いざ、アヤカシ討伐隊
マスター名:安原太一
シナリオ形態: ショート
無料
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2009/07/11 23:10



■オープニング本文

 武天の国、某村――。
「また村が一つ沈んだか‥‥」
 つい最近アヤカシの襲撃を受けて、廃墟と化した村を見て、若い女性のサムライは呟いた。凛とした麗人と見まごう女性サムライである。
 六王国中最大の繁栄を誇る武天王国の光と影。強大な国力を持つ武天では巨勢王自身しばしば兵団を率いて嵐の壁突破作戦や魔の森への討伐作戦が行われている。国内の氏族の中には強力な武力を有するものもある。だから平和だと言うことは無い。或いは他国よりアヤカシの被害は大きいかも知れないとも言われている。巨大な武力を持っているからと言って良いことばかりではないのも確かなのである。
 このサムライは氏族の長から状況を見てくるように言い付かった。
「アヤカシに占拠されたとは言え、まだ奴らの侵攻は始まっていない様子だ‥‥」
 女サムライは単身敵状の偵察を行う。一人なので無理は出来ないが、できる限りの情報を持ち帰る。
 上空には数体の幽霊アヤカシが飛び交い、村の周辺には五、六体の骸骨剣士、死人返り(ゾンビ)のアヤカシ、そしてちらちらと十体近い鬼アヤカシの姿も見える。中に一体大きな鬼がいる。
「幽霊型に死人型、主力は‥‥あの鬼アヤカシどもか」
 女サムライは敵の姿を捉えて、アヤカシの戦力を見極めていた。どうやら屈強な大鬼アヤカシがリーダーのようである。
 アヤカシの不気味な叫び声が鳴り響く、鬼アヤカシは棍棒を振り回してわめいている。
「化け物どもめ、好き放題にはさせんぞ‥‥民の仇は討つ」
 女サムライはアヤカシの集団を睨み付けると、静かにその場を離れた。

 神楽の都、開拓者ギルド――。
「開拓者達を集めてもらえまいか」
 あの女サムライは金子の入った袋を置くと、ギルドの受付の青年に言った。
「はい、ここは迷子の子猫探しからアヤカシ退治まで、原則開拓者が引き受けて損のない話でしたら何でもお受けいたしますが。どのようなご依頼でしょう」
「アヤカシ退治の人を集めてもらいたいのだ」
「ほう。アヤカシ退治ですか。またどこかの村が襲われましたか」
「我れらが国でアヤカシの被害が頻発しているのは知っておろう――武天の国で」
「ああ、武天の方でしたか。どこかの氏族の方ですか?」
「ああ。領内の村が一つアヤカシの群れに沈められた。被害が広がる前に奴らを討伐する。討伐隊を編成するのだが、あいにくと今人が出払っていてな。そこでという訳ではないが、開拓者の助力が欲しい」
 受付の青年は然りと頷いた。武天の氏族からの依頼はこれからも増えてくるだろう、昨今のアヤカシの活動状況からすると。どこも何かと人手不足が深刻とも言える。開拓者には有難い話ではある。皮肉なものだと青年は思ったが、女サムライの話をまとめていく。
 領主の私兵からは八名のサムライがアヤカシの討伐に向かうので、その援軍として足りない分を開拓者達に協力を仰ぎたいそうだ。
「まあちょっとした集団戦になるだろう。開拓者達はすでに幾度かアヤカシを撃退していると噂に聞いている。その腕を見込んで、是非とも助勢を頼みたい」
「すぐに依頼を張り出します――」
 と、その話しを横で聞いていたあなた達は、女サムライに声をかける。
「よお、また武天でアヤカシが出たって?」
「あ、ああ‥‥」
 戸惑いを見せる女サムライに笑みを向ける開拓者。
「その依頼書、見せてもらっていいか」
 そうして、あなた達は依頼内容を確認すると、女サムライ――名を麗華と言った――とともに精霊門から武天の国へと旅立ったのである。


■参加者一覧
沙羅(ia0033
18歳・女・陰
井伊 貴政(ia0213
22歳・男・サ
天青 晶(ia0657
17歳・女・志
篠樫 鈴(ia0764
17歳・女・泰
輝夜(ia1150
15歳・女・サ
キース・グレイン(ia1248
25歳・女・シ
喪越(ia1670
33歳・男・陰
嵩山 薫(ia1747
33歳・女・泰


■リプレイ本文

 村に到着前夜、八人の開拓者達と麗華ら八人のサムライ達は、山中で野営を取っていた。アヤカシに夜襲など無意味。彼らは現地到着前に十分な休息を取るつもりであった。
 焚き火を囲む開拓者達は保存食糧を頬張っていたが、井伊貴政(ia0213)は持ち込んだ食材を慣れた手つきで捌いていくと、味噌汁を作ってみなに振る舞った。
 麗華含む八人のサムライ達はみな女性で、若く凛々しい出で立ちであった。
「さ、どうぞ」
 貴政は爽やかな笑みを浮かべて麗華たちに味噌汁を振る舞った。
「貴政殿には料理の心得がおありか」
「独学ですが、昔両親から料理を褒められたことがきっかけで習い始めたんですよ〜」
「ほう‥‥」
 麗華は感心したように味噌汁を味わった。
「大変でしょう氏族に仕えるって‥‥厳しいことも多いんでしょうね? 僕もサムライだけど少し想像できないな」
「貴政殿、我々は長の手駒に過ぎん。この命は長のもの。長の命に従ってことを為すだけだ」
 麗華は器を置いて淡々と言った。貴政は真面目な顔つきになると、麗華の手を取って言った。
「麗華さん‥‥あなたの心意気に惚れました! 僕も命を掛けて戦いますよ!」
 麗華たちは驚いた様子で、貴政を見つめる。麗華はふっと笑う。
「開拓者にも気まぐれな奴がいるな。まあ、期待させてもらうぞ」
「おうチョメチョメ」
 正真正銘の陰陽師、喪越(ia1670)は手持ちの花札を取り出して並べていた。
「貴政も見え透いた手を使うな、麗華セニョリータには通じないようだが?」
 喪越は言ってからにやりと笑うが、貴政ははつらつとした笑みを浮かべる。
「いえ、これからが僕と麗華さんの始まりですよ〜」
「若いって素敵よねえ」
 ずず‥‥と茶をすすったのは既婚者子持ちの嵩山薫(ia1747)。
「いや、薫セニョリータもまだ若いよ」
「まあ、ありがとう、お世辞でも嬉しいわ」
 喪越は花札を並べ終えると、仲間達を誘った。
「どうだ〜麗華セニョリータ、あんたも札やるか?」
「我々は結構だ。先に寝るとしよう」
 そう言うと、麗華たちはさっさと寝てしまった。
「おうチョメチョメ残念」
「そのチョメチョメって何じゃ?」
「さあ‥‥俺にも分からないことだらけなの、サ」
 輝夜(ia1150)の問いに喪越はびしっとピースサインを作った。呆気に取られる輝夜。
 ‥‥そんなこんなで夜も更けていく。

 夜明けとともに、開拓者達は件の村に到着する。麗華たちの表情は険しい。
「アヤカシの被害は、留まる所を、知らず‥‥こうしている間にも、犠牲者が出ているのですね。麗華さん、想いは、皆同じです。これ以上好き勝手には、させません」
 天青晶(ia0657)の言葉に麗華たちは頷く。
「この戦、お前達に掛かっているのだ。万事宜しく頼む」
 一行は棚田の上方から村を見下ろし、様子を探った。幽霊アヤカシが飛び交い、屍人や骸骨がうろついているのが見える。村の真ん中に鬼のアヤカシの姿も見える。
「ここからだと一目瞭然だな。敵さんの動きが丸見えだゼ」
「では篠樫、宜しく頼むぞ」
 喪越が身を乗り出して村の様子を見やり、輝夜が篠樫鈴(ia0764)の方を向いた。
「任しとき‥‥て、うちもアヤカシと戦うの始めてやねんけど。でも頑張るからみんなよろしく頼むで♪」
 泰拳士の篠樫は言って深呼吸すると、「じゃ、言ってくるわ♪」と段々畑を飛び越えて、一気に下方の村に飛び降りていった。

 高さ何十メートもある畑をひとっ飛び。篠樫はたんっ、と地面に着地した。
 手持ちのマスクを着用すると、篠樫はびしっとアヤカシたちに向かって立ち向かった。ひとたびマスクをつければ悪と戦う泰拳士マスクになるのだ!
「うちの名は泰拳士マスク(仮名)! アヤカシ共、成敗の‥‥って、なんか仰山きたぁ‥‥うわわわわっ」
 幽霊アヤカシ、骸骨アヤカシ、死人アヤカシらがたちまち迫り来る。全力疾走で逃走する篠樫。
「最後まで台詞言わさんかいっ。これだから素人は‥‥!」
 オオオオオオ‥‥オオオオオ‥‥オオアアアアア!
「何や!?」
 篠樫の頭に響く声。頭痛に眉をしかめる。幽霊アヤカシの知覚攻撃――呪声。知覚ダメージがくらっと篠樫をよろめかせる。
「くっ、何やよう分からんけど、妖術か? けどやるしかない‥‥ほにゃらバットゴースト!」
 篠樫は全速で走った。棚田を飛び越え、ジャンプで畑を飛び上がっていく。

「‥‥よし、アヤカシが来るぞ」
 輝夜は弓を構える。
「敵さんの先頭は幽霊どものようだな‥‥篠樫大丈夫か?」
 喪越は跳躍しながら上ってくる篠樫を見つめていた。
「弓矢‥‥正射用意だ。やるぞ」
「射撃用意」
 輝夜が矢を番える。
 麗華たちサムライも矢を番える。
「弓ってどうも苦手なのよね。弦が胸に‥‥むう。胸当てでも買っておけば良かったかしら」
 薫は呟きながら上ってくる幽霊アヤカシに狙いを定める。
 篠樫が畑を飛び越えて戻ってくる。
「囮役完了! 後は頼むで!」
「ご苦労さん、怪我はないか?」
「怪我って言うか‥‥アヤカシの妖術で少し体力削られたみたいや」
「そうか‥‥」
 喪越は治癒符で篠樫の生命を回復させる。
「ありがと! この借りは百倍にして返さなあかんね!」
 そうする間に幽霊アヤカシが一行の目の前に現れる。
「撃て!」
 一斉射撃。弓が幽霊を打ち貫く。
「手を休めるな! 撃って撃って撃ちまくれ!」
 開拓者達とサムライは矢を撃ちまくった。
 ――オオオアアアアア!
 幽霊の知覚攻撃が輝夜の頭に響き渡る。
「これが噂に聞く呪いの声か‥‥」
 幽霊たちは飛び回って遠距離から知覚攻撃を叩き込んでくるが、矢を雨あられと受けて後退、戦線を離脱して逃げ出した。
「よし、ここで一旦後退じゃ」
 開拓者、サムライ達は武装を近接兵装に持ち替えると、屍人と骸骨の攻撃に備える。

 一体、また一体と飛び上がってやってくるアヤカシたちに反撃開始。
「者ども行くぞ。故郷に仇名す人外の魔物どもに裁きをくれてやろう。民の無念を晴らしてやれ!」
 麗華率いる四人のサムライと貴政はアヤカシの側面から突撃した。
「いざ、麗華さんのために!」
 貴政は死人アヤカシに切りかかった。ざくっとアヤカシの腕が吹っ飛んだが、アヤカシは怯むことなく飛び掛ってくる。
「何の〜!」
 貴政は掴みかかってくるアヤカシをずん! と刀で叩き落した。それでもアヤカシは立ち上がり、飛び掛ってくる。
「えい! 何度でも倒してやるぞ!」
 貴政は屍人の頭部を吹っ飛ばした。
 天青は氏族のサムライたちと協力して屍人、骸骨に切りかかっていく。
 アヤカシは続々と上ってきて、乱戦になり始めるが、盾持ちサムライたちが咆哮で敵を引き付け出来るだけ分断していく。
「‥‥こちらの思惑通りには行かないものですが‥‥」
 天青は骸骨剣士と相対し、その攻撃を跳ね返していた。
 裂ぱくの気合いを込めて刀を叩き込めば、骸骨の体が木っ端のように砕ける。
 骸骨の攻撃は受け流し、天青はアヤカシの頭部を粉砕する。
「ここからはうちらの百倍返しや! 大暴れしたるで!」
 篠樫は俊敏な動きで突進すると、骸骨の懐に飛び込んで拳を叩き込む。アヤカシの反撃は完全に回避。
「その程度の攻撃なら‥‥当たらんで!」
 連続蹴りを打ち込んでアヤカシをよろめかせる。
 輝夜は強烈な一撃を見舞う。一撃で吹っ飛ぶアヤカシの肉体。
「ふん‥‥我が前に現れし己が不運を呪うが良い」
 瞬く間に屍人を行動不能に追い込んでいく。
「行くぞアヤカシども‥‥貴様らに情けはいらん、民の仇だ」
 サムライではあるが、拳で戦うキース・グレイン(ia1248)、死人アヤカシの肉体に膝を打ち込み、肘鉄を食らわせる。
 骸骨アヤカシの剣を腕を立てて生身で受け止めるキース。直後に敵の剣を弾いて骸骨に拳叩き込むと、アヤカシの肉体が砕け散る。
「一気呵成――立て直す暇など与えないわよ!」
 薫は武器を手甲に持ち替えると、アヤカシに突撃、泰拳士の俊敏な体捌きで敵の攻撃をかわしながらアヤカシを沈めていく。
 やがて死人アヤカシは全滅。
「はい、終わりましたね、次ですね、さて鬼は?」
 対鬼に備えていた陰陽師の沙羅(ia0033)は、戦況を見やる。
 見れば鬼は、やや遅れて棚田を登ってくる。鬼の体格は小鬼よりは一回り大きい中鬼と言ったところだが、中に一体、さらに屈強な大鬼がいる。
 大鬼は死人アヤカシが倒されたのを見て、凄まじい大声で咆哮した。中鬼がそれに呼応して声を上げると、鬼たちは一斉にスピードを上げて棚田を登ってくる。
「これで数の上ではこちらが有利だ‥‥が、油断は禁物」
 麗華の言葉に輝夜は思案顔で鬼の群れを見つめる。
「見たところ小鬼よりは戦闘能力がありそうじゃの。あの大鬼の動きさえ倒せば群れは崩壊するじゃろうが」
「山奥の鬼退治とはまた古典的よね」
 薫は言って鬼の群れを見つめる。
「よし! 後は一気に攻め掛かって勝負決めたる! 行くで!」
 篠樫は仲間達を振り仰ぐと、みな頷いた。
「一匹たりとも生かして返さん、突撃じゃ」
 輝夜は刀を振り上げると、先陣を切って飛び降り、一気に鬼に切りかかっていく。
 がつん! と鬼の棍棒が直撃するが、輝夜は微動だにせず刀で鬼の腕を切り落した。
「どうした、この程度か? これでは我に傷一つつけることは出来ぬぞ?」
「さあ飛べ我が式! 行け呪縛符!」
 沙羅の式が鬼の姿を為して飛んでいく。鬼には鬼の式を。式がまとわりついて鬼の動きを減じる。
「村人の仇、取らせて貰いますよ〜」
 貴政は鬼の反撃を受け止めながら刀を叩き込む。
「まだまだ‥‥やれる‥‥!」
 天青もスキルフルで鬼に切りかかっていく。鬼の棍棒を回避しながら巻き打ちを叩き込む。
「てい! ここは痛いやろ!」
 篠樫は鬼のすねを蹴りとばしたが、鬼は怯むことなく棍棒をなぎ払う。軽々とそれをかわし、篠樫は拳をだだっと打ち込んだ。
 がしっと、鬼の棍棒を掴むと、キースは鬼を引き付けて膝蹴りを見舞う。血を吐く鬼に肘鉄を叩き込んで連打を浴びせる。
「よおアミーゴ、景気はどうだい、俺の方はモチのロン、さっぱりサ!」
 とぼけた口調で鬼をからかいながら、喪越は呪縛符を飛ばす。
「式、式、バン、バン! 式、バン、バン! アディオス、アミーゴ!」
 薫も鬼の攻撃を次々と回避していきながら拳を、蹴りを打ち込んでいく。ずん! と拳が鬼の胸にめり込み、鬼アヤカシは苦しげな声を漏らして後退すると、その体が黒い固まりとなって崩れ落ちていき、瘴気に還元して霧散した。

 中鬼は次々と撃ち取られていく。残る大将格の大鬼アヤカシは、さすがに戦況の不利を悟って逃げ出そうとした――。
 がその前に輝夜が立ち塞がった。
「どこへ行く? お前をむざむざと逃がすと思うか」
「そうだ、お前を逃がしはせんぞ」
 開拓者達が、麗華たちサムライが大鬼を取り囲む。
 大鬼は右に左に首を動かすと、威嚇するような咆哮を上げて輝夜に突進――。
 その巨体を、小さな輝夜は受けとめ、弾き飛ばした。吹っ飛ぶ大鬼。
 開拓者達とサムライたちは大鬼を取り囲むと、わめいて抵抗する鬼をざくざくと切り刻み、ぶん殴って袋にした。
 グオオオオオオ――!
 遂に大鬼は苦悶の叫びを上げると絶命し、瘴気に還って消滅したのであった。

 ‥‥戦闘終結後。
「アヤカシって死体が残らないんですねえ」
 沙羅は言ってアヤカシが消滅した空を見つめていた。
 麗華は笑顔を浮かべると、開拓者達に礼を述べる。
「助かった、礼を言うぞ。噂に聞く開拓者の腕前、しかと見せてもらったぞ」
「麗華さん、無事に依頼も解決したことですし、良かったら町の茶屋でお話でもどうですか?」
 貴政はにこっと笑って麗華に言葉を投げかける。麗華は黒髪をかき上げると微笑んだ。
「ならば、その代わりに少し力を貸してくれ。アヤカシの被害を受けて復興中の地域もあるのでな」
 天青はと言うと、村人の墓標に白百合を供えていた。
「‥‥‥‥」
 天青は村人の冥福を祈った。
 喪越もその傍らで祈りを南無南無と念仏を唱える。
「安らかにな」
 ‥‥天青の意外そうな視線を受けて、喪越は肩をすくめる。
「――ん? 意外? まぁ、色々見てるとな。慣れちまうのが怖ぇのさ」
「やはり‥‥全滅か」
 輝夜はぽつりと言葉を落とした。どこかに生存者がいるかと思ったが、見つかったのは無残な亡骸だけであった。残念だ‥‥。
「‥‥今後立ち入らないようであれば、アヤカシに利用される危険のある武具は持ち出した方が良くはないか?」
 キースは仲間達に呼びかけて、危険な道具などを持ち出すことにする。
「とにかく、無事に終わって何よりやなあ。うん。初めての戦いやったけど、少しは役に立ったかな」
 篠樫の肩に薫が手を置いた。
「戦いはまだ続くわ。これからもね」
「そうやなあ‥‥うちらの旅は始まったばかりやもんね」
 篠樫は言って空を見上げる。
 と、ぽつり、ぽつり、と雨が落ちてくる。雨はやがてざあざあと降ってきて、紅く染まった大地を洗い流すのだった。