【天龍】骸天羅王の牙
マスター名:安原太一
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 難しい
参加人数: 10人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/06/25 20:28



■オープニング本文

 武天国、龍安家の治める土地、鳳華――。
 アヤカシとの大規模な激戦が続くこの土地で、静かに人里を侵食するアヤカシがいた。
 その名を骸天羅王。ぼろぼろのローブをまとった骸骨で、死人アヤカシを使役する。見た目によらずその格闘戦能力は強力で、また瘴気から無数のアヤカシを召喚する術を持っていた。
 そうして、骸天羅王は、疾走する影となって静かに人里に入り込んでいく。龍安軍の警戒も、大がかりな敵の動きは察知できるとは言え、骸天羅王一体を発見するには至らない。
「クカカ‥‥忍び寄る影とはよく言ったものだ」
 骸天羅王は里の端から侵入すると、村の中へ入り込んでいく。
 民が歩いている。骸天羅王は民に殺到すると、骨の腕から瘴気を投げた。
 瘴気が民を貫通して、生命力を失った人々がばたばたと倒れた。
「クカカ‥‥!」
 そうして、骸天羅王は腕を一振りすると、空中の瘴気から10体程度の死人を形成して村に解き放つ。
 やがて、死人たちが次々と民に襲い掛かって行く。

 ‥‥前線に近い場所で、予備軍を率いる龍安軍の武将、直代神樹は里に死人アヤカシが侵入しているとの報告を受ける。
「死人アヤカシですか‥‥数ヶ月前に骸天羅王を撃退して以来、死人の動きはありませんでしたね」
 神樹は、村が死人の群れに襲われていると言うこの事件に、背後に死人を操る者がいるのではないか――そう想像する。
「ただの死人ならば‥‥いずれにしても、ここから大軍を動かすわけにはいきませんね」
 そうして、神樹は、戦場にいる開拓者たちに声を掛けると、村を襲っている死人たちを討伐するように依頼する。
「数ヶ月前に骸天羅王が出没しています。もしかすると、これは予兆なのかもしれません。嫌な予感が当たらなければ良いのですが」
 神樹は、そう言って開拓者たちを送りだした。


■参加者一覧
朝比奈 空(ia0086
21歳・女・魔
鈴梅雛(ia0116
12歳・女・巫
華御院 鬨(ia0351
22歳・男・志
鴇ノ宮 風葉(ia0799
18歳・女・魔
鳴海 風斎(ia1166
24歳・男・サ
白蛇(ia5337
12歳・女・シ
ルエラ・ファールバルト(ia9645
20歳・女・志
コルリス・フェネストラ(ia9657
19歳・女・弓
ヴェニー・ブリッド(ib0077
25歳・女・魔
伏見 笙善(ib1365
22歳・男・志


■リプレイ本文

 鳳華の里の中を駆け抜ける開拓者たち――。直代神樹が送りだしたのは10名の開拓者たちであった。彼らはまだ、待ち受ける脅威を知らない。
「死人に襲われる、ですか‥‥おおよその予測はつきますが、まさか再び出てくるとは」
 朝比奈 空(ia0086)は言って、眉をひそめる。先の戦いで骸天羅王と戦った時、圧倒的な戦闘能力に吹き飛ばされた。
「死人の召喚術‥‥神樹殿はそう言われていましたが、背後にいるとすれば脅威ですね」
 鈴梅雛(ia0116)は走りながら、神樹から聞いた骸天羅王に関する情報を思い返していた。

「鈴梅さん、骸天羅王は狡知に長ける死人使いです。罠を張り巡らせることを好むと聞いています。民を人質に取る可能性は十分にあります。もし骸天羅王がいれば、こちらの動きは監視されていると思っていいでしょう」
「あの、神樹様、民は無事でしょうか」
「今は、一刻も早く駆けつけるしかありません。これ以上被害が拡大する前に」
 神樹は指揮官であり、最悪の事態を想定していた。死人の大軍が里に出没するとなれば、里のど真ん中で骸天羅王と戦わなくてはならない。
「分かりました。今はひいなに出来る限りのことを。骸天羅王がいるとしたら、ここで食い止めないと」
「頼みますよ雛さん」
 
「‥‥骸天羅王が入り込んでいるとすれば一大事です。早く駆けつけないと」
 雛は焦る気持ちを抑えて走る。
「この前の公演中止(撤退)は、失敗やったどすぅ」
 歌舞伎役者の華御院 鬨(ia0351)は、可愛くちょっとムスッとした表情で仲間たちに語りかける。外見年齢が14歳になっている。
「‥‥?」
 仲間たちは、鬨の変身に首を傾げる。
「うち、今は可愛い系の女性を演じる修行をしているんどすぅ♪ まだまだ修行中どすが、そう言うわけなんどすぅ♪」
 以前のたおやかな雰囲気はなく、全く可愛い女の子である。七色変化の変身ぶりである。ちなみに鬨はれっきとした男で、職業柄女形をしている。
「すごい変身能力ですね」
 仲間たちは感心していた。
「しっかしあのぼろ髑髏だったかしら? たちが悪いわよね。アヤカシの中でも知恵の回る奴にろくなのはいないわね」
 鴇ノ宮 風葉(ia0799)は、言って拳をばきばきと鳴らした。野望は世界征服。いつの日か。だがアヤカシは全くの邪魔者だ。
「あたしの邪魔する奴はぶっ飛ばす! ぼろ髑髏はきっちり片づけてやるわ!」
「それにしても、鳳華の七魔将ですか。少し休んでいる間に、とんでもない事態になっているようですね。僕の力がどこまで及ぶか分かりませんが‥‥微力を尽くすとしましょうか。永遠ならざる平和のために」
 鳴海 風斎(ia1166)は言って、自嘲気味に笑った。久方ぶりに戦場を求める心が燃え上がる。
 後方撹乱のつもりなのだろうけど‥‥この程度の手勢で村を襲った事‥‥後悔させてあげる‥‥この機会を逃さず‥‥死人の王を倒すよ‥‥。龍安家臣のシノビ少女、白蛇(ia5337)は、卑劣な骸天羅王の動きに怒りが湧いていた。無辜の民を一方的に殺戮するアヤカシのやり口に、感情が揺れる。
「人質がいるとしたら‥‥無事だと良いけど‥‥必ず救って見せる‥‥」
「差し当たり、囮班で死人たちを封じ込め、別動隊で万が一の人質に備える‥‥と言ったところでしょうか」
 ルエラ・ファールバルト(ia9645)は、全員で決めた事柄を再確認する。
「骸天羅王がいるとすれば、こちらが出てくることは予測しているでしょうから。人質は取られている可能性は大きいですね。それをせずともあのアヤカシは相当の強さではありますから、注意しないと人質はただ殺されるかも知れません。警戒しませんと」
 コルリス・フェネストラ(ia9657)の言葉に、仲間たちは頷く。骸天羅王の戦闘能力は尋常ではない。あれから開拓者たちが成長したと言っても。
「ん〜アンンデッドの影に骸天羅王ありかしら。前回撃退されてから力でも蓄えていたのかしら? あたしたちも骸天羅王を研究してるけど、骸天羅王の方も開拓者を研究してるかもね〜。ともかくアンデッドたちの暴挙を止めないと」
 魔術師のヴェニー・ブリッド(ib0077)。報告書をつぶさに読んで、骸天羅王の攻撃力は確認していた。
 無力な人里を蹂躙ですか‥‥、敵さんもまたむごいことをしなさる〜、ミーたちで何とかしないといけませんね〜。伏見 笙善(ib1365)は胸の内に呟く。非常な戦場を潜り抜けて来た筈の伏見だが、無力な民が犠牲になるのはやはり慣れないのか。
「あそこですか‥‥件の村は」
 朝比奈は立ち止った。
「‥‥それじゃ、僕たちは別の方向から入り込むよ‥‥」
 白蛇は、別動隊として別れる。
 まずは正面から死人を倒す役割を朝比奈、鈴梅、華御院、鳴海、コルリス、ヴェニー、伏見たちがこなす。
 それから、万が一人質などに備える別動隊が、鴇ノ宮、白蛇、ルエラたちである。
「では行きますどすぅ♪」
「そっちは任せるよ! 骸天羅王の裏を掛けると良いけど‥‥」
 そして、開拓者たちは村に踏み込む。

 ――グルルルルルル‥‥アアアアアアアアア!
「ひいいい! 助けて!」
 醜悪な死人アヤカシが素早く村人に襲い掛かる。
「ひいい!」
「きゃああああああ――っ!」
 ――グガアアアアアア! (がぶっ! ばきばき!)
 血まみれの口に肉を加えて、死人は半死半生の民に食らいついた。いっそ意識がなければ想像を絶する苦しみから解放されるだろう。だがその生きながら食われる苦しみを、アヤカシはより満足そうにむさぼり食う。
 と、次の瞬間、死人アヤカシの肉体を凄絶な一撃が切り裂いた。鬨の一撃。
「遅れた‥‥いい加減にしなはれよ」
 朝比奈と鳴海が討ち掛かると、アヤカシは反転して攻撃を受け止める。
「許しませんよ。このような横暴――」
 コルリスは矢を連射して、次の攻撃に備える。ズドドドド! と矢が死人に突き刺さって肉を切り裂く。
「そ〜ら!! 開拓者様のお通りですよ〜、斬られたい方からかかってきなさいなっ!!」
 伏見は死人に切り掛かると、敵の腕を切り飛ばした。
 ――グルルルルルル‥‥アアアアアアアアア! ガオオオオオオオオ!
 死人は咆哮して仲間たちを呼ぶ。
 あちこちから、咆哮が轟いてきて、死人が続々と集まってくる。ざわざわと、10体以上の死人たちが集結してくる。
 開拓者たちは死人たちをいったん押し返すと、ぱっと散開した。
「はい、いらっしゃい〜」
 ヴェニーはブリザーストームを叩き込んだ。猛烈な白い吹雪が死人たちを包み込む。
 アヤカシ達は絶叫するが、怒り狂って開拓者たちに向かってくる。

 雛はその場から離れると、村の中を見て回る。村人たちの亡骸があちこちに散らばっている。
「ひどい‥‥」
 自分とさして年の違わない子供の遺体に、雛の心は締めつけられた。
 それから、逃げ延びた、隠れている民を発見する。
「あ、無事ですか」
「ひっ! 助けて! 助けて!」
「待って下さい。ひいなは龍安家臣の巫女です。皆さんを助けに来ました。間に合わなくてごめんなさい」
「お願いです‥‥助けて! 助けてくれ!」
「ひいなは‥‥」
「うわあああああ!」
 村人は棒を振り回して突進してきた。がしっと、雛は相手の大人を受け止めた。民の手を掴んでどうにか言葉を絞り出す。
「本当にごめんなさい。ひいなたちがもっと早く来ていれば‥‥」
 そこで、ようやく村人は正気に戻って、へなへなと崩れ落ちた。
「あ、あんたは‥‥」
「龍安家臣のひいなと言います。死人に襲われていると聞いて、助けに来ました」
「そ、そうだったのか‥‥俺はてっきり奴らに見つかったのかと」
「ここはひどい有様ですが、死人たちに全滅させられたのですか」
「いや、多くはどうにか逃げ延びたけど、俺みたいに遅れたのもまだいると思う。あの死人たち、突然村に出現して‥‥後は地獄だよ。何でこんな戦闘地域から離れた村に突然死人が‥‥」
「立てますか」
 雛は男に手を貸すと、民は立ち上がった。
「逃げて下さい。とにかく、今ここは危ないです。もしかすると、死人の大軍がやって来るかも知れません」
 それから雛は村の中を探ってみる。
「これだけの数が警戒をすり抜けたとは思えません。やはり骸天羅王でしょうか」
 仲間たちのところへ戻ると、死人を撃破していた。

「ふう‥‥中々しぶとい死人だったどすうぅ」
「やり切れませんね‥‥一歩遅れましたか‥‥あ、鈴梅さん」
「村の中はひどいことになっています。まだ生き残っている方もいるみたいですけど、逃げ延びた人も沢山いるみたいです」
「そうですか‥‥? あれは‥‥?」
 建物の影から、新手の死人たちが姿を見せる。今度は骸骨剣士たち。オオオオオオオオオ! 咆哮すると、骸骨たちは突撃してくる。
「これは‥‥骸天羅王が近くで召喚しているのでしょうか」
「奴は近くにいるのでしょうかね? 元を絶たないと切りがない」
 
 ‥‥骸天羅王は、家屋の中に隠れて、遠目に開拓者たちの様子を確認していた。
「クカカ‥‥龍安軍が気付いたか。どうやらそれなりの熟練を送り込んできたと見えるな」
 骸天羅王は、青白い炎が宿る瞳で、後ろの民を見据えた。
「立て。お前たちが役に立つ時が来た」
 民は震えながら立ち上がると、骸天羅王に引っ立てられて、開拓者たちの方へ歩いて行く。

「あれは‥‥?」
「またアヤカシですか‥‥でも、村人が捕まっていますね」
「待って下さい。あれは‥‥骸天羅王です」
「何と、あれが?」
 開拓者たちは、骸骨剣士を撃退して、ゆっくりと歩いてくる骸天羅王を油断なく見据える。
「クカカ‥‥龍安軍か。遅かったな。待ちくたびれたぞ」
「貴様は紛れもなく骸天羅王ですね」
「全くその通り。先の戦では正面からぶつかったが、今回はからめ手よ。ほれ、人質を連れて来た。こ奴らの命が惜しくば大人しく引き返せ」
 骸天羅王とはまだ距離がある。
 開拓者たちはじり、と間を詰めるが、骸天羅王は民の首を掴んで持ち上げた。
「聞こえんのか。貴様ら」
 その背後から、風葉と白蛇、ルエラが接近していた。視線を交わす開拓者たち。
「飛び出すタイミングが‥‥どこで行くか」
「今はまだ無理だよ‥‥骸天羅王も警戒している」
「危険が高すぎますね。飛びこむには。仲間たちが注意を逸らしてくれるのを待ちましょう」
 骸天羅王は背後に開拓者たちが接近していると知る由もなく、村人を投げ捨てた。民を踏みつぶそうとする骸天羅王。
「さあどうするか。悩ましいところだな。民の命を救うには、お前たちの献身が必要だぞ。龍安軍ならば、民を救うために身を呈するのが当然であろう」
「お前のことなど信用できんどす、どうせ仏にするんやろ」
「さて、それはどうかな。試してみるか? クク‥‥」
「くっ‥‥卑劣な!」
 コルリスは演技して、感情を表に出して、弓を番えて前に出る。
「コルリス殿!」
 伏見が制するが、コルリスは踏み出した。
「どうせこいつは民を殺します! 多くの民が犠牲になるでしょう‥‥ならば、今ここでこのアヤカシを倒すことが、鳳華の民のため。この地の脅威を取り除くことが、私たちが為すべきことです!」
 コルリスの迫真の演技に、骸天羅王に微かな隙が生じる。
「武器を捨てろ。降伏すれば、民を放してやる。お前たちも逃がしてやるぞ」
 そこで、コルリスはおとなしく弓を放った。
「他の連中もだ。武器を捨てろ」
「‥‥‥‥」
 開拓者たちは、白蛇たちに視線を投げながら、武器を放った。
 骸天羅王はにいっと笑った。
「よし、ワシに逆らうとどうなるか、龍安軍に見せてくれよう」
 骸天羅王は歩き出した。
 その一瞬のすきを、風葉たちは見逃さなかった。
「今よ!」
 飛び出す風葉、白蛇、ルエラ――。全力で駆け抜け、骸天羅王の背後を突き、民を確保する。
「アタシの名は鴇ノ宮風葉。‥‥世界を征服し、ついでにアンタをこれから吹っ飛ばす女だッ! ありったけの精霊力を叩き込む‥‥遠慮しないで受け取るといいわ‥‥!」
「ぬっ――!」
 風葉は精霊砲を撃ち込んだ。弾丸が骸天羅王の頭部を直撃して傾かせた。
「やりましたね――! 行きますよ!」
 朝比奈たちも素早く前進して武器を拾うと、骸天羅王を包囲する。
「カカッ! うまく騙されたわ‥‥が、ここからはお前たちの予測を越える。カカ!」
 開拓者たちはじりじりと、骸天羅王との間合いを詰める。
 ――次の瞬間、骸天羅王が大地を蹴った。
 ――キイイイイイイン! と、鬨は受け止めた。
「今度は先のようには行かんどすぅ」
「カカ!」
 鋭い骸天羅王の突きを一撃二撃と弾いた。
 鳴海とルエラ、伏見が打ち掛かると、骸天羅王はバックステップで後退しながら弾いた。
「逃がしませんよ――精霊砲!」
 朝比奈の一撃が骸天羅王を貫く。
「あによ、そう簡単に行くと思ったの」
 風葉も精霊砲を撃ち込んだ。
「これ以上被害を出さないためにも、ここで食い止めます」
 雛は閃癒の準備をしつつ、神楽舞の使用タイミングも図っていた。
 白蛇は影縛りで骸天羅王を捕える。
「今のうちに‥‥術の効果時間は一分間だよ‥‥」
「ぬう!」
 骸天羅王は行動が落ちて、忌々しげに白蛇を睨みつけた。
「朧!」
「サンダー!」
 コルリス、ヴェニーが矢と魔法を連発する。
「ぐうううおおおお!」
 骸天羅王は苛立たしげに腕を一振りすると、瘴気の弾丸を白蛇に飛ばす。
 直撃を受けた白蛇は、それでも影縛りを掛け続ける。
 精霊砲の連射に、鬨、鳴海、ルエラ、伏見が包囲攻撃を掛ける。
 直撃する一撃一撃が大気を振動させ、骸天羅王に打撃を与えて行く。
 そして1分が経過――。
「ぬっ、まだ術が解けない」
 骸天羅王は白蛇を睨みつける。
 1分と言うのはブラフ。実は白蛇の限界時間は二分。たかが二分、だが、その二分間の間に、骸天羅王の動きは大きく減衰する。この二分は大きく勝敗を決する。
 雛は神楽舞に切り替え、その間に連打を浴びせる。
 仕掛けて吹き飛ばされた伏見は、骸天羅王が反転するところへ焙烙玉を撃ち込んだ。
「隙ありい!」
「ぬお!」
 よろめく骸天羅王に、ありったけの魔法と矢を撃ち込み、全員で一斉攻撃を仕掛ける。
「残念ですよ! あなたとはこれっきりですかね!」
 鳴海が加速する。鬨、ルエラも同時に切り掛かった。
 影と光が交錯し――。
 骸天羅王の胴体が切り裂かれて、骨の上体が落ちた。
 残された下半身は黒い塊となって崩れ落ちていく。
 開拓者たちも傷で血だらけになっていたが、手ごたえはあった。
「カカ――! これで終わりだと思うな! お前たちは在天奉閻に勝てはしまい! それに鳳華の闇は深い。その闇は、わしなど及びもつかぬ大きなものよ!」
「話はそこまでどすぅ」
 鬨が刀を振り下ろして、骸天羅王の顔面を叩き割った。アヤカシの肉体が崩れ落ちて瘴気に還元する。
 こうして、鳳華の七魔将の一人、死人使いの骸天羅王は撃破されたのだった。