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■オープニング本文 天儀本島、武天国。龍安家の治める土地、鳳華――。 首都の天承で龍安家から依頼の詳細を聞いた開拓者たちは、鳳華の北方にある戦闘地域に向かう。戦闘地域というのは、ここ鳳華は、東の大樹海から出没するアヤカシとの慢性的な戦闘状態にあり、域内は実質的に戦争状態にあった。最前線では、どこかで兵士や傭兵たちがアヤカシと戦っている。 ここはそんな戦線の一つ。夕凪高地と言う森林地帯であった。高地には砦が幾つか築かれており、東から侵入してくるアヤカシに対していた。西へ抜ければ村や集落が点在する人界とアヤカシ軍との境界線でもあった。 今回開拓者たちが受けた依頼は、激しさを増す夕凪高地における戦いへの助勢であった。高地はおよそ300メートル四方程度で、ほとんど森に覆われている。東の一部がアヤカシ軍の陣となって切り開かれている。 西端に龍安軍主力の夕凪砦、高地のほぼ真ん中のラインに沿って北、中央部、南にもそれぞれ砦が築かれている。夕凪砦は頑丈な石造りで、少々のアヤカシの攻撃に耐えうる防備を持っていた。北と中央、南の砦は、頑丈ではあるが木製の丸太作りであった。 さらに三つの砦の東には、龍安軍が三重の防護壁を築いていた。防護壁は砦に近い方から土嚢、丸太の壁、木の柵となっていた。これまで龍安軍はこの防壁を盾にアヤカシ戦力を叩いていた。 それが一変するのは最近になってのことである。比較的弱小な鬼や獣アヤカシの攻撃が一変した。屈強で知能も高いアヤカシ兵士が姿を見せ、丸い巨岩アヤカシの攻撃によって防護壁が次々と破壊されていくのである。 夕凪砦に入った開拓者たちは、砦を預かるサムライ、シャーリィ・如月という女サムライと見える。シャーリィはジルべリア人とのハーフで見た目は若く金髪の美しい娘だが、荒ぶるサムライや傭兵たちを統率する冷徹な女戦士であった。 「まったく‥‥アヤカシの戦も厄介なことになってきた」 開拓者たちを前に、シャーリィは卓上の地図に目を落とした。東に三つのアヤカシの陣。防護壁を突き破る勢いで迫っている。 「あたしも長いことここで戦の指揮を執っているけど、あんな化け物は滅多にお目にかかれないね」 「というと?」 「巨岩アヤカシさ」 巨岩アヤカシは直径一メートルくらいの大きさで、防護壁に激突しては爆発で壁を吹き飛ばしていくのだという。 「最近領内で爆弾アヤカシが出現したって聞いたけど、それと似たもんかねえ。でもあんなのが大挙して転がり込んできたら前の三つの砦はひとたまりもないね」 巨岩アヤカシの自爆攻撃は防護壁などたやすく吹き飛ばしてしまう。志体持ちでも生身では危ないかもしれないという。 「ま、もっと厄介なのは、その後ろに控えているアヤカシ兵士だろう。そっちの方が脅威なのはこれまでの報告で分かっている」 シノビの調査によると、アヤカシの陣地には随時東から巨岩アヤカシが補填されており、そこにはアヤカシ兵士が待機しており、さらに人型アヤカシが二体いるという。それぞれ“翠天”、“王虎”という名前だけは分かっている。 今のところアヤカシ兵士は巨岩アヤカシを転がして壁の破壊を着々と進めている。壁が崩壊すればアヤカシ兵士は砦への攻撃を開始するだろう。それはもう時間の問題であろうと思われる。 中央の三つの砦から防壁を守るのは今のところ龍安家に雇われた約50人の傭兵たちである。傭兵を統率しているのは、何度か開拓者と戦ったことのある男――「雷牙」という傭兵たちの主であった。 「これ以上あの岩を近づけるなよ! 全く厄介な相手はいつものことだが、ここが踏ん張り時だ!」 雷牙は最前線に立って、部下たちを鼓舞する。とにかく巨岩アヤカシに矢を浴びせかける。 二人の人型アヤカシについては、緑色の戦装束に身を包んだ男の姿をした翠天が総大将であった。 「龍安軍の動きは」 翠天の淡々とした声に、王虎はお辞儀する。王虎は金髪の美女で、頑丈な鎧に身を包んでいた。 「相変わらず、岩を破壊するのにきゅうきゅうとしているようです。我々も本格的に陣を敷いたことで、龍安の者たちも手詰まり感があるようですね」 「ふむ‥‥それにしても、緑茂の炎羅も最初は勝っていたが最後に敗れたと聞く。手綱を緩めるな。間断ない攻撃によって敵を疲弊させ、龍安兵が力尽きたところで一斉に打って出る」 「は‥‥攻撃を続行します。打って出るのが楽しみですね」 王虎は口元をかすかに歪める。 翠天は総攻撃のタイミングを図っていた。 |
■参加者一覧
鈴梅雛(ia0116)
12歳・女・巫
紫夾院 麗羽(ia0290)
19歳・女・サ
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
柳生 右京(ia0970)
25歳・男・サ
輝夜(ia1150)
15歳・女・サ
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
幻斗(ia3320)
16歳・男・志
荒井一徹(ia4274)
21歳・男・サ
白蛇(ia5337)
12歳・女・シ
瀧鷲 漸(ia8176)
25歳・女・サ |
■リプレイ本文 砦の上に立つ鈴梅雛(ia0116)は、なびく黒髪を押さえると仲間たちを振り返った。 「すごい、大軍です‥‥今回も」 輝夜(ia1150)は頷いた。輝夜はいつも通り考えをまとめていた。 「やれやれ、この間の緑茂の合戦も大変だったというのに‥‥。アヤカシも待ってはくれぬようだな。ルオウ(ia2445)、よろしく頼む。ここの戦いではお前の方に一日も二日も長があるようだ」 女サムライ紫夾院麗羽(ia0290)は言って、友人のルオウに呼び掛けた。 熱血の赤毛のルオウ少年は、にかっと笑う。 「任せておきな麗羽の姉ちゃん! て、俺もここに来んの初めてなんだけどな! しっかしアヤカシにもいろんな奴がいるな。爆弾アヤカシとはねえ‥‥」 「厄介な相手だ。何しろ、砦の防備をほとんど吹き飛ばされたのだ」 龍安軍を預かるシャーリィが進み出てくる。シャーリィは形の良い眉を寄せると、開拓者たちを振り仰ぐ。 「策があると聞いたが」 「おお、ぜひ聞きたいねえ。見た顔もあるようだしな」 傭兵隊長の偉丈夫、雷牙は開拓者たちの顔を見渡して白い歯を見せた。 「久しいな雷牙よ。緑茂での合戦以来か」 輝夜は顔を上げると、雷牙に言葉を投げる。雷牙は豪快に笑う。 「腕を上げたようだなお嬢ちゃん。見違えたぜ」 「汝もな」 「顔見知りか」 シャーリィの問いに雷牙は笑った。 「まあな、何度か矛を並べて戦ったことがある。それはさて置き、策とやらを聞かせてくれよ」 「うむ‥‥」 輝夜は言葉を紡ぎ出した。 「このまま手をこまねいていても仕方があるまい。少数での攻撃で何とかなるような相手なら、今のような状況にはなっておらぬじゃろう? ならばここは思い切った手を打つしかないのではないのか?」 「聞こう」 前線の3砦には、サムライ1人、志士2人、泰拳士2人、弓術士5人、巫女1人、陰陽師1人をそれぞれ残す。これを指揮するのは白蛇(ia5337)、幻斗(ia3320)、雷牙。夕凪砦にはサムライ5人と巫女1人、陰陽師1人が残ってシャーリーが指揮をとる。 攻撃部隊は北側の巨岩アヤカシの進攻ルートの更に北側から迂回し、王虎の部隊に敵の横手から奇襲を掛ける。これを殲滅後、中央の翠天の部隊へ突入。 三つの砦の防衛部隊は巨岩アヤカシの迎撃を行うが、もし後方のアヤカシ兵達が前進してくるようならば、防戦しつつ無理をしない程度のタイミングで夕凪砦に撤退する。その際には呼子笛等で他の砦への呼びかけを行い、孤立しないように同時に後退する。 逆に敵の部隊が攻撃部隊の方へと向かうようならば、敵の背後を衝く形で攻撃を加える。 王虎を討伐の後には、アヤカシ兵を掃討してから翠天の部隊へ向かうが、砦の撤退合図があるようならば、周囲の状況を見て必要な龍安兵だけを残し敵部隊の背後から攻撃をかける‥‥。 輝夜はそこまで話して、言葉を切った。 「確かに、思い切った手ではあるな」 シャーリィは顎をつまんで思案顔を浮かべる。慎重に防備を敷いていたシャーリィは、打って出るのに今一つ決断を欠いた。 「砦を守る以外の兵を全て北の王虎にぶつけるのか」 「そうじゃ」 輝夜の提案を龍安家家臣のシノビ白蛇が後押しする。 「このまま守っていても‥‥いずれ、翠天や王虎と‥‥正面からぶつかることに‥‥なるよ‥‥」 おどおどと白蛇は提案するが、シャーリィは葛藤の末に開拓者たちの策を受け入れる。 「雷牙には南の砦を守ってもらい‥‥シャーリィには中央の指揮か‥‥後方の夕凪砦から適時支援を行ってくれると‥‥いいんだけど。あと、シノビ達には伝令と監視をお願い‥‥」 「では、私はこの砦に回り支援のタイミングを図っておこう。前線はお前たちに任せる。北の砦には有志で守りに就くのか」 「北の砦には僭越ながら拙者も回ります」 幻斗は言って、お辞儀する。 「そうか、よろしく頼む」 シャーリィは頷くと、勢い拳を打ち合わせた。方針が決すると迷いはなかった。 「ではアヤカシの先手を取って打って出る。攻撃部隊に向かう者たちは頼むぞ」 「相手の方が数が多い上に玩具付きとはね。お帰り頂くしかないわね」 葛切カズラ(ia0725)の言葉に柳生右京(ia0970)は頷く。 「アヤカシとは実に興味深いものだな‥‥興味の種は尽きぬ。北の王虎か‥‥面白い相手であれば良いがな」 シャーリィは柳生が身にまとう剣気にざわりと肌が泡立った。これほどの男が龍安家の家臣になったか‥‥と頼もしくもあった。 「さあて、いっちょ暴れてやりますか」 荒井一徹(ia4274)はグレートソードに手をかけると、気持ちを高ぶらせていく。いまだ戦ったことのない人型アヤカシとはいかなるものか‥‥楽しみにしていた。 「不利な状況からの大逆転劇ってのは燃えるからな。一か八かの賭け、やってみようではないか」 瀧鷲漸(ia8176)は言って、兜をかぶった。敵は強靭な人型アヤカシと推測される。だが自分は一人ではない。漸は東の空に真紅の瞳を向ける。 北の砦の防備に就いた幻斗。 「切迫してますね‥‥」 と呟く口から洩れる息が白いものに変わる。厳しい寒さが鳳華にも訪れていた。 「岩石アヤカシが来るぞ!」 「来ましたか‥‥ではみなさん、何としてもここは持ちこたえませんと」 「行くぞ開拓者! 岩石が壁を吹っ飛ばす前に叩く!」 「無茶のし過ぎはしないで下さいね‥‥って言える状況じゃ無いですね」 苦笑しつつ幻斗は前線に出る。 傭兵たちとともに岩石アヤカシに立ち向かう。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‥‥! と岩の塊が、確かに10個ほど迫ってくる。 「アヤカシを食い止めろ!」 「何としてもこれ以上は近づけん!」 幻斗も駆け出すと、岩石アヤカシに突進した。 「拙者の攻撃がどこまで通じるかは分かりませんが‥‥」 二刀を岩石に叩きつける幻斗。 ――ガキイイイイイン! と刀身が岩を破壊するが、アヤカシはそのまま突進していく。幻斗は全身を使ってアヤカシの突進を受け止める。 傭兵たちも体を張って岩石を受け止めていた。 ぐぐ‥‥と幻斗はアヤカシを押し返しながら、踏みとどまる。 「これ以上は、進ませんよ‥‥」 岩石アヤカシとの力比べ。遂に岩石は屈したか、ゴロゴロと後退して幻斗を睨みつける。ぎろりと、複数の目が開いて幻斗を見つめる。 だが味方は全てを止めるには至らず。幾つかの岩石が壁に激突して爆発した。 「のんびり構えている時間は無いようですね」 幻斗は打ち掛かった。動きの鈍い岩石アヤカシは一方的に打ちのめされるばかりで、反撃らしい反撃は無い。 ――と、幻斗の一撃が命中した瞬間、岩アヤカシは自爆して粉々に吹き飛んだ。爆発の衝撃を受けながら、幻斗は腕で顔を覆った。 「こちらの成果は‥‥」 幻斗は、吹き飛ばされた壁を見やり、敵の動きに警戒する。アヤカシに全軍で突進されたらこちらは持たない可能性が高い。 中央の砦を守る白蛇は、戦場を早駆で駆け回り、槍で岩石アヤカシを受け止める。 「雑賀君‥‥今のうちに、僕が持ちこたえている間に止めを‥‥」 白蛇は傭兵の若い泰拳士に言って、岩石を攻撃するように言う。 「白蛇殿はすごいですね、そんな小さな体なのに、すでにこれだけの力を‥‥」 泰拳士の雑賀は白蛇が食い止めている岩石に連打を加えていく。 拳と蹴りで岩が砕け散る。 岩石アヤカシは苛立たしげな咆哮を上げると、白蛇を押すが、びくともしない。 逆に白蛇はアヤカシを押し返すと、少し後ろへ吹き飛ばした。 「しぶとい奴だ! だが、これならどうだ!」 泰拳士の体が赤く染まる。泰練気法壱。うなりを上げる泰拳士の拳が岩石アヤカシを貫通する。 そして白蛇は加速をつけて飛び上がると、上方から槍を叩き込んだ。槍が岩を貫通。アヤカシは悲鳴を上げると、黒い塊となって崩れ落ちると、瘴気に還元した。 白蛇はその後も戦場を駆け回って岩石の突進を食い止める。だが完全に食い止めるのは不可能で、残された土嚢は吹き飛ばされることになる。 南砦の雷牙は砕け散った土嚢を見やり吐息する。 「さすがに全部守るのは無理があったか‥‥さて、アヤカシがどう出るかだが。その前にあいつらが決めてくれるのを信じるしかないわけだが」 雷牙は部下たちに警戒を怠ることなく伝えると、アヤカシの出方を探る。 ‥‥アヤカシ軍北の陣。 王虎は部下のアヤカシ兵士が戻ってくるのを待っていた。砦の防備は吹けば飛ぶようなものしか残っていない。岩石アヤカシであと何度か叩いておけば、崩れ去るだろう。 斥候に出ていたアヤカシ兵士は戻ってくると、壁が崩壊したことを告げる。 「(壁! 崩れた!)」 アヤカシ兵士はそう繰り返して、興奮気味に喚いている。 王虎の口許には笑みが広がっていく。 「よし‥‥これで邪魔な壁は消えた。一気に砦を落とす‥‥」 その時である――北の方角から、突如として開拓者たちと龍安軍が突撃してきたのは。 「目指すは王虎だ‥‥行くぞ‥‥!」 柳生は先陣を切って突撃する。長大な斬馬刀を担いでいる。 「柳生殿に続け!」 龍安軍の兵士たちは鬨の声を上げて突撃していく。 雛も味方の巫女たちと遅れまいと懸命に走る。 「大将首は癪だが譲ろう。今回は貸しだからな」 麗羽は言ってルオウに笑みを向ける。 「任せとけよ麗羽! ま、この貸しはいずれ大々的に払ってもらうぜ!」 「言うなルオウ」 「まあそうだなあ! とれたてみったんジュースで勘弁してやるぜ!」 ルオウは言ってにかっと笑う。 「さあてどんなものかしらねえ‥‥」 カズラは焙烙玉と呪殺符を構えて走る。王虎の強さはいかほどであろうか‥‥火力が足りないのだ、もっと威力と衝撃を、と常日頃から願うカズラ。開拓者ギルド屈指の使い手であるのだが、自分の力はまだ足りないと思う。 「策は嵌った。後はどこまでアヤカシどもの思惑を越えることができるかじゃ。それもまずは王虎を倒すことにかかっておる」 輝夜は言って真剣なまなざしで前を見つめる。 「行くぜ行くぜ行くぜえ!」 一徹はグレートソードを引き抜くと、柳生と肩を並べて突進する。 漸もまた前に出る。狙うは王虎。 この奇襲攻撃にアヤカシ達は全く不意を突かれる。 龍安兵と開拓者たちは押し寄せる波濤となってアヤカシ軍の側面から激突した。 「何だ!? いつの間に!」 王虎は兜をかぶると、大剣を手に取り戦場に向かう。混乱しているアヤカシ兵士を怒鳴りつける。 難しい命令が出来るわけではないので王虎は苛立たしげに兵士を捕まえると、ぶん殴って命令する。 「(人間どもだ! 押し返せ!)」 王虎は兵士を怒鳴りつけながら、最前線に出てくる。 これあるを予期してはいなかったが、まさか自ら最前線に出てくるとは思っていなかったが、開拓者たちは目立つ王虎の姿を捉える。 「あれが王虎らしいな‥‥行けルオウ。雑魚は任せておけ。王虎は譲ってやるぞ」 麗羽は背中合わせのルオウに言うと、アヤカシ兵士に斬りかかっていく。 「よし! 行くぜアヤカシ首領! 待ってろよ!」 ルオウは王虎目がけて走る。 雛、カズラ、柳生、輝夜、一徹、漸が時を同じくして駆けつける。 王虎は凄まじい一撃で龍安兵を粉砕する。斬り合った志士が一撃で瀕死級のダメージを受ける。 「馬鹿め! 策を弄しおって! この私を倒せると思うな!」 そこで、凄絶な剣気を感じて、王虎はとっさに身構える。開拓者の先頭に立つ柳生と輝夜から放たれる剣気は、王虎をして驚かせる。 「貴様らは‥‥龍安兵ではないな」 「‥‥貴様がこの砦の首領のようだな。一応、名前を聞いておこうか」 「わが名は王虎。鳳華のアヤカシの将よ。貴様らは一体‥‥」 「私は柳生右京。刻があれば貴様とは一騎打ちといきたい所だが、生憎と余裕はなくてな‥‥早々に片を付けさせて貰うぞ」 「我らは開拓者じゃ。汝の首、もらいうけるぞ」 輝夜を睨みつける王虎。 「‥‥ほう、緑茂で炎羅を倒した連中か。面白い。多数で掛かれば私を倒せると思ったか」 「確かに貴様らアヤカシの力は強力だ。タイマンでは勝負にならんさ。だが、私には百戦錬磨の仲間がいる。その力をみせてやるよ」 漸は王虎と火花を散らす。 「よお、楽しませてくれよな? 人型アヤカシの力って奴を見せてもらいたくてよ」 一徹は王虎を見やりながら笑みを浮かべる。 そして、直後に大気が爆発した。ルオウ、柳生、輝夜、一徹、漸が一斉に王虎に突撃する。 雛は神楽舞・攻を舞う。巫女の力で攻撃力が増す。 果たして――重武装の王虎はその外見にふさわしく開拓者たちの攻撃を受け止めた。――キイイイイイン! と開拓者たちの刀剣が弾かれる。 ぎりぎり‥‥と開拓者たちは刃を押したが、王虎は不敵な笑みを浮かべてそれを押し戻す。 「秩序にして悪なる独蛇よ、我が意に従いその威を揮え!」 カズラは隷役使用で蛇神を連発、独眼の大蛇が王虎に牙を剥く。蛇神は王虎を貫通するが、このアヤカシ首領は怯む様子も見せずに大剣を振るう。 直撃を受けた柳生、が踏みとどまる。王虎はやや驚いた様子で目を見張る。 「‥‥強いな、私も全力を以て当たらねばなるまい」 柳生はスキルフルの一撃を見舞う。受け止める王虎。 輝夜とルオウの全力の攻撃を跳ね返す王虎。一徹と漸は吹き飛ばされた。 「いいねぇいいねぇ!! あんたとは思いっきり楽しめそうだ!」 一徹は立ち上がると、雄たけびを上げて王虎に斬りかかっていく。 「‥‥我が一撃を‥‥受けろ!」 漸は両断剣で打ち掛かる。 カズラがスキル全開で式を叩きつける。 だがしかし、開拓者たちの猛攻を王虎は耐える。 「ぬう‥‥!」 龍安軍はこちらに大きな戦力を割いた。アヤカシ兵士は次々と打ち取られていく。王虎は開拓者を相手にしながら戦況を見て焦る。 「このままでは‥‥不味いな」 その時である。南から翠天率いる中央のアヤカシ部隊が姿を見せる。 白蛇が早駆でやってくる。 「南のアヤカシは雷牙とシャーリィが食い止めているよ‥‥中央の翠天はきみたちの方へ動き出してね‥‥」 白蛇は翠天の背後を突くために幻斗と連携して攻撃を仕掛けているという。 「北への奇襲に気付かれたか‥‥」 輝夜はうなった。砦の兵が減ったことを看破してのことであろうと推測する。実際その通りで、翠天はぎりぎりのタイミングで開拓者たちの動きを知る。 翠天の軍勢は幻斗率いる龍安軍の攻撃を受けながらなだれ込んでくる。戦場がまた混乱に包まれると、その間隙を縫って王虎は撤退する。 「宴の続きは預けよう。次を楽しみにしている」 それから柳生は仲間たちを振り仰ぐ。 「南が苦労しているだろう。救援がいるな」 そして柳生と白蛇は龍安軍の一部を率いて南へ向かう。交戦していた雷牙とシャーリィを救って、アヤカシを退ける。 残る開拓者たちはそのまま翠天の軍勢と睨み合う。翠天はいったん後退して軍を立て直す。龍安軍も態勢を立て直して、砦まで撤退したのであった。 |