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■オープニング本文 武天国、龍安家の治める土地、鳳華――。 戦闘地域に龍が着陸する。龍は変身すると、若い男に姿を変える。変幻自在のアヤカシの魔将、その名を天晋禅と言った。 アヤカシの軍勢が龍安軍と対峙している。獣アヤカシの軍勢である。その軍勢を率いるのが、同じく鳳華の魔将、天壬王である。 「大将軍も出陣された今、この地には混沌がやってくる――私は民の心を撹乱する。戦は任せますよ」 天晋禅の言葉に、天壬王は目を細めた。 「龍安軍と言っても、その軍隊は郷土の兵士たちですからね。彼らはこの地を失えば全てを失うも同然」 「私は民人たちの絆を破壊する。戦はそれを更に後押しするでしょう」 天晋禅は天壬王と言葉を交わすと、再び龍に姿を変え、飛び立っていく。 「さて‥‥大将軍も出たこの戦、龍安軍はどう受けますかね。二十年前は‥‥耐えたようですが‥‥」 天壬王の瞳に、鋭い光が閃く。 龍安軍陣中――。 長引く戦闘に、龍安軍の兵士たちは交代制で戦線を支えていた。すでに天壬王率いる獣アヤカシの大軍は魔の森との境界を突破し、里へ侵入しつつあった。果たして、里への侵食を開始したところで、アヤカシ軍の猛進が止まる。 多くの民が獣たちに食われた。天壬王は恐るべき狩人だ。獣を率いて暴風のように里の一角を破壊し、大量の死者を出した。 龍安軍の神官長、巫女の蒼晴雪鈴は、防備を固めるように指示を出し、逃げ遅れた民の回収を急がせる。 「鳳華の七魔将、天壬王ですか‥‥狡猾な獅子ですね。私達が民を救うしかないと知っている。攻めてこないのは‥‥心理作戦ですか」 蒼晴は戦場で天壬王と遭遇したのだ。あの獣アヤカシの魔将は、戦場において理解し難く、「邪魔をしなければ被害は適当なところで止まるでしょう。機会をあげますから逃げなさい」と言ってのけた。蒼晴は、あの時の天壬王の静かな瞳が脳裏から離れなかった。 そこへ、斥候のシノビが戻ってくる。 「アヤカシ軍が再び動き出しました。ゆっくりとではありますが、アヤカシの一部が前進を開始しました。先頭には天壬王が――」 蒼晴は、天壬王の言葉を思い返す。放置しておけば民は無傷では済まないだろう。 「それで、私が退くなどと思わないことですね」 蒼晴は立ち上がると、敵軍を迎え撃つよう、サムライ大将たちに声を飛ばした。 |
■参加者一覧
井伊 貴政(ia0213)
22歳・男・サ
犬神・彼方(ia0218)
25歳・女・陰
雲母坂 芽依華(ia0879)
19歳・女・志
神鷹 弦一郎(ia5349)
24歳・男・弓
バロン(ia6062)
45歳・男・弓
雲母(ia6295)
20歳・女・陰
シャンテ・ラインハルト(ib0069)
16歳・女・吟
紫焔 鹿之助(ib0888)
16歳・男・志
伏見 笙善(ib1365)
22歳・男・志
盾男(ib1622)
23歳・男・サ |
■リプレイ本文 慌ただしさを増していく戦場。 「蒼晴雪鈴様――龍安家臣の井伊貴政、助勢に参りました」 龍安家臣のサムライ、井伊 貴政(ia0213)は総大将のもとへとやってきた。 「貴政、来てくれたのですか、ご苦労ですね」 貴政は、雪鈴が自身のことを知っていることにやや驚いた様子。 「僕のことを御存じとは、意外ですね。一人の開拓者に過ぎませんのに」 「龍安家の武将連で、あなたの名を知らぬ者はいませんよ。あなたが思っている以上に、私達は家臣となってくれた者たちの名を記憶しているのです」 「恐縮ですね‥‥ところで、天壬王は」 「あのアヤカシの魔将は、狡猾な獣です。私達が出てくるのは予測しているでしょう。民を囮に使うのは、効果的ですね」 「それでは――」 と貴政は、兵を借り受けるように願い出る。 「僕は兵を率いて、まずは民の避難に当たろうかと思います。まだ多くの民が残されているのならまずは彼らを救いたく思います。前線の人達が頑張ってくれると思いますが、それでも下級アヤカシなどすり抜けてくる可能性もありますし、ある程度のところまでは兵による誘導や護衛、避難路の安全確保なども必要かとも思いますので、味方部隊とも手分けをして、出来る限り後方の安全確保、避難民の損失阻止に尽力したいですね。兵に余裕があれば、龍による上空からの偵察などもお願いして現状の把握に努め、避難誘導の方角や戦力の投入方向の判断等に利用出来たら、時間的損失も防げるかなぁと考えています」 「分かりました、民のことは任せます。龍騎兵にも支援するように言っておきましょう」 「ありがとうございます」 勝手知ったる何とやら、歴戦の陰陽師犬神・彼方(ia0218)は戦場を眺めていた。 「今回はぁやたら敵が多いみたぁいだし、慎重にいかねぇとな。俺らがぁ期待されてるのは中級アヤカシ殲滅とぉ魔将の足止め、か‥‥せめぇて、一般人の避難が出来るまで持ちこたえなきゃぁな」 彼方は言って思案顔。 「俺ぇは魔将の足止めだぁな。盾男(ib1622)達と協力してぇ避難中の奴らぁに手を出させない様にしねぇとな。仲間が中級のアヤカシ達を倒すまぁで持ちこたえれりゃいいんだぁが‥‥なんとぉかやってみるか」 それから、天壬王のことを考える。相手は思慮深いやぁらなんやらって記録が残ってるぐらいだぁから、一筋縄じゃぁいかねぇよな‥‥下手に近付くとどうなるかわからねぇから最初は遠距離でぇ術を使って攻めてみるかぁね‥‥一気に近付かれた場合は、一般人を巻き込まない程度まぁでさりげなく誘導してぇ戦闘だぁな‥‥。 「あんじょうよろしゅう雪鈴はん。志士の雲母坂 芽依華(ia0879)どす。うちはアヤカシ軍の中級指揮官を足止めに向かいます。民の避難はお任せしますえ」 「よろしく雲母坂さん。敵は強力ですが、皆で力を合わせて戦い抜きましょう」 神鷹 弦一郎(ia5349)は狩人の弓術士である。狡猾な獣か‥‥狩人としては血が騒ぐな。どこまで通用するか試してみたくはあるが‥‥今は民達を救う事に専念するとしよう。‥‥獅子狩りはまたの機会だな。 「もっとも、今相手にする中級も十分手強い獲物か。‥‥ふふ、気を引き締めるとしよう」 最近は柔らかい表情を見せるようになったという弦一郎。この笑みも、その変化の表れなのか。 「鳳華での依頼は久しぶりだが‥‥やれやれ、相変わらずキツい状況じゃな。‥‥だが、面白い」 バロン(ia6062)は言って、不敵な笑みを浮かべる。最近は若者たちの成長を見るのが楽しみになって来たというベテランである。 ‥‥獣風情が良い気になるとは、ここもいい加減持たないんじゃないか。雲母(ia6295)は胸の内に呟き、愛用の煙管を吹かした。 「おい貴様ら、敵は相当なつわものらしい。死ぬ気で戦え」 その実、内心では下剋上の一つでもくろむ雲母は、兵士たち真紅の瞳を向けた。忠誠心などほとんどない家臣開拓者である。 「おい雲母」 サムライ大将がたしなめるように鋭い視線を向けた。 「兵が委縮しているではないか」 「この程度で委縮するようでは、アヤカシ相手に戦うことは出来んぞ。これは戦であろう」 「全くお前と言う奴は‥‥」 サムライ大将はぐいっと、雲母に詰め寄る。 「何をしているのですか」 静かな声が、二人の意識を逸らした。総大将の雪鈴が立っていた。 「雪鈴様、この雲母の兵士たちへの言葉は、目に余るものがあります」 雲母は煙管を吹かしたまま、微かに笑っていた。 雪鈴は肩をすくめる。 「今はアヤカシを前に大事な時ですよ。味方同士で争っている時ではありません」 「ですが‥‥!」 雪鈴は手を上げてサムライ大将を制する。 「この話はここまで、両名ともいいですね」 雪鈴はぴしゃりと言って踵を返した。 「ふうん‥‥あれが蒼晴雪鈴か」 雲母は笑みを浮かべたまま、雪鈴を見送る。 シャンテ・ラインハルト(ib0069)は、出撃前の慌ただしい空気の中で祈っていた。大きな戦い、怖くないと言えば嘘になりますけれど‥‥それ以上に、避難民の方々もいるのであれば、少しでもできることをしたいと、思います。私に、アヤカシと戦う力はないですけれど、少しだけでも‥‥。 「ラインハルトさん」 呼び掛けたのは貴政。 「避難誘導に向かわれるのでしたら、一緒に行きませんか。どちらにしても、あなたには護衛が必要でしょう?」 「はい‥‥」 ラインハルトは小さく頷くと、貴政の後に付いて行く。 この空気、この香り、懐かしい‥‥な〜んて♪ 物思いにふけってる場合じゃないですよね〜、我々にできることをしなければ。伏見 笙善(ib1365)は、ふと昔を思い出して、郷愁が込みが上げてくる。伏見は元兵士。各地の戦場をわたった後、志体持ちゆえに特殊部隊に配属され、ある強力なアヤカシの討伐任務に就いていたが部隊は壊滅、笙善も表向きでは死亡したことになっているのだ。それで仕方なく開拓者になった。戦場の空気と言うのは、いつまでも忘れ難いものであった。 「ふむ、ではミーは右翼の戦力を少しだけでも削らせてもらいましょうかね〜‥‥雪鈴殿、志体持ちの兵士殿を数人、お借し願いたい」 「伏見さんと言いましたか‥‥では、志体持ちの兵とともに右翼へ向かって下さい。指揮はサムライ大将に任せすよ」 「了解しましたよ〜♪ ではミーは右翼へ行かせてもらいますね」 はは、魔将クラスとやるのは久々ですねえ。さてどうなることやら。もう人に仕えるつもりはないし兵はいらない‥‥。盾男は胸の内に呟き、雪鈴のもとへと足を運んだ。 「ユー、守りにつくわけにはいきませんが周囲への警戒を怠らないようにしてください」 「天壬王が私を狙ってくるとでも思いますか」 「そうならないことを祈っているアルよ。ユーが倒れたら、こちらは全軍撤退するしかないアルからね。尤も、天壬王を抜かせはしないアルけどね」 「最前線には志体持ちの精鋭を投入します。天壬王を止めて下さい。私は全体の指揮に専念します」 「よろしくアルよ」 そこへ、彼方がやってきた。 「そろそろ行くよぉ、盾男」 「ああ犬神。今行くアルね」 「天壬王はひとたび狩りに出れば暴風のように里を滅ぼすと言います。あの獅子は侮れませんからね」 雪鈴の言葉に、彼方は思案顔で顎をつまんだ。 「厄介な相手だってのぉは承知してるよ。何とかぁ、してみるつもりだぁね」 そうして、龍安軍が前進するのに、開拓者たちはそれぞれ戦場に出て行った。 貴政は、ラインハルトとともに逃れてくる民を後方へ送り出していく。 「貴政殿! 前線のアヤカシの数は甚大です!」 一般人兵士が、泥まみれになって転がり込んで来る。 「敵が来る前に民を回収して行きますよ、彼らを一人でも多く逃がさなくては」 「はっ」 貴政は兵士たちに指示を飛ばして、急がせる。 続々と民がやってくるのを、ラインハルトは怯えて歩けなくなった民のもとへ近づくと、口笛で彼らの気持ちを落ち着かせせる。吟遊詩人のスキルが、動揺する民の心を穏やかにしていく。 「何だか不思議な気持ちですね‥‥何だか心地よい響きです」 民人たちは、ラインハルトを不思議そうな顔で見つめる。吟遊詩人の能力に、民は恐怖からじわじわと解放されていく。 「大丈夫ですかみなさん」 貴政が民人に声を掛けて回りながら、前線に目を向ける。アヤカシの咆哮が轟いてくる。 「貴政殿! アヤカシの一隊が抜け出してきました!」 兵士たちが駆けこんで来る。 「来ましたか‥‥ラインハルトさん、後方は任せます。少し、アヤカシを迎撃してきます」 「はい‥‥」 ラインハルトは小さく頷き、駆けて行く貴政を見送る。 民は立ち上がると、ラインハルトにお辞儀して逃げて行く。 それからも続々と民が前から逃げだしてきて、ラインハルトは彼らを受け持ち、スキルを使って民の心を落ち着かせながら後方へ送り出していく。 「あらまあ、これはえらいアヤカシの数どすなあ。とりあえず、みんなの避難完了まで気ぃ張らんとあきはへんなあ」 雲母坂は抜刀術を駆使して、アヤカシ中級指揮官クラスを足止めする。 グルルルルル‥‥と、虎が集団を率いて前進して来る。 「雲母坂殿‥‥!」 「虎はうちが止めます。他をよろしゅう」 ガオオオオオオオ! と突撃してくるアヤカシの群れを、受け止める龍安兵に雲母坂。 雪折のカウンターに銀杏も使用して即納刀――。 「うちの太刀筋、見えはりました? ま、見えとってももう腰から下とはさいならしとるけどなあ」 虎の半身は切り裂かれて落ちていた。 「よし行け!」 崩れるアヤカシの群れに龍安兵が殺到する。一気にアヤカシを押し返す。 弦一郎、雲母、バロンたちは、龍安兵とともに敵中級クラスの獣を撃破して行く。 「‥‥一斉射撃、撃てっ」 弦一郎は自らも矢を連射しながら、兵士たちに命じる。次々と矢が突き刺さった化け猪は、苦悶の叫びを上げて突撃してくる。兵士たちには周りの雑魚を狙わせる。 「俺が奴を足止めする」 弦一郎は、猪に狙いを定めて、矢を連射する。貫通する矢が、猪の頭部に深々と突き刺さる。 巨大な猪の突進が止まる。ぐらりと倒れて、足を突く。 「今だ! 突撃!」 兵士たちは刀を抜くと、猪に殺到する。 「ふん‥‥相変わらず問題のたえない国だな‥‥全くと言って良いほどに」 アヤカシの軍勢みながら、皮肉たっぷりに言う雲母。 「何一つまともにならんな‥‥まったく、民もよく我慢できるものだ」 避難民を見ながらぽつりと呟く。 「撃ち方用意」 兵士たちが大きな熊のアヤカシに狙いを定める。 「撃て」 雲母は自らも矢を解き放つと、矢が次々と熊を貫く。 ――オオオオオオオオオ! 熊アヤカシは咆哮すると、周りの狼を呼び寄せる。 「雑魚は貴様らに任せるぞ。私はあの熊をやる」 雲母は回り込むと、熊に矢を浴びせて行く。 突進してくる熊との距離を図りながら、雲母は矢を叩き込んだ。貫通する矢が、熊の肉体を吹き飛ばした。 煙管を吹かして、煙の向こうに見える熊の巨体を狙う。雲母は矢を連射してアヤカシを粉砕した。 「覇王の歩みを邪魔出来ると思うな‥‥」 バロンは次々と雑魚の狼を撃破しつつ、中型のアヤカシを狙っていく。 「白獅子とやらを確かめるまでは、民を確実に逃がすまでは、おぬしたちをここから先に行かせるわけにはいかんのだ」 虎アヤカシが突進してくると、先即封で妨害する。バロンは虎の攻撃をかわしつつ、矢を至近から撃ち込んだ。そして転がるように虎から離れる。 「あの虎を狙え!」 龍安兵がバロンの横から飛び出して突進していく。 「士気は高いの、龍安軍」 バロンは言って、虎に狙いを定めて矢を連射する。 アヤカシの右翼に向かった伏見たちは、大型の猪と激戦の中にあった。 「これ以上の暴虐はミーたちが許しませんよ!」 伏見は撃針を撃ち込みながら猪の側面に回り込み、刀を叩き込んだ。 ――オオオオオオオオ! 猪は突進すると、伏見を牙で吹き飛ばした。 「一斉に掛かれ!」 龍安軍は猪に殺到して、どうにか動きを封じる。 「たた‥‥さすがに、化け物じみた力ですね」 伏見は起き上がると、気合を入れ直して猪へ突進する。 「はあああああ‥‥!」 必殺の居合切りで刀を一閃した。切り裂かれる猪の肉体が吹き飛ぶ。半身を失った猪は崩れ落ちると、わめきながら牙を振るう。 それを龍安軍は滅多打ちにして止めを差す――。 しかし続々とアヤカシの群れが出現する。 「敵もしぶとい、民が逃げるまでに、ミーたちであのアヤカシを足止めしないと‥‥!」 「行くぞ――!」 最前線に出てきた天壬王は、静かに、前進しながら、部下達が人を食らっていく様を見つめていた。 龍安軍の最精鋭部隊がそこに到着すると、天壬王に立ち向かう。 犬神と盾男もそこにいた。 「龍安軍‥‥あなた方に残された道は、撤退することしかありませんよ」 「こいつが天壬王かぁ‥‥」 「ジルべりア騎士団が1‥‥もとい開拓者の盾男、まあ今は槍男アルが。高名な七魔将の一人天壬王アルネ。ミーと勝負をするアルネ」 やがて、遅れて到着する雲母とバロン。 「来たか‥‥名乗らせて貰おう。我が名は『白獅子』アレックス=バロン=バルバロッサ。同じ名を冠する者同士、貴様との戦いを楽しみにしていた。一つ手合わせ願おうか」 バロンは天壬王に言葉を叩きつけ、雲母は煙管を吹かしたまま敵を見る。 「あなた方に、私を止めることは出来ませんよ‥‥」 次の瞬間、囲まれた天壬王の姿が消えた。いや、実際には開拓者の反応を越えて一気に何十メートルの距離を飛んできたのだ。 「速い――!」 バロンはスキル全開で後退しながら矢を撃ち込んだが、天壬王の体当たりに骨が砕ける。天壬王はバロンを前足で吹き飛ばした。バロンは意識が飛びそうになった。 「そうはさせないねえ!」 犬神は斬撃符を連打した。式ならば百発百中、カマイタチが天壬王の肉体を僅かに切り裂いた。 ぎゅん! と天壬王が加速する。龍安兵を吹き飛ばして、彼方に飛ぶ。 「――!」 懐に入られた彼方は、次の瞬間天壬王の体当たりを受けて中に舞い上がった。 盾男が裂ぱくの気合とともに突撃すれば、天壬王は姿勢を低くして槍を受け止めた。 「生き残ったら、ミーも生還したと言えるアルね」 そして次の瞬間、盾男は天壬王の牙に切り裂かれる。 「まさに怪物だな」 雲母はスキル全開で矢を撃ち込んだが、天壬王は耐える。 「何て奴だぁね‥‥こんな一撃をもらうとはぁね」 犬神は折れた肋骨をさする。 そうして天壬王を足止めする間に、龍安軍も開拓者も重傷を負った。 本隊から避難が完了したことを伝える知らせが来たところで、彼らも撤退準備に入る。 「よし、ここまでだ。化け物との勝負はお預けだ」 開拓者たちも後退する。 「なるほど、賢明な判断ですね。私達は魔の森から遠く離れるわけにはいきませんからね」 天壬王はそう言って、後退したのである。 |