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■オープニング本文 希儀の輪郭が浮かび上がり始めた。 温暖でからりとした気候、蛇の姿をしたアヤカシと戦う人々の姿、あるいは土地を捨てる人々――そして石灰や大理石を用いた彫刻品、美術品の数々。難破船と共に希儀へ訪れた人々はようやく静かな眠りに付いた。 「問題は、魔神不死鳥と嵐の門だ」 ギルドの職員たちが地図を見据えた。 皆、資料を抱えて頬を寄せ合う。 「魔神封印は、現在遺跡深部へ向かって展開中、か」 「……アル=カマルからは、例の物は届いてる?」 「ええ、確かに。アストラ・インタリオ。妙な水晶です。内側から掘られているようで、中を覗くと星空が映るんです」 「飛空船の出港準備も概ね順調ですよ」 口々にそれぞれの管轄を報告し、大伴はうんうんと小さく頷いていた。 「なるほど、順調じゃな。しかしこう順調であると……」 「いけません、大伴様。それ以上は言わないで下さい。それは『ふらぁぐ』と言うそうで。言霊のようなものだそうですよ」 「ほう。なるほど、験担ぎというわけじゃな」 大伴が大仰に頷いてみせると、職員たちは顔を見合わせて笑った。ではもう一度確認を――急報が舞い込んだのは、明るい雰囲気の中、彼らが資料を机に積み上げたまさにその時のことだった。 上空、嵐の門の前――。 開拓者ギルド相談役の橘鉄州斎(iz0008)は、武天から飛び立った一隻の飛空船の中にいた。武天の老中、西祥院真禅から預かった飛空戦艦は大型の武装船だった。 「よお、異常はねえか」 紺碧の戦装束をまとった鉄州斎が、望遠鏡をのぞいている開拓者に声を掛けた。 「何だろうあの雲……まとわりつくように、こっちへ向かって来るんだけれど」 「雲?」 鉄州斎は望遠鏡を受け取り、「それ」を確認した。 別の開拓者が緊迫した面持ちで声を上げた。 「おいおい鉄州斎、ありゃあ……何だ? 雲、なのか?」 その雲のように見える白い塊は、むくむくと形を変え、やがて、龍のようなものに姿を変えた。 「あいつは『雲龍』だ」 鉄州斎は舌打ちした。 「雲龍?」 雲龍とは、入道雲がそのまま姿形を変化させたような外見の龍の中級アヤカシである。大小いて、大きなものになると10メートルクラスになる。性格はアヤカシにしてはのんびりしているが、知能が高く、ひとたび獲物に狙いを定めると連携して飛空船などに襲い掛かる。 「よーし腹をすかせた敵さんが来るぞ。飛空船には近づけるなよ! 出るぞ――!」 開拓者達は、飛空船艦から飛び立った。 |
■参加者一覧
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
杉野 九寿重(ib3226)
16歳・女・志
アルバルク(ib6635)
38歳・男・砂
ソラ・アルテシア(ib6822)
25歳・女・ジ
トィミトイ(ib7096)
18歳・男・砂
羽紫 アラタ(ib7297)
17歳・男・陰
ケイウス=アルカーム(ib7387)
23歳・男・吟 |
■リプレイ本文 「しっかし、雲のドラゴンとかそんなんいるんだな〜」 赤毛の熱血少年が言った。ルオウ(ia2445)だ。 「アルバルク(ib6635)のおっちゃん、どう見る?」 髭の不良中年アルバルクは「おう」と髭を撫でた。 「手柄なんてもんは誰かにくれてやればいい。目的さえこなせりゃな」 アルバルクは言ってにやりと笑った。 「こっちの数不足は承知だがよ。戦艦との連携を重視して敵さんを迎撃だな」 「前に二体、後は周りを囲まれてるぜ? 戦艦の砲撃に雲龍を誘い込めるかどうかだけどな〜」 「ドラゴンと言ったってケモノじゃないんだから、頭はそんなに良くもないだろう。お前さんの咆哮とかでおびき寄せれば」 「おう! 任せといてくれよ! 雑魚アヤカシに遅れは取らないぜ! ま、油断は出来ないけどな〜」 「油断するような奴じゃないだろうルオウ。まあ、適当に行こうや」 アルバルクは言って不敵な笑みを浮かべた。本人に向かって「期待はしてるぜ」などと言う男ではなかった。 ルオウもそれが分かるから、「ああ」とこちらも不敵な笑みを浮かべて空の雲海に目を向ける。 「あら、男同士ですっかり意思の統一が出来てるみたいね」 おっとりした口調でからかうように言ったのはソラ・アルテシア(ib6822)。アルバルクは彼女の小隊長だった。 「雲みたいな龍? 珍しいものがいるのね。でも空を汚すなら消えてもらわないと、ね?」 ソラは武装船を見る、空を楽しむことが目的だった。アヤカシと遭遇することも考えないわけではないのだが。 アルバルクに空の散歩に誘われて、特に何も考えずについてきた。なので護送等の感覚はなく半ば遊びに来ました状態であった。惹かれてやまない空を汚すアヤカシがいるから、 「邪魔ね、消えてもらいましょう」 ソラはくすくすと笑った。 「空に浮かぶ雲の龍ね。何だかふわふわしてるみたいで可愛いわね? あれが人を食べちゃうなんてちょっと考えられないわねえ。アヤカシって、変なのも多いわよね」 「はっはっは、ソラ〜、いつもふわふわしてると、いつか食われちまうぞ。今度の希儀だって、カマリアンスタッド隊は堅実に行くからな」 「はいはい。隊長さんはやっぱり堅い人ねえ」 「何言ってやがる。俺が堅実だって? 俺の仕事は、地獄の沙汰も『あれ』次第なんだけどね」 「あら」 ソラはくすくすと笑って出撃態勢を整えて行く。 「よーし皆の衆、作戦の確認だ」 アルバルクは言って、仲間達に言った。 「各方面の雲龍を誘導し一か所に纏めた後、戦艦の一斉砲撃にて打撃を与える方針だ。誘導先は大火力の集中している前部だが、撃ち漏らしの可能性も考え、砲撃後に側面へも誘導、中小砲の斉射を行う」 アルバルクは、それから戦艦のサムライに注文を付けておいた。 「よお、今聞いてもらった通り、砲撃は切り札に取っておく。前面の大砲を温存しておいてくれ。準備が完了次第、こっちからも閃光練弾で合図を行うからな。それから、誘導中は艦自体も多少動いて位置取りを決めて置いてくれ」 「了解したぜ」 頷いたのはギルド相談役の橘鉄州斎(iz0008)。 「戦艦のサポートは任せておいてくれ。お前らの動きはこっちで確認しておく」 「おう、よろしく頼むぜ相談役」 アルバルクは言って不敵な笑みを浮かべる。 「無論、俺たちで倒せる範囲は倒して行かねえとならねえ。船がお陀仏になって、後ろの輸送船団へ抜けられたら作戦は失敗だ。ここで俺たちが失敗したら、後に続く連中がやられちまう。背負うものは重大だから、各自、しっかりと頼むぜ」 アルバルクはそれぞれの表情を見やり頷いた。 「アルバルク様、それでは私も連携して動き、雲龍を追い詰めるように動きますね」 言ったのは可愛らしい犬の獣人、杉野 九寿重(ib3226)。 「おう、よろしく頼むぜ杉野」 杉野はギルド屈指の剣格である。アルバルクは娘が身にまとう静かな剣気に気付いていた。 「雲龍ですか……希儀へ辿りつくのは現実味を帯びてきましたけれど。あと少しですね。新大陸に待ち受けるものが何か、それを最初に見ることが出来るのは、開拓者として嬉しい限りですね」 杉野は言って、にこりと笑った。 「橘様、雲龍は私たちより巨大ですけれど、高速飛行とか持っているのでしょうか?」 「そうだな。持っている奴もいるかも知れんが、やはり恐ろしいのは打撃力だろう」 「そうですか……確かに。あの巨体で船に激突されたら、食いつかれたりしたら、ちょっと厄介ですものね。私も思い切ってぶつかって行きませんとね。船は守ります」 杉野は、言って思案顔で雲龍を見やる。 「アルバルク――」 口を開いたのは青白い肌の恐ろしげな風貌のエルフ、トィミトイ(ib7096)だった。彼もまた、アルバルクの小隊の一員だった。 「敵が艦艇に接近する前に開拓者側から接近、各自で各方向の敵を誘導し戦艦前に纏めて誘き寄せ、動きを制限したところで艦砲の一斉砲撃などで一網打尽。砲撃後、討ち漏らした敵へは各自連携して対応。と言ったところか」 「おう、トィ、よろしく頼むぜ」 トィミトイは基本無口な男で、非常にプライドの高い激情家でちょっと扱いづらいところがあるが、アルバルクは信頼していた。幾多の戦場をともにしてきた絆は簡単に風化するものではない。 トィミトイは思いを巡らせた。新大陸の希儀。どこか故郷のアル=カマルと似たところもありそうな情報だった。少なくとも天儀とはかけ離れた世界のようだ。ジルべリアに近しい雰囲気もする。しかし、数百年も昔に飛び立った船とは……現地では今どのような状態にあるのだろうか、と。どのような人々がいて、どのような暮らしをしているのか、いかなる文明が栄えているのか。 「いや、栄えているとは限らないか。アヤカシに攻撃されているかも知れないしな」 「何だって?」 トィミトイの呟きに、アルバルクは視線を向けた。 「何でもない。まあ、今は目の前の雲龍に集中だな」 「雲龍か。また、厄介そうなのが出てきたな」 羽紫 アラタ(ib7297)が言った。 「アルバルク、おびき寄せるとして、艦砲射撃でどれくらいが落とせるかね」 「そうだな。まあ、砲兵たちの攻撃は普通並みだそうだから、俺たちが後始末に追われる可能性は無きにしも非ずではあるが」 「ふーむ。まあ宝珠砲も強力ではあるが、俺たちの方でもやはり回らないといかんかね。宝珠砲に過信するのも危険かな」 「そうは言っても、俺たちだけじゃ数は足りんからな。艦砲での打撃力には期待してもいいんじゃないかね。大砲の数が勝敗を決する、とは言わんがね」 「ふーん……まあ俺は陰陽師だし、術式での援護が中心になるとは思うが、何とも。大砲の性能はどうなのかなとか。実際、大砲が強力な威力を発揮している戦場も聞いたことはあるが」 そこで、ケイウス=アルカーム(ib7387)が口を開いた。 「隊長さん、今回は小隊仲間が揃ったけど、心強いですね」 「おう、ケイ、また調子ぶっこいてると後ろからやられたりするからな」 「いやですね〜隊長さん。いつ俺が調子に乗ってました〜」 ケイウスがにこやかに言うと、ソラが後ろから言った。 「あら、ケイウスさんはいつも調子に乗り過ぎでしょう? 自覚した方がいいわよ〜」 「何ですかソラ。いやだなあ。可愛い顔して言うことは痛いんですから」 「何ですってえ?」 ソラはケイウスにパンチを繰り出した。 「あいたた。ちょっとちょっと〜」 「全く二人とも、今は戦場だぞ。食われるぞ」 トィミトイが言うと、ソラとケイウスはおかしそうに笑った。 「大丈夫ですよトィミトイ。作戦はばっちりですからね。アヤカシに負けたりはしませんよ」 「ふん、言ってろ」 そこで、アルバルクが言った。 「よーし。遊覧飛行はオシマイだ。仕事の時間だぜ」 「アイアイサー!」 ケイウスが答えると、トィミトイはぶつぶつ言いながら出撃準備に入る。 「行くぞ!」 開拓者達は空へ飛び出した。 ルオウはシュバルツドンナーを起動すると加速させる。操縦桿をぐいと引くと、体重を前に乗せた。滑空艇が風を捕えて加速する。 「よっし! 来やがれえええっ!」 ルオウは船の前方、ある程度離れていて砲撃の届く場所に待機する。 「行きますよ白虎!」 杉野は鞍上から手綱を引き、グリフォンの白虎を加速させる。雲龍に突進すると、挑発するようにその鼻先を通過する。直後――。 ゴウ! と風が湧きおこり、杉野の側方の空気を巻き上げた。 「竜巻ですね……こっちへ来なさい!」 杉野は白虎を反転させると、雲龍の上方に回り込み、その頸筋に矢を撃ち込んだ。サーチボウから放たれた一撃が雲龍を貫通する。 雲龍は咆哮して、怒りに身を持ち上げ、杉野を追って来る。 「こっちです!」 アルバルクは、上空を見渡すと、ひとまず雲龍一体に接近し、サザーには移動と回避に専念させつつ、引き付ける。雲龍は咆哮して口を開けた。 「おおっと」 ばくっと、アルバルクのいた場所を、雲龍の顎が噛み抜いた。 「ルオウ! よろしく頼むぞ!」 「任せとけおっちゃん!」 それからアルバルクは、若干心配なソラの方へ援護に回る。 「依頼で一緒は初めてね。よろしくね、ソフィリア」 ソラにとって龍は空へ近づけてくれる大切な相棒。 「あ、アルバルクさんが来てくれたわ。ソフィリア、行くわよ!」 「ソラ――心配でな」 「ありがとう隊長さん」 「何、仕事はきっちり、てな」 アルバルクは、雲龍の鼻先に閃光練弾を叩き込む。閃光が炸裂し、雲龍は一瞬ひるんだ。雲龍は向きを変え、食らいついてくる。 「よーし来るぞ。ソラ、こっちだ!」 アルバルクとソラは雲龍を引き付け、一時逃げる。 トィミトイは目測で最も近付いていると思われる雲龍に突っ込んだ。高速で切り込むと、ファクタ・カトラスによる一撃をすれ違いざまに叩き込む。離脱すると、雲龍を引き付け、戦艦の前方へ移動していく。 アラタは符を装填すると、雲龍の上から呪縛符を解き放った。黒い大蛇の式が雲龍の翼に絡みつき、バランスを崩したところに眼突鴉を撃ち込んだ。召喚された眼突鴉が雲龍の目を食らい尽くす。 「なるべく敵が纏まった状態ならなおやりやすいんだが……」 接近して来る雲龍に、呪声を叩き込み、鷲獅鳥のウインディを加速させる。 「ウインディ! 援護するタイミング、逃すなよ! バイトアタック!」 ウインディの嘴が雲龍を貫く。直後に手綱を引き、風翼で回避する。距離を取ったところで真空刃を叩き込む。 「もう一つ!」 眼突鴉、真空刃で攻撃。 「奴らの目玉に食らいつけ! 眼突鴉召喚!」 両目を潰された雲龍は匂いを頼りに前進して来る。アラタは手綱を返すと、アヤカシを引き付ける。 「まず敵の注意を飛行船から逸らさないと。頼むよ、ヴァーユ!」 ケイウスは相棒の駿龍に命じると、上下の敵へ高速飛行で向かう。 接近して来る雲龍に、重力の爆音を叩きつける。――ビイイイイン! と竪琴の重低音が鳴り響く。更にソニックブームで追撃すると、雲龍を引き付ける。 「こっちだよ〜」 ケイウスは戦いながら艦艇前方に誘導を行う。 雲龍の突進を駿龍の翼で回避して、手綱を引く。 「見た目の割に結構やるなぁこのモコモコ……」 ルオウは集まって来たアヤカシたちを咆哮で引き付けると、誘導されてきたアヤカシを繋ぎ止めていた。 牽制するようにシュバルツドンナーを操り、空中静止や急反転で大きく移動しない様に旋回して時間を稼ぐ。 「いけるか……」 逃げ道を確保しておき、反転する。 アラタの目突鴉で目を失った雲龍を見つけると、ルオウは咆哮で呼び込み、別のアヤカシの所に誘導すると、すれ違う様にして回避、弐式加速でやり過ごして同士討ちさせた。 「よーし、そろそろいいだろう」 アルバルクは閃光練弾を上空に打ち上げた。 ルオウも、「よし!」と狼煙銃を上に放って砲撃を合図しつつ全力離脱する。隼人で反射速度を上げて急反転でアヤカシの居ない方向を定めて、弐式加速を使い離脱する。 ケイウスは集まった雲龍に宝珠砲を確実に当てる為に重力の爆音を叩きつける。 「よーし砲撃開始!」 戦艦から砲撃が始まった。第一射で雲龍三体を撃ち抜く。それから、艦は180度回頭しつつ、側面の宝珠砲を叩き込んだ。 雲龍に命中する砲弾がこのドラゴンを貫通する。瘴気に還元していくアヤカシ達。 アルバルクはイェニ・スィパーヒでサザーと高速飛行で砲撃に紛れて飛びこみ、撃ち漏らしへヒートバレットを叩き込んだ。 ソラは、砲撃の様子を鞍上から見張っていた。 やがて、残った雲龍が悲鳴を上げて後退していく。 「ソフィリア!」 ソラは加速すると、ソフィリアの素早さを生かして、逃げようとする雲龍の先に回り込む。 雲龍の爪をカッティングで弾いて回避すると、 「雲じゃないなら邪魔よ。ここは空なんだから」 ウィップショットのラティゴパルマですれ違いざまに鞭で打撃を与える。 シナグ・カルペーで布を翻したような舞いでアヤカシを惑わせてみるが、雲龍はソラを無視して逃走した。 だが、トィミトイがファクタ・カトラスで逃げる雲龍を追撃する。切り裂かれた雲龍は瘴気となって霧散した。 「逃がしはしません」 杉野は白虎を駆ると、アヤカシを追撃した。 「白虎! 真空刃!」 白虎は爪を振るうと、真空の刃を撃ち込んだ。雲龍が悲鳴を上げるのに、杉野は矢をつがえると、紅蓮紅葉で連打した。雲龍は瘴気へ還る。 ルオウは、船を守るように待機していたが、砲撃を逃れた雲龍に加速した。船に近づけない様に船から離れて咆哮で引き付けると、タイ捨剣で袈裟切りに叩き斬った。 ケイウスは物理攻撃メインの味方へ剣の舞で支援。竪琴の旋律が激しいリズムを奏でる。皆の活躍で感じた勢いを演奏へ込めて味方を鼓舞する。さらにアヤカシへ奴隷戦士の葛藤を流し込む。さらに重力の爆音で追撃する。 残された雲龍も全て討ちとられ、瘴気に還元した――。 開拓者達は無事に戦艦に帰還した。 「よお、お疲れさん。お見事だったよ。最高のチームワークだったな」 橘は言って、みなの戦果に労を労った。 「さて……魔神が無事に封印されりゃ、嵐の門も無事に通過できるな」 アルバルクは言って、雲海を見つめた。 「向こうには、どんな空が広がっているのか、楽しみ♪」 ソラが言うと、ケイウスは笑み浮かべた。 「みんなお疲れさまでしたね」 それから、ヴァーユの首を撫でてやる。「お疲れ様〜」と。 トィミトイは黙々と武器を手入れしていた。 アラタは望遠鏡で、雲海の動きを観察する。 「さーて、何が待ち受けるかね」 「いよいよ、なのですね」 ルオウの言葉に、杉野は応じて深く息をするのだった。 |