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■オープニング本文 栢山遺跡――。 新たに発見された遺跡である。天儀王朝の許可が下りたことで、黒井奈那介は開拓者ギルドの協力を取り付け、この遺跡の探索を開始していた。少なくない数の開拓者がまずは遺跡に乗り込み、幾ばくかの成果を上げていた。 この遺跡に隠されていると言う「開門の宝珠」が、新大陸への道を切り開くと言われている。神威人の伝説によれば、新大陸へと続く嵐の封印を開く鍵が、すなわち開門の宝珠がこの遺跡に眠っていると言うのだ。 ギルド相談役の橘鉄州斎(iz0008)は、再び開拓者たちを連れて、遺跡の前まで来ていた。 「用意はいいか? 探索の結果、新たな階層が発見された。強力な番人のアヤカシが守っている遺跡内部の別の階層だ。汗血鬼のテリトリーに踏み込まないといけない」 開拓者たちは、その名を聞いて、事前情報をおさらいする。汗血鬼とは、一定の縄張りを徘徊する強力な遺跡の鬼である。恐るべき戦闘能力を持っていることで知られる。 今回発見された新たな階層には、その汗血鬼が複数体確認されている。逃げることは出来ない。どこを通っても汗血鬼と遭遇するのは確実だ。 「汗血鬼が守る階層か‥‥こっちは宝珠の本命かねえ?」 開拓者の言葉に、鉄州斎は冷たく光る青い瞳を落として思案顔。 「それは分からん‥‥汗血鬼は油断ならん相手だ」 「少なくとも情報が欲しいわね。汗血鬼を倒した先に何があるのか、ね」 「ああ。ところで、前に踏み込んだ連中が戻ってきていない。汗血鬼にやられたか、まだどこかで生き延びているかもしれない。助けられるものなら助けたい」 鉄州斎の言葉に、開拓者たちは頷く。 「では行くか」 そうして、また新たな開拓者たちが、栢山遺跡に踏み込んでいくのだった。 |
■参加者一覧
朝比奈 空(ia0086)
21歳・女・魔
星鈴(ia0087)
18歳・女・志
鈴梅雛(ia0116)
12歳・女・巫
奈々月纏(ia0456)
17歳・女・志
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
沢村楓(ia5437)
17歳・女・志
朱麓(ia8390)
23歳・女・泰
メグレズ・ファウンテン(ia9696)
25歳・女・サ
琥龍 蒼羅(ib0214)
18歳・男・シ
モハメド・アルハムディ(ib1210)
18歳・男・吟 |
■リプレイ本文 汗血鬼の階層に降りた開拓者たちは、多数決で赤のブロックに進むことに決定すると、そこへ足を踏み入れた。 2列に隊列を組んで、前衛と中衛、後衛に分かれて遺跡内部を進む。 橘鉄州斎(iz0008)は、変則的に前衛から後衛までの警戒に当たっていた。 「それにしても‥‥凄い作りですね、この遺跡は。どうやってこんなものを作ったのでしょうか‥‥」 朝比奈 空(ia0086)は言って、松明の明かりに照らされた壁を見やる。滑らかな壁はつやつやとした光沢を放っていて、見たこともない文字がびっしり刻み込まれていた。 「橘はん、またよろしゅうに。‥‥しかし‥‥えらいところやな」 星鈴(ia0087)の言葉に、橘は松明を振り向けた。 「地上とは全く別世界だぜここは‥‥しかしな‥‥」 「誰かが作った洞窟みたいですけど、一体誰が作ったのでしょうか?」 鈴梅雛(ia0116)の問いに、朝比奈は思案顔で応じる。 「遺跡と言うのは相当古くからあるのですよね? だとすると‥‥この遺跡も遥か昔の産物なのでしょうか‥‥」 「ウチ、藤村ゆーねん。宜しくお願いします♪ 何でもギルドの人やってなあ‥‥御苦労さんですね♪」 藤村纏(ia0456)は、橘に声を掛ける。橘は肩をすくめると、 「現場に出るのもギルド相談役の務めなのでな」 「相談役‥‥?」 首を傾げる藤村。 「あんた、橘はんは開拓者ギルドの相談役をやってて、凄腕のサムライなんやで」 「ほわ!? あの人、ギルド相談役やってんかぁ!!?」 星鈴の指摘に、藤村は真っ赤になりながら恥じる。 「相談役と言ってもギルド員の一人には変わりはないんだがな」 橘はもう一度肩をすくめて、松明で回りを照らし出す。 「栢山遺跡かー。これぞ開拓! て感じだよな。腕がなるぜぃ!」 言ったのは赤毛の熱血少年ルオウ(ia2445)。 「この先に汗血鬼って奴がいるんだな‥‥どんなやつなんだろうなぁ」 熱血ルオウ少年は、意気盛んに前方に進んでいく。この熱血少年、こう見えてギルド屈指の実力者である。 「確かに、汗血鬼は恐ろしい相手となりましょう。だが、倒さなくては‥‥」 沢村楓(ia5437)は言って、静かな瞳を周囲に向ける。 「ふむ‥‥確かにこりゃあ人工物っぽいなぁ。でもどうやって作ったんだろうか」 朱麓(ia8390)は、不思議な洞窟の内部に、不可解な表情を見せる。 「それが分かればなあ」 橘はそう言って、前方の闇に目を凝らした。 「確かに不可解ですね。こんなものを作るのは、およそ現代の技術では不可能に見えます」 メグレズ・ファウンテン(ia9696)はそう言うと、手近に見える赤い壁を刀で突いた。赤い光の壁は、微動だにしない。 「汗血鬼か‥‥、厄介な相手ではあるが事前に能力が分かっていればやりようはあるだろう」 琥龍 蒼羅(ib0214)は言って、思案顔。 「アナー、それにしても、これらの文字は‥‥」 モハメド・アルハムディ(ib1210)は呟き、壁に触れる。幾何学的な文字が、自身に解読可能か確かめてみる。しかし読めない。 「ラ、読めませんか‥‥、ラーキン、ですがもしや天儀の学者ならば‥‥」 モハメドは壁の文字を模写しておき、依頼が終わった後で確認することにする。 「ヤー、橘さん、今までこんな文字を見たことはありますか?」 「ああ。他の遺跡で似たようなものを見たことはあるが‥‥まあ俺は宝珠の採掘に出かけたことがあるだけだが」 「そうですか‥‥ナァム、あれは?」 モハメドは通路に倒れている人を発見して、仲間たちに声を掛ける。 「あそこに人が‥‥! 先行した方ではないでしょうか」 開拓者たちは足を進めて、倒れている女性を助け起こした。 「おい‥‥!?」 朱麓は助け起こしたが、無残に切り裂かれた肉体に愕然とする。 「何ちゅうこっちゃ‥‥おい、あっちにも」 星鈴はもう一人、男性を発見して駆け寄る。 「息はありますか?」 朝比奈と雛は、二人に確認する。 「駄目だね‥‥こっちは死んでる」 「こっちもあかん、やられとる」 「ヤーイラーヒー、何という事でしょうか‥‥」 「酷いようだが、力が足りなかったようだな」 琥龍はそう言って、周囲に目をやる。 「死体があるということは、そろそろ蛮鬼のテリトリーというところか」 「そのようだな」 橘もまたアイスブルーの瞳を周囲に向ける。 「やってくれるじゃねえか‥‥鬼ども! 許さねえぞ!」 ルオウ少年は怒り心頭で壁を殴りつけた。 「畜生‥‥みなやられちまったのかよ」 「行きましょうか‥‥この遺跡の番人を、何としても倒さなくては」 楓は、悲しみを押し殺して、ルオウ少年の肩に手を置いた。 「楓‥‥」 「せめて、遺品だけでも回収してあげましょう。家族がいるなら、渡してあげたい」 朝比奈は、亡骸から遺品を回収して、そっと立ち上がった。 ――と、遠方から咆哮が轟いてくる。 「隊列を組み直さんと、鬼が近付いてるかも知れんで」 藤村は仲間たちに言葉を投げる。 開拓者たちは、再び隊列を組んで、前進する。 マッピングをしながら、楓は口を開いた。 「幾つか部屋を通り過ぎましたが‥‥敵の姿がありませんね。背後からの攻撃に注意しないと」 ‥‥暗闇の中で、醜悪な赤い鬼たちが徘徊していた。 『侵入者あり‥‥』 蛮鬼たちは赤く光る瞳で闇を見通し、ざわざわと移動し始めていた。 『侵入者を殺せ‥‥』 人間には意味不明な言葉を発しながら、蛮鬼たちは洞窟に浮かび上がった明かりを目がけて殺到して行く。 『殺せ‥‥!』 「予想通りだ。奴ら、集まってきたぞ」 朱麓は、通路の影から、松明の明かり目がけて殺到してきた蛮鬼の群れを見つめていた。 モハメドの怪の遠吠えで蛮鬼を引き付け、開拓者たちは身を隠して待ち伏せを仕掛けたのだ。 罠に掛かった蛮鬼たちは、誰もいない部屋に突入してきて、わめき散らした。 開拓者たちは、朱麓の号令とともに突撃した。 「やるよ! みんな!」 一斉に飛び出した開拓者たちは蛮鬼に逆襲を掛ける。 蛮鬼の首を切り飛ばし、袈裟切りに叩き伏せ、瞬く間に奇襲で3体の蛮鬼を沈めた。 「仇打ちや! 思い知れ!」 藤村は蛮鬼を切り裂き、ルオウは裂帛の気合とともに蛮鬼を一刀両断した。 星鈴、楓、朱麓、メグレズ、琥龍らも次々と蛮鬼を粉砕して行く。続々と瘴気に還元して行く蛮鬼の群れ。 態勢を立て直す頃には、蛮鬼は5体程度に数を減らしていた。それでも、蛮鬼は恐れる風もなく、立ち向かってくる。 「しぶとい‥‥が、それだけだ」 琥龍は立ち回りつつ、蛮鬼を撃砕する。 「ちっちゃいのばっかりワラワラ来おってからに。お前らん用なんてあらへんわ!!」 星鈴は槍を振るって、蛮鬼の首を吹き飛ばした。 「討たせてもらいますよ」 メグレズも容赦なく蛮鬼を叩き伏せた。 橘も刀身を振り下ろすと、そのまま衝撃波が大地を貫通して蛮鬼を両断した。 「おっ、やるな相談役」 ルオウ少年は横目でその一撃を確認して、目の前の蛮鬼を粉砕する。 やがて、鬼の群れは全滅させられた。 「うまくいったな」 橘はそう言って、ルオウと拳を打ち合せる。 「怪我人はいないようですね」 朝比奈は吐息して松明を持ち上げる。 「アルハムドリッラー、良かった、何よりです」 モハメドも安堵の息を漏らすと、橘に笑顔を向けた。 蛮鬼をおびき出す策を考えたのは、橘であった。 「さて、と、どうだ沢村。地図は」 「はい、かなり進んできましたね。部屋も大きくなってきましたし、蛮鬼がいることを考えますと、泥の塔や汗血鬼が近いのかもしれません」 「そうか‥‥」 仲間たちは地図を覗き込むと、北へ向かって伸びる通路や部屋を確認する。ほぼ一直線に道は伸びている。 壁は依然として幾何学的な文様が刻まれており、モハメドの関心を揺さぶっていた。 そうして、蛮鬼の攻撃をそれから2回にわたって跳ね返した開拓者たちは、広間に出る。 「ここは‥‥そろそろ噂の泥の塔がいるかな」 朱麓は前に出る橘がかざす松明の明かりに、前を見やる。 コオオオオオオオオオオオ‥‥。と、何物かの息が部屋中にこだましていた。 ずるずる‥‥ずるずる‥‥! と異形の気配が部屋の中にあった。 「気をつけろ」 橘が手を差しだすと、開拓者たちは散開して備える。 やがて、暗闇から姿を見せたのは、やはり暗き泥の塔であった。大きい。長い触手を振り回して、毒々しい霧を吐いている。 「まともに行く必要はない、あたしと沢村で引き付けるから、一気に抜けてしまおう」 「しかし触手に霧、‥‥なんだこの嫌な予感しかしない攻撃手段は」 朱麓と沢村は、当初の予定通り、泥の塔を引き付け役に回る。 沢村はアヤカシの近くに鈴を落として反応を見るが、泥の塔は鈴を踏み潰してやってくる。 「泥の塔の動きは鈍い。一気に抜けましょう。朱麓さん、沢村さん、お願いします」 メグレズは言って、泥の塔と距離を保つ。 「ああ、行っておくれ。あたしらもすぐに追いつくよ。行くよ沢村!」 「はい」 朱麓と沢村は泥の塔に切り掛かった。触手を切り飛ばしつつ、本体に打ち掛かる。 開拓者たちはその隙に回り込み、広間を駆け抜ける。 泥の塔が向きを変えるところへ、朱麓が切り掛かる。 「おやまあ、あんたの眼は節穴かい? こんなに活きの良い獲物が傍に居るってのにさぁ‥‥余所見するだなんて酷いじゃないか!」 「お前の敵はこっちだ」 沢村も加速して塔に切り掛かる。 「行け行け!」 橘は開拓者たちに言葉を投げ、一気に駆け抜ける。開拓者たちは泥の塔の横をすり抜けて広間を後にする。 「よし、あたしらもここまでだ! 行くよ沢村!」 朱麓と沢村も泥の塔から離脱、一気に引き離して、広間から脱出する。 ――泥の塔は追ってこない。 開拓者たちは更に遺跡の奥深くへと進んでいく。どこかじっとりとした空気に、血生臭い匂いが鼻を突く。 「何です‥‥?」 モハメドは立ち止り、眉をひそめた。 「ちっ‥‥こいつは‥‥」 橘が松明を持って前進する。 浮かび上がってきたのは、ずたぼろに切り裂かれた人間の死体。凄惨な光景だ。壁にも赤い血がべっとりと付いている。 「ここで全滅か‥‥この馬鹿力は汗血鬼の仕業だな」 琥龍と朱麓は冷静に死体の傷跡を調べた。 「うう‥‥うちはこんな光景見るのに慣れてないんや〜可哀そう」 藤村は目を覆って心を強く持った。藤村はそれなりにベテランの開拓者だが修羅場な依頼は少ない。 前方の闇から、冷たい空気に乗って、異様な気配が流れてくる。開拓者は敵の凄絶な殺気を感じて、隊列を組み直した。 「うし! 行くぞ! いよいよボスか!」 ルオウ少年は怯むことなく、先頭に立つ。 明かりが灯った部屋に到着した。円形状の広い部屋だ。待ち構えていたのは、赤い巨人的なグロテスクな鬼だ。汗血鬼である。 『ふふふ‥‥近頃ここまで来る奴が増えて来た。番人の仕事が出来る喜びはこの上ない。お前たちもここで我が蛮刀の錆にしてくるわ!』 汗血鬼の咆哮は何を言っているのか不明だが、開拓者たちは少なくとも友好的な言葉でないことは察した。 「来るぞ!」 『――死ね!』 汗血鬼は爆発的な勢いで加速してきた。 ルオウが真正面から受け止めた。朱麓がすかさず回り込み槍を叩き込むが弾かれた。吹っ飛ぶルオウ。 星鈴、藤村、沢村、メグレズ、琥龍、橘らが一斉に打ち掛かる。 連打を食らっても残酷な笑みを浮かべたまま、攻撃を跳ね返す汗血鬼。 モハメドが吟遊詩人のスキルで支援しつつ、リュートを奏でる。 雛は神楽舞・攻で味方の支援に回る。 「精霊の力よ――!」 朝比奈は精霊砲を叩き込んだ。精霊力の光が汗血鬼を貫く。 「ヤッラー、効いていますよ!」 「怯むな! 鬼一体だ! 一斉に行くぞ!」 朱麓は味方を鼓舞して槍を振るう。炎魂縛武を叩き込んだ。槍が貫通する。 しかし汗血鬼は朱麓を捕まえると、蛮刀で叩きのめした。 「死神と踊れ」 沢村の大鎌による白梅香が汗血鬼に撃ち込まれる。切り裂かれる汗血鬼にルオウがタイ捨剣を叩き込んだ。凄絶に切り裂かれる汗血鬼の肉が飛んだ。 星鈴は紅蓮紅葉を撃ち込み、藤村もスキル全開の一撃を見舞う。さらにメグレズ、琥龍、橘が連続攻撃を浴びせる。 真っ赤な汗血鬼が咆哮して、蛮刀を一振りすれば、開拓者たちは吹き飛んだ。 「すごい力‥‥でも負けへんで!」 藤村は立ち上がった。 汗血鬼はすでにブーストモードに入っており、力が激増していた。凄絶な咆哮を上げて切り掛かってくる。 「速い――!」 ルオウは直撃を受け止めた。 「噂のブーストって奴か? 既にぼろぼろなのに、強くなるっていう」 ルオウはもう一度スキル全開の一撃を撃ち込んだ。汗血鬼の腕が飛ぶ――! 「ヤッラー! 今です!」 モハメドはリュートを奏で続ける。雛も神楽舞で一気に勝負を掛ける。 開拓者たちの連撃が汗血鬼を追いこんでいく。 「最期に良いモンみせてやる‥‥修羅の型・朱雷剛槍斬!」 雷鳴剣+炎魂縛武の一撃、朱麓の一撃が、汗血鬼の肉体を再び貫く。 「やるやんか朱麓はん!」 星鈴もスキル全開の一撃を叩き込む。 藤村、沢村、メグレズ、琥龍、橘たちも、更に一斉攻撃を仕掛ける。 ずたずたに切り裂かれる汗血鬼。最後まで凄まじい力で反撃してくる、そして笑っていた。 ザン――! と沢村の鎌が汗血鬼の首を切り飛ばした。そして崩れ落ちる汗血鬼。黒い塊となって、瘴気に還元して消失した。 「やったな‥‥」 「どうにか倒すことが出来ましたね」 それから開拓者たちは、汗血鬼が守っていた更に奥へ通じる道へと至る。 最後の道を抜けると、行き止まりの部屋にぶつかった。 と、部屋に踏み込んだところで、突然光が降ってくる。目を開くと、空中に映像が投影されていた。 「何だこれ?」 ルオウは茫然と見つめる。 「――駄目だ! もう船は持たないぞ! あれはもうすぐやってくる!」 「――他の船はどうした!」 「――何も見えない! 全滅させられたかも知れない!」 映像はどうやら飛空船の内部のようで、話している人々は獣人族の人間たちだった。 「――くそ! 一体どうすれば! あの怪物に捕まったら終わりだ!」 「――前方に光が見えます! 青い空が!」 そこで映像はぷつっと途切れた。 そして、部屋の中央に置かれている、光を放つ30センチ程度の鏡のような物体を目に留める。 「これは‥‥?」 沢村が手に取る前に、橘を顧みた。 「やったな。開門の宝珠だぞ!」 「そうなんですか?」 「ああ。これだ。間違いない」 かくして開拓者たちは、開門の宝珠を手に入れて、遺跡を後にする。 ‥‥帰還したモハメドは、書き写した遺跡内の文字を依頼人の考古学者、黒井奈那介に見せる。 「マーハーザー、これは‥‥!?」 「ふむ、こいつは、これまでにわいも見たことがあるけどな。新大陸の手掛かりとは多分関係ないで」 「そうですか‥‥」 モハメドは、謎の幾何学的な文様に目を落とすしかなかった。 |