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■オープニング本文 武天国、龍安家が治めていた土地、鳳華……。 「五芒星だよ」 天承城で、鳳華の龍脈の流れを探していた風水師の王良は、羅針盤と地図を見やりながら言った。 「何だって?」 龍安弘秀が不思議そうに王良が書いていた地図の上の印を見やる。橘鉄州斎(iz0008)と芦屋馨(iz0207)、西祥院静奈、白狐も王良の作業を覗き込んでいた。 「たまげたな。五芒星だ」 王良が繰り返して言うのに、弘秀は「だから何なんだ」と問うた。 「鳳華を流れる龍脈の形が、五芒星の形をしているんだよ。二十年前にはそんなこと気付かなかったが……凄いぜ。凄く龍脈が安定していたんだろうな。その、浄化の砂塵が噴き出していた頃」 「それで? 何か分かったのか?」 「ああ」 王良は自分がメモを書き込んだ大きな地図を持ち上げた。 「船はあるか?」 「お前、先に理由を話すのが筋だろう」 「悪い悪い……こう見えても興奮していてな。こんなの見たこと無いからな」 王良はもう一度地図を置くと、天承のある場所を指差した。 「ここが天承だ。見てくれ。この五芒星は西を頭にして、東に向かって寝ている。天承は、西端、つまり、星の頭にあるんだよ」 「中心ではないのか?」 白狐が問うと、王良は首を振った。 「ケモノの主、あんたが親から聞いた昔話がどうだか知らないが、天承は龍脈の西端の星の頭。それは間違いない」 「ふうむ……」 「で、これからどうするんだ」 「大地の精霊が言う龍脈を復活させるには、それぞれの星で止まっているはずの流れを元に戻す必要があるだろう。不厳王(iz0156)は何か手段を用いて、この星の部分の流れを阻害しているはずだ。その大元を取り除けばいい。そうすれば、再び精霊の力は流れ出すだろう。俺の仕事はここまでだ。おたくらの出番だな。ただ、一緒に行っていいか? ちょっと空から鳳華を見てみたいんだ」 「今見えるのは魔の森だけがね」 橘が肩をすくめると、王良は「あ! そうか〜!」と額を叩いた。 「それで……どこから行きますか? とりあえず、最初ですし、安全そうなところがいいですよね」 芦屋は言った。 「安全そうなところなんてあるのかしらねえ……」 静奈は吐息を漏らす。 「では、わしが千里眼で危険度を測ってやろう」 白狐は、自らの意識を鳳華全体に伸ばして行った。 「おっと、東へ向かうのは危険だな。不厳王と接触するかも知れん。外から迂回するか」 白狐は千里眼を伸ばして未来を探る。ぼんやりとではあるが、白狐はそうやって未来の可能性に触れることが出来た。 「どの方角にも……凶悪なものを感じる……駄目じゃ。分からん」 「王良、あんたの意見を聞かせてくれよ」 橘は言った。 「風水的な星の強さは分かる。ここ天承は最も強い力がある星だ。その次が南東の魔の森の中、次が同じく北東の魔の森の中。次が南部の里だった場所。なので……最も弱い場所は、北の白仙山の星と言うことになる」 「ほう……」 白狐は王良の言葉に、吐息した。白仙山と言えば、白狐が住んでいた場所だ。 「では……」 弘秀は、決断した。 「各方面に船の手配をしつつ、まずは本命を北の白仙山へ向ける」 かくして、龍安軍は飛空船と龍騎兵部隊を各地へ飛ばし、現地調査へ向かうとともに、天承の守りを固めるのであった。 開拓者ギルド――。 ギルド同心の森村佳織(iz0287)は、開拓者達に情報を提供していた。 「そうなんですよ〜。何かね、鳳華の龍脈が五芒星の形を描いているって、風水師の王良さんと言う方が付き止めたみたいなんですよ」 「風水師?」 「ですよね。私も、え? て思いました。でも、龍脈に関しては、ある程度の専門家なんですよ。それに、この方、二十年前に天承城の設計に関わったそうなんです。当時は泰国の若手風水師のホープで、建築に風水を取り入れる……くらいのお仕事だったそうですけどね。今はすっかり熟練の方で、老中の真禅様ともお知り合いだそうです。龍安家に王良さんを紹介したのが真禅様だそうです」 「風水師ねえ……」 「精霊の亜紫亜さんが言っていた、龍脈を元に戻す方法ですけど、その手掛かりは、鳳華に他に四つ点在している五芒星の星にある、そう見て間違いはなさそうです。星は、恐らく大地の精霊さんがいた龍脈の中継地点のようなもので、先の言葉から、不厳王が何かの仕掛けをしているはずですね。現地へ向かって下さい。龍安家も準備を整えているみたいです。打ち合わせの上、星の姿を解き明かして、龍脈の流れを元に戻しましょう。それが、亜紫亜さんを安息の眠りにつかせ、浄化の砂塵を復活させる鍵になるはずですから」 かくして、開拓者達は、新たな冒険の途につくことになるのであった。鳳華の地下を走る五芒星の龍脈。それを復活させた時、浄化の砂塵は、再び姿を見せることになるのであろうか。 |
■参加者一覧
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
鈴木 透子(ia5664)
13歳・女・陰
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
不破 颯(ib0495)
25歳・男・弓
将門(ib1770)
25歳・男・サ
成田 光紀(ib1846)
19歳・男・陰
ファムニス・ピサレット(ib5896)
10歳・女・巫
草薙 早矢(ic0072)
21歳・女・弓 |
■リプレイ本文 天承――。 「それにしても……鳳華の龍脈が五芒星ねえ……。何か意味あんのかね」 ルオウ(ia2445)が言うと、鈴木 透子(ia5664)は思案顔で応じた。 「龍脈が五芒星って、凄いですよね。とても偶然とは思えません」 「……でも、山や森の形を変えることが出来る奴なんて、誰もいないぜ? アヤカシか精霊の仕業かね」 「何か、関わっているとは思いますね。山の神、海の神、大地の神、精霊の力は沢山世界に満ちていますから」 そこで、コルリス・フェネストラ(ia9657)が言った。 「その精霊の力を、私たちは借りようとしているわけですが……不厳王の出方が気になりますね」 「あの骸骨!」 憤るルオウを見やりつつ、不破 颯(ib0495)が口を開いた。 「ただ、浄化の砂塵て、興味深いねえ。開拓者なら、探究心を掻き立てられる」 「結界を復活させることが出来れば、その謎を解き明かすこともできますし、不厳王にダメージを与えることも出来ますから」 コルリスの言葉に、不破は「まあねえ」と零した。 「古の結界を呼び覚ますことが、本当に人にとって良いことばかりなのかはともかくだね。精霊は必ずしも味方であるとは思えないところもあるしねえ」 そこで、将門(ib1770)がコルリスに言った。 「コルリスは久しぶりだな。俺はしばらく離れていたからな。随分と押しこまれているじゃないか」 「お久しぶりですね」 コルリスは微笑んだ。 「不厳王は大きく魔の森を展開したか。ここからの逆転は容易じゃなかろうな……。浄化の砂塵とやらで、奴の力を封じることでも出来るのだろうか」 「ケモノの主、白狐様の発案ではあるのですが……」 「ああ、報告書には目を通してきたがな。不厳王に対抗するために、精霊の力を借りねばならぬとは……いっそ開拓者全員で魔の森へ人海戦術で押し寄せたら何とかなりそうな気もしないではないが」 将門も無茶なことを言った。 「ま、それも可能なら面白い案ではあるね」 成田 光紀(ib1846)は言って、また龍脈に関して言葉を投げた。 「龍脈に関しては興味が尽きないところではある。透子君の言うように、偶然とは思えない。と言って、では誰かが……というのは考えられないからね。神の手が星々を作ったとしても、では天地の精霊が世界を作ったか……とか、そんなことを考えるのは俺たちの仕事ではないしね」 成田は肩をすくめた。 「ところで……白仙山の方ですが、また大穴が開いているようですが、同じように遺跡があるのでしょうか? あ、廃墟でしたか」 ファムニス・ピサレット(ib5896)が言うと、不破が「そうだねえ」と応じる。 「そこは行ってみるしかないのだろうが、何があるのだろうねえ」 「不厳王がまた先回りしているのでしょうか……絶対関わってきますよね。だって、結界が復活したら自分にとって不利になりますよね? 精霊力って、アヤカシにとっては敵みたいなものでしょう? 私たちが使う精霊術も、アヤカシを倒す強力なものがありますよね」 「どうなのかねえ。まあそれを言ったら陰陽師はどうなるのかねえ……と思わんでもないが」 「もしも、龍脈の謎を解くことが、アヤカシを滅ぼすことにつながるなら、私は持てる限りの力を尽くすことにする」 言ったのは篠崎早矢(ic0072)。篠崎には目標が出来た。村の敵に勝利した篠崎の新たな目標は、この世界からアヤカシの根源を討つ事に。まあ、気が変わって隠居生活……ということもあり得るようだが、まだ燃え尽きてはいなかった。 「開拓稼業も因果な商売ですね。私たちは世界の謎に触れたりしながら、それがまるで運命か神の手に導かれるように進んでいかなくてはならない。私は……答えを見つけることが出来るでしょうか」 やがて、開拓者達は、瓦礫の城の一室に到着した。龍安弘秀は卓上の地図とにらめっこをしていた。 「弘秀様」 コルリスが声を掛けると、弘秀は顔を上げた。 「よお。みんな。着いたのか」 「はい。今度は白仙山へ行くことになったようですね」 「そうだな……」 弘秀は開拓者達を招き入れると、地図を見せた。 「白仙山はここだ。お前は行ったことがあったかな」 「そうですね……」 コルリスは頷き、一つ提案した。 「弘秀様。白仙山へは、可能な限りの飛空船を同行させて頂きたく思います。百名ほど動員できればと思います。不厳王が先回りしていることを考えますと、それくらいは必要ではないでしょうか」 「ふうむ……」 弘秀は少し考えて、頷いた。 「分かった。では、八隻ほど向かわせよう。それで百名は越えるだろう」 「ありがとうございます」 「ああ……それにしても、一点突破だな。不厳王が仕掛けているもの……気をつけて行けよ」 開拓者達は出発した。 不破は自分の権限がある飛空船を持って来ていて、そこに龍安兵を乗せて北へ向かっていた。このままいけば数時間で到着するだろう。 「ちょっとした空の旅だねえ。敵が出ないことを祈るだけだが」 自ら舵を取りながら、他の飛空船を見やる。 飛空船は方陣を組んで移動している。不破の船は右翼にいた。 やがて、白仙山が見えて来る。不破は舵を切った。船を降下させていく。 ――白仙山の大穴。 飛空船で到着した開拓者達と龍安兵らは、続々と大穴周辺の魔の森へロープで降下していく。 「よーし行くぜい!」 ルオウは松明を持つと、先陣切って穴に入って行った。以前真沙羅姫が出てきたことを考えると、それ相応の攻撃があってもおかしくは無い。 開拓者達は心して進んでいく。 コオオオオオ……。 コオオオオオオオオオオオオオオ……。 コオオオオオオオオオオオオ……!!! 「彼ら」は目を覚ました。かつて鳳華の七魔将と呼ばれた、アヤカシの将ら、そのゾンビである。不厳王は、七魔将を番人として、ここを守らせていた。 闇の中に、不気味な緑色の瘴気の燐光が漂っている。その中心に、巨大な柱が立っていた。下の方が直径二、三メートル以上。上に視線を向けるにつれて太くなっていく。地面から見える高さは十メートルはあるであろうか。それが、地面の中にも突き刺さっている。柱は人骨らしきものの寄せ集めで出来ていて、瘴気を吐きだしながら、全体が呼吸しているように脈動していた。この柱こそ、不厳王が打ち込んだ「瘴気の楔」である。地面の中に、まだ深々と打ち込まれているのだ。 その巨大柱から、緑色の輝く鎖が七つ伸びている。鎖の先には、七魔将が繋がれていて、彼らは戦闘態勢を取りつつあった。 「人間どもが来る」 「かつて、我々を滅ぼした人間どもが」 「我々がここにいるのは……あの方に力を与えられたから……」 「忌まわしい……記憶が蘇ってくる……この世から消えたあの痛みが……まだ残っている。あの方はなぜこんな記憶まで再生したのか」 七魔将にとって、復活再生は苦痛であった。理屈の上から言えば同じアヤカシが生き返ることはできない。不厳王は新しいアヤカシとしてこの七人を生み出し、七魔将の記憶を与えたに過ぎない。それは人間に敗れた痛々しい記憶であった。そんなことをして何が楽しいのかと思ってしまうが……不厳王は大アヤカシであり、その思考は常人には理解できない。 「いずれにせよ、我々は呪縛に侵されている。あの方の意思に逆らうことはできない。人間どもが近付いてくるなら、全員滅ぼすまでだ」 成田は最後尾にあって、夜光虫を飛ばしながら警戒に当たっていた。 「また、例の黄金の砂丘があるのかね」 「どうでしょう。ただ、強い精霊力と瘴気を感じます」 真なる水晶の瞳を身に付けた透子は応えた。 「みなさん、いかがですか」 コルリスは、戻ってきた龍安兵に尋ねた。 「ここも凄い広さですね。いやはや、驚きです」 「敵はいるとして、先回りしているのかねえ」 不破はカンテラをかざして、将門は松明で前方を照らした。 「今のところ、アヤカシどころか、ネズミにも遭遇しないな」 ファムニスはドラコアーテムの先にくくりつけた松明をかざす。 「ここはちょっと寒いですね……」 篠崎は夜空に乗って戻ってきた。何騎かの騎兵を連れている。龍安軍も霊騎ごと騎兵を下ろしたのだ。 「おい!」 その時だった。先行していたルオウが戻ってきた。 「何かあるぜ! 向こうで光ってるんだ! 馬鹿でかい!」 ルオウは瘴気の楔を発見したのだった。 コルリスは鏡弦を使った。弦を弾く。 「……二体……」 同じく弓術士たちが探査して、楔周辺をスキャンする。そうして、敵は全部で十体近くはいることが判明した。 「ここは釣野伏せでいきましょう」 コルリスは一部の兵を集めて言った。 「私が敵を連れてきますから、みなさんは伏兵として待機願います」 「承知いたしました!」 「よお将門、どっちから行く?」 ルオウの問いに、将門は、 「では俺は右から行こう。貴公は左から行け」 ルオウと将門は、前進していく。 「あれは……」 透子は見張った。どこかで見た記憶がある。ぼろぼろの死骸ライオンだが、その威圧。記憶が蘇る。 「あれは鳳華の魔将だった天壬王……?」 巨大な獣王のゾンビが突進してくる。瘴気を纏っている。 「あれは……在天奉閻!?」 コルリスは前進してくるアヤカシの巨人に驚愕した。竜神と呼ばれた鳳華のアヤカシボスだった。 ルオウと将門は、巨大な鬼と、骸骨道士と対峙していた。 「んだこいつら! 番犬か! 邪魔すんな!」 ルオウはヴァイス・シュベールトを竜巻の刃で刀に同化させる。そこから蜻蛉、剣気で四連続攻撃を叩き込む。煌めく刀身が振り下ろされ、刀が跳ね上がって横に飛び、突き、そしてさらに上段に跳ね上がった。骸天羅王の胴体が裂ける。反撃の瘴気が爆発するが、ルオウはものともせずに四連撃を打ちこんだ。 「だだだだだだだだだだあ!」 骸天羅王はばらばらになって瘴気に還った。 将門は侯太天鬼の剛腕を斬り落とした。大鬼の蛮刀が転がる。 「柳生……無明剣!」 ぶんっ……! と刀身が残像を残して加速する。天鬼の足が飛ぶ。が、直後に足が生えてきた。 「む……」 「我が一撃……受けてみよ!」 侯太天鬼は思念で蛮刀を取り寄せると、思い切り叩きつけた。将門はかわした。 「でやあ!」 ルオウは加速し、タイ捨剣を連発した。侯太天鬼は足を飛ばされた。しかしそこから、この鬼は腕から骨の弾丸を連射した。 ルオウが受け止め、将門が走る。将門は柳生無明剣で大鬼の頭を刎ね飛ばした。侯太天鬼は瘴気に還っていく。 コルリスは月涙、響鳴弓の合成射撃を連射する。 「まさか在天奉閻とは……」 後退しつつ、伏兵のところへ引き付ける。在天奉閻は怨念の声を漏らしながら、光弾を撃ちながら前進してくる。その身に突き刺さる矢が、激しく肉体を削っていく。 「今だ! 撃て!」 釣りだされた在天奉閻に、一斉攻撃が打ち込まれる。 ――ガオオオオオオオ! 在天奉閻は爆発して光弾を撒き散らして、消滅した。 いそいそとファムニスが仲間、兵士達の回復に回る。 「ふう……みなさん大変ですねえ。でももっと大変かと思っていました……コルリスさん大丈夫ですか?」 「はい。ありがとうございます。一時はどうなる事かと思いましたが……鳳華の七魔将とは戦ったことがあります」 「そうなのですね」 ファムニスは直撃を受けたコルリスの脇腹に手を当て、閃癒を掛けておく。ついでに兵士達も回復させる。 不破は黒太天に矢を連射する。黒太天はぼろぼろになりながらも蟲の集団の式を放ってきたが、不破は後退しながら回避し、スキルフルで矢を連続装填して打ち込んでいく。 ドウ――! ドウ――! ドウ――! と、黒太天は衝撃にのけ反り、遂には崩れ落ちていく。瘴気に還った。 透子は、巴で回避しながら、結界呪符を張り、天壬王の鎖を壁に巻きつけていく。だが天壬王はどこまでも追いかけて来る。 「やっ、と!」 透子は結界呪符を展開。 逃げる透子を追って、鎖が壁に巻きついて行く。 「でりゃあああああ!」 ルオウと将門が突進してくる。天壬王を叩き斬った。かつての獣王は瘴気に還っていく。 篠崎は、騎馬弓兵たちと、天幽を包囲して矢を打ち込んでいた。かつての幽霊王は、瘴気弾を連射していたが、篠崎らは駆けまわりながら回避して、鞍上から巧みな技で相棒を操り、矢を正確に叩き込んでいく。 巨大な幽霊王は、オオオオオオ……と瘴気を吐きだし、「人間がここまで強くなっているとは……」と零した。 「止めだ!」 篠崎らは天幽の頭部を撃ち貫いた。天幽はぐらり……と倒れ、瘴気となって霧散した。 「残るはあれ一人か……」 成田は後方にあって、兵を送り込むタイミングを図っていた。 幻術使いの天晋禅は、巨大な亡霊武者の大軍を出現させたが、成田は一斉射撃を指示した。亡霊武者の幻影は消滅し、数十発の矢が天晋禅に突き刺さった。 ファムニスが万が一に備えて、待機する。 「幻術使いですね……」 「鳳華の七魔将……あなたで最後ですね」 コルリスは矢を番えた。 「ふっふっふ……我々を倒したところで、無駄なこと……代償は大きいぞ。お前たちは、犠牲を選ばなくてはならない……」 「撃て」 成田は言った。 開拓者たちも全攻撃を叩き込む。全弾直撃を受けて、天晋禅は笑声を残して消滅した。 「何でしょうこれは……」 透子は、楔を見上げていた。 「どうやら、これが不厳王が作り出した、龍脈の流れを食い止めているものか」 成田は、煙管で巨大な楔を叩いた。下を見る。 「地面に打ちこまれているようだな。これは……全員で攻撃か?」 「瘴気の塊みたいです」 透子は言った。 結局、話し合いの末、これは壊すことになった。 開拓者たちと兵士達は、一斉に攻撃を仕掛けた。撃って撃って撃ちまくり、殴って殴って殴りまくった。 やがて、楔は激しく脈動し、最後に、ひび割れたような咆哮を上げて、爆発した。 直後――。 入れ違いに大地から黄金の光が立ち上った。 光の中から、大地の精霊「亜紫亜」が上がってきた。 「あなたたちは……ありがとう……痛みが少し消えた……」 「これで1つ目かぁ。いや〜流れが良くなった気が……するかい?」 不破が言うと、亜紫亜は不破に祝福の粒子を投げた。 「あと4つか」 将門は呟く。 (……とはいえ不厳王は一度、浄化の砂塵を封じている。封印を解けば解決って訳にもいかんだろうな) 「亜紫亜さん、また会えてよかった。あの、教えて欲しいんですけど、アヤカシたちはなぜ貴方たちを起こそうとしているのですか」 透子は問うた。 「彼らは私が龍脈に定着しているのが気に入らないのでしょう。龍脈が安定していれば、そこに彼らが入り込む余地はありませんからね……。ですが、不厳王は……凄まじい力を持っています……龍脈を止める程の力を……」 そして、亜紫亜は束の間の眠りについた。光の中へ沈んでいく。 開拓者達は、亜紫亜の言葉を思い起こし、光の中にしばし佇むのだった。 |