下から抜けたりしてあわよくば同士討ちを誘発させる様に試みる。 単眼鬼は狭いところでもみ合い、激突した。 「でやい!」 蜻蛉の構えからタイ捨剣を打ち込む。袈裟懸けに振るった一撃が単眼鬼の腕を斬り飛ばした。 ウィンストンもガードで受け止め、スマッシュの一撃を叩き込む。ズン! と単眼鬼の足が砕ける。 ピサレットはルオウとウィンストンが連続攻撃を仕掛けるのに、アイヴィーバインドを連射する。魔法の蔦が鬼に絡みつく。 「よーし次はこれだよ! その邪悪な目! 潰してあげるよ!」 ピサレットはアークブラストを連発し、単眼鬼の目に撃ち込み視覚と光線を封じる。 単眼鬼は目を潰され、滅茶苦茶に喚いて武器を振り回した。 「そんな瘴気臭いへなちょこ光線、あたしの雷撃が粉砕してあげるよっ!」 超絶的な威力の雷撃が単眼鬼を貫く。鬼の頭は焼け焦げてぐしゃぐしゃになった。 開拓者たちは、二体の単眼鬼を粉砕した。 「みなさん。もう一体、動き出しました」 紬は、瘴策結界に動きを捕えて、仲間達に注意を促した。 「大丈夫ですかルオウさん」 紬は、ルオウの火傷を閃癒で回復しておいた。 「さて……残るは一体ですね」 コルリスは、動き出したリーダー格の単眼鬼に狙いを定めていた。 と、単眼鬼は向きを変えて、コルリスの方へ向かって来る。 コルリスは急いで飛び降りると、邸の西側へ走った。 また壁の上に登ると、単眼鬼の背後を取る。 コルリスは矢をつがえると、弓を引き絞り、 「翔!」 で単眼鬼ボスを射抜いた。コルリスは距離をつめられて戦うと不利である。従って常に距離をとり射撃の最適置を探し、月涙を駆使して「どうやって撃たれるのかわからない矢」に注意を分散させる形で退治を支援する。 ……華御院とシュウは、移動を開始したボスを見て、動き出した。 「行きましょう」 「はい」 と、次の瞬間、ボスが振り向いて、加速して来た。 シュウは、とっさに刀を抜いた。 単眼鬼ボスの一撃が飛んできた。避けられないと悟ったシュウは受け止めた。しかし、堪え切れずに弾き飛ばされた。 「……負けない……負けられないっ! 自分の力の糧となれ! このデカブツ!」 シュウは己の弱さを憎んでいたが、それが彼女を突き動かす。 華御院が加速すると、虚心と紅焔桜で一撃を打ち込む。レイラが単眼鬼ボスを切り裂く。 シュウは雄たけびを上げると、突進してスマッシュを連発した。 ボス鬼は金棒を馬鹿力で振り回した。シュウは転がるようによけると、華御院と連携して動き、華御院の反対側に回り込み、その攻撃に合わせて接近、一撃離脱。後のことは考えずに全てスマッシュ。 「倒れろ! この鬼!」 シュウは万力を込めて刀を振るう。その渾身の一撃が、ボスの足を斬り裂いた。微かに単眼鬼は揺らいだ。 ――と、そこへ仲間たちがなだれ込んで来る。 「無事であるか!」 ウィンストンは騎士の誓約を使うと、ボス鬼の足を打ち砕いた。 開拓者達の集中攻撃で、ボス単眼鬼は瘴気に還元した。 ……浅葉友成は、地上が騒がしいことに、耳をふさいでいた。 「……お願いじゃ……どうか……麻呂を助けて下さいませ……神よ精霊よ……悪なる者どもを打ち倒したまえ……」 だが、アヤカシを打ち倒したのは、神でも精霊でもなく、開拓者たちであったが。 地下室の扉が開いた。光が差し込む。浅葉は声を失った。 「浅葉はんどすか」 華御院が呼びかけた。演技力で落ち着いた母性的な感じ語りかけ、 「助けにきやした。安心してくやさい」 と相手を興奮させない様に引率する。 ピサレットが後ろからひょいと顔を出す。 「もう大丈夫だよ! お公家様!」 かくして、無事に依頼を果たした開拓者たち。隠れていた侍女と浅葉を連れて外に出た。 安心して崩れ落ちた浅葉に、華御院が封書を手渡した。 「うち、ここで歌舞伎してるんで皆はん誘って見に来てくれやす」 と宣伝しておく華御院だった。 |