【天龍】蛮勇の鬼将
マスター名:安原太一
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 難しい
参加人数: 10人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/06/11 20:56



■オープニング本文

 武天国、龍安家の治める土地、鳳華――。
 最前線の武将たちに、首都の天承がアヤカシの強襲を受けたと知らせが入ってくる。
 龍安家の老将、栗原玄海は飛び上がった。
「天承城は無事か! 奥方は! 清久郎丸様は! 菊音様は無事か!」
 栗原は、知らせを持ってきたサムライを揺さぶった。
「わ、分かりません。ただ天承が襲撃を受けたのみと‥‥」
「おのれ‥‥策を弄してくるアヤカシがいるものだ」
 そこへ、続いて斥候のシノビが駆けこんで来る。
「申し上げます! 鬼軍の大軍、山吹の里を飲み込み、前進してきます!」
「突破されたか!」
「敵将、侯太天鬼の前進を何とか押さえつつ、味方は後退しています」
「退くも攻めるも地獄かよ‥‥」
 老将は昔を思い出して遠い目をした。
「栗原様――!」
「待機中の予備兵を投入するぞ。これ以上鬼の進軍を許すわけにはいかん。総力戦じゃ! 打って出る!」
「はっ!」
 歴戦の老将は怯むことなく、兵士たちを叱咤激励する。

 ――山吹の里を飲み込みつつ前進してくる鬼軍。
 鳳華の七魔将、鬼の魔将、侯太天鬼は、泣き叫ぶ民を一掴みすると、大きな口の中へ放り込んだ。侯太天鬼は10メートルを越える巨大な鬼だ。残酷で野蛮な性格だが、戦となればその采配は鋭い、無数の鬼軍の総大将である。
「人間どもは動いたか‥‥!」
「はい、人間たちも大軍を動員してきました。総力戦の構えですな」
 赤鬼が答えると、侯太天鬼は笑った。
「ふふふ‥‥全く、性には合わんが、在天奉閻殿の命とあれば断れまい。俺様も前に出るぞ! 左翼に炎天兵団! 右翼に氷天兵団! 中央に雷天兵団を出せ! 大軍同士の決戦ならば、知恵で勝る方が勝つ! 俺は豪天兵団を率いて、機を見て龍安軍の側面を突く!」
 侯太天鬼はそう言うと、笑声を上げて、残っていた人々をまとめて口に放り込んだ。


■参加者一覧
星鈴(ia0087
18歳・女・志
鈴梅雛(ia0116
12歳・女・巫
羅轟(ia1687
25歳・男・サ
仇湖・魚慈(ia4810
28歳・男・騎
各務原 義視(ia4917
19歳・男・陰
月酌 幻鬼(ia4931
30歳・男・サ
倉城 紬(ia5229
20歳・女・巫
叢雲・暁(ia5363
16歳・女・シ
コルリス・フェネストラ(ia9657
19歳・女・弓
フィリー・N・ヴァラハ(ib0445
24歳・女・騎


■リプレイ本文

「鬼の魔将とその軍団? ‥‥上等や、相手するンに不足あらへん」
 星鈴(ia0087)は言ってから、戦場を見渡す。
「ほなうちは左翼対応でいかせもらおか。対侯太天鬼班と、それ以外の鬼に対応する対鬼班に分かれるんや。うちは対鬼班として行動するで。対鬼班は中央両翼を3分割して配置、うちは左翼指揮を行う」
 老将栗原は、慌ただしさを増していく戦場にあって、星鈴の言葉に大きく頷く。
「若い力は頼もしい。任せるぞ!」
「自分で一度上げた旗に土付けるわけにはあかへん。せやろ? みんな。行くで!」
 星鈴は、槍を振り上げて、兵たちを鼓舞する。「えいえいおー!」と兵たちから声が上がる。
「栗原様――」
 小さき巫女、鈴梅雛(ia0116)は小さな声を出して進み出る。
「天承の方々は無事です」
「何? そなたは‥‥」
「赤霧様からの依頼で、天承城の守りに付きました。アヤカシは奥方様を狙って参りました」
「おう、それで!」
「倒す事は叶いませんでしたが、天晋禅とその配下は、全て敗走しました。アヤカシの撃退には成功しています」
「そうか! そうであったかよ! 天晋禅がな‥‥ご苦労であったぞ雛。それを聞いて安心して戦に臨めるわい!」
 栗原は勇躍して天承の無事を全軍に伝える。
「武天‥‥去りし‥‥国‥‥されど‥‥今は‥‥守護‥‥ために‥‥。死‥‥嘆き‥‥齎す‥‥者ども‥‥全て‥‥断つ!」
 羅轟(ia1687)は言って巨躯を揺らした。顔を兜で覆っており、素顔は見えない。謎の多い男である。
「一度守った街、もう一度守りたいところです。しかし今回はヒーローを演じる余裕はないでしょう、ならば一人の戦士として出来る事をやらせていただきます」
 仇湖・魚慈(ia4810)は厳しい顔で仲間たちに言う。御近所の英雄などと呼ばれる苦労人が、今日は厳しい顔。守り切れなかったことが悔やまれる。
 各務原 義視(ia4917)、開拓者たちの通称軍師。龍安家臣でもあるこの若者は、鬼軍の戦力を推し量っていた。
「栗原殿」
「うむ、各務原か、そなたはどう見る」
「私は中央後衛にあって全体の指揮と中央の指揮を行います。対侯太天鬼に志体持ちのうち20名を割き牽制に。残りを三分割してそれぞれ敵に対応します」
「侯太天鬼が出てくると思うか」
「そうですね‥‥当初攻勢には出ず、膠着状態を作り出すこと。守りの戦をし、被害を極限に押さえ。戦局を決定づけようと対侯太天鬼が動き出すように仕向けます。侯太天鬼が動き、両翼のどちらかを攻撃しようとした場合、対侯太天鬼隊とは別に、片翼から10名程でその側面を突きます」
「そうじゃな、やはり侯太天鬼は動くであろうな」
「シノビの伝令は中央に情報を集めるようにして各部隊の統制を取ってもらいましょう。シノビ2名は偵察に。サムライの咆哮で敵の統制を乱し突破されないように。一般兵には弓を装備させ複数で一体を狙い各個撃破。中級指揮官を優先して狙い指揮系統に乱れを生じさせる。侯太天鬼が動いたら、攻勢に転じ戦火を拡大。但し、敵が撤退を始めたら追撃せず――と言ったところでしょうか」
「侯太天鬼と言えども、集中攻撃を浴びれば、あるいは‥‥と言ったところかの。あの鬼は尋常ではないが」
「敵の実力は推し量っておきたいところですね。負けない戦をすることです」
「うむ、実戦部隊の全体の指揮はお主らに任せよう。わしは最前線で兵を立て直すことに力を注ごうと思う。鬼軍の攻勢は強力じゃ」
 月酌 幻鬼(ia4931)は鬼面の奥で、どこか悲しげな瞳をしていた。
 新しい鬼を見つけ心底嬉しい。だが、今回は雛もいる、娘を護ってやらんと。今回は新しい得物の大斧「鬼殺し」をどれだけ扱えるか‥‥。
「おとうさん。頑張りましょうね。でも無理はしないで下さい。鳳華の魔将は尋常ではないのです」
 雛と幻鬼は本当の親子ではなかったが、お互いに親子のように慕いあっていた。
「今日はお前がいるからな。俺も死に急ぐつもりはない。お前を守ってやらんとな」
 幻鬼は言って、微かに笑うと、雛の頭を軽く撫でた。
 倉城 紬(ia5229)は龍安軍の将兵に会釈後、挨拶。人が多いができるだけ挨拶する真面目さんである。挨拶は男性が苦手なので、おずおずと恥ずかしそうにして廻る。
「‥‥あ、あの。倉城といいます。今回は宜しくお願いしますね‥‥はい」
「よろしくお願いしますね。倉城さんは巫女ですよね。一緒に頑張りましょう」
 同じ巫女の女性の龍安兵が気さくに声を掛けてくれた。
「は、はい‥‥頑張りましょう」
 倉城はぺこぺことお辞儀する。
「大軍だね〜〜確り殴り倒してやるとしますか!!」
 シノビの叢雲・暁(ia5363)は、言ってにこやかに笑みを振りまく。NINJAを志す元気溌剌とした娘である。
「僕は右翼スタートだね♪ 相対している敵軍の指揮官鬼と各種兵団鬼に狙いを絞り龍安軍の志体持ち前衛の人の援護入れながら交戦、って感じかな。相対中の敵軍の指揮官や兵団鬼を9割方潰したら、龍安軍の人誘って隣の敵軍の横腹に食い込む様に仕掛けに行く。それの繰り返しだよ〜〜」
「まあ、そう簡単に行くとは思わんがなあ‥‥」
 龍安サムライが苦笑して呟く。
「鬼相手に、容赦するつもりはないからね、僕は」
 叢雲は不意にサムライを真顔でじっと見つめる。それから、ころころと笑って「まあ行ってみよう〜!」とサムライの腕をぺたぺた叩いた。
「侯太天鬼に対応しつつ、まずは正面からの戦となりますね」
 コルリス・フェネストラ(ia9657)は言って、思案顔で栗原と言葉を交わす。
 大将の栗原玄海や龍安軍に味方の内、弓を使える人間を指揮させてもらえるよう願い出ると、弓兵を指揮することになる。
「龍安軍の内、偵察や伝令役のシノビ達の運用は各務原さんにお願いするが、私達弓兵がお味方の戦いを支援する為、敵軍へ放った一斉射撃が敵部隊のどこに当たったかを可能なら観測し、その後の敵軍の動き等から次の射撃をどこへ修正すればいいかを時々教えて頂けませんか?」
 と弾着観測も依頼する。
「大丈夫ですよ。戦況が大きく変わりましたら、そちらへもシノビを飛ばします」
 各務原は言って、コルリスに笑みを向ける。
「ありがとございます」
 フィリー・N・ヴァラハ(ib0445)は仲間たちや兵士たちに笑みを向けると声を掛けて回る。
「一瞬の迷い、判断の迷いが命取りだよ〜みんな、気をつけてね」
 騎士であるのに、泰拳士のような拳武装で戦うフィリー。とても騎士とは思えないが、本人はいたって気にしていない。
「お前さんも侯太天鬼に備えるのだったな。奴は恐らく手ごわい、お前さんの言うとおり、一瞬の迷いが命取りになるかも知れんな」
 幻鬼の言葉に、フィリーは頷く。
「危険な戦いだってことはみんな分かってると思うけどね〜、とにかく、生きて帰ろう。敵は無限のアヤカシ相手に、こちらは兵隊にも限りがあるんだしね。誰も死なせるわけにはいかないだろう?」
「尤もだ」
 そうして、龍安軍は、両翼中央に兵を配置すると、殺到してくる鬼軍に備えるように、防御陣を敷いた。
「勝負の分かれ目は、やはり敵将ですかね‥‥」
 各務原は、静かな瞳で前を見た。

 接近する両軍から、まずは弓の応射が行われる。小鬼の群れから数百発の矢が降り注ぐ。第一射を盾で防ぐ龍安軍。
「撃ち返せ! ――ってえ!」
「第一撃、放て」
 コルリスは弓兵たちに命じる。
 龍安軍からも矢が数百発放たれ、風を切って鬼軍に着弾する。射抜かれた鬼はバタバタと倒れて行き、瘴気に還元する。
 それから、弓による応戦が何度か続くと、鬼軍は各部隊の歩兵を前進させてくる。その中には、赤鬼や青鬼、白い鬼の姿がある。
「来ましたか‥‥ここからですね」
 各務原はすっと腕を持ち上げる。
「各部隊の志体兵、お願いします。敵の色つき鬼を止めて下さい。サムライの咆哮の後に、敵の前進を止めます」
 この時栗原は最前線にいて、後方の各務原の指揮を前線に伝える。
「サムライ衆! 咆哮を解き放て!」
 そして地を揺るがすサムライたちの咆哮が鬼の戦列を乱す。
「来よるぞ! 確実に一匹ずつ仕留めて行け!」
 栗原は槍を振りかざすと、部下を率いて突撃する。
「始まったか。皆の衆、ほな行くで!」
 星鈴は左翼にあって、兵を率いる。
「赤鬼や炎の鬼たちには志体持ちで連携や! 二人で常に当たるようにしろ! 一般人兵はその補助をしつつ、小鬼へ対応! 確実に一体ずつ仕留めるで! うちらん仕事はこいつらを後ろん奴らんとこに行かせんことや、気張って行きぃ!!」
 星鈴は小鬼の首を切り飛ばすと、殺到してくる鬼の群れに何とか陣を持ち堪える。自身も最前線で刀を振るい、鬼の群れを切り飛ばしていく。
「うちん武を見るんやったら、覚悟ん一つくらいしぃや!!」
 赤鬼と激突、紅蓮紅葉を叩き込む。敵の青龍刀を弾き返して、一撃を撃ち込む。
「無駄なあがきだ龍安軍! 貴様らはここで滅びる!」
「何がっ! その言葉そっくり返したる!」
 星鈴は赤鬼の腕を切り飛ばした。
 右翼でも白い鬼が猛威を振るい始めていた。吹雪の術が一般人兵士を巻き込み、命を奪って行く。
「そいつには僕たちで当たる! 志体持ちさん! 行くよ!」
 叢雲は手裏剣を撃ち込むと、白い鬼の側面から切り掛かった。
 ――キイイイイイン! と、刀が弾かれる。
「龍安軍の精鋭か! 面白い! そうでなくてはな! 雑魚を殺したところで、さして動揺もあるまい!」
「何を――! 許さないからね!」
 叢雲は怒りに燃えて切り掛かる。刀身が深々と鬼の肉体にめり込む。
「ぐお!」
「に〜〜〜〜〜! でやあ!」
 鬼の反撃をかわしつつ、思い切り刀を振り上げた。白い鬼の片腕が飛んだ。
「ちいい!」
 白い鬼は罵り声を上げると、口から吹雪を吐きだした。
「逃げるな!」
 しかし、次々と鬼が殺到してくる。叢雲は追撃する余力はなかった。
 コルリスは、弓兵を率いて、前に出ていた。
「お味方の窮地を救うように、複数人で一体を狙って下さい。確実にアヤカシを落としていきましょう」
 中央では、各務原が指揮を取っているが、戦況は混沌としている。
 最前線に栗原自らが出て鬼の前進を止めているが、敵は数で勝る。
 各務原は忍耐の時だと堪えていた。重いものを感じて胃の辺りをさすった。
「負けない戦をするのも厳しいですね‥‥」
 コルリスのもとへ、シノビが知らせを持ってやってくる。
「敵軍に青い鬼が出現し、戦列を整えております」
「分かりました――狙いを青い鬼に、集中攻撃です。小鬼は歩兵のみなさんにお任せしましょう。雷を使われると厄介です」
 倉城は集団戦に紛れて、慌ただしく回復作業に追われていた。前線から一般人兵士が続々と負傷して運ばれてくる。
「みなさん‥‥しっかりして下さい!」
「あ‥‥う‥‥水を‥‥」
 兵士は手を持ち上げて、倉城にかすれ声を出した。
「大丈夫です! すぐに怪我は治しますから!」
 神風恩寵を掛けるが、すでに兵士の生命力は最後のひとかけらしか残っていなかった。
 兵士の腕が力無く落ちる。
「あっ! そんな‥‥!」
 倉城は自身の力の無さに涙が溢れてくる。
「おい巫女さん! こいつを見てやってくれ!」
 だが、今度はまた血まみれの兵士が負傷した仲間を連れてやってくる。
 倉城は気力を振るい起して、兵士のもとへ歩み寄った。

 雛は、シノビからの情報を待っていた。雛を始め、羅轟、魚慈、幻鬼、フィリーらにサムライ10名、志士4名、泰拳士2名、巫女2名、陰陽師1名、弓術士1名、シノビ1名ほどが侯太天鬼の動きに備えていたのだ。
「侯太天鬼がどう動いても、出来るだけ早く動かなければ、被害が増えてしまいます」
 幻鬼は小鬼を切り飛ばすと、思案気に戦場を見渡す。
 そこへシノビが駆けこんで来る。
「侯太天鬼が動き出しました! 中央を迂回して、我が軍の右翼から大鬼を率いて突撃してきます!」
「来たか‥‥行くぞ」
「そう簡単には抜かせないよ」
 開拓者たちは龍安兵とともに右翼に向かった。

 叢雲が、突如突進してきた大鬼の集団に目を奪われていた。
「くっ‥‥! 敵の大鬼か! みんなしっかり!」
「叢雲!」
「あ、幻鬼さん! みんな!」
「あれが‥‥侯太天鬼か」
 幻鬼は、蛮刀を振るって兵士たちを切り飛ばしていくひときわ巨大な鬼を確認する。
「行くぞ、各務原に大鬼対応の援軍を送ってもらうように言ってくれ」
 幻鬼はシノビに伝えると、鬼殺しを手に侯太天鬼に向かう。
「ぐはははははは‥‥! 脆いわ! 死ね死ね死ね死ね死ね! 餌にならんだけでも幸運に思うのだなあ!」
 侯太天鬼は傍若無人な戦闘力で兵士を殺戮していく。
 開拓者たちと龍安兵はこの巨人と大鬼に立ち向かっていく。
「大鬼を頼む、侯太天鬼は何とかしてみる」
「承知しました。御無事で」
 龍安兵も大鬼は看過できない。開拓者に侯太天鬼を託した。
「その勢い! 止めさせて頂きます!」
 魚慈は侯太天鬼の側面に回り込んだ。
「んん‥‥? 何だ貴様」
「蛮勇の鬼将軍か、侯太天鬼、貴様は鬼の器に相応しくない、去れ」
 幻鬼も侯太天鬼の側面に回り込みつつ言葉を投げる。その後ろに雛。
「侯太天鬼‥‥斬る‥‥」
 羅轟が斜め正面に立ち、反対側にフィリーが立って挑発を仕掛ける。
「はいはい〜馬鹿鬼さんはこちら〜」
「何だとお‥‥人間! 俺様が誰か分かっていないようだな!」
 侯太天鬼は踏み込んで来ると、蛮刀を振り下ろした。
 ズウウウウウン‥‥! とフィリーがその長大な一撃を受け止める。無傷では済まない。足が地面にめり込む。
「やってくれるじゃないの‥‥さすが鬼の大将!」
 フィリーが押し返すと、羅轟、幻鬼、魚慈がスキル全開で打ち掛かった。
 足に連打を受けてよろめく侯太天鬼。だが、さして動揺はない。
「そんな程度で俺様が倒せるものか!」
 侯太天鬼は蛮刀を振るって、開拓者たちを薙ぎ倒した。
「皆さんしっかり」
 雛が閃癒で支える。
 そこへ倉城と各務原、コルリスが援軍と共に駆けつける。
「敵将が動いたと聞きました」
「助かった」
 侯太天鬼を取り囲み、一斉攻撃を浴びせる。
「急々如律令――!」
 各務原は斬撃符を叩き込み、コルリスはスキル全開の一撃を撃ち込む。
「鬼殺しよ‥‥力を‥‥」
 幻鬼が一撃を撃ち込み、羅轟、フィリー、魚慈も打ち掛かる。倉城は最後の練力を神楽舞に使った。
 全攻撃を侯太天鬼の右足に集中させる。
「ぬううおおおおおお‥‥! 雑魚ども!」
 侯太天鬼は、忌々しげに足元の開拓者たちを振り払うと、蛮刀で幻鬼と魚慈を打ち倒した。しかし、右足はズタズタになっていた。
「ちいっ‥‥油断したか!」
 侯太天鬼は右足を引きずって、それでも囲みを蹴散らして後退する。
 やがて鬼軍も潮が引くように後退して行く。
 龍安軍も一般人兵士に犠牲が出たが、今は悲しむことも出来ない。次の敵襲に備えて、臨戦態勢のまま軍を退くしかなかった。