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■オープニング本文 武天国、龍安家の治める土地、鳳華――。 蟲アヤカシの将、黒太天は魔の森を発って二カ月の時を過ごした。この間、羽アリたちが里に忍び込み、黒太天に鳳華の情報を伝えていた。七魔将の一人である骸天羅王が死んだことを知った黒太天は、高らかに笑った。 『くはは‥‥奴が死んだか!』 黒太天は人間の女の姿をしており、狂喜乱舞して笑った。 『これほど愉快なことはない! 亡者どもの首魁が倒れたとなれば、残るは烏合の衆! 我ら蟲アヤカシの勢力を伸ばす絶好の好機よ!』 黒太天は部下たちを呼び寄せた。 『聞け! 忌々しい骸天羅王が死んだ! 人間に殺されたのだ! 恐らく亡者どもは衰退して行くだろう! この機に打って出るぞ! 在天奉閻は人間を生かさず殺さず、などと甘いことを考えているようだが、いっそわしらで鳳華の一角を支配する好機! 亡者が後退する分まで、戦闘地域を拡大するぞ!』 人面蜘蛛や半人サソリ、他、言葉を理解できる虫たちは牙を鳴らして笑声を上げた。 魔の森の奥で、莫大かつ巨大な瘴気の渦がしゅうしゅうと咆哮しながら移動していた。渦が移動するにつれて、何と、周辺に魔の森の芽が湧きあがってくる。 「鳳華、か‥‥」 不厳王(iz0156)は、渦の中から鈍い光を放つ目で森を見渡していた。 「いまだに健在であったとは‥‥鳳華の魔将たちも兵を蓄えるのに時間がかかったか」 「不厳王様――」 「よい‥‥鳳華の七魔将にはしばらく好きにさせてやろう。待つのには慣れている‥‥二十年など、瞬きするような時間だ」 「は‥‥」 瘴気の渦は魔の森の奥地へ後退して行く‥‥。 ――龍安軍陣中。 陰陽頭の明道心光悦は、静かに敵の動きを図っていた。 「虫たちが動きましたか」 「はっ! 蜘蛛を中心とする蟲の大軍、本格的な攻勢に転じてきます。他に大甲虫やサソリ、人面蜘蛛が確認されています! もの凄い数です!」 明道心は卓上の地図に目を落としていた。民が避難した後の里には長大な防御陣を築いた。恐らくアヤカシが本気で動き出せば時間稼ぎ程度にしかならないだろうが。 「サムライ衆で咆哮の楔を打ち込み、アヤカシを引きつけます。莫大な虫を我々が止めるにはそれしかありません。それ以上に気がかりなのは、黒太天がどこかに出撃しているであろうことです。戦場で遭遇したら厄介ですよあの蜘蛛は」 そして、明道心は全軍に迎撃の合図を送る。黒太天の本格的な攻勢に耐えられるか‥‥後を抜かれれば辺境とは言えない鳳華の中心部だ。そうなれば、総力戦になるだろう。明道心は、二十年前の戦いを思い出すのだった。 |
■参加者一覧
星鈴(ia0087)
18歳・女・志
無月 幻十郎(ia0102)
26歳・男・サ
焔 龍牙(ia0904)
25歳・男・サ
玲璃(ia1114)
17歳・男・吟
鈴木 透子(ia5664)
13歳・女・陰
瀧鷲 漸(ia8176)
25歳・女・サ
朱麓(ia8390)
23歳・女・泰
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
フレイア(ib0257)
28歳・女・魔
ブローディア・F・H(ib0334)
26歳・女・魔 |
■リプレイ本文 「さて、次は蟲のお出ましかい。虫や思て手加減すると思うたら間違いやで。本気で叩き斬ったる」 星鈴(ia0087)はそう言って、慌ただしさを増していく戦場にあって、闘志を燃やしていた。 「黒太天が出るらしいなあ星鈴殿」 言ったのは無月 幻十郎(ia0102)。酒豪の豪快な人物だ。 「うん? 報告書は見たかい幻十郎はん」 「まあな。ここ最近鳳華の七魔将は立て続けに討たれているが、黒太天も倒せるかな」 「さあてなあ、それは分からんけど、尋常な相手ではないみたいやな。尤も、その他のうぞうぞも半端やないけどな」 同じころ、龍安家臣の焔 龍牙(ia0904)は、総大将の明道心のもとを訪れていた。 黒太天の退路を断つために少数精鋭部隊をお願いする。 「やつを討つためには退路を断たないと。少数でかまわないので部隊を任せてもらえないか? 人選は明道心殿にお任せする」 明道心は思案顔で焔を見やる。 「ふむ‥‥ではサムライ、志士、泰拳士を数名ずつと言うところでいかがでしょうか」 「ありがたい! 十分です!」 「期待していますよ」 「兵は借りた。あとは攻撃の方向やタイミングを仲間と相談しないと‥‥」 焔は準備に向かう。 「今回は黒太天を討ち取るまで消耗戦となるでしょう。皆様の治療は全力で行い皆様の戦闘を支援します」 玲璃(ia1114)は明道心に龍安軍の巫女達の指揮ができるようお願いすると共に龍安家兵士達にも毒等を受けたり負傷した味方を自分達巫女のいるところまで運んでもらえるようお願いする。 「玲璃殿か、此度の戦も、よろしくお願いしますよ」 「ありがとうございます」 そうして許可を得ると、玲璃は龍安家の巫女達に挨拶の後、味方陣地後方に協力して救護所を設け、負傷者を収容し治療のできる場を作ることにする。 「皆様にはお味方にかけられた敵の術解除や解毒などの作業をお願いします。恐らくそれだけでも皆様は手一杯になると思います。ですからお味方の負傷治療は私が責任をもってやりとげます」 と役割分担を提案する。 「玲璃様、ご無理をなさらぬように。私たちも働きますから」 「みなでこの危機を乗り越えましょう」 玲璃は巫女たちと言葉を交わしながら、救護所設置を進めて行く。 「もの凄い数 対等と思って我慢比べの戦いをすると危ないというのがあたしの判断です」 鈴木 透子(ia5664)は明道心に意見を述べた。 「中型のアヤカシだけなら、まだ良いのですが、同時に小型、特に羽虫に戦いを妨害をされると厳しいです。あちらは中小の混合で戦えても、こちらは、志体持ちと一般人の混合で戦うのは無理です」 「それはそうかも知れませんが、策がありますかな」 「火を使うことを提案します」 「火を‥‥ふむ」 「アヤカシに火は余り効かないのですが、それでも火の中にいれば消耗します。それに小虫は払いやすくなります」 僅かに傾斜のある長い草の多い平原の下側か、風上の地に陣を敷き、敵が接近したら草に火を放ち、兵士は長い槍を持ち、積極的には戦わず、火の中に押し戻すような戦いをするという案である。盾を並べて守りを固め、同時に十分な量の水を兵士に持たせるように提案する。 「ただ――火は問題も多い方法です」 「確かに。風任せと言うのは好みではないですな。まあそれでも、風を捕まえることが出来れば」 瀧鷲 漸(ia8176)は、愛用のハルバードを突いて、望遠鏡片手に地平線を見つめていた。虫たちが蠢いている。 「黒太天か‥‥先の天幽も尋常ではなかったが‥‥」 「蟲の動きはどうかねえ漸殿」 言葉を掛けたのは幻十郎。漸は肩をすくめると、望遠鏡を手渡す。 「とてつもない大軍だな。確かに鈴木が言うように、まともにぶつかると拙いかも知れん」 「火を使うって話だなあ‥‥そんなところかねえ」 すると、そこへ朱麓(ia8390)が姿を見せる。 「よお御二人さん」 「これは朱麓殿。準備は出来ましたかな」 「ああ、こいつを使っておくれ」 そう言って、朱麓は矢に取りつけた焙烙筒を幻十郎に手渡す。 「あとは、黒太天を引きずり出せるかどうかに掛かってくるけどねえ」 「どうにかこじ開けたいものだな」 そしてコルリス・フェネストラ(ia9657)もまた明道心のもとを訪ねていた。 「七魔将中2将は退治できました。勢いはこちらにあります。今回の戦いが黒太天を討ち取れる最大の好機と愚考します」 「戦いの天秤はどう傾くかは分かりませんがねえ」 コルリスは、龍安軍の弓兵の指揮をさせてくれるようお願いすると、許可が下りて弓兵達に挨拶して回る。 「龍安家臣のコルリスです。よろしくお願いします」 マスクを取って、軽くお辞儀すると、兵士たちは可愛らしいコルリスの笑顔に意外な顔。 「開拓者ってみんな若いな‥‥勇ましいことだが」 ‥‥既に七魔将も二角が崩れた今となっても己の軍団のみを使い攻め寄せるのはアヤカシの性というものでしょうか? 過信することなく全員で蹂躙しにくれば好いものを。 「さて、次に参りましょう」 フレイア(ib0257)は言って、明道心のもとを訪れた。 「続々とやってくるな。感心なことだ」 「あら」 「話を聞こう」 「戦術としては、予定通り咆哮による敵の分断を行いスペースを作り、敵将黒太天の急襲を狙い、討ち取るのを狙う。という辺りでしょうか」 「黒太天を討つ。思い切った策だな。開拓者は強気だ」 「そうでしょうか。ともあれ、全体の作戦をフォローするのでしたら、火計を敵の進軍を止める攻性の城壁と考えるのならば、煙幕を準備して敵軍の視界を奪い、龍安軍は火と煙の位置を把握して間を縫うようにして攻撃を加えていくようにすれば、少ない戦力を効果的に投入して敵の分断を狙えるのではと存じます」 明道心は思案顔で話を聞く。 「火や煙で戦場を分断するため、敵も分断されますが味方同士の連絡の疎通も難しくなるのは確実ですので、鐘や銅鑼を用意しておき敵味方の位置情報を音を使って伝えるようにしてフォローする案がよろしいかと」 「咆哮でアヤカシを分断できるかどうかに掛かっている。中級さえ撃破出来れば、雑魚はどうにかなるだろう。火や煙幕は風次第ですがね」 明道心はフレイアの案を聞いて、顎をつまんで頷いた。 と、龍安陣中を歩く赤毛の美女一人。炎の魔術師ブローディア・F・H(ib0334)である。大きな胸を強調したような服装で、見せびらかすように兵士たちに接近する。 「この虫たちを倒さなくては‥‥里の危機ですものね」 ブローディアは言いつつ、武器の手入れをする兵士にかがんで胸元を見せびらかす。兵士は目のやり場に困って咳払いする。 「ま、まあ、何だ、きっと俺たちは勝てるさ。龍安の精鋭も揃っていることだしな」 するともう一人が揶揄する。 「なーに焦ってんだお前。戦を前に姉ちゃんの色仕掛けに気が逸れるようじゃ死ぬぞ」 「な、何だとお」 喧嘩を始めた二人に、ブローディアは「困った人たち」と言ってその場を後にする。 ――そうこうする間に、いよいよ蟲の大軍が接近してくる。 龍安軍は戦列を整えると、虫たちの迎撃態勢を取った。 ――咆哮を上げて突進してくる蟲の群れ。 「サムライ衆! 咆哮を解き放て!」 「おお!」 大地を揺るがすサムライたちの咆哮が――。 対するアヤカシたちからも怒りの咆哮が上がる。 直後――。 ごうっ! と草原に炎が巻き起こる。 龍安軍が点火した炎が、猛烈な勢いで巻き起こって戦場を覆っていく。風上に立つ龍安軍は、散開して突進してくるアヤカシの大軍に炎を放った。 激突――。 アヤカシの大軍が龍安兵が立てた盾の列に激突する。 「押し返せ!」 兵士たちが槍で突いて、アヤカシを炎の中へ押し返していくと、焼かれたアヤカシが崩れ落ちて瘴気に還元していく。 コルリスは鏡弦を適当に使うが、まだアヤカシの数が多すぎて反応があり過ぎる。 「弓隊――中型アヤカシを確実に各個撃破して下さい!」 コルリスは五人張を引き絞ると、前線に出てくる巨大蜘蛛に矢を叩き込んだ。 巨大蜘蛛、大甲虫、大サソリらがぱらぱらと前進してくる。 「雑魚はひたすら叩かせてもらいます」 ブローディアはアストラルロッドを構えると、ブリザーストームを叩き込んだ。吹雪がアヤカシの戦列に穴を開ける。 「‥‥数はぎょうさんおるさかい、正面から殴るだけ言うほど阿呆やない」 星鈴は巨大蜘蛛の頭を叩き潰して押し返した。 「退きやがれ!」 幻十郎は雑魚を切り飛ばし、サソリを戦塵烈波で薙ぎ払った。 「さあ、行くよ野郎共! 龍安家の真の力を奴らにたっぷりと見せておやり!」 朱麓も前進してくる大甲虫を朱槍を一閃して吹き飛ばした。 「砕け散れ」 漸は満身の力を込めてハルバードを振り下ろす。雑魚アヤカシ数体がまとめて粉砕される。 「俺の名は焔 龍牙! 古より語られし『焔龍』の後継者だ!」 焔は部隊を指揮して、アヤカシの雑魚を中心に攻撃し排除していく。 「舞い散れ吹雪――」 フレイアはブリザーストームを叩き込んだ。白い吹雪がアヤカシを包み込み、瘴気となって消失する。 上空を龍で舞う鈴木。黒太天の動きを注視していた。大軍の中で黒太天を発見するには至らないが、どこかにそれらしき兆候が無いか敵軍の上を舞う。 ――と、突如羽虫の群れがアヤカシの群れから湧き立ち、鈴木に襲い掛かってくる。 「来ましたか、予想通りですね」 鈴木は旋回すると、羽虫を引き連れて戦場から離脱する。 「お前は離れなさい」 鈴木は龍を軽く押しやると、羽虫を引き連れて走った。 囲まれて、羽虫が鈴木に噛みついてくる。 そこで鈴木は悲恋姫を使い、羽虫を一掃する。一撃で羽虫の大軍が消失する。 「この方が助かります‥‥気分的には最悪ですが」 悲恋姫は悲恋のあまり自ら命を絶ち、挙句瘴気に取り込まれた怨念の集合体。呪いの悲鳴を周囲に響かせ、敵味方の区別無く無差別に攻撃するというもの。 ‥‥戦況は龍安軍が最初優位に立つが、数で勝る蟲の大軍はじわじわと龍安軍の戦列を食い破りつつあった。 「大丈夫ですか」 運び込まれてくる兵士たちを、玲璃たちは応急手当てしていく。 血みどろの兵士たちは、うめき声を上げて助けを求める。 「待って下さい、今回復します」 玲璃は心を落ち着かせて、エンジェルハープを奏でると、精霊の唄を歌う。 「あ、う‥‥お?」 兵士たちは、見る間に傷が回復していくのに、驚くような声を上げる。 「傷が無くなっていく‥‥」 「巫女さんの力、だ、凄いな、力が回復していく」 「よし、行くぞ!」 立ちあがった兵士たちは、気合を発して続々と救護所を出て行く。 複雑な表情を浮かべる玲璃。 「慣れないものですね、何度経験してもこうした厳しい戦いは」 「玲璃様、頑張りましょう」 「ええ‥‥大丈夫です。前線で戦っている兵士の皆さんを支えるのが、私たちの務めですからね」 玲璃は吐息して、ぴしゃりと頬を叩いた。 激戦の中、巨大蜘蛛に女の上半身がくっついたアヤカシが出てくる。ひときわ大きな半人蜘蛛は、崩れて行く龍安軍の戦列に分け入ると、手近な龍安兵を爪で串刺しにした。そのまま口に放り込む。 「くふふ‥‥やはり直接に食らうのはいつになっても忘れ難い感触だ」 次々と一般人兵士を串刺しにしていく半人蜘蛛。 「貴様は――アヤカシ軍の首魁か」 対する漸はハルバードを構えて問うた。 「わしが黒太天じゃ。今回は正面から龍安軍を叩き潰す」 「‥‥‥‥」 漸は武器を振りかざして、手近な龍安兵に合図を送る。 銅鑼と太鼓が激しく打ち鳴らされ、旗が振られる。 また、鈴木が上空で旋回して地上の味方に合図を送る。 「んん?」 黒太天は、潮が引くように戦列を交換する龍安軍を見て、首を傾げる。 開拓者たちが、黒太天と対峙する。 「黒太天――うちん武をみるんやったら覚悟ん一つくらいしいや!」 星鈴は加速した。紅蓮紅葉を叩き込む。 黒太天は素早く反転して弾き返した。 その隙にシノビが背後に回り込み、影縛りを発動。そこへ志士たちの葉擦を黒太天の腹部に打ち込む。 「馬鹿め、その程度が――」 「幻十郎!」 「おう!」 突進する朱麓たちと同時に、幻十郎が準備していた焙烙筒の矢を放った。 黒太天は口を大きく開いて、何かを吐きだす動作をした。その瞬間、焙烙筒の矢が黒太天の口に飛び込んだ。矢が炸裂して爆炎を巻き上げる。 「行くよ! 今だ!」 開拓者たちは黒太天を半包囲して加速した。 漸は地奔を叩き込む。 黒太天はのけ反って軽い目まいを起こしていた。 開拓者たちは一気に畳み掛ける。 玲璃が神楽舞「抗」で支援しつつ、星鈴と朱麓が突貫した。 「行くで!」 激突する開拓者たちの攻撃が黒太天の肉体を貫通する。 幻十郎、漸が続いて突撃する。 コルリスたちが支援攻撃を行い矢を撃ち込んだ。ドカカカカ! と黒太天の上体に矢が突き刺さる。 フレイアとブローディアの魔術が黒太天を打ちのめす。 「火炎獣!」 鈴木は黒太天の背後から炎を浴びせかけた。 「わしが亡者どもと同じ轍を踏むと思うな」 黒太天は姿勢を低くすると、手と口から糸を放った。 朱麓と星鈴が糸に捕まる。続いて、黒太天は口からきらきらの粒を吐き出した。 「ブレスだ! 気をつけろ!」 「あははははは!」 幻十郎は口許を覆ったが、微かに手足が痺れてくる。 朱麓と星鈴は糸を振り払うと、黒太天の足に連打を浴びせる。 「気力を振り絞っていく!」 幻十郎は突進すると刀を撃ち込んだ。 鈴木、コルリス、フレイア、ブローディアたちが魔術と矢を撃ち込み、玲璃の支援を受けた漸が黒太天の上体に躍り掛かった。 ハルバードを叩きつけた。ザン! と、黒太天の腕が飛んだ。 「やる――! 人間!」 黒太天は漸に毒針を撃ち込むと、素早く後退する。更にブレスを吐き出して牽制すると、群れの中に後退する。 が、そこに龍牙が待ち受けていた。 「黒太天! 貴様に退路はない!」 「――!」 反転した黒太天に龍牙たちが突進した。ドドドドドドドド! と串刺しにされる黒太天。動きが止まったところへ、開拓者たちが殺到する。 「馬鹿な‥‥」 半身を吹き飛ばされた黒太天、地面に崩れ落ちる。 開拓者たちが巨体に連打を浴びせかける。最後に朱麓が炎魂縛武を撃ち込んだ。 「あああ‥‥!」 最後に断末魔の咆哮を上げた黒太天、瘴気に還元して消失していく。 「やっぱり虫けらなんかじゃあたしの欲は満たされんのかねぇ? 前の在天奉閻の方が強くて楽しかったのになぁ‥‥」 そして、黒太天は死に、最後の咆哮が鳴り響くと、虫たちは恐慌をきたして魔の森へ壊走して行った。 「やりましたね」 鏡弦を使っていたコルリスは、アヤカシがいなくなったことを確認する。 「これで三人の魔将を倒しました。鳳華のアヤカシを森に封じ込めることが出来るかも知れません」 コルリスの言葉に、兵士たちは歓呼の声で拳を突き出した。 |