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■オープニング本文 天儀本島、武天国。龍安家の治める土地、鳳華――。 ここ鳳華はアヤカシとの戦が絶えぬ土地だ。東は魔の森に覆われており、いわゆる東の大樹海から出没するアヤカシとは慢性的な戦闘状態にあった。 そんな鳳華の町や都市は武装していることが多いが、戦いを生業にする傭兵が集まって出来たいわゆる傭兵町があった。流れ者の傭兵たちが集まってできた町は、鳳華ではそれなりの数があり、龍安家から公認されていた。統治には一応武官が当たっているが、一般人はほとんどおらず、実質的には砦などと同じ役割を果たしている。実際にアヤカシの攻撃対象となることもしばしばであり、必ずしも安全とは言えない。 ――ここは「北伯芳」という傭兵町。町の中は無造作に建てられた家屋が建ち並んでおり、酒場や鍛冶場、賭博場などに一部の傭兵たちがたむろしていたが、通りを歩く傭兵たちの目は鋭い。誰もが武装していて、空気は張り詰めていた。 その時である。空中に可視の瘴気の渦が立ち込めてきて、次々と人型を形成する。アヤカシの誕生である。その数は‥‥多数! 傭兵たちは白昼町中に降り立って咆哮するアヤカシ兵士を見出して、一様に武器をとる。鐘が打ち鳴らされ、傭兵たちは戦闘態勢に入る。 「敵襲! 敵襲だ! 町の中心地にアヤカシ兵士の攻撃!」 アヤカシ兵士の中心に、ぼろぼろのローブをまとった青白い肌の人型アヤカシが出現する。 「ふふ‥‥ははは‥‥怨嗟が、嘆きが‥‥苦痛が俺様を呼び寄せた! この地に‥‥滅びを!」 人型アヤカシは天に向かって咆哮すると、アヤカシ兵士たちを焚きつける。 ――町は瞬く間に乱戦に突入する。 件の人型アヤカシと遭遇した傭兵たちは、すぐにその力を目の当たりにする。 「ふふふ‥‥怨嗟の波動を‥‥受けてみるがいい!」 人型アヤカシが腕を一振りすると、何と陰陽師の式ようにカマイタチの群れが出現し、傭兵たちを襲った。 「な、何だと!」 凄まじい威力のカマイタチに切り裂かれる傭兵たち。 「さあ行け兵士たちよ! こいつらを食らってやれ!」 傭兵の陰陽師は背後から人型アヤカシに火輪を叩きつける。が、人型アヤカシの足元から雪女のアヤカシが出現すると、氷の息を吐き出して火輪が消滅。陰陽師は逆に氷の息に痛打を受ける。雪女は束の間で消失する。 「何だこいつは!? アヤカシを召喚しやがる!」 「怯むな! 一気に掛かれ!」 ――キイイイイイン! と突撃する傭兵たちの攻撃を、この人型アヤカシは受け止める。 「か、堅い‥‥!」 「くく‥‥甘いわ」 アヤカシ術士はがしっと傭兵の首をつかむと、狼のようなアヤカシを召喚。牙で傭兵の首が飛んだ。 そうする間にもアヤカシ兵士は次々と湧いてくる。 「滅びよ‥‥! 滅びるがいい! この俺、“青陽炎”が貴様らに滅びをもたらす者だ!」 開拓者ギルド武天支部でこの件に関する龍安家からの依頼を聞いた開拓者たちは、間もなく出発する鳳華への定期便に乗り込んだ。大型飛空船はものすごい速さで鳳華へ飛ぶ。 北伯芳に出没したアヤカシの撃退、アヤカシの術士「青陽炎」率いるアヤカシ軍は傭兵たちを苦しめているという。龍安家は各地の別なる戦いがあるために支援出来るかどうか分からない。今、確実なのは開拓者たちを派遣することであったのだ。 |
■参加者一覧
雪ノ下・悪食丸(ia0074)
16歳・男・サ
井伊 貴政(ia0213)
22歳・男・サ
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
青嵐(ia0508)
20歳・男・陰
北条氏祗(ia0573)
27歳・男・志
月城 紗夜(ia0740)
18歳・女・陰
焔 龍牙(ia0904)
25歳・男・サ
星風 珠光(ia2391)
17歳・女・陰
神無月 渚(ia3020)
16歳・女・サ
朧月夜(ia5094)
18歳・女・サ |
■リプレイ本文 北伯芳に到着した開拓者たちは、傭兵隊長の志士と会う。隊長を務めているのは、いかめしい巨漢の志士であった。名を初瀬厳雪と言った。 「今んとこどうなってんだ初瀬さんよ。敵は南へ立てこもってるのか?」 雪ノ下・悪食丸(ia0074)は串団子を頬張りながら問う。 「いずれこの町を壊滅させるつもりなのだろう。ここで仕留めて、村や町への被害を押さえないと‥‥」 「鳳華の傭兵と言うのも大変ですねえ」 井伊貴政(ia0213)は思案顔で初瀬ら傭兵を見やる。 「厄介な敵が東の魔の森に控えている‥‥」 「ここは昔からそうだ。先々代が鳳華を統一する前には、アヤカシの猛威はそれは凄かったと聞く」 「全く、街中で暴れるなど、言語道断どす。戦争は戦人だけでやればいいんやす」 龍安家お抱えの舞師でもある華御院鬨(ia0351)は、正論を言って感情を露わにした。 「ここはアヤカシにとっても狙う価値のある場所だが‥‥とは言え、町や村でなくて良かった」 とは言え、一名の傭兵が青陽炎の犠牲となっているのも事実。 「町の作りを教えていただきましょう」 天儀人形を操り腹話術で話す陰陽師の青嵐(ia0508)。 「地図を確認し、どのように道が走っているかを把握し、敵位置の確認、攻勢に出易い場所、守りやすい場所、戦いやすい場所も考えておきましょう。これに関しては皆さんと話し合って共通認識にしたほうが良いでしょう、合流する時の最短ルートも考えてもらいたいですのでね。地元をこれ以上、蹂躙されたくは無いでしょう?」 「それはそうだ」 「貴方達の力を借りたいのですよ、一番この地を知っている貴方達に」 初瀬は地図を卓上に広げる。敵味方の配置を書き込んでいく。 北条氏祗(ia0573)は思案顔で地図を見やりながら、全体の行動について提案する。 「開拓者は東制圧隊、西制圧隊、南牽制隊の三班に分かれてアヤカシを殲滅する。拙者も南牽制隊に所属するが。中央よりやや南側の位置で南部の敵が北上しないよう牽制するべきだろう。東西のアヤカシ鎮圧を待って合流、南部へ総攻撃を仕掛けるとしよう」 「西と東のアヤカシをいかに早く撃破するかだな」 「ああ。東西撃滅後は、一気に攻勢に転じ、南の青陽炎を包囲殲滅する。これが理想だ」 そこで月城紗夜(ia0740)が口を開いた。 「逃げ遅れた、民、いますか? いれば、必ず、助ける」 決意を秘めた月城の眼差しに、初瀬は思案顔でうなった。 「民の無事は願うばかりだ。もともと一般人はほとんどいないのでな。民が隠れているかどうかは、志士たちに心眼で探させよう。見捨てたりはせん」 龍安家の家臣、焔龍牙(ia0904)は、軽く机を拳で打った。 「町のど真ん中に出現するとは、かなりの実力がある自信家か? それとも、単なる間抜けなのか? どちらにしても、『焔龍』の名を語れる戦いをして退治するだけだ!」 「焔殿のお噂はかねがね。こんな傭兵町にも、龍安家家臣団の戦功は伝わっていますからな」 「俺は『焔龍』の名を語り継ぐことが出来るその日まで、戦う。それだけだ」 龍牙は肩をすくめる。 星風珠光(ia2391)は恐ろしげな死神の鎌を持って、仲間たちの話を聞いていた。 「後方からの支援、気合を入れないとねえ」 珠光は陰陽師で、支援攻撃はもちろんのことだが、今回は接近戦仕様でもあった。昨今すでに歴戦の域に達する開拓者たちが名を連ねる中、珠光もまた相応の実力者であった。 元辻斬りの神無月渚(ia3020)は、周りの傭兵たちを見て、血に飢えた眼差しをひた隠しにする。 (「切りたいなあ‥‥」) 危険なことを考えつつ、作戦会議に集中する振りをする。我慢我慢‥‥と、心を押し殺す術は心得ていた。慣れたものであるが‥‥。 渚は黙って話を聞いていた。振られない限り自分から口を開くことはない。 「ところで、肝心の兵力の配分について決まっていないようだが」 龍安家家臣のサムライ朧月夜(ia5094)は、ターバンとマフラーで隠した顔から金色の瞳を覗かせながら言った。クレイモアの柄を強く握りしめる。 初瀬は頭をぽりぽりと掻いた。 「そう言えばその話はまだだったな‥‥どうするかね?」 初瀬は開拓者たちの顔を見渡したが、これといった意見は出なかったので、傭兵の配分は初瀬が決める。 「東制圧に悪食丸殿、貴政殿、鬨殿。西制圧に渚殿、朧月夜殿、月城殿、龍牙殿。南牽制に北条殿、青嵐殿、星風殿。と言ったところだな。ならば、我々は、西と東にそれぞれ志士二人、泰拳士二人、陰陽師一人、巫女一人、弓術士二人を回し、俺も含め残りを南の牽制に当てよう。敵が動き出せばいずれにしても南は厳しくなるが、やるしかあるまい」 「了解したぜ。せいぜい暴れてやるとするか!」 悪食丸は残りの団子を口に放り込む。 「西は任せろ! 速攻でつぶして南へ合流するからな!」 龍牙は言って拳を討ち合わせる。 「では行くか。青陽炎‥‥拙者が冥府に送ってくれよう」 北条の蒼瞳が雷光のごとく閃く。 開拓者たちと傭兵は、それぞれの担当場所へ散っていく。 南のアヤカシの陣中にて――。 青陽炎はぼろぼろのローブを脱ぎ捨てると、家の中で羽織袴に着替えていた。 「ふん、人間の恰好をしておれば、奴らの目を少しは欺けるかも知れん」 そこへ、一つ目のカラスアヤカシが舞い降りてくる。 「傭兵町を攻撃した者がいると聞いた」 カラスアヤカシは明朗な人語を話した。 「伝令か? 俺様は青陽炎。この地に生まれて、まだ人を食らっておらん。これからが楽しみよ。人間どもの恐怖と絶望が待ち遠しいわ。俺様は飢えておる」 「そうか‥‥一つ忠告しておいてやろう。この地を治める龍安家は強力な武力一族だ。お前一人暴れたところで、討伐隊に打ち取られるのが関の山だ。まずは東の魔の森へ来るがいい。そこで、正式に鳳華におけるお前の序列を決めてやろう」 「序列だと? 下らん! 俺様は自由よ! 何物にも束縛されん! 誰に仕えると言うのだ? 俺を従えたくば、力ずくで来い!」 青陽炎は激昂して腕を振ると、カラスアヤカシに雷光を叩きつけた。轟音が炸裂して、家屋が閃光とともに木っ端みじんに消失する。――が、カラスアヤカシは全くの無傷で、悠然と青陽炎を見やる。 「その意気や良し。生き延びたならば東へ来るがいい」 そしてカラスアヤカシは町を飛び立つ。青陽炎は茫然とカラスを見送る。 「どんな器かと思ったら、あの程度であったかよ」 カラスアヤカシは空を舞いながら嘲笑を浮かべていた。 東制圧隊――。 「武天一の女好き、雪ノ下一族の悪食丸が相手だっ!!」 悪食丸は刀を八相に構えて戦場に踏み込む。 「さて‥‥新しく覚えた技の試し切りになってもらいましょうかね」 貴政は新技、回転切りを出す頃合いを図る。 「ほないきますどす。傭兵のみなさんもお気をつけやす」 鬨は言って、愛用の長脇差を抜く。 地図で頭に叩き込んだ道へ進むと、アヤカシ兵士がばらばらと現れる。 「では作戦通り、敵をおびき出し、一斉攻撃で叩きますか」 「囮役は任せてくれ! 合戦に比べれば、雑魚相手どうってことはないね!」 「気をつけなはれや、ともあれ」 開拓者と傭兵たちは、それぞれ街路に逃げ込み、アヤカシ兵士を引き付ける。 アヤカシ兵士は雄たけびを上げると、追撃してくる。 「鬼さんこちら〜っと!」 悪食丸は反転してアヤカシ兵士に攻撃する。ザシュウウウウウ! と切り裂かれるアヤカシ。怒りの咆哮を上げて反撃してくるが、悪食丸は裂ぱくの気合とともにアヤカシを粉砕した。 貴政は三体のアヤカシの群れに躍りかかっていくと、回転切りを叩き込んだ。うなりを上げる刃が一気にアヤカシ三体の首を吹き飛ばした。 「これは中々に使えますね〜、やっ、と」 貴政は続いてやってくるアヤカシ兵士の攻撃を跳ね返して粉砕する。 「アヤカシに情けは無用どす。いやと言うほど痛感しておりますからな」 鬨は言って、アヤカシ兵士を叩きのめした。 「グウウ‥‥ガアアアア!」 アヤカシ兵士は憎悪の眼差しで鬨に牙を剥くが、力量は鬨が圧倒。鬨はアヤカシを問題にせず一刀両断した。 「‥‥開拓者がこれほどまでに実力をつけているとは」 ともに戦う傭兵たちは、歴戦の開拓者たちの実力に驚く。 西制圧隊も攻勢に転じる――。 渚は狂喜乱舞してアヤカシの群れに突撃する。 「さぁっ。派手に斬刻もうじゃないかぁ!」 二刀を振りかざして、勢い突進。 「あははっ! 少しは楽しませてよねぇ!?」 ザン! ザン! とアヤカシの頭部を粉砕していく。 「終いにしようじゃないかぁ!」 アヤカシを切る瞬間の愉悦に浸る渚。 「あはははははっ! あははははっ! 斬って斬って斬ってやるわぁ!」 「渚さんすっかり酔ってるな‥‥」 龍牙はアヤカシ兵士を叩き伏せながら、陶酔している渚を見て肩をすくめる。 「とは言えこっちも‥‥邪魔だ! どけ!」 龍牙の凄絶な一撃によって粉砕されるアヤカシ兵。 傭兵たちはおよそ互角に戦っているが、開拓者の中には飛び抜けて強いものたちが揃っている。 「無理はするな! それぞれに数的優位を作り、各個撃破に専念しろ!」 朧月夜は傭兵たちに指示を飛ばしながら、クレイモアを叩きつける。大剣がアヤカシ兵士の頭部を撃砕する。 月城は志士の手を借りて、逃げ遅れた民を発見する。一般人の男は震えて動けないでいた。 「大丈夫、ですか。助けに、きました。もう安心、して下さい」 「お、俺はもう駄目かと‥‥」 月城は優しく微笑むと、男の手を取った。 「諦めないで、希望はあります。さあ、立ち上がって。――そうです、ゆっくり、力を入れて」 「急げ月城殿。敵が来るぞ」 「‥‥分かりました」 月城はぐいっと男を引っ張り上げると、肩に担いで運び出す。月城は18歳の娘といえども志体持ちの開拓者の体力は一般人を遥かに越える。 月城は男を抱えて走った。 再び町の東――。 悪食丸と、貴政、鬨たちは、ボスのアヤカシ戦士と向き合う。 「グウウウウウ‥‥オオオオオオオオ!」 アヤカシ戦士の凄まじい殺気が開拓者たちに向けられる。三人は涼しい顔で殺気を受け流すと、深呼吸して、ひたとアヤカシ戦士を睨みつけた。その瞳に宿るはアヤカシ戦士の殺気を吹き飛ばすほどの剣気。 「グ、グウウ‥‥」 アヤカシ戦士は、凄まじい三人の剣気に当てられて、後退する。 「逃がすと思うか」 悪食丸はアヤカシ戦士の退路を塞いだ。 「残念ですが、王手ですよ」 「民に仇名す悪鬼、ここで討ち取ります」 貴政と鬨は、じり、と間合いを詰める。 アヤカシ戦士は生れて初めて感じる恐怖に体が動かず、右往左往する。 「行け!」 悪食丸が打って出ると、貴政と鬨も前進した。 アヤカシ戦士は確かにタフで兵士とは比べ物にならないくらい強かったが、開拓者三人の実力はさらに上。 連打を浴びたアヤカシ戦士は、舞い上がった鬨の一撃で最後に首を飛ばされた。 ズウウウウウン‥‥と巨体が崩れ落ち、瘴気となって消失する。 龍牙と朧月夜、渚、月城もアヤカシ戦士を撃破する。 巨体に止めの一撃を入れた龍牙は、ゆっくりと刀身を抜いた。 がくり、とアヤカシ戦士が崩れ落ちて、ぼろぼろの黒い塊に変わり果てていく。 「残るは南、青陽炎とやらだな」 朧月夜は傭兵たちの無事を確認して、南の空を見上げる。 南では、青陽炎が前線に出てきていた。アヤカシ兵士が各個に撃破されていく様子を見て、苛立たしげに咆哮する。 『全員で攻撃しろ! 皆殺しだ! 突撃だ!』 青陽炎は着替えていたが、アヤカシ兵士たちに指示を出している姿から、当たりをつけられる。 「人間ども‥‥この世に生まれた俺様が、食らってやるわ!」 青陽炎は腕を振り上げると、獣型の召喚アヤカシを式のように飛ばして傭兵たちに叩きつけた。 召喚アヤカシが貫通して、傭兵たちがばたばたと倒れていく。 「あいつが青陽炎か‥‥只者ではないようだが。拙者の北条二刀流で太刀打ちできるものか‥‥」 「あのアヤカシを止めなければ。行きましょう」 「ボクの火炎獣で焼き払ってあげようかねえ‥‥うん」 北条、青嵐、珠光は青陽炎に向かって前進する。 そこへ西と東から援軍が到着する。 「西は押さえたぞ!」 「東も押さえましたどす」 「よし、一気に反撃に転じるぞ。初瀬殿! 我らは青陽炎に突進する。アヤカシ兵士を押さえて下さい!」 「承知した!」 開拓者たちは乱戦の中、青陽炎に突撃する。 「ぬうううう‥‥おのれ!」 青陽炎は歯噛みした。 「甘く見すぎたか‥‥!?」 接近してくる開拓者たちを睨みつけると、腕を持ち上げ、狼のアヤカシを召喚して攻撃する。 青嵐と珠光、月城が斬撃符と火炎獣で応戦。 「風姫二十間にわたりて」 「召還! 蒼き炎を纏いし九尾よ‥‥我が命に従い、眼前の敵を焼き払いなさい」 「舞い踊れ、黒き蝶―――理に組み込まれた、全ては、必然」 青陽炎の召喚アヤカシと三人の式が激突して相殺される。 「ぬう‥‥! こざかしい!」 青陽炎はさらに骸骨の龍アヤカシを召喚すると、龍が吹雪を吐き出す。 これにも三人の陰陽師が対抗して相殺する。 そうする間に、悪食丸、貴政、鬨、北条、龍牙、渚、朧月夜は青陽炎を取り囲み、一斉攻撃を仕掛けた。 ズドドドドドドオオオオオオ――! と開拓者たちの凄まじい一撃、一撃が青陽炎を貫通する。 「な、何‥‥!? 馬鹿な‥‥!」 「俺の焔を、ゆっくりと味わいな! これが最後の晩餐となるだろう。これでも喰らえ! 『焔龍』の一撃!」 龍牙の炎魂縛武が最後の一撃、燃え盛る炎の刃が青陽炎を貫き――。 「おおおおおおお‥‥」 青陽炎は崩れ落ちて、瘴気に還元していくのだった。 ‥‥無事に戦闘終結。 「皆よく戦ったな。無事で何よりだ。弘秀殿も安堵するだろう」 朧月夜が傭兵たちを称えれば、鬨が一芝居舞うと言う。 「龍安家のお抱え芸人として、舞でも舞っていきやすか」 鬨は歌舞伎役者が本業。龍安家のお抱え芸人でもある。舞いは戦いの傷跡を顧みるよりも、せめて一時の心の安らぎとなればと。 鬨の舞に、傭兵たちはやんやの喝采を送った。 ――それから朧月夜は首都の天承に立ち寄り、龍安弘秀と会う。ターバンとマフラーを外して、素顔を見せると、弘秀の隣にいた奥方の春香は吐息を漏らした。 「まあ、お綺麗な方ですね」 「とんでもない。俺なんて‥‥いや、何でもない」 「ここ鳳華の民はアヤカシに苦しめられてきました。あなたのように勇敢な戦士は欠かせぬ存在なのです」 それからどうしたわけか、朧月夜は雑談の中で自身の過去を語る。冥越での暮らしを。すると春香は――。 「あなたはまだ若い。これから良き出会いも未来もありましょう。それに当家にも縁談の話は幾らでもありますよ。よさそうな方を紹介しましょうか」 突然今にも話を進めそうな春香を前に、朧月夜はあたふたとその場を辞した。 |