【踏破】魔の島の遭難者
マスター名:安原太一
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 難しい
参加人数: 10人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/07/20 22:52



■オープニング本文

 朱藩国の興志王が率いて行った調査船団「朱」は、嵐の壁を守っていると言うの魔の島、鬼咲島に到着していた。島の駐屯地を確保するべく、開拓者や朱藩の兵士たちがこれらの船とともに派遣され、魔の森から出没するアヤカシと交戦に入っていた。
 乗船していた開拓者たちは、グライダーを駆り、人面鳥の群れを撃破して行く。
 奇声を発して襲い掛かってくる人面鳥。開拓者たちは編隊を組むと、それらを包囲するようにグライダーを操る。
「行ったぞ! そっちだ!」
「任せて! ――食らえアヤカシ!」
 すれ違いざまに人面鳥の首を切り飛ばす。
 ――ガアアアアア! 人面鳥たちは怒り狂って旋回する。
「そうは行きませんよ。おとなしく落ちてもらいます。――カマイタチ!」
 陰陽師は斬撃符を叩き込んだ。切り裂くカマイタチが人面鳥を粉砕する。
「うっし! そろそろ俺も決めて行くかあ!」
 サムライは突進すると、人面鳥を両断した――。
 上空で展開される空中戦。駐屯地の確保は恐らく確実視されているが、油断は出来ない。開拓者たちは手綱を引き締め、次々と出没するアヤカシの群れを撃破して行く‥‥。

 ‥‥その頃、鬼咲島に墜落して行方不明となっていた黒井奈那介は、魔の森から脱出しようともがいていたが、空から落ちた際に足を少し痛めてしまったらしい、足を引きずって森の中を移動していた。
 ――と、奈那介の側をゆらり‥‥と巨大な影がよぎった。10メートルはあろうかと言う巨人のアヤカシだ。おぼろげな光に包まれていて、ゆったりと歩いている。頭部は狼のような形をしていて、燐光に包まれている。
「やばい‥‥全く‥‥ほんまに運の悪いこっちゃ。こんなど真ん中に落ちるとは。しかしどうするかな、どないかして脱出せんと。運が良かったら、朝廷から救援でも来るかな‥‥」
 奈那介は僅かに残っている枯れ木をかき集めると、火を起こし始めた。煙が立ち上っていく。
「運次第やな。わいもどうにかして脱出したいところやが、何せここは広いからなあ‥‥随分飛んできたし」
 奈那介は移動すると、また一つ狼煙を上げ始める。
 興志王たちがすでに島に到着していることを奈那介は知らない。奈那介を救い出すために開拓者を乗せてきた。無事に駐屯地が確保されれば望みはあるが‥‥。
 奈那介は足を引きずりながら移動して行く。自分はまだ死んでいないが、運が尽きるのは時間の問題か‥‥そんなことを思いながら。


■参加者一覧
雪ノ下・悪食丸(ia0074
16歳・男・サ
鈴梅雛(ia0116
12歳・女・巫
三笠 三四郎(ia0163
20歳・男・サ
華御院 鬨(ia0351
22歳・男・志
アルカ・セイル(ia0903
18歳・女・サ
巴 渓(ia1334
25歳・女・泰
名も無き通りすがり(ia5402
28歳・女・弓
天ヶ瀬 焔騎(ia8250
25歳・男・志
和奏(ia8807
17歳・男・志
アルセニー・タナカ(ib0106
26歳・男・陰


■リプレイ本文

 ‥‥長い夜が終わりを告げようとしていた。調査船団「朱」が鬼咲島に降り立ち、地上のアヤカシとの激戦を制して、一夜が明けようとしていた。興志王も鬼咲島に降り立ち、駐屯地は急ピッチで建設が行われていた。
 黒井奈那介の捜索に向かう開拓者たちは、仮眠を取って、昼過ぎには飛空船に搭乗して、出発していた。奈那介の捜索には、幾つかの捜索隊が出されており、雪ノ下・悪食丸(ia0074)、鈴梅雛(ia0116)、三笠 三四郎(ia0163)、華御院 鬨(ia0351)、アルカ・セイル(ia0903)、巴 渓(ia1334)、名も無き通りすがり(ia5402)ことソルコルッカ、天ヶ瀬 焔騎(ia8250)、和奏(ia8807)、アルセニー・タナカ(ib0106)たちもそれらの一つであった。
「学者先生無事かねえ‥‥」
 上昇して行く飛空船から、眼下の景色を見やりながら、雪ノ下は仲間たちを顧みた。
「魔の森に落ちてしまうなんて‥‥急がないと、アヤカシに‥‥」
 雛は小さな胸の前で、祈るように手を握りしめた。
「私たちも敵地のど真ん中へ降り立つわけですし、覚悟が必要ですね‥‥余計な戦闘は命取りでしょう。最善を尽くすとしましょう」
 三四郎は、静かに言った。
「恐らく奈那介はんは無事ではないでしょうな。負傷していたら難儀どすぅ。うまく見つけられるように祈らせていただきやすぅ」
 鬨は可愛く心配そうな顔で心配する。
「しかし学者先生も無謀だなあ。たった一人で魔の島へ乗り込むとはねえ‥‥挙句の果てに遭難してしまうとは。己の身一つじゃないんだから、無茶はよして欲しいもんだ」
 アルカは言って、肩をすくめる。
「しかしまあ、ずいぶん派手なお出迎えになっちまったなぁ。だが黒井の野郎を救い、この鬼ヶ島を制圧してやっと先に進める。ここが踏ん張り所だ、頑張ろうぜ」
 巴は思案顔で顎をつまんで、先に目を向ける。
「僕としては奈那介君が五体満足であることを祈るばかりですが‥‥しかし軽率でしたね」
 ソルコルッカは微笑を浮かべて、どこか楽しげであった。
「行方不明者、か。此処までの規模で捜索するんだ、重要人物なのは間違いないんだろうがな‥‥この依頼、必ず成功に導こう」
 天ヶ瀬は厳しい顔つきで、艦橋から見える景色に目を凝らしていた。下は魔の森だ。まともに考えれば、奈那介の生存確率はゼロパーセントだ。だが、奈那介も学者とは言え志体持ちで身を守る術は心得ている。開拓者たちは一縷の希望に望みを託すしかない。
「駐屯地の確保は遭難者救出の為だと伺っておりますので、こちらが成功しないことには骨折りの意味もなくなってしまいます‥‥頑張らないと‥‥」
 和奏は言って、朋友の駿龍に手を当てた。駿龍は窮屈そうに身を小さくしていた。和奏は駿龍を撫でてやるが、龍はどこか苛立たしげであった。小さく唸り声を上げて、体を揺らした。
「龍は頼むからおとなしくさせてくれよ! こんな船の中で暴れられちゃかなわん!」
 船長が大きな声で注意する。
「すみません‥‥颯、待て、大人しくして下さい」
 和奏は待てを命じると、龍は不承不承といった風に、また体を小さくした。
「黒井様の行方を捜すのが第一ですが、見たことのないアヤカシは研究対象として非常に興味深いですね」
 タナカは言って、龍を抑える和奏の様子を見つめていた。
 黒井が残した痕跡をたどる。自らのアヤカシ研究を進めること。この島におけるアヤカシ調査は、今後の開拓計画にも役立つはずだと思う。タナカは眼下の魔の森に目を向ける。無限のアヤカシが生まれるこの森に降り立つのは、タナカも初めてであった。滅多にある機会ではない。そして危険も伴う。
「ん? 何だあれは? おい――!」
 船長が開拓者たちに声を投げた。
 見ると、魔の森から、煙が何本か上がっている。
「狼煙だ。信じられん。まさか‥‥黒井の奴か。やってくれるな」
 巴は身を乗り出して、狼煙を確認する。
「船長、あの辺りに船をつけられるか。運が良ければ黒井をすぐにでも連れ帰ることが出来るかも」
「ああ、降下地点を探ってみよう」
 船は狼煙の辺りを周回すると、近くにある木々が開けた場所を確認する。
「よし、俺たちは基本的にここで待つが、無事に黒井を確保出来たら狼煙を上げてくれ。出来るだけそちらへも向かう」
 船長はそう言って、狼煙の材料を開拓者たちにも手渡した。
「よし、じゃ行くか」
「黒井さん‥‥今からひいなたちが迎えに行きます、どうか無事でいて下さい」
 飛空船は降下して行くと、梯子を下した。
「頼むぞお前ら! 生きて帰って来いよ!」
「船長たちこそ、気をつけて下さい。もしもキキリニシオクが出現したら脱出して下さい。私たちは自力でも駐屯地へ戻りますので」
 三四郎は言った。この依頼は恐らくこれまでに受けたどの依頼よりも危険だ。互いに自らの身を守らねばならないだろう。キキリニシオクが出現したらとてもではないが逃げるしかない。
「行ってきます」
 魔の森へ降りて行く開拓者たちを、船長は厳しい顔で見送ると、再び船を上昇させて、警戒態勢に入った。

 開拓者たちは、森へ降り立つと、三つの班に分かれて行動する。

1班:天ヶ瀬、和奏、アルセニー
2班:雪ノ下、華御院、アルカ
3班:鈴梅、三四郎、ソルコルッカ、巴

「まだ新しいな‥‥」
 天ヶ瀬は、狼煙を確認して、呟いた。
 狼煙はもくもくと煙を出していて、それなりの勢いがあった。
「ということは、まだ黒井殿は近くにいるのでしょうか‥‥」
「その可能性は十分にありますね」
 和奏の言葉に、タナカは応じる。
「さて、黒井が何か残していないかな。狼煙を上げたってことは、何か手掛かりを残して行っても不思議じゃない。頭の良い奴なら、目印か何かを近くに残していても‥‥」

「‥‥さて、どこから手をつけたものですかね」
 雪ノ下は、草木を切り飛ばしながら、周辺を捜した。
「まさか大声出して呼ぶわけにもいきまへんしなぁ」
 鬨は、心眼を使いながら、狼煙の周辺を探っていた。
「‥‥と、おい、気をつけろ、何か来るぞ」
 アルカは仲間たちに言葉を掛ける。
 開拓者たちは木々に隠れた。
 現れたのは、虹色の肌をしたグロテスクな人型アヤカシである。ナムーザと言うアヤカシである。数は3体。
「オオオオオオオ‥‥」
 ナムーザたちは、ざくざくと茂みの中を分け入って、アルカ達の間近を通過して行く。
 至近にアヤカシ達の気配を感じて、鬨も雪ノ下も息を殺した。
「ガオオオ!」
 ナムーザは何かに威嚇するように、咆哮した。それはアルカが隠れている木の裏側であった。
「‥‥‥‥」
 アルカは高なる鼓動を抑えながら、じっと待った。何と言ってもこちらから仕掛けるのは得策ではなかった。あっという間に囲まれるかも知れない。
「ガアアアアア!」
 ナムーザ達は咆哮を繰り返すと、その場から立ち去る。
「ふう‥‥」
 アヤカシの気配が去ったことを確認して、アルカ達は安堵の息を漏らす。
「こいつは、厳しいなあ‥‥黒井の奴、どこへ行ったかな」

 雛たちも、ナムーザの群れをやり過ごしたところだった。
「やっぱり、狼煙はアヤカシからも見えますし、長く留まるのは危険そうです」
 雛はそう言いながら、周辺の木々に白墨で目印を付けていく。奈那介がまた戻ってくるかもしれないので、開拓者たちが向かう方角に印を付けていく。また、合流できなかった時に備えて、駐屯地の方角も、文字で記しておく。そして、奈那介が使える様に、白墨を一本置いておく。
「アヤカシも文字なら流石に読めないと思います」
 地面に足跡が無いか調べる。足跡はでたらめに残っていて、恐らくアヤカシの追撃を受けたのではないかと思われた。それから狼煙が上がってからどの位の時間が経っているのか確認する。
「まだ新しいですね。二、三時間か、もう少し経っているかも知れません」
「黒井の奴は、一応、ヒントとして狼煙を上げている。後はどう動いたか、これを推理してくしかあるまいな。黒井の奴も墜落した以上、五体満足じゃないだろう。きっとアヤカシの縄張りや群れとの接触は避けながら進むだろう。遭難者の常道として、水源の確保の為に川沿いに移動してるやも知れんな」
 巴は思案顔で森を見渡した。探索しながら同時に他チームや黒井に向け、所持したチョークで探査済みの場所にマーキングを施す。上手く意図を理解してくれれば、黒井の誘導や他チームとも間接的に協力しあう事も可能だろう。
「どこへ向かったのでしょうかね‥‥何か手掛かりが見つかれば、希望も持てるのですが」
 ソルコルッカは、森を捜索しながら、目印を探した。
 そして、三四郎が草むらの中からとあるものを拾い上げる。黒井のブーツだ。
「こちらへ向かったのか?」
 三四郎は森の奥を見つめて、少し進んだ。そこで、木に付けられたマークを発見する。単純な矢印だが、方角を指し示していた。そして、「助け求む、黒井」と書かれていた。
「何か見つかりましたか三四郎君」
 いつの間にか、後ろに来ていたソルコルッカが三四郎に声を掛けた。
「ああ‥‥これを見て下さい」
「ふむ?」
 木のマークを見て、ソルコルッカは地面にも目を向ける。
 確かな足跡が残っていて、茂みに痕跡がある。
「こっちでしたか」
 三四郎は仲間たちを呼び寄せる。

「黒井の痕跡が見つかったって?」
 やってきた天ヶ瀬は、目印を見て思案顔で森の奥を見やった。
「無事でいるといいんどすがな‥‥」
「急ぎましょう。どれくらい時間が経っているのか分かりませんが。無事であることを祈るのみです」
 開拓者たちは、前進する。再び三班に分かれて、黒井が消えた方角を追って行く。
 タナカは人魂で羽虫を飛ばして、周辺を捜索し、瘴気回収で練力を補てんしていく。
「魔の森から瘴気を回収するとは、私もアヤカシになった気分ですね」
 タナカは莫大な練力を回復して、くすりと笑った。魔の森の中では瘴気回収の効果は倍増する。
「こいつ‥‥この状況でよく頭が回ったな。これで助かったら、自分の命を救ったことになるが、大したもんだ」
 巴は、黒井が残した痕跡を確認して、肩をすくめた。木にマークが残されていて、開拓者たちはそれを頼りに追跡を開始する。
 魔の森の中、時折遭遇するナムーザをどうにかやり過ごし、前進して行く。戦闘は避ける方針で進んでいく。
「黒井の奴‥‥捕まえた厳しく言わないとな。おじさんたちがここまで来てやってるんだからね。全く、命が幾つあっても足りないよ」
 アルカはぼやきながら、森の中を見渡す。
 ――と、その時である。森全体を震撼させる巨大な咆哮が轟き、前方から生温かい風が吹きつけて来た。
「何ですか?」
「嫌な予感がするが、こっちも危ない。気をつけて行きましょう」
 開拓者たちはじりじりと前に進んだ。
 やがて、その姿が目の前に浮かび上がってくる。
「おい、何だありゃあ‥‥」
「アヤカシ、ですか?」
 おぼろげな光に包まれた巨人のアヤカシを見出して、開拓者たちは散開した。コックルボッタ――巨人アヤカシの名はそう呼ばれるものだった。森の主である。
 ごうっ! と、ぶうん‥‥! と、瘴気の波動が森を突き抜けて行く!
「何ですか――!」
 そこへ、木々の間から、男が一人転がり込んできた。泥にまみれてぼろぼろになったその男こそ、黒井奈那介であった。
「黒井! てめえ生きてたのか!」
「黒井さん、大丈夫ですか」
 黒井は突然開拓者たちに取り囲まれて、呆気にとられていた。
「お前たちは‥‥そうか! わいを助けに来たんやな! 待ってたで! 目印を見つけてくれたんか!」
 黒井は喜色満面に雪ノ下に抱きついた。
「離せ黒井! あんた、風呂に入った方が良い、助かったらの話だけどな」
「おおそうや! おい! もちろん船は来とるんやろうな!」
「いちいち腹の立つ奴だな」
 アルカは黒井ににじり寄ると、前方のアヤカシのことを聞いた。
「ああ、あいつか。あいつは森の主や。わいがちいとばかし縄張りを荒らしたもんやからえらい怒っとるんや」
「あのな‥‥」
「おい! 急ぐで! わいも足を怪我してそう早くは走れんのや! あいつが明後日の方向を探しているうちに距離を稼ごう! 船はどこや!」
 そこで、コックルボッタが向きを変えて、こちらへ向かってくる。驚いたことに、コックルボッタは幽霊のように木々をすり抜けて手を伸ばしてくる。
「逃げるで!」
「間に合わない! 黒井さん下がって! あのアヤカシは俺たちで止めます!」
 天ヶ瀬は言って、仲間たちの先陣切って駆け出した。
「少し待っていて下さい、ここまできた以上、あなたを連れて帰りますよ」
 三四郎もまた、抜刀すると、アヤカシに突撃した。
「‥‥黒井! お前船に戻ったら一発殴らせろよ。どれだけの人間がお前のために動いたか‥‥よし、行くぞ雛。気をつけろ」
「はい。でも黒井さんが無事で何よりです」
「良かったどすなあ黒井さん、どうにか帰れそうどすな」
「お前ら‥‥コックルボッタは並みの敵じゃないぞ」
「あなたの足では逃げ切れませんよ。それに、開拓計画にはあなたの頭脳が必要なのです」
 奈那介は、突撃して行く開拓者たちを唖然と見送る。

 ――オオオオオオオオオ! 燐光に包まれた巨人コックルボッタは、開拓者たちを見ると、怒りの咆哮を上げて、瘴気の息を吐きだした。
「ちっ!」
 焼け付くような痛みが開拓者たちを襲う。
 アルカはジャンプして木の間を飛び上がると、踵落としをコックルボッタに叩き込んだ。
 雪ノ下に三四郎が足元に切り掛かり、鬨も巴も全力の一撃を撃ち込んだ。ソルコルッカが全力で矢を叩き込み、天ヶ瀬、和奏がスキル全開で切り掛かる。
 怒涛のような攻撃がコックルボッタの足元に叩きつけられる。瞬く間に足を吹き飛ばされたコックルボッタは巨体が傾いて倒れ伏す。咆哮して瘴気を吐きだすコックルボッタ。
「構うな! 動きは封じた、逃げるぞ!」
「行きますよ!」
 黒井はコックルボッタを撃破して戻ってくる開拓者たちを見て立ち上がった。
「おおい! 無事かお前ら!」
「もういい。行くよ!」
 アルカは黒井を背負うと、走り出した。
「わいかて志体持ちなんだってば!」
 アルセニーは人魂で周辺を捜索する。騒ぎを聞きつけたのか、ナムーザの姿が確認される。
「アヤカシです、新手が来ますよ」
「急ぎましょう」
 開拓者たちは迂回ルートを取って、飛空船下の近くまで接近する。
「無理だな、アヤカシがたむろしている」
 最初の降下地点にはナムーザの群れがいた。
 開拓者たちは後退すると、供与された狼煙を上げて飛空船を呼ぶ。
 やがて――。
 森の上に飛空船が強引に降下してきて、梯子が下ろされる。
「よし、黒井、お前から行け」
「すまねえ」
 それから開拓者たちは、殺到してくるナムーザを眼下に、空へ上がっていく。
 かくして無事に生還した黒井奈那介は、駐屯地で保護されることになる。